HOME記事スケールモデルドラゴンからリニューアル発売「WW.Ⅱ イギリス陸軍 シャーマンMk.Ⅲ」米軍とは異なる英軍独特仕様のシャーマンを再現

ドラゴンからリニューアル発売「WW.Ⅱ イギリス陸軍 シャーマンMk.Ⅲ」米軍とは異なる英軍独特仕様のシャーマンを再現

2024.06.19

イギリス陸軍 シャーマンMk.III 中期生産型【ドラゴン 1/35】 月刊ホビージャパン2024年7月号(5月24日発売)

イタリアに上陸した英国のシャープシューター

「シャープシューターズ」(射撃の名手)と呼ばれたイギリス軍第3カウンティ・オブ・ロンドン・ヨーマンリー連隊は、北アフリカ戦線での戦いの後、1943年にシャーマンMk.III戦車を受領し7月13日にイタリアのシチリア島に上陸、ノルマンディー上陸作戦に先立つヨーロッパ解放への第一歩を記している。太平洋戦線にも登場したM4A2を英軍仕様とし約5000両が供与されたシャーマンMk.IIIの1/35キットが、新たな履帯や3Dプリント製パーツのオマケを加えてドラゴンからリニューアル発売。独特の仕様や迷彩のブリティッシュ・シャーマンを製作しよう!

▲ブラックとサンドの迷彩塗装、砲塔天面のラウンデルなど、米軍とは異なるイメージの英軍シャーマンを再現
▲砲塔や防盾の形状はリリース当時は画期的な出来。マーキング車両の一般的な仕様に合わせて、ガンシールドのリフティングアイを太く、より外側に位置を変更している
▲車体前面の操縦手および機銃手ハッチが張り出した部分は、溶接フード前面の増厚がしっかり表現されている
▲独特のパターンのWE210履帯は、キットのベルト式からミニアートの連結可動式に交換
▲ドラゴンのキットはサイバーホビーからリリースされたキットのリニューアル版だが、現在の目で見ても充分な出来映えを誇る
▲目立たないが足周りにもVVSSのサポートローラ—のスペーサーを低くするなどの修正を施した
▲車両の工作が完了。車体前部の搭載物、前部サンドシールド、側面の丸められたシートなどを取り付けた
▲車体後部。機関室上面両側には、後部用サンドシールドを流用した雑具箱が設けられてるのが特徴となる
▲最初にサーフェイサーを塗布。通常のものより暗い色合いのガイアノーツのメカサフを使用している
▲迷彩色のブラックはAKリアルカラーのS.C.C 14ブルーブラックを使用。車体全体に吹きつけた
▲サンド部分は、模型的な見映えを考慮してAKリアルカラーのNo.61ライトストーンを選択している
▲Mr.ウェザリングカラー マットアンバーのウォッシングで落ち着かせてから、デカールを貼り付けた

■キットについて
 本キット(品番DR6231)はドラゴン(サイバーホビー)製で、2006年初出の「WW.II アメリカ軍 M4A2 シャーマン タラワ」(品番DR6062)のバリエーションとして2008年に発売された「WW.II イギリス軍 シャーマンMk.III 中期生産型 シシリー島」(品番CH6231)に、新しい履帯や金属砲身、英軍歩兵4体、3Dプリント製トンプソンサブマシンガンなどが追加されたボーナスキットとなっている。

■砲塔
 砲塔は前述のキットと変わらないが、シャーマン系キットしては砲塔形状や防盾形状などを正確にとらえた初のインジェクションキットで、他社製シャーマンとは一線を画す出来に当時は驚いたものだ。
 キットのデカールは「CLIVE」号のマーキング1種類が入っているので、今回はそれに準じて砲塔も改修した。改修は簡単で、溶接フードをもつ車体においてはキットのものよりもガンシールドのリフティングアイが太く、より外側に位置しているのが一般的であり(ごく一部の車両は溶接フードであっても細く狭いままのもある)、CLIVE号もそれに準じて修正した。砲塔後部のアンテナマウント2種はT-Rex製のものを使用した。

■車体
 当初のタラワ仕様キットで再現されていなかった溶接フード前面の増厚がしっかりと修正されており、ラウンドノーズ型のワンピースデフカバーも新規の正確なものに差し替えられている。なお、インジェクションキットとしては現在唯一の溶接フード車体であり、とても貴重である。
 しかしながら、悩ましい点としては車体幅が1/35で数mm広く、デフカバーとの接続部左右に隙間ができるため埋めたほうがよい。また、なぜか車体前端に切り欠きのような段差が設けられており、そのままだと上部と下部の前後関係とフェンダー位置が相当おかしくなってしまうため、厚めのプラ板などでしっかり埋め、前面の傾斜を延長する形で切削して整えてやるほうがよい。
 この他、前部フェンダーやサンドシールドもサイズや曲率形状に大きな問題を抱えており、上記の改修を行った場合使用できないので、他社製シャーマンの前部フェンダーとサンドシールドを使用した。ただし車幅の関係上こちらもぴったりとは合わず、デフカバー&スプロケット基部との間に大きな隙間ができるが、これは改修困難のため今回は見送った。車体下部は過去のソ連軍M4A2(品番DR6188)そのままのため、ディフレクター周辺が今回のシャーマンIIIには時系列的に相応しくないが、大工事が必要になるためこちらも改修は見送った。
 履帯は初期の英軍でよく用いられていたWE210履帯を履かせた。キットにも新素材のベルト履帯が入っているが、今回はミニアート製の可動式を使用した。やや組みにくいが、でき上るとエンドコネクター側部のディテールの解像度も上がり、さらにはとてもよく動くためおススメである。
 この他、VVSSのサポートローラーのスペーサーは、工場での導入時期が1943年7月からのため、ちょうど7月に前線配備されたCLIVE号の本車を含む車両にはまだ適用されていない。ローラー軸下のスペーサー部分を慎重に削りとって、高さを下げた。

■CLIVE号
 第3カウンティ・オブ・ロンドン・ヨーマンリー連隊の車両で、1943年7月頃にシチリア(シシリー)島に輸送船から上陸してくる有名な一枚の写真があるが、今回はそれに基づいて適度に再現した。
 車体前部には予備履帯や予備転輪、C166弾薬箱や、初期の英軍で特徴的な3つ並びセットの2ガロン燃料缶などが配置されているようで、この他にアクセントとしてビスケット缶やヘルメットを追加で置いてみた。また車体両側面にはロールアップされた大きな布製シートが見受けられるので、こちらはニトリル製手袋で再現し、0.15mm程度の釣り糸で巻き付けて車体側面に取り付けた。またこの時期の大きな特徴である車体後部上面の後部用サンドシールドを雑具箱として使っているようなので、同じくニトリル製荷物を詰め込んだり、一時的に取り外してある.50口径(他社製)を配置してみたりした。

■デカールと塗装
 チュニジア~イタリア戦線でよく見られたブラックとサンド系の2色迷彩を施した。まずはガイアノーツのメカサフを塗布したあと、AKリアルカラーのS.C.C 14ブルーブラックを全体に吹いた。マスキング用パテで一部を覆った後、AKリアルカラーのNo.61ライトストーンを吹き付けた。実際にはこの時期はすでにライトストーンではなく、より灰みの強いライトマッドが一般的に採用されているのだが、模型的にはやや映えないため不採用とした。
 この後Mr.ウェザリングカラーのマットアンバーにてウォッシングを行ったが、シチリア島の夏場は乾燥しており、ほとんど降水量がないため雨筋は付けないようにする。あくまで迷彩を落ち着かせるための目的である。さらに当時の戦場写真をみる限り、上塗りされた塗料が擦れて薄くなったり、剥離したりして地色のオリーブドラブが見えていることが多いため、チッピングはハード目に行った。車体上面や、履帯含めた足周りはインジェクションのプラパーツのため、プラを侵しにくいMr.ウェザリングカラーのホワイトダストやサンディウォッシュで汚してある。
 デカールについては残念なことに国籍マークが1枚足りない。幸い他社製のデカールの余剰があったので使用した。

■フィギュア
 戦車長はパンツァーアート製のものを使用し、ヘッドフォンの線を追加した。車長の目の前にはキット付属のオマケである出来のよいトンプソンも置いてみた。

ドラゴン 1/35スケール プラスチックキット

WW.II イギリス陸軍 シャーマンMk.III 中期生産型

製作・文/HELGA

WW.II イギリス陸軍 シャーマンMk.III 中期生産型
●発売元/ドラゴン、販売元/プラッツ●8250円、発売中●1/35、約16.7cm●プラキット

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HELGA(ヘルガ)

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