HOME記事キャラクターモデル『蒼き流星SPTレイズナー』の「ディマージュ」を三個イチで製作! 1/100でフル可動化&フォルム調整で徹底改修!【サンライズ・メカニック列伝】

『蒼き流星SPTレイズナー』の「ディマージュ」を三個イチで製作! 1/100でフル可動化&フォルム調整で徹底改修!【サンライズ・メカニック列伝】

2023.10.14

サンライズ・メカニック列伝 第57回/SPT-DM-20C ディマージュ【BANDAI SPIRITS 1/100】 月刊ホビージャパン2023年11月号(9月25日発売)

『蒼き流星SPTレイズナー』の「ディマージュ」を三個イチで製作! 1/100でフル可動化&フォルム調整で徹底改修!【サンライズ・メカニック列伝】
ディマージュ イメージカット

SPT-DM-20C ディマージュ(『蒼き流星SPTレイズナー』より)

 サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回は『蒼き流星SPTレイズナー』より、グラドス軍スーパー・パワード・トレーサー(SPT)「ディマージュ」の1/100作例をお送りしよう!
 ディマージュは宇宙戦用に開発された量産型SPT。24基の姿勢制御スラスターと高推力の専用バックパックの装備により宇宙空間での機動性が特に高く、高感度センサーを搭載し優れた索敵能力を持つことから指揮官機としても使用される。劇中ではレイズナー追撃隊隊長アーマス・ゲイルに想いを寄せる副官のエジール・カルラが搭乗したことで、特に視聴者の記憶に残る存在となっている。
 作例は田仲正樹が私物を3セット投入して製作。SMPシリーズの各機体と違和感なく並べられるものにすることを目標に、各関節をフル可動化し、フォルムを調整。1986年発売の旧キットを徹底改修した尽力の結果をご覧いただこう。

ディマージュ 正面
ディマージュ 背面

製作途中状態

素組み 正面、背面
作例 正面、背面

 1/100ディマージュは、低価格製品ゆえ仕方ないとはいえ肉抜きや省略が目立ち、関節がゆるみやすく可動範囲も狭い点はシリーズの他のキットと同様。本作例は「SMP各キットと並べても違和感が生じないものにする」ことを目標に、劇中のポーズを再現できるよう関節機構を刷新し、可動範囲を拡大。また、肩幅がやや狭い独自のフォルムを再現すべく、全身のバランスを調整している。製作途中画像から作例完成のために費やされた膨大な労力と時間を読み取り、ぜひその苦労を感じ取っていただきたい

頭部

頭部アップ
頭部パーツ

 接着面を2mm弱削って横幅を詰め、前後に1.5mm延長して細長いフォルムに変更。キャノピー開閉はオミットしている。センサー類は市販のノズルパーツとレンズパーツを組み合わせたものでクリアー化。アンテナは破損対策とシャープ化のため縫い針に交換。首関節はHGクロスボーン・ガンダム(以下CBG)のものを移植し二重ボールジョイント化。ポーズごとに位置を調整できるようにした

ポージング画像1

胴体

胴体パーツ
腰アーマー パーツ
バックパック パーツ
上半身正面
バックパック アップ

 胸部は中央ブロックを大型化し、左右ブロック前面の角度を変更。肩幅を左右で計1.5mm弱、詰めている。肩関節はライフルの両手持ちをさせるためにCBGの引き出し式ボールジョイントを移植。腹部はHGエルドラドートレスのものを加工して移植し可動化。腰部は各装甲を分割、プラ材で延長・大型化した後にCBGの腰部フレームへ取り付け、脚部の可動範囲を拡大させている。SP-20D型バックパックは田仲氏曰く「そのままだと人類ではヒケや合わせ目が消せない」ため、ブロックごとに切り離し、整形後に再接着。上部のプレートはプラ板で大型化し、下部のノズルは適当な流用パーツに交換。左右の球体側面の4連ノズルは設定画に近い形状になるよう削り込んだ

ポージング画像2

腕部

腕部アップ
腕部パーツ1
腕部パーツ2

 肩ブロックは上下左右に幅詰めしたHGザク(THE ORIGIN版)のものに交換。側面装甲は30MMアルトの小型ボールジョイントで接続した。上腕とヒジ関節は小型化したHG(UC)陸戦型ジムのものに交換。前腕は上下左右にプラ板で幅増しして大型化し、同時に形の歪みを修正した。手首関節はボールジョイント化し、市販の角型バーニアパーツで軸隠しを追加。拳はHGビルドハンズ丸型(Sサイズ)を加工したものに交換。ナックル・ショットはプラ板と市販のリベットパーツで自作し、2mm径のランナーから削り出したスパイクを植えている

ポージング画像3

脚部

太ももパーツ
スネパーツ
足パーツ
脚部アップ

 股関節と足首関節はCBGのものを移植。太モモ外装は肉抜き穴がない面を2セットぶん貼り合わせて1.5mm幅増しし、前面にエポパテを盛り付けて大型化。ヒザ関節にはHG(UC)ガンダムEz8のヒジ関節を移植。スネは接着面で1mm幅詰めし、前面のノズルは市販の小型ノズルを切り詰めたものに交換。側面の小翼はプラ板で大型化し、ふくらはぎ下のバーニア基部は適当な半球状部品に交換した。つま先は接着面を2mm弱削り、さらに側面を削り込んで小型化して設定画の形状に近付けている

武装

ハンドパーツと遠距離射撃型レーザードライフルLDR-20L 作例
製作途中のハンドパーツと遠距離射撃型レーザードライフルLDR-20L

 遠距離射撃型レーザードライフルLDR-20Lは肉抜き穴をエポパテで埋め、グリップ周辺をHG(UC)RX-78-2ガンダム(No.191)のビーム・ライフルのものに、フォアグリップを適当な板状部品にそれぞれ交換。キットのライフルは形状が設定画と大幅に異なるが、「スクラッチになってしまうので今回は完成を優先させました」とのこと

■足し算と引き算
 袖の中から武器がスライドして出てくるギミックが大好きなサンライズメカファンのみなさんは、「1/100ディマージュか…。あれもなかなか手ごわいキットなんだよな…」と思いながら、今日もカーテンレールを鋸で切って細工しているはず(それは『レイズナー』じゃないだろ)。
 可動部がゆるみやすく、ギミックやディテールの大胆な省略があり、豪快な肉抜きもある、決してモデラーに優しいとは言えない1/100『レイズナー』シリーズ。ディマージュはそれらに加えて各部の形状や全体のフォルムが設定画や劇中の作画と少々離れているため、SMP版のSPTやMFと違和感なく並べられる姿にするには相当の労力と時間が必要となります。作例は小型のHGガンプラ(主にHGクロスボーン・ガンダム)の可動部を全身に仕込むと同時に、頭部の形状を変更し、肩幅を詰め、肩、上腕、拳、腹部を流用パーツで作り直し、前腕、腰の各装甲、太モモをボリュームアップし、スネとつま先の幅を詰め、そして全身のバランスを調整。
 …全然終わりません。「これは絶対に完成しない」と確信して困り果てましたが、SNSで旧知の画家の方とやり取りをしていて「(絵を描く際に)引き算を心がける」という言葉が先方から出たことで「それだ! …そうなんだよ…」と気付きました。つまり、「キットにどれだけ手を加えるのか」だけでなく、同時に「どれだけ手を加えずに完成させるのか」とも考えるのが大切だということ。そちらのほうが楽で健康的ですしね。そこで、アンテナの折り畳み機構や確実な開閉ギミックを仕込もうとして手を入れすぎた結果、わけが分からなくなっていたバックパックはボツにして、新しく作り直し(開閉はあの機体を製作する際に再挑戦しますので気長にお待ちください)。細かすぎてきれいに入れられない一部のモールドは省略して、なんとか完成に漕ぎ着けました。引き算ってすばらしい。

■白では塗らない
 バンダイ刊「ENTERTAINMENT BIBLE.13 蒼き流星S・P・Tレイズナー大図鑑」を参考に塗装。本体の白はキット初版の成型色を意識した、グランプリホワイトに近い緑系のグレーとしています。真っ白にするとヒロイックなイメージが強調されますが、脇役ですからね。
本体色=クールホワイトに純色グリーン、スカイブルー、インディーブルー、関節のグレーを各少量
腹部等=スカイブルーに本体白、純色グリーン、純色バイオレット、ハーマンレッドを各少量
関節等=自作の赤系グレー
バックパック=自作の赤紫系グレー
 キャノピーは純色バイオレット+バックパックの色。各部のストライプはオレンジにシャインレッドとモデナイエロー1を各少量加えて微妙に濁らせた色。スミ入れ後に半光沢とツヤ消しを混ぜたクリアーで塗膜をコートし、頭部のセンサーにクリアパーツをはめ込んで終了です。
 次回は大群で登場して戦闘を繰り広げたあいつの作例が登場します。

BANDAI SPIRITS 1/100スケール プラスチックキット

SPT-DM-20C ディマージュ

製作・文/田仲正樹

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ⓒサンライズ

田仲正樹(タナカマサキ)

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