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ザクとグフで雪原ディオラマをつくる! まずはレイアウトやキットの工作テクニックを解説【週末でつくる ガンプラ凄技テクニック】

2023.08.11

週末でつくる ガンプラ凄技テクニック 懐かしのディオラマ編 月刊ホビージャパン2023年9月号(7月25日発売)

ザクとグフで雪原ディオラマをつくる! まずはレイアウトやキットの工作テクニックを解説【週末でつくる ガンプラ凄技テクニック】

 休日のゆったりとした時間に、じっくりとプラモデルを作る楽しみを体感しよう! がモットーの連載企画「ガンプラ凄技テクニック」。懐かしのディオラマ編今回のテーマは「雪原をつくる」。今回は前編ということで、まずはディオラマのレイアウトやコクピット内部の自作法、当時ものキット伝統の定番工作である「肩ハの字」について解説します。

講師/林哲平


キットとベースを選ぼう

1/144量産型ザク、1/144グフ
▲今回は「HOW TO BUILD GUNDAM」掲載の高橋昌也氏による「U.C.0079積雪ディオラマ」をモチーフに、雪原のディオラマにチャレンジします。使用キットは1/144量産型ザクと1/144グフ。グフはジオン系MSとしてはシャア専用ザクに次ぐ2番目に発売されたキットですが、ザクで一体化されていた足首が別パーツになるなど「強化新型」の名に恥じない進化を感じさせるキットです
ベース
▲ベースは今回も100円ショップの木箱を使っています。今回は雪原がミソなので、ディオラマのイメージカラーは「純白」。上下のコントラストを利かせるためにベースはMr.フィニッシングサーフェイサー1500ブラックで塗装し、さらにMr.スーパークリアー光沢を重ねがけしてニスを塗った高級ベース風の仕上がりとしています

レイアウトを考えよう

ベースにセッティングされたザクとグフ1
ベースにセッティングされたザクとグフ2

▲雪原は白一色の美しさを強調するシンプルなスタイルのディオラマですので、そのぶん、よりMSのレイアウトが重要になってきます。基の作例は「東アジアから進軍してきた地球連邦軍とシベリアのウドカン銅山を巡り戦闘が勃発、郊外で破壊されたグフを発見したが、パイロットは無事脱出したようだ…」というシチュエーションになっています。基の作例ではグフは両手両足を破壊されているので、まずはその通りにセットしてみます。しかし今回私が使った木箱ベースだとちょっと左に広いスペースが出るのが気になったので、左足は装着することに決めました

「ビルダーズパーツHD」の「MSフィギュアセット」1/144、1/100とハセガワの「アメリカ パイロット/グランド・クルーセット」のパイロットフィギュア
▲「グフのパイロットは無事脱出したようだ」となっていますが、極寒のロシア戦線で本当に無事だったのでしょうか? ここで追加要素としてパイロットフィギュアを加えてみましょう。候補として、「ビルダーズパーツHD」の「MSフィギュアセット」から1/144、1/100のものに加え、ハセガワの「アメリカ パイロット/グランド・クルーセット」のものも用意してみました
ベースにセッティングされたパイロットフィギュア1
▲まずは1/144のフィギュアをザクとグフの中心に配置します。無重力の基地や艦船内の移動用バーを掴むポーズのフィギュアですが、地面に置くと「力尽きた兵士」に早変わりするんですね。ただ、スケールとしては正確なのですが、ディオラマに置いたとき、どうしても「小さすぎる!」と感じてしまいます…
ベースにセッティングされたパイロットフィギュア2
▲次は1/72スケールのフィギュアを配置してみましょう。ガンダム以降のダグラムやダンバインなど、スケールが1/72のリアルロボットも多いので合うかな~と思ったのですが…。劇中のカットによっては人とMSがこれぐらいの比率のシーンもありますが、今回のシチュエーションの場合、このサイズだとちょっと大きすぎるようですね
ベースにセッティングされたパイロットフィギュア3
▲そこで1/100のフィギュアを配置してみると…、すごくしっくりと来ます! MSは身長を設定するとき、50メートル級が多かった当時のスーパーロボットと比べてリアリティを追求するために、いかに小さくするかと苦心したというエピソードも伝え聞きます。立体のディオラマにするとき、人はワンスケール大きいぐらいがちょうどいいのかもしれません
ベースにセッティングされたパイロットフィギュア4
▲MSフィギュアセットには女性フィギュアも付属しています。このグフのパイロットが、もし、女性だったら…? 雪原に横たわる、破壊されたグフ。脱出したものの、その前で力尽きた女性パイロット。それを発見し、立ち尽くすザク。このシチュエーションで行きましょう!
ベースにセッティングされたザクとグフとパイロットフィギュア
▲レイアウトが終わった状態。フィギュアがあると、MSの巨大感を強調したり、ストーリー性を与えたりと、よりディオラマに彩りを加えることができます。1体いるだけでもいいので、ぜひ工夫して使ってみてくださいね

コクピットを作ろう

コクピット部分の胴体パーツ
▲レイアウトが決まったらそれぞれのMSを工作していきましょう。まずはグフから。パイロットが脱出しているので、コクピットハッチを開け、内部を作っていきます。まずはBMCタガネでコクピットハッチの外側を何度もなぞり、スジ彫りをどんどん深く彫りこんでいきましょう
胴体パーツとコクピットハッチ
▲深く彫り込んで行くとタガネがそのうちプラを貫通します。そこにちょっと力をかけると、コクピットハッチが胴体から外れます。BMCタガネを使うと、曲面になっている部分など、エッチングソーで対応しにくい部分でも簡単に、形通りに切り抜くことができるのです
切り出したハッチを裏側から両面テープで仮止めした画像
▲切り出したハッチを裏側から両面テープで仮止めし、ハッチの開き具合いをチェックします。これでハッチは開きましたが、問題な中身のコクピット。ここはいろいろ工夫して作ってみることにしましょう
ミニカー裏
▲コクピットといえばシート。とはいっても、他のプラモデルから流用するのはちょっとお財布に厳しい! というわけで100円ショップに売っていた、ミニカーからいただくことにしました。それっぽいサイズのものをチョイスし、ミニカーを分解します
ミニカーのインテリア
シート部分

▲ミニカーのインテリアをニッパーで破壊し、シート部分だけを切り抜きます。おおむね100円ショップで買えるミニカーは3インチサイズ、スケール的には1/64のものが多いのですが、コクピットの奥はそれほど見えませんし、周りをカットすればシート自体を小型化させるのは簡単です

シートとディテールアップパーツ
▲さすがにシートだけだとスカスカすぎるので、手元にあるパーツでディテールアップします。今回の作例では使用しない、グフの肩関節の湾曲部分など、ペダルやヒジ掛けにピッタリに見えてきました
完成したコックピット
▲使用しなかったグフの左脚のスネ関節周りをコクピット外壁に、肩関節をペダルに見立てればコクピット完成です! 当時ものキット、かつ1/144ですので、あまり精密にしすぎても雰囲気が崩れると感じたので、程よいバランスに仕上がったと思います
水性ホビーカラーのフラットブラックで全体を筆塗りした画像
▲コクピットは組み込んでしまうと塗るのが大変なので、胴体を接着する前に、水性ホビーカラーのフラットブラックで全体を筆塗りしておきます。正面裏側の部分も塗るのを忘れないようにしておきましょう
ハッチが開いた胴体
▲胴体を接着したコクピット完成状態。ハッチが開き、内部もバッチリ再現することができました。作業中は内側にマスキングテープを詰め込んでおき、ヤスリの削りカスや他の塗料が入らないようにしておきましょう

損傷箇所を作ろう

荒切り用ニッパーで破損部を切り取っている画像1
▲手足の破損された箇所を作っていきましょう。まずは左上腕から。荒切り用ニッパーで破損部を切り取っていきます。一気に破壊しようとすると合わせ目ごと「バキッ!」と割れてしまうことも多いので、破壊部は大きくても、ちょっとずつ慎重に切り取っていきましょう
荒切り用ニッパーで破損部を切り取っている画像2
破損部を再現したパーツ1

▲破壊された部分から覗く内部メカ。これは特に別のキットから内部フレームを持ってこなくても、キットの使わなかった部分を切り取り、それっぽく詰め込むことで簡単に再現できます。この上腕破損部にはグフのスネフレア、ザクの肩関節のでっぱり部分を使っています。1/144の当時ものキットであれば、これぐらいの解像度のほうがむしろちょうどよかったりするのです

破損部を再現したパーツ2
▲太モモも上腕同様に仕上げます。装甲のフチはデザインナイフでちょっと薄めに削って整えておくと、玩具っぽさを軽減することができます。緑色の部分は使用しなかったザク・マシンガンの銃身で、脚部フレームに見立てて詰め込みました
位置をずらしてから再接着した指
▲悩んだのですが、バランスを考えグフの左腕は装着することにしました。左手はそのままだとさすがに見映えが悪いので、銃口を1.5mmピンバイスで開口してからそれぞれエッチングソーで切り離し、位置をずらしてから再接着。親指は小さすぎたため、たまたま手元にあったランナーで大きく作り直しています

ザクの肩をハの字にする

ノギスを当ててアタリを付けている画像
▲当時ものザクには欠かせない、ガンプラ伝統の定番工作である「肩ハの字」。基の作例のザクも肩はハの字に工作されているので、チャレンジしてみましょう。まずはカットする部分にノギスを当てて、スライドさせてキズをつけます。ノギスを使えば、両肩に左右対称にアタリをつけることができます
アタリに沿ってガンダムマーカーで色付けしている画像
▲アタリに沿って、ガンダムマーカーなどでハの字に削る部分を描き込みます。削る部分に色をつけておくと作業後のイメージをつかみやすいので、これだけで削りすぎなどのミスを大きく減らすことができるのです
描き込んだ部分に沿ってニッパーで切り取っている画像
▲描き込んだ部分に沿って、ニッパーでおおまかに切り取り、デザインナイフで整えます。ノコギリで一気に切るよりも、こちらのほうが私は形を合わせやすいですね
180番紙ヤスリで整えている画像
▲切断面をプラ板で当て木をした180番紙ヤスリで整え、しっかりと平面を出しておきます。ここがガタガタだとプラ板を接着したとき、隙間が出来るので、埋めるのがすごく面倒になってしまいます
プラ板を接着している画像
▲プラ板を接着し、はみ出した部分をカット、デザインナイフや紙ヤスリで表面を整えます。このあたりは普通に当時ものキットを作る作業とほとんど変わらないので、「プラ板工作なんて難しそう!」ではなく「たまたまはみ出す部分の多い部品をくっつける」くらいに思っておくと楽です
ランナーを軸として穴に差し込んでいる画像
▲キットの肩の軸は使えなくなりますが、固定ポーズなので肩はこのように3mm穴を開け、ランナーを軸として差し込んで固定します。軸穴の位置は自分の求めるポーズによって調整してください。固定ポーズであれば、左右の軸穴の位置が違っていても完成後はまったくわからないものです
肩をハの字にした状態
▲肩をハの字にした状態。肩幅が狭まったことによりゴツい印象が緩和されました。サイドラインが斜めになったことでより自然なラインとなり、腕を装着することで力強いイカリ肩にもなります。また、武器を両手持ちするときも手がそれぞれのグリップに届きやすくなり、自然なポージングをつけやすくなります

武器を改造してみよう

火炎放射器 タミヤのドイツ機関銃手
▲基の作例のザクはジャンクパーツから製作された火炎放射器を装備しており、銃身の長い「ナガモノ」ならではの魅力があります。ここはぜひとも再現したい部分。ジオン軍と言えばドイツ軍! ということで近藤版MSなどいろんなMSが持っている、MG42のパーツを組み込んでナガモノ化してみましょう。今回はタミヤのドイツ機関銃手よりチョイスしています
各パーツを切り離し並べた画像
▲ザクに持たせるため、各パーツを切り離し、ザク・マシンガンの機関部にMG42のストックと銃身を移植します
デザインナイフでパーツを削っている画像
▲MG42のパーツはそのままだとハイディテールすぎて、ザクにくっつけただけだと浮いてしまいます。ここはあえてディテールを削り取り、キットに合うように調整しましょう
ノミで長方形の排莢部を彫り込んでいる画像
▲MG42は右にドラムマガジンが装着され、銃弾の発車後、左側から排莢されます。ザク・マシンガン機関部は真っ平らですので、ノミで長方形の排莢部を彫り込みます。この部分はディテールアップですね
隙間をエポパテで埋めている画像
▲基の作例のザクは火炎放射器の砲身を左腕で掴んで両手持ちしているので、それに合わせてみました。まず砲身が入るように、ハンド内側を大きくくりぬいてから、隙間をエポパテで埋め、整形して整えます。ハンドの位置は一度ザクに両手持ちさせておき、微調整しながらしっかりと決めてください
完成したナガモノ1
完成したナガモノ2

▲完成しました。ターゲットサイトはザク・マシンガンの銃身先端とスコープを組み合わせて加工したもの。ドラムマガジンはMG42のマガジンのディテールを落として使うつもりが、うっかりなくしてしまったのでエポパテで同じ形のものを自作して使っています。当時の雰囲気を重視して改造するときは、解像度を上げすぎず、キットに合わせる、いわばアップもダウンも同時に行う「ディテールコントロール」を意識してみてください

ベースの下地を作ろう

カットしたスタイロフォームをベースに接着した画像
▲ザクとグフの工作がひと通り終わったらベースの基本を作っていきます。基作例では雪原には起伏があり、グフはそこに背中をもたれさせて上半身を起こした状態で倒れています。ここはスタイロフォームをカットして小さな崖を作り、ベースに木工用ボンドで接着します
ベースに空けた穴に、グフ本体に取り付けた金属線を差し込んで設置している画像
▲ベースにMSを固定するための穴を開けていきます。立っているザクはもちろん、雪で結構埋まるとはいえ、グフ本体も穴をあけて金属線を差し込んで設置します。固定が甘いと、ディオラマからガンプラが落ちる悲劇が何度か起きます
凹んでいる部分に紙粘土を敷き詰めている画像
▲ベースの凹んでいる部分に100円ショップで購入した軽量タイプの紙粘土を敷き詰めていきます。雪を降らせれば多少の凹凸はまったくわからなくなるので、表面はアバウトで全然OKです。もちろん、先に木工用ボンドを塗って剥がれないようにしておくのを忘れないようにしてくださいね
ザクとグフをベースに配置した画像
▲紙粘土が柔らかいうちにザクとグフをベースに配置し、ある程度押しつけて跡をつけ、位置を決めておきます。ザクの右足は軽くかかとを浮かし、動きを演出しています。また、あまりにも左奥に配置すると雪を降らせたあとに足跡をつけることができないので、程よく前に配置しておきます
グフの工作が終わった状態
グフの各パーツ

▲グフの工作が終わった状態。キットの股間軸は使わず、脚部は地面に接地します。こうすることで、脚部を大きく開いた状態で倒れさせることができるのです。肩は開き気味にして脱力させ、空いた隙間はエポパテを詰めて関節を繋げています。首は基作例ではディオラマの外側を向いているのですが、今回はベースの中心に設置するフィギュアを強調するため、首は女性兵士が倒れている中心部に視線を向けています

グフの腕パーツ
▲グフの腕はわざと隙間を空けて接着しています。こうすることで撃破され、全身が弛緩して脱力している印象を与えることができます
ザクの工作が終わった状態
ザクの各パーツ

▲ザクの工作が終わった状態。肩をハの字に加工した以外のポーズ固定方法は月刊ホビージャパン2023年6月号掲載のザクと基本的に同じ。固定された足首は切り離し、エポパテで再接着することで接地性を高めています。静謐なイメージの雪原ディオラマですので、派手なポージングは控えています

ザクの頭部
▲ベース中心のフィギュアを強調するため、首の下側にプラ板を貼り、ザクの首が下を向くように加工しています。ザク、グフ双方の視線が向く方向にフィギュアを配置することで、ディオラマを見る人の視点もコントロールすることができるのです
ザクとグフ、フィギュアをベースに配置した塗装前の状態
▲ザクとグフ、フィギュアをベースに配置した塗装前の状態。ここで入念に位置をチェックしてから、各MSの塗装に移ります。この状態になるとついつい「自分、頑張った!」と長時間眺めて作業がストップしてしまいがちなので、チェックが終わったら心を鬼にして台座から外しましょう(笑)

今回はここまで!

 今回では大まかの構成まで決めました。次回の後編では白をベースとした冬季迷彩や、樹木の製作、そしてミソである「雪」を降らせる解説となります。ぜひ、楽しみにしておいてくださいね。「懐かしのディオラマ編」を引き続きよろしくお願いします!

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© 創通・サンライズ

林哲平

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