ARTPLAの四天王像シリーズをディオラマ化!山田卓司氏が創造した厳かな空間をご覧あれ
2023.04.03『仏師』【海洋堂】 月刊ホビージャパン2023年5月号(3月25日発売)
仏像模型で創る 幽玄の間
海洋堂のプラスチックモデルキット「ARTPLA」ブランドから立体化された四天王像シリーズ。仏像という珍しいモチーフであることはもちろん、いにしえの木像が備える迫力と威厳を手のひらサイズに精密縮小しているので、そのまま組み立てて飾ってもよし、丁寧に塗り上げてもよしなイチオシキットなのだ。そんな霊験あらたかな模型のディオラマ化に挑んだのは、月刊ホビージャパンお馴染みのレジェンドモデラー・山田卓司。工房のひと間をスクラッチし、屋内で黙々と仏像を作り続ける3人の仏師と、それを見下ろす四天王たちという厳かな空間を創造した。
持国天
増長天
広目天
多聞天
2022年の静岡ホビーショーで発表された時からずっと気になっていた、ARTPLAの四天王像です。仏像は優れた彫刻作品として子供時代から好きで、お寺に参詣した時などよく眺めていたので、この海洋堂の四天王立像は私にとって待望のキット化なのです。
公式には発表されておりませんが、モデルになったのはおそらく奈良・興福寺の四天王立像と思われ、これは運慶作ではないかと言われております。キット説明書では現存のそれに準じた塗装例が紹介されているのですが、この塗装説明が分かりやすく、要領を得ていて的確。インターネットで調べた実物の四天王立像を観察して自分なりに塗色を追加したものの、ほぼ説明書通りに塗装しました。
現在の姿ということでどこかの展覧会風景にしようかとも考えたのですが、ありがちだし情景として面白いものになるかイマイチ不安。そこで思い付いたのは「仏師」たち。
仏師のところに、この四天王立像を一時的に避難、或いは修復で預かっているなかで仏師たちが新たな仏像を造立している風景が良いのでは? と思い立ちました。
木彫の仏像の経年変化がどのようなものなのかはよく分からないのですが、造立されて約800年。間を取って400年ぐらい前の室町末期〜江戸時代初期ぐらいと設定して、そんな時代の仏師たちの様子を調べてみると「職人歌合」という職人たちの姿を描いた絵巻があるとのこと。今回はその中の『建保職人歌合(東北院職人歌合)』という鎌倉時代後期に成立した絵巻の、江戸時代の写本を資料としました。さて、仏師の姿はわかっても、どのような場所で作業していたのかは不明。この時代の仏師は基本的に僧籍を持つ職人たちですから工房も他の職種の職人のような掘っ建て小屋ではなく、お寺みたいな書院造りの立派な建物なのではないかと考えました。今回はよく見かけるお寺をイメージして板敷、障子、格天井(ごうてんじょう)を製作。四天王立像は大切な仏像ですから、仮の安置所として簡単な須弥壇の上に立たせることにしました。
工房は発泡材で基本形を作り、木製の角材や板材を接着して作っています。引き戸も木製。仏師たちはすべてエポパテで自作しています。
海洋堂 ノンスケール プラスチックキット“ARTPLA” 持国天、多聞天、増長天、広目天 使用
『仏師』
ディオラマ製作・文/山田卓司
ARTPLA 四天王像 持国天、多聞天、増長天、広目天
●発売元/海洋堂●5060円(持、多)、5390円(増、広)、発売中●約16cm●プラキット
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