HOME記事キャラクターモデルウェーブ最新キット「ブルーAT」こと『装甲騎兵ボトムズ』の「スナッピングタートル」を、泥汚れなどのウェザリング塗装で“ジャングルで戦うAT”を表現

ウェーブ最新キット「ブルーAT」こと『装甲騎兵ボトムズ』の「スナッピングタートル」を、泥汚れなどのウェザリング塗装で“ジャングルで戦うAT”を表現

2023.02.20

スナッピングタートル[ST版]【ウェーブ 1/35】 月刊ホビージャパン2023年3月号(1月25日発売)

ウェーブの新作キット「ブルーAT」を本格ウェザリング塗装で楽しむ

 TVアニメ『装甲騎兵ボトムズ』のクメン編で活躍したスナッピングタートル。外観は通常のスタンディングタートルと同一ながら、パーフェクトソルジャー・イプシロン用に施されたチューニングにより驚異的な性能を発揮。敵対する傭兵たちからは「ブルーAT」と呼ばれ恐れられていた機体だ。ウェーブの1/35スケールキットは先行するスタンディングトータスMk.IIのバリエーションとなり、湿地帯の戦闘に対応した脚部装備「スワンピークラッグ」などを新たに追加している。作例はウェザリング塗装を得意とする斉藤仁孝が、密林で戦う機体の汚し塗装に挑戦。その手順も解説してもらった。

▲キットの頭部レンズ部はタミヤ 1/35 M4A3E8シャーマン イージーエイトの透明なライトパーツを塗装してはめ込み。胴体側面の窓はMr.クリアカラーGX GXクリアブラックを筆塗りした
▲渡河作戦や湿地移動の際、足底に装着するスワンピークラッグ。タミヤカラー フラットアルミのドライブラシで地面を歩いた際の塗装の剥がれを、Mr.ウェザリングペースト マッドイエローでこびりついた泥を表現している

▲ヘビー級ATらしい極太の太モモパーツ。あちこち干渉しそうで一見するとあまり動かせなさそうに見えるが、股関節軸の引き出し&スライド機構により、脚を広げて腰を落とした射撃姿勢も楽々取らせることができる
▲肩の引き出し関節と手首関節の差し替えの効果で、ハンドロケットランチャーの両手持ちが可能。アンテナも頭部レンズと同様、タミヤ1/35イージーエイトのものがちょうどいいサイズだったので置き換えた
▲下地塗装やサビ色が浮き出ている部分はすべて筆で描き込み。筆塗りなら塗装がサビや腐食でボコボコになったようなテクスチャも楽に表現できる
▲下半身は上半身よりも強めにウェザリング。関節付近などにはタミヤアクリルのフラットブラウン+NATOブラックで塗装の剥がれ表現を描き込んだ。またハンドパーツ側面やスワンピークラッグのアーム付け根など、表面処理の邪魔になる部分のリベットはていねいに削り落とし、整形後に市販ディテールパーツを接着した
▲スワンピークラッグの支持アームはボールジョイントによりブーツの可動にしっかり追従。アームは本体色の青ではなくメタルカラー アイアンで塗装。消耗が激しく塗装も剥がれやすい部分のため、金属地肌がむき出しのままになっているという解釈だ

“ジャングルで戦うAT”をウェザリングで表現しよう!/斉藤仁孝

▲ラッカー塗料で本体の青とグレーの基本塗装を終えたところからスタート。まずは青味の色合いを調整するフィルタリング工程。Mr.ウェザリングカラー シェードブルーを筆塗りします。均一に塗るのではなく、わざとムラになるように塗ります

▲シェードブルーがうまく乗らない、しっかり青くしたい部分はMr.カラー フタロシアニンブルーをエアブラシ塗装。やはりムラを残して吹いています。塗料が乾いたら、後のウェザリングに備えてツヤ消しクリアーを吹いて表面を保護
▲クリアーが乾いたらチッピング(傷)作業。タミヤアクリル フラットブラウンとNATOブラックを混ぜて作った焦げ茶色をちぎったスポンジに取り、エッジの部分や傷が付きそうな場所にスタンプして塗料を乗せます
▲スポンジでのスタンプは筆よりも簡単にチッピング表現ができますが、塗る部分のコントロールが少し難しい場面も。塗料を付けすぎたなと感じた部分はアクリル薄め液を含ませた綿棒を使って拭き取ります
▲スワンピークラッグは重量軽減のため軽合金製という解釈で、アルミ材風チッピング。タミヤアクリル フラットアルミを使い古しの筆につけたらティッシュなどでカサカサになるまで塗料を拭き取り、その筆を擦りつけてドライブラシします
▲肩アーマーは青い塗膜が剥がれて、一般機用のグリーンの色が出てきてしまった(共食い整備していた)という遊びを入れています。模型的なアクセントです。チッピングの塗料はタミヤアクリル NATOグリーンを使いました
▲Mr.ウェザリングカラー グランドブラウンでスミ入れ。筆で塗って数分置いたら、余分な滲みをMr.ウェザリングカラー専用薄め液を含ませた綿棒で拭き取り。重力の方向に従い、綿棒を縦に動かすように拭き取るとらしくなります

▲スミ入れに続いてサビ垂れも再現。Mr.ウェザリングカラー ラストオレンジを使いサビを含んだ水が溜まりそうな部分を想像しながら塗っていきます。余分な滲みはグランドブラウンでのスミ入れと同様の方法で拭き取ります

▲土埃の汚れを再現します。まずMr.ウェザリングカラー グレイッシュブラウンを筆にとって塗っていきます。川やぬかるみにも入る機体ですから、脚部は特に激しく汚れて見えるようにしっかり塗料を乗せます

▲ピグメントで埃を再現。アモバイミグヒメネスのA.MIG-3013Rubble(瓦礫色)を、溶剤は使わず粉のまままぶしました。機体各部の水平面を中心にまぶします。同時にA.MIG-3008Track Rust(履帯錆色)も使い、色合いに変化をつけます
▲こびりついた泥の表現です。使用した塗料は立体的な表現ができるMr.ウェザリングペーストのマッドイエロー。面相筆に少量ずつ取って、泥が溜まりそうなところを中心に盛り付けるように塗りつけます
▲金属の質感を高めます。エッジ部分のチッピングを施した箇所に鉛筆を擦りつけて鈍く輝かせます。曲面部は鉛筆の芯を削って粉末にしてから、綿棒に取って擦るとよいでしょう。またHB〜2Bと変えることで輝き具合を変えることもできます

■はじめに
『ボトムズ』模型を精力的に展開するウェーブから、1/35のスナッピングタートルが登場しました。最新キットだけあって作りやすく、説明書の手順に従って組み立てれば文句なしにカッコいいプロポーションのスナッピングタートルを手にすることができます。

■製作
 出来の良いキットなので加工の必要性はあまり感じなかったのですが、好みでちょっとだけ他キットからディテールアップに使えそうなパーツを流用しました。背部のアンテナはタミヤの1/35M4A3E8シャーマン イージーエイトのもの。頭部レンズも同イージーエイトのライトが透明パーツでしたのでそのまま使用しています。
 1/35のボトムズキットに似合うディテールパーツやアクセサリーを求める場合、同スケールのミリタリー模型がフィットしやすいと思います。たとえばバケツや布、木製の箱や工具などのパーツが1/35AFVキット界隈には豊富に存在するので、それらをATに組み合わせてみるのも一興ですね。

■塗装
 本体色のグレーはMr.カラー 灰色9号、青い部分はMr.カラーのライトブルーでそれぞれ基本塗装を施してから、ウェザリングカラーなどでフィルタリングしています。
 舞台はクメン、ジャングルなので、泥汚れなどのウェザリングを施してリアリティを高めた仕上がりを目指します。ATは中型のパワーシャベルと同じくらいの約4mの大きさですから、ウェザリング塗装との相性は抜群なのですが、今回はイプシロン専用機ですし、いっそきれいめ仕上げで…とあれこれ悩みました。しかし、機体は劇中で何回か出撃して大立ち回りを演じています。いくら専用機といえど泥濘の中を戦えばそれだけ汚れるだろうという想定のもと、劇中のイメージよりも強めにウェザリング。パイロットが超人なのでバトルダメージは入れずに、汚しのみに注力しているのが個人的こだわりポイントです。
 学生の頃に観ていたタイトルがいまだに人気があり、新しいキットが発売され続けている環境というものは本当にありがたく、嬉しいことだと思います。今でもモデラーを続けていてよかったなぁ…と、ひとり感じ入りながらの製作になりました。

ウェーブ 1/35スケール プラスチックキット

スナッピングタートル[ST版]

製作・文/斉藤仁孝

スナッピングタートル[ST版]
●発売元/ウェーブ●5280円、発売中●1/35、約13cm●プラキット

©サンライズ

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斉藤仁孝(さいとうよしたか)

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