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ドイツ軍のカッコいい王道戦車「パンター中戦車」とは?【いまさら聞けないすごいヤツ】

2023.02.20

ドイツ陸軍パンター中戦車●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2023年3月号(1月25日発売)

ドイツ軍のカッコいい王道戦車「パンター中戦車」とは?【いまさら聞けないすごいヤツ】

 ドイツ陸軍 
 パンター中戦車 

イラスト/大森記詩

「名前は知ってるけどどんなものなんだろう?」「今さら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
 今回は第二次世界大戦のドイツ軍においてティーガーI重戦車同様連合軍を苦しめた「パンター中戦車」をご紹介します。ティーガーIの知名度には劣ってしまいますが、こちらもとっても強くてメジャーな戦車。記事を読んで、ぜひプラモを作ってくださいね。


 パンターD型

全長/8.86m 
車体長/6.88m 
全幅/3.43m 
全高/2.95m 
全備重量/43.0t 
乗員/5名

エンジン/マイバッハHL210P30 4ストロークV型12気筒液冷ガソリン 
最大速度/55km/h 
航続距離/169km 
武装/70口径7.5cm戦車砲KwK42×1 7.92mm機関銃MG34×1 装甲厚/16~100mm


パンターD型イラスト正面
パンターD型イラスト背面
パンターD型イラスト側面

個々の優秀性に賭ける発想は敗者の王道か……。
ドイツ陸軍 パンター中戦車

解説/宮永忠将

パンターD型イラスト冬季迷彩
▲東部戦線(ソ連とドイツ軍の戦い)における冬季迷彩を施した姿

 ドイツ軍の挫折 

 戦車らしい形を想像した時に、パンターほど絵になる戦車も珍しい。いや、そんなこねくり回した言い方をしなくても、とにかくパンターは「カッコイイ」のだ。ところが、第二次大戦の後半からドイツ軍で投入されたこのパンター戦車は、実はドイツ軍の挫折の中から誕生したのだから、なおさら驚きだ。
 1941年6月22日、ドイツ軍は大挙してソ連へとなだれ込んだ。バルバロッサ作戦の名で知られるこの軍事侵攻、大局的にはドイツ軍の圧倒的優勢なのだけど、最前線ではソ連軍の新型中戦車T-34に遭遇して、自慢の戦車部隊が立ち往生という奇妙な出来事が頻発していた。威力抜群の戦車砲と、分厚くて、適切な傾斜が加えられた装甲配置、そしてこの戦車をグイグイ動かす強力なディーゼルエンジンに、軟弱な地面をモノともしない幅広な履帯。ロシアという戦場に特化して開発されたT-34を前に、ドイツ軍戦車は大苦戦を強いられた。このトラウマから生み出されたのがパンター戦車なのだ。

 T-34というライバルの存在 

 独ソ戦を開始したドイツ軍ではⅢ号とⅣ号戦車の二種類が主力であり、当時はこの二車種の長所を組み合わせた新型戦車を、V号戦車として開発中だったのだけど、とにかくT-34を撃破できる戦車が必要だ。そこで急遽、この計画を見直して、T-34の特徴、特に傾斜装甲の概念を採り入れた(パクった……)戦車を開発することが決まった。これがパンター戦車開発のスタートとなる。
 Ⅲ号やⅣ号を見れば分かるとおり、もともとドイツ戦車は直線的でゴツゴツした無骨なデザインであった。実際、当時最新のティーガー重戦車も、基本的にはⅢ号戦車をモリモリマッチョにしたら――そんな姿をしている。だから、パンターにT-34のデザインを採用するのは、ドイツ戦車設計業界の敗北とも言えるのだ。しかも、戦争後半のドイツ新型戦車開発のほとんどが、このパンターのデザインから派生するのだから。

 ほろ苦いデビューから完成まで 

 そんなパンター戦車だけど、デビュー戦は大失敗であった。独裁者ヒトラーの圧力で、1943年夏のクルスクの戦いに無理矢理間に合わせた結果、試作車同然の状態で実戦投入され、故障でほとんどが失われてしまったのだ。でも、技術者の必死の努力で1944年中には完成形と言えるパンターG型(砲用防楯の下半分にアゴが付いたバージョン)が完成している。
 パンターは走攻守が高いレベルでまとまっていて、量産型とするには豪華すぎる戦車であった。だから連合軍の量産型とはスペック比較では圧勝だ。なのに活躍している印象が少ないのは、パンターが投入された頃は、戦車同士の「質」ではなく、航空支援や砲兵などの「量」の要素で連合軍がドイツ軍を圧倒していたからだ。多少の性能の差は、物量で揉み潰されてしまったというわけ。
 むう、劣勢の戦況を挽回するために、個々の優秀性に賭けるっていう発想は、あの宇宙戦争のゲルググを見るが如き敗者の王道なのかもしれない。ただ、勝敗の本質は兵器の性能以前のところで決まっていたのだ。「戦いは数」なんだよね、どうしても。


文字

手軽にかっこいいパンターが作れる傑作キット

 手のひらサイズで組みやすさを重視した1/48スケールながらも、濃密なディテールも楽しめる「タミヤ 1/48 ミリタリーミニチュア」シリーズ。こちらにラインナップされている「1/48 ドイツ戦車 パンサーD型」は、初めてパンター中戦車を組んでみたいという人にオススメです。コンパクトなパーツ数、一体成型されたパーツによる組みやすさは週末にサクッと楽しむのにもちょうど良いです。

タミヤパンサーD型
タミヤパンサーDランナー
▲小さなパーツがほとんどないので、サクサク組み立てることができます
タミヤパンサーDランナー戦車兵
▲超精巧な戦車兵も1体付属します
タミヤパンサーDランナー覆帯
▲履帯はプラ製の部分分割履帯。履帯の重さによる弛みも成型段階で表現されています。
タミヤパンサーDランナー車外装備品
▲車外装備品もラックと一緒に成型されているので組み立てが簡単です
タミヤパンサーD型パッケージ

1/48 ドイツ戦車 パンサーD型

●発売元/タミヤ●2530円、発売中●1/48、約18.6cm●プラキット

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