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「PLAMAX スコープドッグ 炎のさだめ/いつもあなたが」を筆塗りでメリハリたっぷりに仕上げる!

2022.10.21

筆塗りtribe 月刊ホビージャパン2022年11月号(9月24日発売)

「PLAMAX スコープドッグ  炎のさだめ/いつもあなたが」を筆塗りでメリハリたっぷりに仕上げる!

手のひらサイズのヴィネットで楽しむ筆塗り時間

 プラモを筆塗りでガンガン楽しんでいるナイスなパイセンたちの作品とテクニックをみんなで読んで、テンションアゲアゲでどんどん筆塗りを楽しんで行こうという連載「筆塗りTRIBE」。今回は筆塗りで楽しむのにぴったりのプラモで、2022年11月に発売予定の新商品「PLAMAX MF-60 minimum factory スコープドッグ 炎のさだめ/いつもあなたが」をお届けします。
 このプラモは『装甲騎兵ボトムズ』のオープニング、エンディングでも印象的なイラストをヴィネットにした固定モデルで、商品も2体入り。成型色も特徴的であなたのイマジネーション次第でさまざまな楽しみ方ができます。今回のファーストレビューでは、アニメイラストのグリーンの姿で塗り上げながら、それぞれのシーンの魅力を膨らませるために色味だけでなく影やツヤ表現も筆で塗り込んで行きますよ!!(構成・文/フミテシ)

今回のパイセン

國谷忠伸/フィギュア塗装のスペシャリストですがキャラクターメカ、AFVの工作&塗装もピカイチ。ホビージャパンMOOK「スーパーカブに乗ろう」(発売中)では、ご自身のカブに乗って体を張ってくれてます!! こちらのパイセンの姿もチェックしてくれよな!!


ユニークなパーツ分割&少ないパーツ数で楽しく組み上がる新感覚メカヴィネットプラモ!

 固定モデルだからこそできるポージングを、手のひらサイズのヴィネットとしてキット化していくPLAMAXの新シリーズ。スコープドッグに先駆けて発売されていた「PLAMAX 朽ちダグラム」の商品コンセプトをさらに煮詰めたものとなっています。
 ランナーを見ていくと腕や脚が一体になっていたり、地面から脚が繋がっていたりとパーツ分割はとてもユニーク。さらに成型色はアニメイラストの背景の色を拾った、これまでのボトムズプラモには無い色をチョイス。そのまま作って楽しんでも良いし、この色を活かして塗っても良しと、プラモらしく手を動かして遊びたくなるキット内容になっています。

2体セット! 成型色もキャッチーだね

▲立ちポーズの「炎のさだめ」と座っている「いつものあなたが」がワンボックスに入っています。成型色はそれぞれのアニメシーンの背景色からインスパイアされたもので、設定色に囚われていない、自分で作って楽しむプラモという商品だからこその表現となっています

一体パーツの面白さ

▲可動箇所に縛られることがないのと、キットは接着剤を使用して組み立てるので、スナップフィットキットのように内部のピン配置にも制約がほとんど生まれないので、ユニークなパーツ分割が可能です。そのため大きな塊でパーツを分割することができ、今までに見たことない「スコープドッグの開き」を味わえます

組むだけでそこは「アストラギウス銀河」

▲両アイテムとも、岩や鉄骨、スコープドッグの頭など非常に情報量の多い地面になるように設計されています。ヴィネットを作るためにさまざまなマテリアルを使う必要はありません。組むだけで僕たちはアストラギウス銀河へと行けるのです

 

▲模型は地面があると一気に見映えが良くなります。このシリーズは地面やエフェクトパーツを介して、それぞれのモチーフの世界観を作りだすことができるのが特徴です
▲「炎のさだめ」のほうは逆光で光が当たっている部分を成型色のままにして、影部分をグリーンに。「いつもあなたが」は街の光が模型に差している雰囲気を黄色でドライブラシして表現しました。あなたの好きな塗り方で楽しんでね! (製作/フミテシ)

使用する筆&塗料と塗装準備

▲極細面相筆、面相筆、平筆、その他にドライブラシなどをするための使い古した平筆を準備。使い古した平筆は使いやすい毛の長さにカットしてカスタマイズしています
▲全体の基本塗装はラッカー塗料を使っていきます。下地の透け感を活かした塗装のコントロールがしやすいためです
▲エナメル塗料は主にスミ入れで使用。クリアーがあると筆塗りでもピンポイントでツヤを変えることができます
▲ラッカー塗料を溶かすことなく重ね塗りできるアクリル塗料。細部塗装をするのに便利。グラデーション塗装でメリハリを出したい時も、ラッカーの下地を溶かすことがないのでメリハリある仕上がりにできます
▲座っている「いつもあなたが」は夜の街をイメージしたイラストなので、黒に近いグレーをスプレー。「炎のさだめ」は燃えるようなオレンジの光を浴びているので、ブラウン系をスプレーしています

メリハリある影色を描き、ミニチュア的手法で塗り上げる

「炎のさだめ」は下地のブラウンの他に、最初に影になる部分に紫を塗って暗い部分と明るい部分のメリハリを強調して塗り上げます。光が当たる部分も明るめに塗ります。こうすることで約7cmの模型も存在感ある仕上がりになります。ウォーハンマーなどのミニチュアでも塗られている技法をラッカー塗料やタミヤアクリルで実践します。

▲キットは、『装甲騎兵ボトムズ』のオープニングテーマ「炎のさだめ」のイラストをベースに造形されています
▲ラッカー塗料の紫を、頭部の影になる場所に塗っていきます。塗料の濃度はシャバシャバにし過ぎるとメリハリが出なくなります
▲右腕は接着しないでおくと塗りやすいです。腕で影になる部分もしっかりと紫を塗ります
▲下半身は上半身よりも暗くなるので、紫をしっかりと塗っています。前に突き出した左足の内側に注目してみてください
▲次に濃い緑を塗ります。オリーブドラブやロシアングリーンであればスコープドッグに見えますので、お好みで色は選択していいです。影色に塗った紫を完全に隠蔽しないように気を付けて色を塗っていきます
▲一度塗りが終わった状態。下地のブラウンと影色の紫が透けて色の情報量が多くなっています
▲地面は影色をしっかり塗ります。地面を暗めにしておくと、上に乗っている主役のスコープドッグがしっかりと際立ちます
▲ラッカー塗料のグレーで地面を塗装。ブラウンや影色が透けるくらいが色の情報量も多くなってカッコイイです。完全に隠蔽する必要はありません
▲明るい緑を塗ります。グリーンに白を混ぜて調色したものを使用しています
▲バイザーのグレーをRLMグレーで塗装。おおよその色分けが終わりました。各部2〜3回色を重ねています。濃い塗料で重ねるとベタベタになるので、1度塗りで下地が透けるくらいの濃度で。乾いたら塗り重ねるという工程を繰り返しましょう
▲メリハリあるグラデーション塗装に便利なのが「アクリル塗料」。ラッカー塗料を溶かすこともないですし、アクリル塗料自体も乾くと、アクリル塗料を上塗りしても溶け出すことはありません
▲ラッカー塗料で塗った緑よりも、明るめの緑を塗ります。濃度は薄めで塗ります
▲各パーツの頂点や縁、リベットなども明るい緑で塗ります
▲最後に全体のグリーンを整えるため、基本の緑を塗ったラッカーのグリーンでグラデーションの塩梅を整えます。アクリル塗料で塗った部分も、やさしいタッチで塗ってあげれば、ラッカー塗料を上塗りしてもそれほど問題ないです
▲最後にタミヤスミ入れ塗料の「ダークブラウン」で地面にスミ入れ。足なども一緒にダークブランを塗っておくと地面といい感じにマッチして一体感が出ます

雨の流れを意識した筆のタッチで塗り上げる!

 エアブラシ塗装と筆塗りの大きな違いは筆の筆跡「タッチ」でさまざまな表現ができることです。「いつもあなたが」は雨降る情景が印象的。雨が機体を流れていく雰囲気を筆のタッチで表現して塗り上げます。

▲こちらが「いつもあなたが」のイラスト。夜の街に雨……良い景色です
▲全体を黒にしているので、このまま塗っていきます。夜の街を意識して暗めの緑を塗っていきます
▲胸部ハッチの裏は、イラストを参考にグレーで塗装
▲明るい緑の部分は、夜を意識したブルーグレーで塗ります。最初に塗る時から、筆のタッチ方向を、雨が機体から流れ落ちる方向にしておきます
▲ヒザや肩のてっぺんなどは明るいグリーンを塗り重ねて、明暗差をクッキリさせます
▲スネのパーツのアップ。雨が流れているイメージを出すために、左方向に筆のタッチが流れているのが分かります
▲ブルーグレーのパーツも筆のタッチで雨の流れをイメージ。この後、全身に雨の流れを意識したタッチで色を重ねていきます
▲非常に小さなフィアナの顔。しかし人間の顔とは小さくてもとっても目立つ上に、見る人の視線が集まる場所。しっかり塗り上げてみます

▲①頭部は白のサーフェイサーを吹いた後に、ディテールを見やすくするために下塗りとしてタミヤアクリルのフラットフレッシュで全体をサッと塗ります
②ファレホのフレッシュウォッシュで顔の側面と目のまわりに陰色を塗ります。精密に塗る必要はないです
③ファレホのカドミウムスキンで顔の形を決めるように塗ります
④ファレホのペールフレッシュでTゾーンと瞼、アゴ顎先にハイライトを塗ります。瞼の下のラインがまつ毛になるので、ここは丁寧に形を出しておきましょう

▲タミヤアクリルのレッドブラウン+フラットブラックで髪を塗ります。エナメルで塗っておけば、肌色との境目にはみ出しても、エナメル溶剤で簡単に拭き取ることができます
▲エナメル塗料で眉とまつ毛、唇を描く。塗料を薄めすぎないのがコツ。細い線を描くのが難しい場合は唇だけでも良いと思います
▲酸の雨の表現としてMr.ウェザリングカラーのレイヤーバイオレットで雨だれ塗装(ストレーキング)を加えてみました。AT全体に塗ります
▲雨に濡れた感じを強調するのに、肩やヒザにクリアーをドライブラシして光沢を加えてみました

無我夢中で塗った……未完成病にもなった……でも素敵な模型仲間との出会いで今がある!

──國谷さんと言えばフィギュア塗装というイメージが強いのですが、実際キャラクターモデルも大好きなんですよね?
國谷(以下國):プラモは本当にさまざまなジャンルが大好きです。またアニメも好きですからキャラクターモデルもよく買います。スケールモデルは子供のころから当たり前にあったもの。特にタミヤミリタリーミニチュアの人気が絶頂だった頃も体験しているので正直プラモデルにおいては、あのジャンルこのジャンルという線引きはあまりありません。面白そうなプラモはどんなものでも作りたくなってしまいます。

──そんな中、色を塗りだしたのはいつ頃でしょうか?
:小学生の時です。筆塗りでべたべたガンダムを塗りました。塗料は父と一緒に文房具店(当時は文房具店で模型用品を置いてある店が多かった)に行って買ったんです。実はガンダムのためじゃなく、図画工作の授業で出た「船を作る課題」用の塗料を買いに行くのが目的でした。そのついでにトリコロールを見繕ったんですよ。でも帰ってきたら全部クリアーカラーだったんです……そんなことも知らずにベタベタになるまで筆で塗り込んだんです。でもすごく楽しくて、今でもその記憶は鮮明に覚えています。プラモを塗る楽しさの原体験のおかげで、今も模型を楽しんでいるんだと思います。

──その後模型はずっと続けていたんですか?
:続けていたというほどではないのですが、やっぱり気になるプラモは買って積んでいましたし、素組みで楽しんでいました。学生時代は美術部に入っていたので、プラモより色彩や美術史に夢中になってしまって、そっちがメインになっていました。特に美術史は面白いですね。歴史が好きなこともあって、スケールモデルを作るのが楽しいってのはありますね。美術部時代の基本は、今もプラモを塗る時にとっても役に立っています。でもそれが「今」なんですよ。卒業して、社会人になってから長い間未完成病というかプラモを作ることができなくなりました。仕事が大変で……同じような状況になった、もしくはなっている人が多いかもしれません。

──復帰したきっかけがあったんですね?
:それが実家に帰った時に家に置いてあった「1/144 ガンキャノン」です。そのキットを手に取り「ガンダムウェポンズ 一年戦争編」を読んだら燃えてきたんですね。今ならもっとできるんじゃないかって。イラストや模型作例の良い所をトレースして、無我夢中で工作しましたよ。人生初のエアブラシ・タミヤのスプレーワークも購入しました。でも使い方が分からなくて赤い糸を吐きまくっていました。そこでまた模型誌をきちんと読むという……。そしてこのガンキャノンが人生で初めてちゃんと塗り切ったと言えるプラモになりました。だから僕は模型を塗り切った初体験が結構遅いんです。そこからはもう模型熱が高まっているから、あらゆる模型誌や、当時のweb掲示板などを調べたりしました。マシーネンを作って投稿してみると、多くの人からコメントをもらうこともでき「模型ってこんなに人と繋がれるのか……」と完成したことよりも嬉しい体験をしたのもいい思い出です。
 僕は筆塗りだけという塗り方ではなく、エアブラシと併用することで筆塗りを楽しむことが多いです。適材適所ですね。その塗り方も、模型誌やSNSを通して交流のあるモデラーの塗り方を研究したり、時には質問したりしていろいろ試してみます。失敗もするけど、チャレンジする楽しさ、そして自分の思い描く塗りができた時ってのは模型製作の中でも格別な体験になると思います。

PLAMAX MF-60 minimum factory スコープドッグ 炎のさだめ/いつもあなたが

●発売元/マックスファクトリー、販売元/グッドスマイルカンパニー●4180円、11月予定●約7cm●プラキット

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Ⓒサンライズ

國谷忠伸

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