MASAKIが教える“ポリゴンモデル”でお気楽3Dモデル製作術!?【機動戦士ガンダム サンダーボルト 水没ディオラマ徹底解説】
2022.10.07モデラーMASAKIの作例製作文を全文大公開!3Dモデルの製作方法、水没ディオラマの製作方法の前後後編の大ボリュームな内容です。写真もほぼ切り抜きなしでのお届けします!
本誌掲載MASAKI製作ディオラマ作例記事
TRUST 幻想的な水没ディオラマで知られるMASAKI氏は、オラザク選手権サンダーボルト部門での金賞獲得を皮切りに、月刊ホビージャパンと『機動戦士ガンダム サンダーボルト』とのコラボレーションディオラマ企画に登場するなど、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』と浅からぬ縁があるモデラーのひとり。そんな彼が今回製作した「TRUST」は、透明レジン[…]
今回の作例は『機動戦士ガンダム サンダーボルト』のシーンをディオラマにして欲しいという依頼でしたのでグラブロとの対戦後、ダメージにより浮上できないアトラスガンダムをイオが機転を利かせて海面近くまで浮上させたが、そこでエネルギー切れ。このまま海底へ沈むのかという危機一髪のところで助け上げるビアンカのガンキャノン・アクアが登場するシーンをディオラマにしようと思いました。
今回の製作に当たって一番の難題なのが、『サンダーボルト』のモビルスーツで販売されているキットが限られているということでした(バンダイ様もっと出してください)。そこで本業であるCGの技術を使って販売されていないガンキャノン・アクアを3Dモデリングし、3Dプリンターにて出力したものを制作に使うことにしました。
レジンに水没させるにあたり手作業でモデリングしたものを使うと、もしトラブルが起こった際に再度モデリングするのは時間的に厳しいので3Dプリントするのが最適だと考えました。
「3Dプリントするなんてモデラーとして手抜きだ!」とかいう声が聞こえてきそうですが、私も昔はそう思っていました。
手を使って作るのが楽しかったのもありますが、「そんな便利なツール使ったらそりゃうまくできるよね」という気持ちもありました。
でも、そんなこと言いだしたら便利なツールが日々出てきているこの模型業界で、錆色の塗料を使うなんて手抜きだとか、リューターを使うなんて手抜きだというのと同じだなという考え方に変化してきました。
50歳を超えると、あと何年製作できるんだろうという現実と頭の中にあるアイデアを表現するうえで時間短縮になればと思い3Dプリントを使うようになってきました。やってみるとなかなか思ったように出力されず、やっぱりこれも道具のひとつなので使い方にノウハウが必要なのだなと痛感しています。
ということで、なんとなくやり方を知るのも良いことだと思いますので今回は3Dモデルの作り方を記事にまとめさせていただきました。
3Dプリントするうえで絶対に外せないのが3Dデータを製作するためのモデリング作業。
ネットではFusion360などの趣味の範囲であれば無償で使えるCADを使われている方や、Z-Brushを使ってフィギュアを作っている人が多そうなイメージですが、今回は私が使っているCGソフトのMayaや無料で使えるCGソフトのBlenderなどで3Dデータを作る際のポリゴンモデルの製作方法を紹介します。
今回は、どのCGソフトでも通用する基本的なポリゴンモデリングの考え方やツールの紹介と、それを使用してどのように希望の形状を作るのかの概要を紹介します。興味が出たらBlenderなどのモデリング方法の手順を紹介しているYouTubeの動画や書籍などでさらに詳しいモデリング手法を調べてみてください。
ではCADソフトとCGソフトで大きく何が違うのかというところから。
CADソフトでは曲線を使い図面を引くように大きさや長さを数値で入力し、それを押し出したり、面を張っていくことで立体にしていくのが基本となる作り方です。
この場合、図面を引くような感覚が苦手な人だと直感的に作れない為、難しいと感じる人もいると思います。
ただCADで製作した場合は全ての面は曲面として情報を持っている為、どれだけ拡大しても曲面のまま表現されるので、綺麗な面を製作できます。
Fusion360を使ったことがないので詳しくは分かりませんが、CADで製作したモデルは製作した履歴を持っており、後から数値を変更することでモデルの形状を変えることができる物もあります。
CGソフトでのポリゴンモデリングでは平面の集まりで立体を表現します。『バーチャファイター』のキャラクターとかいうとイメージしやすいかもしれませんね。一見丸みをもったオブジェクトでも拡大していくとカクカクした多角形の外観が出てしまいます。
ただ、3Dプリントする際に書き出すSTLファイルは平面の集まりのポリゴンモデルと同じ状態のデータになりますので、ポリゴンモデルでも細かくできていれば3Dプリントする分には特に問題にならないのが現状です。
ポリゴンモデルの各頂点(ポイント)やエッジ、面などを選択して移動、回転、拡大縮小などをし、面を分割したり、押し出したりすることで直感的にモデルを構築していくのがポリゴンモデリングです。
ある程度は履歴を持ったまま作業を進めることはできますが、基本的には履歴情報はほとんど持っていないと思った方がいいです。
それぞれ長所や短所はあると思いますが、今回はポリゴンモデルで気軽に製作する方法を紹介したいと思います。
基本形状プリミティブと覚えておきたいツール
■ 基本形状「プリミティブ」
ポリゴンモデルを作る際はプリミティブと呼ばれる基本形状を使ってそれを変形させて目的の形状にしていくのが一般的です。
このプリミティブの形状は製作する際に大きさやポリゴンの分割数などを数字で入力できるので制作する形状のイメージに近いものを製作します。
円柱などは分割数を変えると3角柱にしたり6角柱にしたりできますし、正多面体を作る場合も正何面体にするのか製作時に選ぶことができます。
そのポリゴンプリミティブの頂点(ポイント)やエッジ、面などを選択して移動、回転、拡大縮小をすることにより形状を変形させていきます。
例えば立方体を製作し分割数を奥行方向に5分割に設定したものを奥行方向に拡大し天面を選択後に左右方向に拡大縮小。幾つかのポイントを選択して移動させるとガンダムのサブカメラのあたりのトサカのような形状を作れます。
円筒を六角形で製作し上下の六角の中央のポイントを上下に移動し側面の真ん中の面を選択し縮小することで基本形状のままでは製作できない形状も簡単に作れます。
■ 押し出し
ポリゴンモデリングのツールで他によく使用するものは面の押し出しツールです。
これはその名の通り選択した面を引っぱり出したり押し込んだりすることができるツールです。単純に押したり引いたりだけでなく選択した場所から移動させずに縮小させ、再度押し出しツールで押し込むことで凹みを作ったり、逆に凸になった面を作ることもできるので私は良く使用します。
■ ベベル、ラウンドエッジ
製作した基本形状に対してエッジの面取りや角を丸める時に使用するベベルやラウンドエッジと呼ばれるツールも良く使うツールです。
■ スムーズ
丸みを帯びたモデルを製作したい場合はポリゴンの頂点を移動していって製作するのは非常に難しい(面倒な)作業になってしまいます。
ですがカクカクしたポリゴンのモデルをスムーズにするツールがありますのでそのツールを使って丸みのあるモデルを作ることができます
■ ブーリアン
パーツとパーツの篏合や穴を開けたい時などに使用するのがブーリアンと呼ばれるツールです。
これはAというパーツとBというパーツを選択しA+BにするのかA-BにするのかAとBの重なった部分のみにするといったことができるツールです。
これによって関節部分のダボや四角いパーツに円形の穴を開けたりなどができるようになりますが、使うソフトによってはこの計算で意図しない位置に変なエッジが出来てしまうこともあるので少し工夫が必要な時もあります。
このほかにポリゴンモデルの任意の位置でポリゴンをカットするカットツールがあります。これもよく使うツールですので覚えておいて方がいいでしょう。
では実際の制作手順をいくつかのパーツで見ていきましょう。
後頭部のパーツ
サブカメラパーツ(トサカ状の部分)の製作
アンテナパーツの製作
組み合わせるとこのような感じになります。
このような感じで各パーツは細かい単位で見ていくと難しい形状ではないのがわかると思います。さらに手足など左右対称なパーツは片方だけ作ればよいのでかなりの時間短縮になりますよ。
各関節のパーツごとにグループ化して回転軸を決め、それをさらに階層構造にグループ化していくことでポーズを付けることができるようになります。
このままですと各パーツは突き刺さった状態で重なっていますので1発で出力するならこれでもよいのですが、パーツごとに分けてプリントするのであれば、ブーリアン機能を使って篏合部分を作らなければなりません。
次に出来たデータをSTLという形式で書き出し、それを3Dプリンターに付属しているスライサーと呼ばれるソフトに受け渡します。スライサーソフトは3Dプリントする際の積層させる断面の情報を作ってくれるソフトです。スライサーでは出力する際に目立たない位置にサポートが来るように考えながらパーツの角度を調整し、後から処理しやすい位置にサポートを追加していきます。全てのパーツを設定し終わったら3Dプリント開始です。
でも一度で上手くいくことはそうそうありません。一度出してみて不具合のある個所にはデータの修正やサポートの位置の変更、パーツを配置する角度などを調整して上手くいくまで繰り返します。
ただ、すべて3Dプリントで完結させなくても手作業で修正できればこの部分のデータ修正作業は省いても大丈夫です(原型のデータを作って量産したいなら別ですが)。
このあたりが一発で上手くいくなら3Dプリンターは魔法の道具ですが、これをうまく使いこなせるかどうかは経験やコツが必要で、やはりこれは道具なのだなと感じさせられるところです。
そのように何度か失敗して出力して出来たモデルがこんな感じです。
前半はここまで!
後半では、塗装とディオラマ製作についてお届けします!
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