HOME記事スケールモデルSWS開発総司令官・重田英行氏に直撃インタビュー!シリーズ立ち上げの想いと開発現場の裏話

SWS開発総司令官・重田英行氏に直撃インタビュー!シリーズ立ち上げの想いと開発現場の裏話

2022.09.13

SWS開発総司令官 重田氏を直撃インタビュー 月刊ホビージャパン2022年10月号(8月25日発売)

SWS開発総司令官 重田氏を直撃インタビュー! 造形村SWSはどのように作られるのか

 ビッグスケール&ハイディテールで、内部構造までも細かく造り込まれた飛行機模型を展開するボークス造形村。博物館での入念な取材風景からもわかるように、飛行機に対する並々ならぬ愛情が伝わってきただろう。また他プラキットメーカーとは一味違うラインナップも、飛行機モデラーをうならせるポイントである。ここでは造形村の飛行機愛について、現ボークス会長にして、SWS開発総司令官でもある重田英行氏に直撃インタビュー! シリーズ立ち上げから10年の節目を越え、今一度造形村の原点から特異なラインナップ、そして開発現場の裏話も交えてお話しを伺ってみた。

(インタビュー/けんたろう)

重田英行氏の画像
株式会社ボークス会長(造形村SWS開発総司令官)重田 英行
 ボークス現会長。飛行機模型好きが高じて50年前に飛行機模型専門店を開業。妻・せつ(ボークス現社長)と二人三脚で社業を発展させ、ガレージキット、ドールの世界で成功を収め、念願の飛行機模型メーカー「造形村」を立ち上げる。2022年現在、創業50周年を機に社長業を退き、会長就任後も引き続き現場の指揮を執る。本物の飛行機模型で航空機博物館を設立するのが夢という自他ともに認める飛行機マニア。

■そもそものSWSのはじまり

――そもそも貴社がスケールモデル、かつ航空機をプラキットにしようと思った理由はなんですか?

重田 おかげさまで私が京都にボークスを開業して早くも今年で50年になります。その記念すべき年に、このようなインタビューの機会をいただいたことを光栄に思うと同時に、心より感謝を申し上げます。私には随分以前からチャンスがあれば、趣味にしてきた航空機のプラスチックモデルを自らの手で開発したいという漠然とした夢がありました。ある時ふと、それを口にしたところ、私の戦友でもある家内からとびっきりの笑顔付きで「それならやってみたら良いのに!」と、天の声ならぬ嬉しいお言葉が! 何よりそれが強力な後押しの力となってSWSのプロジェクトが動き出しました。妻よ、戦友よ、ありがとう~~!

■機種選定の理由

――震電、Ta 152と秘密兵器のようなアイテムにはじまり、スカイレイダーやP-51と米軍アイテムにすすみ……と、比較的独特なラインナップを進んできました。このあたりの機種選定はどういった理由で決まったのでしょうか。

重田 SWSの機種選定は、すべて私の想い、願いで進行して来たのですが、1/32のP-51Dだけは唯一、影の支配者でもある家内からたっての希望があって実現しました。震電、Ta 152、Do 335、ウーフー、そしてHo 229などは、架空戦記ならぬ「これさえ間に合っていれば…!」という焦燥感や淡い期待感が。雷電や屠龍、Hs 129は、風雲急を告げる最前線への増援のために。そしてスカイレイダーは、私自身がその存在感とフォルムに惚れていたから。F-4シリーズは、かつて名古屋上空で見たブルーエンジェルスの轟音がそのまま勢いになって、どうしても全機種を大編成で作ってみたかったのです。RF-4の登場も、もちろん実現させますよ!

■当初のラインナップが1/32な理由

――これはSWSの魅力のひとつだと思いますが、1/32というスケールを選んだことで、エンジンが再現され、その機種のテクノロジーを余すところなく表現しています。このサイズを選択した理由はなんでしょうか?

重田 1/32スケールは、航空機の持つ魅力をより余すところなく再現することが可能です。特にエンジンとその懸架方法、コックピットの詳細、ランディングギアの展開と格納、武装の装備と給弾、そして主翼と胴体の接合方法などなど、機体構造やメカニズムなどが、このサイズならではの醍醐味として工作とともにその過程を楽しむことができます。特に防弾板や燃料タンク、そのほか普通は無視されてきたその機種ならではの補器類など、意外性とその発見の連続をお楽しみいただけます。まさに「神は細部に宿る」ですね。また、多くの箇所が製作後には見えなくなってしまうとはいえ、モデラー自身の脳裏には苦労した工作の疲労感と喜びが心地良く残影となって残ります。いわば「知る人ぞ知る」要素をお客様自身の手で完成品に込められる、と言えるでしょう。

■開発面でのエピソード

――おそらくひとつひとつのアイテム開発に濃いエピソードがあると思うのですが、特に印象に残っていることを教えてください。

重田 戦闘機といえば、当時の最重要機密の塊です。今でこそ歴史遺産として許可があれば細部まで取材をすることが可能ですが、それでも機種によっては近寄ることさえ難しいものがあります。その構造や各部の動作などを模型化するには、機体に潜り込んで実寸を計測したり、あらゆる角度から大量の写真を撮ったり、整備の管理者達からアドバイスをもらったり、時には内緒で各部のハッチを開放してもらったり…。「こんなのお前たちが初めてだよ」という言葉を「褒め言葉」と良いように解釈して、強行突破よろしく実機取材することもたびたびです。もちろん、最終的にきちんと許可はいただいておりますが。そのように実機の取材とは、まさに背中に冷や汗が流れるような思いで敢行することの連続です。愛すべき造形村のスタッフ達は現地のホテルに平均して1週間滞在し、朝一番から閉館の時間まで、文字通り寝食を忘れて実機取材を敢行してきました。そして設計から金型開発、何回にもわたるテストショットサンプルの修正、さらに並行して説明書の制作やデカールなどの開発も進めなくてはなりません。発売までの開発期間は、平均すると約4年にもなります! 毎日毎日、進んでは後退の連続です。実は、次の新規造形アイテムとなるFw 190は、なんと開発開始からもう10年も経過しています……!

■入魂の一作、自信の一作

――SWSシリーズのなかで、とくによくできたと自信を持っているアイテムはどれですか?

重田 SWSキットのスタートは私の夢の実現であり、また同時に多くのモデラーやコレクターの夢でもあります。ゆえにどのキットも我が子のように愛おしく感じていて、とても優劣や順序などを付けることはできません。どのキットも素晴らしく、組み立てるたびにその機体の設計者やパイロット、工場勤務者、塗装工、整備兵や写真広報班など、その機体に関わったすべての人たちの気持ちなどが察せられて、ひとりニンマリすることもあります。その上、数多ある航空機はどれも空中機動するという目的で開発されたのに、そのフォルムやデザインが同一の物は何ひとつなく、どれも魅力的で美しい外観形状をしていることにも正直驚かされます。強いて1機を挙げるなら、紡錘形の力強い胴体に精悍な面構えの雷電は、何機組んでも飽きせんね。「ブサ格好いい」の筆頭ですもの!

■至れり尽くせりオプションパーツについて

――貴社では必ずキットに対してオプションも自社で開発していますが、その理由を教えてください。キットの内容がすでに豪華で、なおかつ積んで来るのは、いかにもラグジュアリーなメーカーという感じですが……。

重田 実機を模型にする場合に避けて通れないのが、デフォルメや省略化、そしてパーツ数の制限範囲内で可能な限り精密感や実物感を表現する、というさまざまな難題との闘いの連続です。またプラ素材での強度不足を補うためのパーツやその配慮も別途に開発しなければなりません。ゆえに開発者自らが掴み得た資料やデータを元に、さまざまなオプションパーツの設計や開発も担当しているのです。もっともっとバラエティに富んだ企画を進めたいのはやまやまなのですが、我が造形工房(造形村)が手掛けるべき業務が多岐にわたっており、なかなか充分なラインを確保できないのが悩みです。

■モデラーへの手ごたえ

――イベントなどで直接SWSユーザーと交流することもありますが、反応や意見などはどうでしたか?

重田 おかげさまで英国IPMSテルフォードや、米国各州持ち回りで開催されてきたIPMS会場では、いつしか決まって造形村には開催初日に長い行列ができるのだという定評ができ、各キットや関連周辺商品は初日で早々と売り切れ続出となります。そして会期中は何度も、それこそ本当に何度も多くのモデラーやコレクターが我がブースを訪れてくださり、そこかしこにモデラーの歓談の輪が広がります。多くはリクエスト希望やご自慢の作品写真の紹介ですが、中には自宅へのご招待や地酒のプレゼントなど、まるで旧来の友人かのような扱いに、このスケールホビー趣味の豊かさ、懐の深さを感じます。しかも会場内は終日、ほとんどが私同様のオヤジばかり! 豪快な笑い声や感激のハグなど、まさに時間を忘れるほどの盛り上がりに我を忘れてしまう瞬間の連続です。

■海外の反応

――アイテム選定を含めて、おそらく海外でもSWSのキットが欲しいという声や、実際に買ったという人、販路は海外にもおよんでいると思いますが、海外からの反応はどうでしたか?

重田 嬉しいことに、SWSキットに出会って「本当に実機を知ることができた」、「これ以外の飛行機キットに興味がなくなってしまった」とのお声も世界中から多数いただいております。また、「造形村なら本当に本気で自分の希望する機体を実現してくれるかもしれない」という期待と希望が生まれたようです。前述のイベント会場などでいただくアンケートも常に4〜500通が届き、貴重な、またこれ以上ないほど私達開発陣の励みとなっています。毎回恒例のラッフル抽選会では、会場中から溢れんばかりのSWSファンが造形村ブースに大集結。ご当選者の中には、なんとSWS全キットフルコンプリートを果たした人からの嬉しい報告も続出! もちろん、その人には即刻、特別な副賞として私のハグをプレゼントしちゃいます(笑)。

■かつてのガレージキットとのつながりは?

――実は貴社がかつて飛行機のガレージキットを作っていて、しかもそれが1/32ザラマンダーだというのを聞いたことがあります。その頃と現在で、スケールモデルの立体化に対して変わらないことと、変わったことがあれば教えてください。

重田 ガレージキットによる航空機キットの良いところは、原型そのままを転写して直接シリコーン型からレジン製パーツを抜き出すことができることです。ゆえに外形上だけですが、機体を速攻で組み立てることができます。ただ、それはあくまで塊のままであり、内部の表現や構造再現などは全く不可能です。その対極にあるのが、金型による詳細なパーツ化が可能となるプラキットです。両者とも「正確で美しい外観形状の再現」はキット開発の大原則ですが、それに加えて魔法の素材とも言えるプラスチックを使用したキットは、まるで工作そのものが実機を製造していくかのような醍醐味を味わうことができます。

■今後の展開について

――機種展開を含めて、独特の立ち位置のSWSですが、今後はどういう展開をしていく予定ですか?

重田 SWSの開発を進めるにあたっては、目標を大きく3つに絞っています。ひとつは先輩メーカーが開発しなかった穴を埋めること。もうひとつは機体構造やメカニズムの再現を通じて、広く航空機本来の興味ある存在感や美しい外観形状を味わえる機会を提供すること。最後は「こんなものまで!」という航空機モデラーの夢を実現すること。もしかしたらもうすっかり諦めていたあの機種や、不思議に思っていたあの機種の秘密が、そしてもうとっくに実現していてもおかしくないあの機種がついに実現する、夢のような日がそこまで迫っているかもしれませんぞ! ともあれ、こんなにも素敵な魅力に溢れたスケールモデルの世界に、私たち造形村がいささかなりとも貢献できたのではないかと思う時、改めて心からの喜びと未来への挑戦意欲が湧いてきます。どうかこれからも、造形村が歓喜と苦労をないまぜにしてお届けするSWSキットに、あなたの温かいご声援をよろしくお願いいたします~~~!!!

SWS開発スタッフ紹介!

重田国義氏の画像
プロジェクトリーダー(開発者K) 重田 国義
 SWS開発チームの母体となるホビー企画室のリーダーを務める傍ら、実機取材では海外関係者との折衝も一手に担う。重田会長とともに開発チームを率い、SWS新時代を切り拓く次期総司令官。2022年、ボークス専務に就任。
塚越由貴氏の画像
開発責任者(開発者T) 塚越 由貴
 SWSの開発を行いながら全体的な進行管理や広報活動、アフターパーツ開発も手掛けるなど各方面で幅広く活躍。実機取材や資料収集で世界中を東奔西走し、SWSファンや有識者の意見に耳を傾け企画に落とし込む総合プロデューサー。
中野慎司氏の画像
設計主任(開発者N2) 中野 慎司
 SWS商品のCAD図面設計を担当。三次元CADを駆使し、造形師の鋭い感性を正確にデータへと変換。その飛行機特有の「表情」を金型に的確に反映させていく、「ものづくり」に関しては一切の妥協を許さない頑固者である。
加藤幸志氏の画像
開発主任(開発者K’) 加藤 幸志
 SWS商品の生産工程のすべてを司る品質管理責任者。金型からテストショットまで入念にチェックし、自らCAD設計も行うマルチプレイヤー。その几帳面な性格と鋭い視点による修正指示はまさに「的を射る」的確さ。
小林直樹氏の画像
プロフィニッシャー(SWSマイスター) 小林 直樹
 いちユーザーとして製作したSWSキット第1弾「震電」のメタル貼り作例が重田会長の目に留まり、開発チーム参画後はすべての彩色済み完成見本を手掛ける。「神の手」さながらの繊細な工具さばきや多彩な塗装表現で、見る者すべてを魅了する。
アイキャッチ

\ 「F-4G ファントムII」の 記事もチェック/

F-4ファントム「ワイルドウィーゼル」の魅力をHow to形式で紹介【SWS】

この記事が気に入ったらシェアしてください!

創作造形 © 造形村/ボークス

けんたろう

オススメの書籍

月刊ホビージャパン2022年10月号

ご購入はこちら

航空自衛隊のF-4ファントム ファイナル写真集

ご購入はこちら

F-15J/F-15DJ EAGLE 写真集

ご購入はこちら
PAGE TOP
メニュー