工作解説/アクシズてんちょう
キットにないものを作る製作法といえば、ガンダム5号機の2個イチのような「ミキシング」と「スクラッチ」が挙げられます。ミキシングは組み合わせにある程度適したパーツがあることが前提となりますが、そういったパーツがなければスクラッチで製作を行います。近年はデジタルデータと3Dプリンターによる造形を行うモデラーも増えてきていますが、まだエポパテやプラ板を使用した昔ながらの手法のほうが主流のように感じます。特集のラストを飾る作例として、リニューアルされた名作キットMG「MS-09 ドム」をベースに「MS-09F/TROP ドム・トローペン」を製作します。担当は月刊ホビージャパンでも屈指のハードスクラッチモデラー、アクシズてんちょう。エポパテ造形、複製、バキュームフォームなど、定番手法によるストロングスタイルなドム・トローペンをご堪能ください。
●プロモデラーQ&A
Q 今回の作例製作に欠かせないツールorマテリアルを1点教えてください。
A 18年くらい前に大阪で買った「トースカン」です。スクラッチしたパーツの左右対称のチェック用、もしくは基準用に使っています。たまにスジ彫りのガイド用にも使うこともあります。似たものがウェーブの直営通販店で買えますよ。
Q 作例製作時に意識していることは?
A 塗装するときのことをやんわりと意識しつつ作っています。例えば別パーツにするより、筆塗りやマスキング塗装を選ぶ場合があります。そのほうがパーツ強度が格段にアップします。複製パーツが必要な場合は、複製しやすいように作っています。僕の場合、複製してもそのまま使えるようなパーツで複製できていない場合が多いので、複製しやすいというか修正しやすいように原型パーツを作ります。パテやキットパーツなど、複合パーツの上からのスジ彫りは苦労するので、複製後に修正程度でスジ彫りするほうが楽なのもあり、このあたりも意識しています。また、場所にもよりますが、複製するより作り起こしたほうが早い場合は、欲しいぶんだけプラ板などで作ることもあります。
Q ついついやってしまうこだわりポイントを教えてください。
A 作る前や作っている最中に登場作品のDVDや資料はチェックしています。作品のイメージを強く出せるようになります。一瞬しか登場しない機体を作ることもあります。何でだろ〜なと思ったところは調べたり聞いたり、あとは思い入れが一気にアップします。こんなことを毎回やっています。
❶頭部の製作
▲モノアイレールカバーは側面でカットして上下方向に短縮。上部は楔状にプラ板をはさんでひさし部分の角度を変更しています。モノアイはウェーブ「H・アイズ」に変更しました
❷胸部の製作
▲胸部はキットの装甲パーツをエポパテで裏打ちした後に削り込んで、最終外装用の土台とします
▲腹部はエポパテで裏打ちしてから削り込み形状を修正します。ドムは上から下に広くなりますが、トローペンは上が広い形状になっています。立体的なコクピットハッチはエポパテで再現します
❸ランドセルの製作
▲ヒート・サーベルホルダー、ヒート・サーベルの鍔、柄尻はプラ材から製作して形状を再現しています。グリップと刃はキットのものを使用しました
❹腕部の製作
▲別パーツ化したい部分はパテを盛る面にメンソレータムを塗っておきます
▲腕部はキットパーツをベースにエポパテを盛って整形し、形状を再現。ヒジ関節の丸モールドはキットの取り付け部を基部としてエポパテとプラ材で製作しています。形状完成後に複製して左右をそろえました
❺腰部の製作
❻脚部の製作
▲スネもキットパーツをベースにエパポテを盛って整形。本体部分を作ってから、それに合わせてヒザやふくらはぎ形状を出していきます
❼左右対称パーツを複製する
❽球状パーツをバキュームフォームで製作
❾靴部の製作
▲カバーを閉じた状態でピタっとフィットするように可動軸の位置を調整します
完成した作例の詳細はこちら!
BANDAI SPIRITS 1/100スケール プラスチックキット “マスターグレード”ドム 改造
MS-09F/TROP ドム・トローペン
製作・文/アクシズてんちょう
MG ドム
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●5500円、2022年2月発売●1/100、約18.6cm●プラキット
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