HSGK 1/144「ダッカス・ザ・ブラックナイト」を5層の塗り重ねで半透明ボディを再現!【ファイブスター物語】
2022.08.065層の塗り重ねで半透明ボディを表現する
バッハトマの「黒騎士」ことダッカス・ザ・ブラックナイト。映画『花の詩女 ゴティックメード』公開後に再開された連載にて最初に登場し、ハスハントの防衛線があるノウランのAP騎士団スキーン隊本陣を強襲するシーンが印象的だった。HSGK 1/100で、すでにその独特なシルエット、デザインラインを見事に立体に落とし込むことに成功していたが、1/144へのスケールダウンにあたり、頭部や腕部などを強調するなど、小スケールならではのバランス調整を実施。1/144スケールならではの「ダッカス・ザ・ブラックナイト」が誕生した。作例はMHを数多く作ってきた桜井氏がGTMに初挑戦。MH製作の流儀をすべてリセットして挑んだ塗装表現に注目してほしい。
HSGK 1/144 ダッカス・ザ・ブラックナイト
●発売元/ボークス●26400円、2022年2月発売●1/144、約24.4㎝●レジンキット●原型/造形村F.S.S.プロジェクトチーム
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初のGTM挑戦です。とにかく意識したのはMHという二文字を忘れること。これは単純に言葉としての意味ではなく、80年代後半からF.S.S.モデリングで積み上げてきた製作方法や塗装技法、さらに最終組み上げでの立ち姿の微調整まで、そのすべてのアプローチ方法をいったんリセットして挑むという意味で、これまで積み上げてきた知識を有効活用はしても、単純な再現やコピーはしない。それくらい頭の切り替えが必要だと考えました。
今回の塗装でもっとも考えたのが色味と透け具合でした。「触れるほど近づいて初めて分かる透明感」というニュアンスを表現するには、混色した塗料を単純に1~2回コートしただけでは透け具合の調整は不可能です。そこで今回は混色し用意した塗料を吹くのではなく、クリアー系塗料を何度も重ねることで、色味と透け具合の調整を同時に行うことにしました。実際の工程としては、①クリアーパーツの上からスモークグレーをコート。②その後クリアーイエローを吹き→③パールホワイトを軽くコート。④その後クリアーブルーを適切な緑と感じるまで吹き重ね発色。⑤さらにスモークグレーを吹き重ね、緑の明るさと濁り方、クリアーレジンの透け具合を調整。この時、室内での自然光・太陽光・デスクライトそれぞれの灯りの元での色味・透け具合の変化を比べ、それぞれ適切なポイントを見付け出すように調整を行います。その際にマーカーとなるのが目印として3層目に軽く吹いたパール顔料です。このパール顔料が自然光下では見えなくても、強く灯りを当てたときのみ視認できる程度を目標に吹き重ねていきます。その後、細部を塗り分けた後、透明クリアーを2コート。中砥ぎを行いさらに2コートして最終塗膜を作りました。
フレーム部は通常のメタリック塗料ではなくセミグロスブラックを下地として吹き、その後30~50μ前後の粒子の細かいパールホワイトを吹き、しっとりとしたシルバーに発色させ、さらにスモークグレーを吹き重ねガンメタ調にトーンをシフトさせました。ツヤ消しクリアーなどのコート剤で調整せず、スモークグレーを若干濃く溶いたものをエアブラシで遠吹きすることで半ツヤに見えるよう調整しています。ツヤ調整のコート剤での“わざとらしいツヤ調整感”を出さないためです。対してボディのシルバーはセミグロスブラック下地の上から、今度は15μ以上の粗くギラ付いたパール顔料を吹くことで、メタリックともミラー調とも異なるシルバーに発色させてみました。
今回は1/144キットでしたが、当然1/100では同じダッカスでも吹き重ね方は当然異なってくるでしょう。GTMキットのリリースも充実してきたので、あと10作くらい塗ってみないと何かは見えてこない気がしましたが、すべては第一歩から…。そんなチャレンジでしたがいかがだったでしょうか。
ボークス 1/144スケール レジンキット “HIGH-SPEC GARAGE KIT”
ダッカス・ザ・ブラックナイト
製作・文/桜井信之
ⓒEDIT ,All rights reserved. 創作造形ⓒ造形村/ボークス