米軍「M26 パーシング戦車」をタミヤ1/35キットで完全再現! 有名な写真を想起させるような作例に
2022.06.12パンターとの決闘に勝利した「ケルンのパーシング」
第二次大戦末期に登場したアメリカ陸軍戦車M26パーシングは、ドイツ軍の強力なティーガー重戦車、パンター戦車に正面から対抗可能な戦車として、制式採用を待たず急ぎ20両が欧州戦線に送られた。そのうちの1両である「イーグル7」は砲手クラレンス・スモイヤーら戦車兵5名に与えられ、1945年3月6日のケルン市街での戦闘でパンター戦車をみごとに撃破した。しかし彼らの苦難の道は終戦を迎えた後も続いていく……。弊社刊のノンフィクション「スピアヘッド」で克明に描かれた「ケルンのパーシング」を、5名の戦車兵とともにタミヤ1/35キットで完全再現!
アメリカ戦車 M26 パーシング
■はじめに
「ケルンのパーシング」この言葉だけでは何のことかわからなくても、M26パーシング戦車とパンター戦車の戦車戦を撮影した動画や写真は見たことがある。という方は多いはずです。
この「ケルンのパーシング」の活躍の様子はHOBBY JAPAN軍事選書より「スピアヘッド」として出版されています。今回は「スピアヘッド」からインスピレーションを頂いて製作していきたいと思います。
■写真と見比べて
先述した通り、このパーシング戦車は多くの写真が残っており、必然的にわかる範囲で再現することを目標にしました。同時に、「スピアヘッド」を読んでいるとパーシング戦車に搭乗していたクラレンス・スモイヤーはじめ、人間味ある搭乗員たちとセットで初めて「ケルンのパーシング」は完成すると感じたのです。
そこで、今回の製作記事ではM26パーシング戦車とあわせて、5人の戦車兵を改造し、5人が一枚に収まる有名な写真を想起させるような作品を目指しました。
■戦車の製作
今回使用したM26パーシング戦車のキットはタミヤの物で、組み立てやすく入手性も容易ながら、ケルンのパーシングに近づけるには少し加工が必要です。
写真を見ると、ケルンのパーシングにはいくつか特徴があります。もっとも目立つのはM2重機関銃のカバーです。今回は最近プラモデル業界でも使われつつある3Dプリンターとデジタル造形でカバーを製作します。使用した造形ソフトは「ZBrush」と呼ばれるもので、カバーに覆われた重機関銃のおおよその形をキューブと円柱で作っておき、機関銃の形にカバーが覆いかぶさって見えるよう造形しました。
次に、砲塔側面に増設された手すりや車体の装備品を作ります。手すりは真鍮線を折り曲げ、箱を挟むようにしました。布状の装備品はエポパテを引き延ばして製作しています。
特徴的なフェンダーの弾痕やゆがみもキットを加工して再現します。フェンダーをリューターで薄くし、弾痕の穴を開けました。また、フェンダー上の木箱についてもカバーと同様にZBrushで造形しました。
■戦車の塗装
本車両は現実に存在し、小説にまでなっている実在感のあるモチーフです。そのため、カラーモジュレーションを効かせ過ぎない、現実感のある塗装にしました。
サーフェイサーを吹いた後、赤味と黒味を混ぜたオリーブドラブを影になる箇所に吹き、影色にします。影色を残しつつ、オリーブドラブを吹いて基本色に。その後、白と黄色を混ぜ明度と彩度を徐々に上げて、光の当たっている箇所を強調しました。
■フィギュアの製作
フィギュアはタミヤの「アメリカ戦車兵セット」を改造、ポージングを変更して、写真に写る5人にできるだけ近くなるようにしています。
ポージング変更はキット内の各部品を付け替える他、タミヤのエポキシ造形パテ(速硬化タイプ)で関節を作り直したり、造形しなおしたりして再現しました。造形と聞くと難しく感じますが、自分でポーズを取り写真や鏡で確認し、参考の画像と見比べつつ作ると意外に作れると思います。
塗装には水性塗料のファレホを使用して塗っていきます。ファレホは隠蔽力(下の塗料を隠す力)が強く、影色からの立ち上げに適しているので、暗い色の上から明るい色を塗っていきます。
顔も同様に、影色となるシャドーフレッシュを塗ってから、フレッシュベースを塗り重ねつつ、黄色や白を足し徐々に明るさを上げ、鼻やアゴを中心に広範に光を描いていきます。最後に濃い塗料で鼻や瞼に強い光を塗り、メリハリのある顔にしました。
タミヤ 1/35スケール プラスチックキット
アメリカ戦車 M26 パーシング
製作・文/O平Q郎
アメリカ戦車 M26 パーシング
●発売元/タミヤ●4400円、発売中●1/35、約24.5cm●プラキット
O平Q郎(オーヘイキューロウ)
ディオラマやスケールモデルが好き。最近はデジタル造形もしています。Twitter:@Ohei99