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「懐かしのキット」を素組みで思い切り楽しもう!【週末でつくる ガンプラ凄技テクニック 懐かしのキット編】

2022.03.10

週末でつくる ガンプラ凄技テクニック 懐かしのキット編 月刊ホビージャパン2022年4月号(2月25日発売)

「懐かしのキット」を素組みで思い切り楽しもう!【週末でつくる ガンプラ凄技テクニック 懐かしのキット編】

 休日の空いた時間、誰でもできる簡単なテクニックで、お手軽にカッコいいガンプラを楽しんで作ってみよう! がモットーの連載企画「ガンプラ凄技テクニック」。今回から1年間はガンプラの原点にして、40年の時を経ても再販も盛んな当時ものキット(いわゆる旧キット)の製作法を徹底解説していきます。第1回となる今回のテーマは「当時ものキットの素組み」。1/144のシャア専用ザクを題材に、キットを作る上で接着剤を使った組み立てや失敗しないためのポイントを網羅した初心者入門にピッタリな内容をお届けします。作ったことがある人も、始めて作る人も、懐かしのキットを思い切り楽しんでみましょう!

講師/林哲平


パーツを切り出そう

▲当時ものキットは最新のガンプラに比べると、ランナーが少し太めのものが多いです。パーツを切り出すときはアルティメットニッパーのようなゲートカット専用片刃ニッパーを使うと刃を傷めるリスクが高いので、刃先のしっかりしたタミヤの薄刃ニッパーのような両刃タイプのニッパーを使って切り出しましょう
▲残ったゲートは二度切りでカットで基本的には大丈夫です。ただ、キットはゲートが太め。素組みでキレイに仕上げるのであれば、デザインナイフを使ってゲートカットしたほうが完成後の見映えは抜群によくなります
▲40年以上も前の金型ゆえ、どうしても金型の隙間からはみ出したプラで一部バリが出ている部分もあります。これがそのままだと見映えが悪くなるので、デザインナイフでカットしておきましょう

▲シャア専用ザクは頭部に指揮官機のアンテナがつきますが、量産型ザクとのバリエーションとの兼ね合いでそのままの状態だと取りつけ穴が埋まっています。ここはデザインナイフで切り込みを入れ、ゲートカットの要領で切り欠けばOKです。当時ものキットにはこういった加工を必要とする部分があるものも多いため、説明書はしっかりと読んでおきましょう。穴は少し小さめにしておくのがコツ。広げすぎると元に戻せませんが、穴が小さいならアンテナを接着するときちょっと広げるだけでいいのでキレイに調整しやすいです

▲アンテナの先端には指に刺さったりしないよう「安全基準フラッグ」があります。ちなみにこれは初期にはなかったものですが、金型改修され追加されたものです。フラッグをカットして、シャープに仕上げてみましょう

▲フラッグと言っても、難しいことはありません。ニッパーでおおまかにカットし、デザインナイフで整えるだけです。基本、大きいゲートぐらいに思っておけばOKです

▲フラッグをカットした状態。これで設定画に近い姿に戻りました。ガンダムのアンテナなど、フラッグが追加されているキットも多いので作るときにはチェックしておきましょう

流し込み接着剤でパーツを接着しよう

▲現在のガンプラのようなスナップフィット構造でないため、接着剤で組み立てます。このため「難しい!」と思っている方も多いですが、全然簡単です。必要なのは高粘度タイプのスチロール系接着剤と速乾タイプの流し込み接着剤。このふたつを使い分けていきましょう
▲シャア専用ザクの上腕パーツ。キットはブロックごとに挟み込んでいく構造のため、まずは挟み込みで内側にくるパーツから接着していきます
▲パーツを合わせ、隙間に速乾タイプの流し込み接着剤を流し込みます。基本、これだけでOKです。速乾タイプの流し込み接着剤は乾燥が早い上、流し込むだけなので作業の手間は一瞬です。接着剤の乾燥が早いため、接着剤がはみ出し汚くなることもほぼありません
▲接着した状態。1980年には存在しなかった速乾タイプの流し込み接着剤の登場により、接着を必要とするキットの組み立ては昔よりもはるかに簡単になっています

高粘度タイプの接着剤を使ってみよう

▲気軽に手早く作るなら速乾タイプの流し込み接着剤ですべて組み立ててしまっても大丈夫です。ただ、場所によっては関節に流れ込んでしまったり、接着力が低いため、力がかかりやすいパーツだと動かしているとき接着面が割れてしまうことも…。ここは接着力が強力な高粘度タイプのスチロール系接着剤を使ってみましょう。瓶から取り出したそのままだと穂先に接着剤がつきすぎており、はみ出して汚くなることがあります。瓶のフチで穂先を撫でつけて塗料を少し減らしてから、内側から外側へと穂先を動かして接着剤をつけていきましょう

▲パーツを挟み込んで接着します。接着剤はタミヤセメントの場合、塗ってから少し置いて、プラを溶かしてからパーツを合わせましょう。なお、塗装せず、組み立てを楽しむ素組みであれば、接着剤は片面にちょっと塗るだけで大丈夫です。そのほうが接着剤が表面にはみ出さず、キレイに仕上がります
▲接着した状態。そのままどんどん組み立てていっても大丈夫ですが、高粘度タイプのスチロール系接着剤は接着力が強力なぶん、乾燥には時間がかかります。関節を動かす場合は、24時間ぐらいしっかりと乾燥時間を置いておきましょう
※季節によります(冬は丸2日かかることも)

関節の摩耗を防ぐ

▲ほとんどのキットはポリキャップが使われておらず、関節を動かしていると摩耗してヘタりやすいのが悩みのタネです。これをある程度防いでくれるのがキットをシュリンクしているポリ袋です。まずは適切なサイズにハサミで切り出します
▲関節にこのようにポリ袋を挟み込みます。ポリ袋が1枚挟まることでプラ同士の接触を防ぎ、簡易的なポリキャップの役割を果たしてくれるのです。これは絶対にやらなければいけない工作ではありませんが、覚えておくとキットをより長く楽しむことができますよ

ハイブリッドボトルを活用しよう

▲シャア専用ザクの肩内側。挟み込むパーツが多く、うっかり接着剤がいろんなところにはみ出て関節を固めてしまって苦い思いをした人も多いのではないでしょうか? ここは接着剤を有効活用してみましょう
▲関節を挟み込む外側パーツの接着には高粘度タイプの接着剤が向いていますが、ハケが大きすぎて狙った部分にピンポイントで接着剤を塗るのは結構難しいもの。ここは流し込み接着剤のフタと高粘度タイプの接着剤を交換してしまいましょう
▲流し込み接着剤のハケは細いため、接着力の強い高粘度タイプの接着剤をピンポイントで塗ることができます。関節にはみ出すこともほとんどありません
▲はみ出しや関節を固めることなく組み立てることができました! パーツの挟み込み接着を必要とするキット製作において流し込み接着剤のフタと高粘度タイプの接着剤を組み合わせた「ハイブリッドボトル」の効能は絶大です。流し込み接着剤の中身を使い切ってもフタは捨てずにストックしておくといいですよ

組み立てのポイントを覚えよう

▲パーツを挟み込んで接着したとき、どうしても接着剤が関節部にはみ出し、関節が固まってしまうことがあります。これを避けるためにも、接着したら挟み込んだパーツをクルクル回したりして動かしておきましょう。これにより関節にはみ出した接着剤が分散され、すぐ乾いて接着力が落ちるので、関節が固まってしまうのを防ぐことができます
▲初心者にとって最大の難所となるのが肩と胴体の取りつけ部です。ほんの僅かな部分にピンポイントで接着剤を塗るように指示されているのですが、これが難しく、関節を固めてしまいやすいのです
▲ですが、ここもハイブリッドボトルを使えば問題ありません。肩関節をすべて組み立ててから、細い穂先でパーツの隙間を撫で、ほんの少し高粘度タイプの接着剤をつけるだけ。これで関節を固めることなく肩の回転軸を接着することができるのです
▲ザク・マシンガンのフォアグリップは完成後力がかかる部分ですが、補強のない点付けのためどうしても外れやすいパーツでもあります。高粘度タイプの接着剤でしっかりと接着して乾燥時間も長くとっておきましょう。このような部分は組み立ての一番最初に接着しておくと効率的ですよ
▲ザク系キットは顔の真ん中に合わせ目が来ます。合わせ目にすべて接着剤を塗ると顔の真正面に接着剤がムニュッとはみ出して汚くなりがちなので、写真で金色に着色した部分のみにハイブリッドボトルで接着剤を塗り、点づけで固定するとキレイに組み立てることができます
▲指揮官用アンテナを接着するときはアンテナ側ではなく、ハイブリッドボトルで穴に接着剤を塗っておきましょう。アンテナ側につけると組み立てるとき接着剤が外側の余分な部分についてしまいがちで、仕上がりが汚くなってしまうことがあるのです
▲動力パイプはパーツを合わせておいてから、速乾タイプの流し込み接着剤を流し込んで固定するのが楽です。速乾タイプの流し込み接着剤はすぐ揮発するため、接着剤のはみ出しが目立ちにくく、位置決めがちょっと難しい動力パイプの接着にはピッタリなのです
▲頭部は一番目立つ部分です。動力パイプや指揮官用アンテナなどはじめて作る人はちょっと難しく感じるかもしれませんが、ポイントを理解して丁寧に組み立てると素組みでも仕上がりが変わってきますよ
▲頭部と脚部が組み上がったら胴体に挟み込みます。ここもうっかりすると関節を固めてしまいやすい部分。関節部の付近に接着剤を塗るのは避け、写真で金色に着色した部分に接着剤を塗ればOKです
▲胴体は力のかかりやすい部分なので、高粘度タイプの接着剤をハケでしっかりと塗っておきましょう。胴体側面は正面から見えませんし、腕で隠れるので多少接着剤がはみ出てもほとんど目立ちません。接着力優先でガッチリいきましょう
▲胴体を貼り合わせたら、ランドセルと胴体の動力パイプを接着します。先に腕を接着してしまうとここの接着が難しくなるので忘れずに。間違えると修正が大変なので、パーツ数は少なくとも説明書は最新のガンプラ以上にしっかりと読んでおいてくださいね
▲腕を接着します。ハイブリッドボトルで胴体の受け側に高粘度タイプの接着剤を塗りましょう。アンテナの接着でも解説しましたが、穴とダボを接着するときは穴のほうに接着剤を塗るのが鉄則です
▲腕を合わせます。接着剤が受けの穴に塗られているので、肩関節を押し込んだとき接着剤は内側に流れ、外側にはみ出ることはありません。ここも力がかかる部分なので、丸1日くらいは乾燥させてください

動力パイプを入れ忘れた!?

▲おおっと! 脚部の動力パイプを入れ忘れてしまいました。ここはスネを貼り合わせるときにあらかじめ差し込んでおくパーツで、最新のザク系キットのように組み立てたあとからはめ込もうとしても上手くハマりません
▲ここは動力パイプの片側をほんの少し削って対処します。あくまで「ほんの少し」で大丈夫です。削りすぎると動力パイプが外れやすくなってしまいます
▲少し削るだけで動力パイプを問題なく組み込むことができました。削ったほうを上にすると外れやすくなるので下にしておいてください。やってしまいがちなミスですが、簡単に修正できるので覚えておいてくださいね

転倒を防ごう

▲キットは中空で軽く、重心が腕やランドセルがついた胴体にあるため最新のガンプラに比べ倒れやすいのが難点です。倒れたはずみで破損することも。ここは足裏に両面テープを貼っておくと転倒を大幅に減らすことが可能です

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指紋がついたらどうしよう…

▲うっかり接着剤がついた指でパーツを触って大きな指紋跡がついてしまいました…。これも製作時にやってしまいがちなミスのひとつです。ですが、安心してください! 方法さえ知ってれば簡単に修正可能なんです。すぐに修正したい気持ちはわかりますが、まずは接着剤が完全に乾くまで24時間くらい待ちましょう
▲400番紙ヤスリで削り込み、接着剤がはみ出した部分を削り落とします。このとき接着剤が乾いていないとえぐれて余計に汚くなってしまうので注意してください。削り終えたら600→1000→1200番と紙ヤスリの番手を上げながら、表面を磨いていきます
▲1200番まで磨いたらティッシュでパーツを磨きます。ティッシュは表面に細かい凹凸があり、プラモデルを磨く簡易仕上げ用ヤスリとして優秀。1200番ぐらいまである程度下地が磨かれているのであれば、キット表面に元通りの光沢を取り戻すことができるのです
▲修正した状態。べったり指紋がついていたとは思えないような仕上がりになりました。この作業はガンプラの基本工作である「表面処理」とまったく同じもの。これを覚えておけば修正だけに留まらず、本格的な製作にも活用できます。接着剤がはみ出したときは上達のチャンスです!

「当時ものキットは難しい」。ガンプラを作っていると、当時ものキットに苦手意識を持っている人が多いように感じます。子供の頃作って関節を固めてしまい上手く作れなかったり、スナップフィットが当たり前の世代からすると接着剤を使うこと自体をしたことがなく、どうしていいかわからなかったり…。でも、大丈夫です。現在は模型製作の道具も1980年代初期のガンプラブームより大幅に進化しており、使い方さえ知っていればスナップフィットのキットとほとんど変わらない手間で気軽に組み立てることが可能です。単色成型だからといって、無理に色を塗る必要はありません。そのまま組み立てるだけでも楽しいですよ。ぜひ、たくさん組み立てて、懐かしくも味わい深い当時ものキットの世界を体感してくださいね♪

BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット

MS-06S シャア専用ザク

製作・文/林哲平

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© 創通・サンライズ

林哲平(ハヤシテッペイ)

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