ノモ研 「ソフビキットの製作(前編)」【野本憲一モデリング研究所】
2022.02.03
野本憲一モデリング研究所 月刊ホビージャパン2022年3月号(1月25日発売)
今回から2回にわたって「ソフトビニール製、組み立てキット」の製作をお届けする。ソフトビニール(通称ソフビ)は一般には玩具のイメージがあるが、“模型”として作られた製品は精密でシャープさもあり、造形物としての魅力も高い。その組み立てはプラモデルやレジンキットとも勝手が違うが、コツが分かれば難しいものではない。前編では全体を組み上げるまでを紹介する。
製作・解説/野本憲一
ソフビキットの内容
題材は怪獣の組み立てモデル、単色の成型で塗装が前提。
▲題材のキットは海洋堂「Sci-Fi MONSTER soft vinyl model kit collection ゴジラ1994」7590円。映画『ゴジラvsスペースゴジラ』に登場したゴジラで、1990年代の製品を近年再生産したもの。キット内容は中空成型された各パーツ群と説明書。組み立て前に説明書のパーツリストと見比べ、パーツのチェックしておく。その図には切り取るべき余白が指示されている
ソフビパーツの成型について
ソフビパーツは“スラッシュ成型”と呼ばれる方法で作られる。中空の金型にゾル(ドロドロの液体)を流し、これを熱してフチ側から固めていく。次に中心部の未硬化部分を流し出し、薄皮状に固まった部分をまだ軟らかい段階で型から引き出す。こうして中空で、逆テーパーも再現されたパーツが作られる。これは大まかな説明
洗浄と歪み直し
組み立ての前に行っておくこと。箱から出したパーツが曲がっていても心配なく、簡単に修正できる。
パーツの切り出し
湯口など余分なところを切っていく。パーツを熱して軟らかくすることで、切り込みしやすくなる。
間着と間着口
左のパーツは湯口を切ったところが間着口なる。湯口分の厚味を開口部に残す方向で切ったもので、このあと内側を削いで調整する
合わせの確認
背びれパーツの切り口は平らなままでは、取り付け箇所と合いにくく、斜めにすぼまるように調整が必要だった。接着面になる箇所ではそうした合いも確認しつつ進めよう
切りすぎた場合の対処
軟らかい素材だと難しそうに思えたりするが、意外と簡単に修正できる。
間着について
ソフビならではのパーツの取り付け方法で、可動軸にもなるのが“間着”だ。
間着の調整
間着が緩かったり、外れやすい場合はソフビ片を瞬間接着剤で貼り足してキツさを調整するといい。しっかり接着され柔軟性も残る
展示のために
完成後を見越して、接着前の段階で対処しておきたい事柄について。
接着
ソフビの接着は瞬間接着剤を流し込むことで強力に行える。ポイントはしっかり密着させることだ。
気泡について
このキットでは目立つようなものはなかったが、ヒダのモールドの中にわずかにそんな凹みがあった。凹みを埋めて周囲と揃えるにはエポパテで埋めつつ造形する
次回の作業は…
パーツの合わせ目を埋め、一連の表面に整える工程。さらに各部に塗装を施して完成へ導く
©TM & TOHO CO.,LTD.
野本憲一(ノモトケンイチ)
小社にて「NOMOKEN」シリーズを多数執筆。キャラクター、スケールモデルなどジャンルを問わず数多くの作例とHow toを発表している。
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