ガンダムで“晴れ着風”を塗装表現。溶剤を吹き付ける「塗料の滲み出し」と「ネイルシール」を活用、和の美を究めた粋な「RX-78-2 ガンダム」をご覧あれ!【粋塗装】
2022.02.01RX-78-2 ガンダム【BANDAI SPIRITS 1/100】 月刊ホビージャパン2022年3月号(1月25日発売)
④黒のベース塗装を行う
晴れ着のアクセントとして帯や靴(草履)をイメージした黒を腹部や靴に配置してみる。
⑤3Dタイプのネイル用シールで立体的な花を
黒い下地にはさらにアクセントとして、表面が立体的に盛り上がった「3Dタイプ」を使ってみよう。
⑥ゴールドでさらに煌びやかに
首元や腰(ヘリウム・コア)にゴールド(金)をあしらい、さらに煌びやかな印象にしていこう。金は瓶生からの吹きっぱなしではなく、吹き重ねにより、さらに深みと発色を与える。
完成!
通常の塗り重ねによるグラデーション塗装ではなく、下地の色を滲み出させる塗装法で完成させたRX-78-2 ガンダム。ピンクの滲み出しがコントロールしづらいため、逆に意図的なグラデーションにならず、晴れ着や振袖に見られるような自然でランダムな滲みが表現できている。
皆さんもお気づきと思いますが、本作例は僕の守備範囲外の作風で製作しています。というのも今回編集部より送られてきたオーダーは「和であること」「華やかさと雅」。そして「未発表、もしくは久しく紹介していない塗装技法」の3点。加えて着物の写真が5点添付されていました。本来の僕の守備範囲は「劇中に登場した○○」や「○○風ウェザリングを施したガンダム」などAFVやエアキット、カーモデルなどスケールモデルの技法をキャラクターモデルに投入したり、SF映画……特にミニチュア特撮のプロップ風仕上げなどをメインストリームに作品を仕上げてきました。コンテストなどではオリジナルカラーリングを施したガンダムなどを目にすることも多く、その度に「華やかだなあ…素敵だなあ…」と眼福な経験をすることはあっても、自分がそれにチャレンジすることはないだろうと漠然と考えていました。理由は実に単純、自分の芸風とはかけ離れていたからです。しかしコンテストの審査なども担当させていただく立場上、全く未経験では作品にジャッジを下す権利もないと常々考えていたのも事実です。そのタイミングでこの発注です。断る理由などありません。久々に未知の領域への冒険を存分に楽しむことにいたしました。
全体的なデザインは送られてきた着物の中の1枚を参考に配色を決定しました。問題は塗装方法です。白・桃色・紫・黒がその着物に使われていた色なのですが、とても華やかで、基本の白ですら桃色がかって見えていたことです。加えて着物は“染物”です。一般的なグラデーションでピンク→ホワイトで立ち上げても、写真の雰囲気と編集部からのオーダー、そして自分が目指したい終着点には辿り着きそうにありません。そこで今回15年ぶりに“滲み出し”という方法を使って、この“桃色がかった白”を表現することにしました。“滲み出し”とはカーモデルを製作した人であれば一度は経験…、いえ、痛い目にあったことがあるかと思います。カーモデルのボディ、特に赤いスチロール樹脂で成型された車体を白などで塗装しようとした際、成型色に含まれる“赤の染料”が吹き付けた塗料の溶剤分のために滲み、塗装した塗膜の上まで浮き出てしまう現象です。通常はサーフェイサーなどの下地剤や下地塗装でがっちりと固め、この染料の“滲み出し”を防ぐ作業を行い本塗装を行います。しかし今回はこの現象を逆手に取り、人工的にこの“滲み出し”を作り出し、失敗ではなく表現として用いることにしました。この技法、直近では15年ほど前に某模型誌でガンダムエクシアのトランザムモードを表現する際に使用しています。その際はホワイト→蛍光クリアーピンク→シルバーの順で重ね塗りした後、エッジ周辺に薄め液を吹き付けることで、蛍光クリアーピンクに含有する“染料分”を塗膜表面に浮き上がらせました。今回は重ねる順が異なり、シルバー→蛍光クリアーピンク→ホワイトとしただけで作業方法は同じです。ただ、この技法、注意点がひとつだけあります。染料系の塗料でないとホワイトより下層にある蛍光クリアーピンクが溶解しないことです。顔料系塗料ではこの現象は発生しません。そのため、Mr.カラーのクリアーおよび蛍光カラーが、染料系から顔料系に切り替えられた時、この技法を多用していた僕は途方に暮れていました(笑)。現在ではGSIクレオスのGXシリーズで、この染料系クリアーと蛍光カラーが現場復帰したため、材料の入手に苦労することはなくなりました。さらに現在ではクリアーと蛍光カラーも染料系なので、こちらを使用するという選択肢も存在します。また、今回は蛍光ピンクを使用して“滲み出し”を行いましたが、染料系の蛍光色、クリアーカラーであれば、どの色でも同じ現象を再現することが可能です。ただ色の特性で見え方、派手さには差があるうえ、滲み方にも若干の差異があるので、一度ジャンクパーツなどでテストを行い、「滲ませる色と表面に使う色のコンビネーション」と「うすめ液の吹き付け具合による変化」を確認して本番に臨んでください。
というわけで僕の性格や普段の言動とは程遠い(笑)華やかで雅なガンダムを作ってみましたが、新年には似合いのアイテムではなかったでしょうか?

BANDAI SPIRITS 1/100スケール プラスチックキット“マスターグレード” RX-78-2 ガンダム Ver.2.0使用
RX-78-2 ガンダム
製作・文/桜井信之
MG RX-78-2 ガンダム Ver.2.0
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●4620円、2008年7月発売●1/100、約18cm●プラキット
©創通・サンライズ
桜井信之(サクライノブユキ)
さまざまなメディアで活躍する模型の伝道師。あらゆるジャンルの模型に精通している。

































