HOME記事キャラクターモデル工業デザイナー視点で描かれたロボ「YM-02 ケンブ」HG作例 「境界戦機 MAGAZINE Vol.1」より

工業デザイナー視点で描かれたロボ「YM-02 ケンブ」HG作例
「境界戦機 MAGAZINE Vol.1」より

2022.01.26

境界戦機 MAGAZINE Vol.1

YM-02 ケンブ×木村直貴

“ 工業デザイン”を意識してディテールを追加

 プロモデラーによるレビュー作例1体目は、主人公・椎葉アモウが搭乗するMAILeS「YM-02 ケンブ」。製作はキャラクターモデルにミリタリー表現を加えることを得意とする木村直貴が担当。“工業デザイナー視点で描かれた10m大のロボット”ということを意識して各部にディテールやマーキングを追加している。

動画はこちら

木村直貴ケンブ全体
▲工業デザイン視点による片持ち式関節や各部形状ながら、白赤カラーや特徴的な頭部形状、ツインアイといったロボットアニメの主人公機としてのヒロイックさも持ち合わせている
1、2話で登場した未完成状態 ケンブ 木村直貴
木村直貴ケンブ横
▲1、2話で登場した未完成状態。右肩は内部装甲のみで左肩はフレームがむき出しになっている。左腕には盾付短剣を装備
FRONT ケンブ 木村直貴
SIDE ケンブ 木村直貴
REAR ケンブ 木村直貴
ケンブ立てヒザ2 木村直貴
▲ 各部位の形状が可動時に干渉しないようにデザインされている。胸部左右が斜めにライン取りされていることで、立てヒザ時に脚部が干渉しない。また、太モモ裏側の逆エッジラインによってとスネ下部が入り込むことで1軸ながらヒザを180度近く回転させることができる
ウェポン各種 ケンブ 木村直貴
▲ 武装はキット付属のものを一式を製作。超熱振式戦闘直刀はキットをもう1セット使用して熱振時の状態も用意した
木村直貴ケンブ後ろ
▼60mm携行機関砲、超熱振式戦闘直刀は背面ウェポンラックにマウント
頭部パーツ各種 木村直貴 ケンブ
▲フェイス正面の赤いパーツは中央カメラ部を薄く整形することで形状を引き締めている。後頭部のブレード状のアンテナはシャープに削り込んだ
胸部パーツ 木村直貴 ケンブ
▲首後部左右にある三角形状はコクピット空調のインテークになっているので、ナイフでけがいてからメッシュモールドを追加。肩口の可動装甲は初期設定画稿を参考に軽め穴を追加している
肩パーツ 木村直貴 ケンブ
▲肩側面の黄色パーツ裏肉抜きは目につくのでプラ板でディテール風にフタを追加。肩上面にも軽め穴を追加。前腕のマウントラッチは、ウェーブ「O・ボルト」の3mmマイナスモールドを使用して、武装非装備時のフタパーツを製作。キットに付属するハンドパーツは平手と武器持ち手のみなので、武器持ち手の4本指を独立させてステンレス線でつなぎ、軽く握れるようにした
ケンブ 腰部パーツ各種 木村直貴
▲腰部は脚付け根周囲にある5つの凹み部分にボルトモールドを追加してディテールアップ
太モモ上部 ケンブ 木村直貴
▲太モモ上部内側はキットでもトラスモールドが造形されているが、塗り分けを考慮してプラ板で内部メカパーツを製作。上部の肉抜きはパテで埋めている
ケンブ つま先 木村直貴
ケンブ つま先比較 木村直貴

▲つま先は1パーツでシャープな造形だが若干重量感に欠けるので、靴裏の縁に1mmプラ板を貼って接地面を増やし、こちらも初期設定画稿を参考に0.5mmの穴開き(※設定画では穴ではなく凹み)プラ板でフタパーツを製作した

ウェポンマウントパーツ ケンブ 木村直貴
▲ウェポンマウントはアーム周囲の面や側面の肉抜きにプラ材を貼り足してディテールアップ
銃パーツ ケンブ 木村直貴
▲機関砲は銃身カバーの放熱孔を開口して内部にプラ材で銃身と支柱を製作している
ケンブ 素組み比較 木村直貴
製作途中 ケンブ

▲製作途中状態&キット素組み(左)との比較。初期設定画稿も参考にしつつ各部にボルト穴やラッチ溝、エッジの斜め切り欠きなどのディテールを追加している。高密度すぎると10m以上の大きさに見えてしまい、説得力がなくなってくるので、別キット付属のマーキングデカールを併用することでバランスよく情報量を増やした

ケンブ 上半身比較 木村直貴
▲上半身上面の比較。肩装甲および肩口装甲に開けられた軽め穴が密度感を高めている。頭部フェイスパーツや後頭部アンテナのシャープ化による引き締め効果もご確認いただきたい

■ジャパ~ン!

 近未来の日本が舞台の物語で(外国の分割統治下なんて悲しい設定ですが)、ともあれ登場するメカが工業デザイナーによる合理的機能美を備えたデザインとのことであり、大注目のシリーズであります! 主役機ケンブは紅白の日本的カラーリングでなぜか愛着を覚えます。それにシンプルなスタイリングながら、味わい深いカッコよさがありますよね。肉食獣のようにしなやかで力強い「下半身」、一見不安定ながらデザインの合理さに思わずうなずく「腕」、耕運機のボディのように無骨に張り出した「胸」、精悍でどこか爬虫類的な「頭」などなど、リアルロボットの新スタンダードになりそうな風格を備えております!
 さて、このキットはHGシリーズですが割と大きめでしっかりした存在感があります。頭部の細かなパーツ分割や胸のシリンダー連動ギミックなど「RGクラスじゃないか?」と思える箇所も多数あり、 実に気合いの入ったキットであります! 今回は工業デザインにマッチしたディテールの追加をメイン課題として、さらに10m級のメカとしてのスケール感も表現しようという作戦で進めます。

■マイ・ディテールは工業的?

 まずはケンブのメカニックデザイナーの意向を最大限尊重すべく、初期設定画稿にはあるけど決定稿で抜け落ちたディテールを復活させました。肩プレートの穴や、胸まわりなどの中大型のラッチ類がそれです。あとはそのフォーマットに従って小ラッチの角溝などオリジナルで追加していき、さらには埋め込みボルトの丸穴やエッジの斜め切り欠きなど、いつものディテールを施して情報量を上げ、大型メカとしてのスケール感を表現していきました。なお、白とグレーのパーツは粘りのあるKPS製なのでディテールを彫るのにあまり適していません。ずれると厄介なので、できるだけ一発で決めるよう慎重に刃を入れましょう。

■紅白のマシン

 主役機ということで清潔感を重視した仕上げにしています。このサイズではすごく小さいですが、関節部の作動ランプが印象的なので、シルバーテープにクリアーグリーンフィニッシュを重ね貼りしたものを細く切り出し、貼り付けて再現しています。

木村直貴ケンブ剣構え
木村直貴 ケンブ 銃構え

▲実際に動かしてみることでその可動性能の高さがよく分かる。また、どれだけ動かしても不自然なシルエットにならないのも特徴のひとつ。デザインや構造が合理的かつ機能的にリンクしており、ケレン味あふれるダイナミックなポージングから、かっちりしたシステマチックなものまで柔軟に対応してくれる

超熱振式戦闘直刀

 高熱と高速振動によって敵AMAIMの装甲を容易に切断可能な接近戦用装備。柄尻のパワーパックが電源になっている。

60mm携行機関砲

 燃焼薬莢式の60ミリ弾を連射できる携行型重火器。各勢力が運用するAMAIMを含めてほぼすべての現用兵器の装甲を貫通可能。

ケンブ立て膝 木村直貴
▲ ウェポンラックの折りたたまれたアームを展開することで、無理のない姿勢で武装をグリップすることが可能
木村直貴ケンブトップ画

COLORING DATA

基本色はMr.カラーを使用。
白=白サフ(1500)+グレーサフ
赤=キャラクターレッド+RLM23レッド
黄=キャラクターイエロー+黄橙色+白

グレー〜黒類はガイアカラーの色サフの混
色。エナメル塗料の黒&グレーでスミ入れを施
し、小振りなコーションマークを貼ってからグレー
トーンで軽くグラデーションをかけ、ツヤを少し残
したフラットクリアーで整えて完成です。

木村直貴ケンブ全体

BANDAI SPIRITS 1/72スケール プラスチックキット“ハイグレード”メイレスケンブ 使用

YM-02 ケンブ

製作・文/木村直貴


 こちらの「YM-02 ケンブ」は好評発売中の「境界戦機MAGAZINE Vol.1」に掲載されております!
 他にも、メイレスジョウガンやメイレスレイキ、謎のAMAIMゴーストなど数多くの作例をお届けいたします。
 アニメ『境界戦機』からプラモデルまで『境界戦機』をギュっと詰め込んだ 「境界戦機MAGAZINE Vol.1」 をぜひご覧ください!

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