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【エアブラシ特集】「HGメイレスビャクチ」をグラデーション塗装による陰影的立体表現で仕上げる【木村学】

2021.09.26

グラデーション塗装による陰影的立体表現/メイレスビャクチ【BANDAI SPIRITS 1/72】 月刊ホビージャパン2021年11月号(9月25日発売)

グラデビャクチ

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 ここではエアブラシによる塗装法の中でももっともオーソドックスな手法である、グラデーション塗装による陰影を強調した立体表現を紹介していこう。基本的には濃い色を下地としてベタ塗りし、その上から薄い色をグラデーション塗装していく、という手法だ。缶スプレーではできない繊細な諧調表現をお楽しみいただきたい。

解説/木村 学(ホビージャパン)

■陰影的立体表現の代表といえばMAX塗り

 陰影を強調する塗装表現でもっともポピュラーなのは、90年〜00年代前半の模型塗装シーンを席巻した「MAX塗り」でしょう。黒に近い下地色の上から薄く溶いた塗料を、エッジを残すように面の中央部に塗り重ねていき、陰影を付けていくこの手法は、より立体感が強調されるとともに、暗い下地色による重量感も得られる一石二鳥なグラデーション塗装法だったのです。

野田ガンダムNT-1 Ver.2.0
▲MAX塗りを得意とする野田啓之によるMG ガンダムNT-1 Ver.2.0(HJメカニクス04掲載)。エッジがより強調され、ベタ塗りに比べ、より立体的な仕上がりになっている
ガンダムウェポンズ マスターグレード MS-06 ザク編
▲MAX渡辺によるMAX塗りを知りたいならこれ。「ガンダムウェポンズ マスターグレード MS-06 ザク編」は電子書籍版が好評発売中!
ビャクチ俯瞰アップ
フラット塗りとの比較
▲フラットに塗った作例(写真右/哀川和彦製作)とのツーショット。グラデーション塗装により、より重量感のある立体的な仕上がりになっているのが確認できる

サーフェイサー吹き

 パーツの表面処理が済んだら、サーフェイサーをパーツ全体に吹き付けキズや処理のし残しがないかチェックしておきます。

サーフェイサー吹き
▲サーフェイサーはある程度パーツを組み付けた状態で吹き付けると楽に作業ができます。サーフェイサーが行き届いていないところは、塗らなくても問題ない所なので、塗らなくてもいい部分が確認できるのもメリットのひとつといえます
フレームのみ塗装
▲サーフェイサーが乾燥したら、パーツをばらしてフレームのみ塗装しておきます。この際、サーフェイサーが行き届いていない部分は塗らなくても差し支えない場所になります。ジャーマングレーでフラットに吹き付けておきます

外装のグラデーション塗装/ホワイト

 まずは一番塗装面積の多い白い部分から塗っていきましょう。

下地塗り
ガンダムカラーMSグレージオン系

▲まずは下地としてグレーを吹き付けます。濃過ぎず薄過ぎず、また青味や赤味の少ないプレーンなグレーとして、ガンダムカラーMSグレージオン系を選択しました

満遍なく拭き付け
▲満遍なくグレーをパーツ全体に吹き付けます。裏側も縁の部分はフレームに隠れず組み立て後も露出する部分なので、しっかり塗っておきます
MSホワイト拭き付け
陰影なじませ終了

▲ホワイトは半ツヤで少しグレーが入った隠蔽力の強いMSホワイトを選択。まずは表面のディテールのない部分を中心に吹き付けていき、少しずつ陰影を薄める要領でコートしていきます。側面や裏面もエッジを残しつつ吹き付け、ある程度吹き終わったら、最後にふわっと全体に塗料を吹き付け陰影を軽くなじませたら終了です

スネパーツ
面の中央から
自然にするためにふわっと上掛け

▲同じ要領でスネパーツも塗ってみましょう。面の中央部、ディテールのない部分を中心にホワイトを吹き付けていき、最後に全体的にふわっと上掛けします。最後のこの工程が陰影を付けながらも、どぎつくなく、より自然な状態のグラデーションになじませる秘訣です

ビャクチ外装ホワイト完成横
ビャクチ外装ホワイト完成

外装のグラデーション/ブルー

 次にブルーのグラデーション塗装を行ってみましょう。ホワイトに比べて濃い色なのでそれほど陰影は付きませんが、立体感を強調するには必要な部分です。

アイアンブルー、ウイノーブラック
満遍なく吹き付ける

▲まずは下地を塗ります。上掛けする色となるアイアンブルーにウイノーブラックを足した紺色を満遍なく吹き付けます

アイアンブルー
中心に吹き付け

▲次にアイアンブルーをエッジを残すように面の中心に吹き付ければ終了です。もう少し陰影を強調したければ、アイアンブルーに少しホワイトを足すのもいいかもしれません

肩パーツ下地と比較
▲肩パーツで下地(写真左)とグラデーション塗装後を比べてみます。陰影は分かりづらいのですが、よりエッジは強調され立体感が感じられる仕上がりになりました

ゴールドの下地塗装について

 今回、黄色い部分をゴールドで仕上げますが、塗料はGXメタルイエローで、より黄色に近い色合いにしたいと思います。

GXメタルイエローはゴールド確認
▲GXメタルイエローはゴールドに比べ、隠蔽力は弱いため、下地には気を使いたいところです。写真は白とグレーのランナータグにそれぞれGXメタルイエローを吹き付けたところ。下地によって発色が大きく変化しているのが分かります
ジャーマングレー
▲今回はより深みのあるゴールドを目指したいので、下地にはジャーマングレーを選択しました
ジャーマングレーの上にGXメタルイエローを吹き付け
その後に塗装した部分をマスキングして、もう一度
▲ジャーマングレーの上にGXメタルイエローを吹き付け、その後に塗装した部分をマスキングして、もう一度ジャーマングレーを全体に吹き付けました
ゴールド部分完成

マスキングの順番は大事

 エアブラシ塗装においては、マスキングの順番は大事な選択事項になります。ここでは太モモパーツでその手順を解説します。

ホワイト部分をマスキング
▲ホワイトを塗装したら、グレー部分を塗ります。まずはホワイト部分をマスキングテープで覆います
色を付けたくない部分にマスキング
▲色を付けたくない部分にマスキングテープを貼り終えたらジャーマングレーを塗装
マスキングテープを剥がさずその上から
▲そのままマスキングテープを剥がさず、その上から今度はゴールドを吹き付けるためのマスキングを行います
左下半身アップ
▲ビャクチにはいたるところに黄色い部分が散見されますが、場所によって塗る順番を変えることがきれいに仕上げるコツです。写真の2ヵ所は最後にGXメタルイエローを吹き付けました。先に紹介した前腕のハードポイントやロールバーとは逆の順番になります。それぞれのパーツ(ディテール)の状態を確認し、マスキングの順番を考えることで、スムーズに塗り分けができるようになります
グラデ塗装メイレスビャクチ
シリンダーはキット付属のメタリックシール
▲腕と連動するシリンダーはキット付属のメタリックシールをそのまま活用した。メッキ感もあり、貼るだけで仕上がりは上々
バイザーのクリアーパーツの裏側には付属シールの切れ端を
▲バイザーのクリアーパーツの裏側には付属シールの切れ端を貼り、光の加減で反射して見えるように演出。アゴ側面のダクト部分はキット付属のシールの黄色い部分を切り取って貼り付けた
ハンドは第一関節の外装がホワイト
ハンドは第一関節の外装がホワイト
ジャーマングレーを全体に塗ってからマスキング
ホワイトを吹き付けて塗り分け

▲ビャクチのハンドは第一関節の外装がホワイト。ここはジャーマングレーを全体に塗ってからマスキングし、ホワイトを吹き付けて塗り分けている

 面の広さやほどよいエッジ感など、エアブラシでのグラデーション塗装にはピッタリの題材だと思い、HGビャクチを使用させていただきましたが、組んでみてプロダクツとしての完成度、カッコよさに驚きます。BANDAI SPIRITS ホビーディビジョンの技術の粋が結集した、現時点での最高レベルのプラモデルであることは間違いないでしょう。ロボプラモ好きの読者の皆さんにはぜひ組んでいただきたいキットです。
 さて、キットにはほとんど合わせ目が存在しません。一部パーティングラインも存在しますが、細くて薄いので、軽くデザインナイフのカンナ掛けでけがいてやれば目立たなくなります。ゲート跡もなるべく細く、目立たない箇所に置かれ、ややもすればゲート跡の処理を忘れてしまうほどです(笑)。
 マスキングで塗り分ける箇所もありますが、直線的な箇所が多く、それほどストレスなく塗り分けることができました。

グラデ塗装メイレスビャクチ

BANDAI SPIRITS 1/72スケール プラスチックキット “ハイグレード”

メイレスビャクチ

製作・文/木村 学

HG メイレスビャクチ
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●2640円、発売中●1/72、約14cm●プラキット

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木村 学

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