【コードギアス 新潔のアルマリア】ep16「あなたと一緒なら、私は私を知る勇気を持てる」
2026.04.04 マシューのオフィスでは、変わらずニュース番組が流れている。
「合衆国中華領内にある港が武装集団の襲撃に遭い、一時現場は騒然としましたが、黒の騎士団によって制圧。武装集団は全員拘束されました。この集団の目的は明らかになっておらず……」
画面に映る九海港に接舷した潜水艦を見てマシューは唖然としている。
「グラナードが黒の騎士団に捕まっただと? 冗談じゃない! あいつらが黒の騎士団に捕まったら、いずれ僕に辿り着く。そんなことになれば……」
「社長」
「マズい。マズいぞ、これは……」
ミリガンが呼びかけるが、焦るマシューの耳には届いていない。
「社長」
「どうする? まずはメールの履歴を……」
「マシュー!」
「っ!」
名前を呼ばれて怯えるように身を竦めたマシューは、ようやくミリガンが冷静な目で自分を見つめていることに気付く。
「落ち着いて、マシュー。グラナードとのやり取りには暗号通信を使っていた。あなたが関与していることがすぐにわかることはないわ」
「そ、そうか?」
「ええ。そのためにマフィアなどではなく、リビングナイツを使ったんですもの」
「そ、そうだな。そんなに焦ることもないか……」
「まずは落ち着いて対処すべきよ」
「わかった。取り乱してすまなかった」
一息つくと、マシューはゆっくりと自分の椅子に深く腰掛ける。
「ふう……。まさかあの子を、M-01を取り戻すだけで、こんな事態になるとはな。原因はおそらくグラナードが捕らえたという男だろう」
「この男ですね」
マリガンがマシューの前にある端末を操作してモニターに捕らえられていた時のハクバの画像データを表示する。
「M-01の所在を知るというこの男。この男が何かしらの方法でグラナードらリビングナイツを壊滅に追いやった。まずはこの男の素性を調べるところだが……」
「待って」
「うん?」
ミリガンがマシューの座っている椅子を自分のほうへと向ける。
「それは、まだM-01を追うということ?」
「どういう意味だ?」
「グラナードの失敗で黒の騎士団がすぐにあなたに辿り着くことはない。でも、それは今すぐでない、というだけ。いずれは関与を問い質される。でも、今すぐに手を打てば、その証拠を揉み消して今まで通り過ごせる」
ただし、と言葉を添えながら顔を近づけるミリガン。
「それは、M-01を諦めたらの話。まだM-01を手に入れようというのなら、私たちは相応の代償を支払はなくてはいけない。あなたがお父様から引き継いだ会社も、今の生活も、権力も何もかも」
「愚問だな、ミリガン」
ミリガンの目を真っ直ぐに見つめるマシュー。
「あの子の価値は、そんなものと比べることなどできない。なぜなら、あの子は……」
「っ!」
マシューの力強い言葉に、ミリガンは複雑な表情を浮かべる。
日本の皇邸で会合があった数日後、ブリタニア大陸の中にある小国、リューネベルクのクリスフォート空港にハクバたち5人の姿があった。ハクバ、サトリ、ドクに加え、Mとレディ・レディが到着ロビーへと降り立つ。
「リューネベルクに到着~、ってここ、ブリタニアじゃないの?」
「うわっ、なんかデジャブ。サトリ、ニュース見てないの?」
「えっ? また歴史の授業?」
「ここリューネベルクは、ブリタニアが共和国にかわるときにどくりつしたんですよ」
「そう。国王であるノーランド・フォン・リューネベルクが共和制に反対したんだ」
「へえ。それでブリタニア大陸のど真ん中なのに、別の国なんだ。Mちゃんって物知りだね」
「そんなことは……」
褒められて照れるM。一方、ドクはサトリの勉強不足に呆れる。
「サトリもMを見習って少しは勉強したほうがいいよ」
「うぐっ」
コントのようなやり取りをしているサトリたちを尻目に、ハクバはレディ・レディに問いかける。
「しかし、来るのはリューネベルクでよかったのか? Mが生活していたのはマカオだったんだろう?」
「ええ。金羊の館と呼ばれる場所だったそうよ。調べてみたら、マシューが所有する住居のひとつにそれらしいものがあったわ」
「わたしがくらしていたところです。でも、わたしの本しつはあのばしょにはありません」
「本質、か……」
ハクバがMの横顔を見る。
幼い。
まだ生まれて6年しか経っていないのだからあたりまえだ。しかし、こんな幼い少女が本質という言葉を使う。どのような生き方をしたらそのように思えるのか、ハクバは正直にMに問いかけた。すると、Mはゆっくりと自分のことを話し始めてくれた。
「わたしがものごころがついたころ、わたしはすでにばしょにいました。自ぜんにかこまれた大きなやかたです。やかたの中はいつでもかいてきで、あつさもさむさもかんじたことはありませんでした。それだけではなく、食べるもの、着るものにもこまったことはありません。すべてがわたしのために用いされていました。でも、あきらかに足りないものがあったのです。
それは、家族。
わたしにはお父さんもお母さんもいません。それがあたりまえのようにすごしてきました。でも、ある日、星がふったんです。空いちめんにいっぱいの星がふってきました。その星を見たとき、とつぜん気づきました。わたしはこのままではいけない、と。なにかが頭の中ではじけたみたいに、いろんなことが頭の中に広がっていきました。それはわたしというものにたいしての不安でした。
どうして、あふれるほどの知しきを毎日そそがれるのか。
どうして、あの人のまねをしなくてはいけないのか。
どうして、わたしには名まえがないのか。
わたしはわたしというものを知りたくて、あのばしょから逃げ出しました。
そして、あなたと出会ったのです」
Mの話を聞きながら空港をあとにした一行は、いつの間にかリューネベルクの郊外までやって来ていた。着いたのは、高い壁が広大な敷地をぐるりと囲んだ施設。人の出入りが数年ないことを示している門の横には、“ビッシュ生物学研究所”の文字が刻まれている。その門の前に立ったMは、じっとハクバを見つめている。
「ミスター・ハクバ。あなたに」
そんなMにハクバは屈んで目線を合わせる。
「そうか。そんな不安のなか、他の子どもたちを守ろうとしていたんだな、君は」
「あれが正しいことかどうかわかりません。ただ、わたしが得てきた知しきの上で、わたしが嫌だと思ったんです。そうしたら、あんなことをしていました」
「そうか。そう思えたのなら、MはMの考えを持っている。君が何者であろうと、君は君自身なんだ」
「なんだか、勇気がわいてきました」
Mがハクバの手を取る。
「あなたといっしょなら、わたしはわたしを知る勇気をもてる」
「そう言ってもらえるなんて光栄だ」
「ふふっ。では、いきましょう」
Mがつないだ手とは別の、もう片方の手を閉ざされた門にかざす。その手にはM-01と刻印された認識票がかかっている。門が短い電子音を吐いて、ゆっくりと開く。その門の奥、Mとハクバたちの向かう先には白い正方形の無機質な建物が待ち構えていた。
ep.16 END
【コードギアス 新潔のアルマリア】
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-本編-
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