HOME記事スケールモデル日本の空を護っていた「F-86F セイバー」&「 F-86D セイバードッグ」とは? 航空自衛隊の主力戦闘機をハセガワキットとともに紹介【いまさら聞けないすごいヤツ】

日本の空を護っていた「F-86F セイバー」&「 F-86D セイバードッグ」とは? 航空自衛隊の主力戦闘機をハセガワキットとともに紹介【いまさら聞けないすごいヤツ】

2025.11.21

いまさら聞けないすごいヤツ!!/ノースアメリカン F-86F セイバー/F-86D セイバードッグ●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2025年12月号(10月24日発売)

いまさら聞けないすごいヤツ!!

 ノースアメリカン 
 F-86F セイバー 

 F-86D セイバードッグ 

イラスト/大森記詩

「名前は知ってるけどどんなものなんだろう?」「今さら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
 今回は航空自衛隊が初めて導入した全天候戦闘機である「F-86Fセイバー/F-86Dセイバードッグ」をご紹介します。


F-86D セイバードッグ

全幅/11.3m 
全長/12.3m 
重量/5656kg 

エンジン/ゼネラル・エレクトリック J47 
最高速度/1138km/h 
航続距離/1344km


第3航空団 第102飛行隊 小牧基地

F-86D-セイバードッグ左側面イラスト
F-86D-セイバードッグ上面イラスト
F-86D-セイバードッグ下面イラスト

F-86F セイバー/ F-86D セイバードッグ

解説/宮永忠将

右側面 第2航空団 第103飛行隊 千歳基地

F-86D-セイバードッグ右側面イラスト

 戦後第1世代ジェットのスタンダード 

 第二次世界大戦の末期、ノースアメリカン社は米陸軍航空隊(のちに空軍)と海軍からジェット戦闘機開発を受注していた。だがP-51マスタングのようなレシプロ機にジェットエンジンを搭載した設計では、期待したような性能が出なかった。同じ頃、降伏したドイツから後退翼機、つまり主翼の前縁が胴体との取り付け部から後方に角度が付けられた構造の研究成果がもたらされる。そしてノースアメリカンが開発中のジェット戦闘機にこの構造を取り入れたところ、音速に迫る1079km/hという驚異の速度性能を発揮した。これがアメリカ空軍の主力戦闘機F-86セイバーとなったのである。セイバーとは湾曲した刀の一種で、サーベルと呼んだほうが分かりやすいだろう。
 F-86セイバーは、採用直後に勃発した朝鮮戦争でデビューした。当時、アメリカ軍を中心とする国連軍は、敵が保有していたソ連製のMiG-15戦闘機を相手に苦戦を強いられていた。しかしF-86セイバーを投入すると、状況は逆転して、撃墜比率で上回るようになった、加速性能や高々度性能などスペックではMiG-15が優勢ではあったが、ドッグファイトになるとセイバーが勝利した。数字に表れない操縦性や視認性、武器の性能でセイバーのほうが優れていたのである。

 航空自衛隊の主力戦闘機 

 朝鮮戦争で実力を証明したF-86セイバーは、アメリカ空軍の最重要戦闘機となったと同時に、多くの同盟国がこぞって採用した。日本も1954年に発足した航空自衛隊が主力戦闘機としている。この頃にはF-86の改修や性能強化が進んでいて、日本はエンジンおよび兵装の搭載能力を強化したF-86Fを480機も導入している。このうち300機はライセンス生産を含む、何らかの形で日本で組み立てないし製造された機体である。
 また、1958年からはF-86Dという戦闘機の導入も始まる。この機体は型番、名称ともセイバーと似ているけれど、共通部品を探すほうが難しい別物と呼ぶべき戦闘機である。夜間や悪天候時にも運用可能なように捜索レーダーを搭載しているのが特徴で、装置一式を収容した機首の黒いレドームが犬の鼻のように見えて目立つため、「セイバードッグ」と呼ばれている。航空自衛隊の導入数は122機で、大半が在日米軍の中古機であったが、空自初の全天候能力戦闘機であり、F-86Fセイバーとのミックス編制で運用された。ただし電子部品の一部が日本の環境に合わず、故障が多い機体でもあったため、セイバードッグの運用期間は約10年と短かった。
 なお、航空自衛隊ではF-86Fを「旭光」、F-86Dセイバードッグを「月光」と、それぞれの役割に注目したニックネームを用意していたけれど、これは不発に終わっている。そして一部の機体は偵察機型のRF-86Fに改造されながら、セイバーの一族は1970年代末まで日本の空を護っていたのである。


ブルーインパルス


 皆さんご存じの航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」。1960年8月に浜松基地第1航空団第2飛行隊内に誕生したチームの最初の機体がF-86Fセイバーであった。480機も導入したセイバーだけど、パイロットのほうが不足していてたのでアクロバットチームにまわす余裕があったのだ。発煙装置やカメラ装備を追加したF-86Fで訓練と展示飛行を重ねたチームは、1964年東京オリンピックで、「オリンピック五輪雲」を成功させて一躍有名になる。F-86Fセイバーは「ブルーインパルス」の顔として活躍し、1981年、国産のT-2超音速高等練習機にその座を譲り、引退したのであった。


 加藤単駆郎氏による新規パッケージでハセガワの定番アイテムとなった「F-86D セイバードッグ “航空自衛隊”」。初出は1996年で、クセのないスマートなプラモデル。2.75 FFAR(Folding Fin Aircraft Rocket)マイティーマウスも再現されています。

ハセガワ「F-86D-セイバードッグ-“航空自衛隊”」ランナー
▲メインノズル周辺に接着する小さなパーツ以外は非常にシンプルな構成
ハセガワ「F-86D-セイバードッグ-“航空自衛隊”」デカール
▲デカールは共通で使用する物と5 種の機体を再現できるマーキングが収録されている
ハセガワ「F-86D-セイバードッグ-“航空自衛隊”」マイティーマウス展開
▲2.75 FFAR( Folding Fin Aircraft Rocket)マイティーマウスの展開状態を再現する時は、腹にパーツを直貼りする
ハセガワ「F-86D-セイバードッグ-“航空自衛隊”」説明書
▲機首には錘を入れないと尻餅をついてしまう。別途購入して用意しよう。釣りで使用するナス錘がオススメ
ハセガワ「F-86D-セイバードッグ-“航空自衛隊”」素組み
▲マイティーマウスと増槽が付属する
ハセガワ「F-86D-セイバードッグ-“航空自衛隊”」パッケージとともに

F-86D セイバードッグ “航空自衛隊”

●発売元/ハセガワ●2400円、発売中●1/72、約17cm●プラキット


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