Ma.K. in SF3D
LUNADIVER STINGRAY
2021.05.04
“ロービジ塗装”&部分改造でルナダイバーの新たな魅力に迫る
今月はハセガワ製1/35ルナダイバー スティングレイをピックアップ! 今年の1月に部隊マーク“ムーン スノウマン”の刺繍タイプワッペン付きで再々販され、敵からの視認性を低下させる“ロービジ塗装機”のパッケージイラストが話題となった。「Ma.K. in SF3D」連載第1回(2010年3月号)、2018年5月号に続き、1/35ルナダイバーは3回目の特集となる。
大のルナダイバー好きであるMAX渡辺はロービジ塗装&機銃座装備など部分改造を施した機体を激作! さらにパッケージモデルとなった横山宏の“ロービジ”ルナダイバーも掲載! 両者の力作をご覧いただき、ルナダイバーの新たな魅力を感じてほしい。
■オリンピックやるのかしら? やらないのかしら?
冬去り、桜散り、新緑の候にこの原稿を執筆中の模型芸人MAX渡辺です。マンボウと称される「まん延防止等重点措置」が東京・京都・沖縄で施行されました。そうそう、松山英樹選手が4/12、マスターズ・トーナメントで男子日本人初、アジア人初の優勝を果たしました! 超快挙!!
後で読み返した時、あの頃こんなことがねぇ、と記憶リンクができるよう記しておきますね。さぁ石垣島トライアスロンも無事開催され、いよいよシーズンインか!? コロナ禍の運動不足で増えた3㎏を絞りつつ、6月の諏訪湖トライアスロンに向けてカラダ作らなくちゃ♪♪
■何度食べてもご馳走♥ ルナダイバーは掲載何度目?
KATOOOさんに何度目か聞いたところ、正解を教えてくれました。
「ルナダイバー特集は1/35が今回で3度目、1/20を入れると4度目ですね。特集以外での単機掲載や『MAX渡辺のMa.K.大好き』での追加作例を含めるとMAXさんのルナダイバー製作数は通算で9機(塗り直しを入れると10機)になります」(KATOOO)
…だそうです!! ルナダイバーはカラーバリエだけでずっと楽しめる超イカすモチーフ。反面、デザインとしての完成度の高さゆえ、本連載ではなかなかタイプバリエーション展開ができなかったのです。この再販を契機に「いつかやってやるぜ! と機会を窺い、温めていたネタのいくつかを披露しようと思います。
第一弾は「後部機銃座装備」です!! なるべくシンプルにパーツ数少なく、しかし印象を変えたいのが『Ma.K.』流バリエの鉄則と考えています。プラモデルになったらいいなぁっていう願いを常に込めているので、追加ランナーの枚数も考える遊びなのです。そういう考え方って、兵器開発なんかにも通じるところがあるかなって思います。使える物はなるべく使ってより強い、使いやすい物を安く作る。軍事、経済の基本ですよね。
機体形状から銃座をつける位置は元のデザインから考えてもまぁ、この辺だろうとすぐに見当をつけ。左右のバルジに韻を踏んだ方が良かろうと、いかつくない丸く可愛い形状の銃座に。
■脊戸真樹召喚!!
という具合に構想は割とすぐに目鼻がついてきたのですが、公私ともに多忙を極める昨今、実現するには「オトナのチカラ」総動員ですww すなわち、3Dモデリング→出力のデジタルパワー炸裂! 自席から10mのミスター『Ma.K.』脊戸真樹くんのところへポンチ絵を持って突撃。さすがのマイスター脊戸、打ち合わせは超シンプル、しかも阿吽の呼吸です。意図するところはすぐに理解してくれてメッチャやりやすい。
銃座の台座と一体となるコクピットハッチは、そのまま流用したほうがパーツの合わせも含めて絶対早くて綺麗に仕上がるので、脊戸君に一任。「マシーネンっぽく曲面で上手く繋げてね♥」️の一言で済み、彼がエポパテで。銃身の長さは長短2種を試してみたかったので追加オーダー。どちらも捨て難いけど、『Ma.K.』的にはやはり短銃身かなぁと。
機首の複合センサーは脊戸クンのジャンクパーツストックからいただきました。1/16ゲパルトのパーツだそうです。撮影日が3日後と聞かされ無言になった時の彼の顔は忘れられませんww
■彩色はモデルカステンのカラーを♪♪
今回の作例は、いつもの自作調合塗料を用いず、市販のカラーをそのまま使ってみようと。モデルカステン新色、ストーミーシーブルーC-20とストーミーシーグレーC-21をチョイス。すんごいつや消しでしかも乾燥がめっちゃ速い!! なのに筆塗りではスムーズに作業出来てなんとも不思議な気分でした。発色もとても魅力的なのでかなりオススメな塗料です。
筆の赴くままにフリーハンドで迷彩を塗り分け、下面はダークグレーで締めました。上面に這うラインにはメリハリを出すためにオフピンクを、羽根の生えたバナナは天才の為せる技なので使わないわけにはいきません。これに合わせてレター、そして尻尾の帯をオレンジで合わせました。超突貫でしたが、むしろ集中できて良い仕上がりになったかなぁとご満悦です♪♪
次号もバリエ行きますよ♪♪(MAX渡辺)
ハセガワ 1/35スケール プラスチックキット
ルナダイバー スティングレイ
“ムーン スノウマン”改造
傭兵軍 月面揚陸支援艇 スティングレイ[武装強化型]
製作・文/MAX渡辺
協力/脊戸真樹、鈴木孝、堤啓介
ルナダイバースティングレイ“ムーン スノウマン”
このルナダイバーはムーン スノウマンの刺繍ワッペンが同梱された再販企画だったけど、ワッペンだけではなく、これまでになかった新たなスキームコンセプトも入れようと思ったんです。
両陣営の新兵器投入によって戦闘が熾烈なものとなってきたので機体は視認性が低いいわゆる“ロービジ”としてムーン スノウマンの部隊マークも月の部分をグレーにするのがいいかなと最初に考えた。でも、ワッペンはこれまでの黄色い月でいくことが決まってたので、部隊マークのデカールは従来のままでまずは機体の塗装だけをロービジにしました。
3年前のルナダイバーの再販時は先端を赤茶でマスクして塗ったけど、今回はその部分を黒に近いグレーに塗りました。コンセプトが決まるとそこからは必然性のある色を選んでいくだけでカッチョいいロービジ塗装に仕上げることができました。
濃いグレーと薄いグレーの中間の紫がかったグレーはイギリス空軍がいろんな機体に使ってたグレーを参考に調色。数年前に第二次大戦機の塗装について書かれている本が出たのでわかったことなんだけど、同じ名前の色でも時期によって色が違うんですよ。迷彩機で近い色合いのグレーがあれば同じ色にしてもいいんじゃないかって考え方もあって、そういうイギリスの臨機応変に対応していく力が戦争に勝つんだなって気がしましたわ。色ひとつとってもカッコいい塗装の飛行機に乗ってると、「これは強そうだ、負ける気がしない」って生存率にも関係していくんだそうです。カッコいい塗装の機体は強いことに繋がるわけだね。ドイツはこの色じゃなきゃダメだとか杓子定規なことが多過ぎるのに最後はその塗料も底を尽き、逆に見たこともない規格外の塗装でモデラーを楽しませてくれました。
今後は月面での戦況が厳しくなってくるとロービジ塗装が増えるだろうってことで、このルナダイバーのあとに塗ったルナガンスやキャメルもロービジにしてます。こうやって再販するたびに何か新しいコンセプトを入れていきたいと思います。このルナダイバーのキットには、三日月の部分をグレーに変えたムーン スノウマンのデカールも入ってるから、わしの塗装みたいに仕上げたい人は部隊マークもロービジにするといいよ。
製作・文/横山宏
ハセガワ 1/35スケール プラスチックキット
傭兵軍 月面揚陸支援艇 ルナダイバースティングレイ“ムーン スノウマン”
製作・文/横山宏
ルナダイバースティングレイ“ムーン スノウマン”
●発売元/ハセガワ●7590円、発売中●1/35、約30cm●プラキット
[Ma.K.in SF3D]EXPLANATIONS Vol.98
『Ma.K.』ロービジ塗装
今回はロービジ塗装についての解説です。ロービジはlow visibilityの略で、元来は視界不良という意味です。そこから転じて、敵からの視認性を低下させるために彩度の低い塗装を施した機体を指します。原色を使った派手で目立つ塗装とは真逆の地味で目立たない色の塗装というとわかりやすいかもしれません。現用機ではF-14Aトムキャットのロービジ機が有名で、ハセガワから1/72のプラキットが発売されました。架空のロボットではRX-78-3 G-3ガンダムやゼータプラスC1型が広く知られたロービジ機と言えます。
ロービジ塗装について横山先生に伺うと、「“ロービジ”って言葉は海外の軍人に通じるかわからないけど、日本の飛行機ファンや模型ファンが使ってる印象があるね。彩度の低いロービジ塗装での実験を経てトムキャットが一気にロービジ塗装になったんですよ。MAXさんが『色褪せしやすい色を塗装すると塗り直すたびにものすごいお金がかかるのでグレー系のほうが塗り直しの回数が少なくなるからじゃないか』って推測してたけど、そういう側面もあってロービジ塗装が台頭してきたんじゃないかな。戦争になると敵からの視認性が低くてコストがあまりかからないならそれに越したことはないからね。SF的に考えると、AIが進化すればするほどロービジ機に欺かれるようになっていく気がします。未来戦になるとロービジ塗装は本当に効果があるのか、それともメンタル的に優位になれるものなのか考えるのもおもしろいかもね。そういえば小林(誠)君もよくロービジ塗装してたなあ。原色をいっぱい使うとどうしてもオモチャっぽく見えるから、ロービジで塗るとカッコよく見えるんだよね」と答えてくれました。
横山先生はルナダイバーをロービジで塗ったのを皮切りに、ニンジャ、ルナガンス、キャメルと月面用兵器の本体を立て続けにロービジで塗装しています。『Ma.K.』にはインパクトの強い色で塗装された機体もあり、それもまた魅力的なのですが、彩度の低いロービジ機にはモノクロ画像で見た『ウルトラQ』の怪獣のような、いぶし銀のカッコよさがあります。ロービジ塗装が『Ma.K.』の新たなスタンダードのひとつとして定着して、もう一機はロービジで塗ってみようという人が今後増えるのではないでしょうか。
文/KATOOO(レインボウエッグ)
横山氏のキャメル新規作例を公開!!
まもなく再販される1/20キャメル。今月は横山氏の新規作例を公開!! コクピットのレスキューボールをビリヤードの8ボールに見立て、今月号の横山氏のルナダイバー同様ロービジ塗装で仕上げている。キットには8ボール機を再現するものなど新規のシルクスクリーンデカールが付属する。
月面用戦術偵察機LUM-168キャメル“オペレーション・ダイナモ”
●発売元/ハセガワ●8140円、4月下旬予定●1/20、約22cm●プラキット
宇宙用ダックスフント“シュバルツフント”の作例がキット化!!
本誌2021年2月号「Ma.K. in SF3D」に掲載された宇宙用ダックスフント“シュバルツフント”が早くもキット化!! MAX渡辺がダックスフント頭部をアルタイルに付けた作例は横山氏に“シュバルツフント(黒い犬)”と命名された。横山氏はハセガワにキット化の要望を出したことを誌面で公言しており、異例の早さでのプラキット化実現となった。
キットは限定生産で新規シルクスクリーンデカールと塗装カードが付属する。
宇宙用ヒューマノイド型無人邀撃機グローサーフント“シュバルツフント”
●発売元/ハセガワ●5720円、7月下旬予定●1/20、約15cm●プラキット
©Kow Yokoyama 2021