HOME記事スケールモデル空飛ぶ棺桶と呼ばれた「ブロック MB.210 爆撃機 (初期型)」をキットレビュー! 主脚柱を後付けできる様に改造し、軽くウォッシングして仕上げる!【アズール・フロム 1/72】

空飛ぶ棺桶と呼ばれた「ブロック MB.210 爆撃機 (初期型)」をキットレビュー! 主脚柱を後付けできる様に改造し、軽くウォッシングして仕上げる!【アズール・フロム 1/72】

2025.07.23

ブロック MB.210爆撃機(初期型)【アズール・フロム 1/72】●加藤浩 月刊ホビージャパン2025年8月号(6月25日発売)

ブロック MB.210 爆撃機 (初期型)

フランス国産「空飛ぶ棺桶」爆撃機が
仏メーカーから新キットで登場

 第二次大戦後にミラージュ戦闘機などで欧州を代表する航空機メーカーとなったダッソー社は、戦前はブロック社として活動していた。第二次大戦時のフランス空軍主力爆撃機ブロックMB.210がアズール・フロムから1/72スケールでリリース。クラシカルかつユニークなスタイルのフランス機を楽しめる!

ブロック MB.210 爆撃機 (初期型)
俯瞰 前側
機首1
▲爆撃手の照準などため窓を多数設けて視界を確保した機首。上部には半球型の旋回機銃座が設置されている
ノーム・ローム14K空冷星型14気筒エンジン
▲角形のエンジンナセルに搭載されたノーム・ローム14K空冷星型14気筒エンジン。初期生産機は集合排気管を装着していたが、後期生産機では作例のように単排気管に変更されている
ブロック MB.210 爆撃機 (初期型)
俯瞰 後ろ側
▲フランスのメーカー、アズール・フロムならではのMB.210キットだが、初期型の他にも、ルーマニアやヴィシー政権の「後期型」、1940年5月のフランスの戦いに参加した「アットウォー」も発売中だ
ブロック MB.210 爆撃機 (初期型)
前面
▲合計289機が生産されたMB.210だったが、エンジンの出力不足や不慣れな乗員が原因で事故が多発、「空飛ぶ棺桶」とまで酷評された
ブロック MB.210 爆撃機 (初期型)
背面
▲キットは3種類のマーキングを用意。いずれも全面ダークグリーン塗装の第二次大戦直前のフランス空軍所属機を再現している。組み立て時の注意点として、四角い断面の胴体は事前に内部隔壁パーツのすり合わせと仮組みを慎重に行っておくこと。主翼を保持する桁はプラ板で追加の補強を追加。主脚柱は取り回しを考え後付けできるように改造した
機銃座
▲胴体中央背面に装備された半球型の機銃座。機関銃は当時のフランス空軍標準の7.5mm MAC34を搭載する
兵装アクセサリー
▲兵装アクセサリーは、胴体下に大型爆弾×2個、主翼下面に小型爆弾×4個が付属。胴体下面後方の球形銃座や、種車輪後方のスパッツ型カバーにも注目
赤丸に白うさぎが荷物を肩掛けにしている可愛らしいマーキングを胴体量側面に描いたGB II/23(第23航空大隊第II爆撃グループ)の14号機を選択
▲作例は、赤丸に白うさぎが荷物を肩掛けにしている可愛らしいマーキングを胴体量側面に描いたGB II/23(第23航空大隊第II爆撃グループ)の14号機を選択した
機首2
▲防御火器として機首、胴体上下面の3ヵ所に7.5mm機銃座を装備。単排気管とカウリングはパーツの合いが良くないので、排気管の基部に切れ目を入れて修正した

上級者向け? ちょっとした工夫で俄然作りやすくなる

実機について
 1930年代のフランスの爆撃機は、現代からみると技術進化の脇道を突き進んでいる感があり、そこから生み出された理解に苦しむ変な機体が多く、それらに強く惹かれます。今回ご紹介のブロック MB.210もそんな機体のひとつです。
 1932年に仏海軍の雷撃機要求に対応して自主開発された機体がルーツで、のちに仏空軍向け爆撃機として改設計され1935年12月に初飛行します。それからすぐに80機の量産発注を受け、最終的には257機が生産されました。日本式に言えば九五式爆撃機ということになります。しかし、技術革新の激しいこの時代、全金属製とはいえ四角い胴体の旧態依然とした機体はすぐに旧式化してしまいました。エンジンの不調や可変ピッチプロペラの操作ミスから事故が続発し「空飛ぶ棺桶」などと揶揄されたりしながら1939年9月の第二次大戦開戦時にも238機が第一線に配備されていました。しかしとても第一線で使える代物でなく、すぐに訓練部隊に配備替えとなります。結局大した働きもせずに終わり、ヴィシー政権では少数機が標的曳航機として使われました。この他、ルーマニアには20機輸出され、1936年のスペイン内乱では社員が勝手に残業して作った員数外の3機が人民戦線側に引き渡されたとのことです。映画『希望』(1939年)では、格納庫内でエンジンを取り外された状態のMB.210が登場します。
 そんな冴えない戦歴の機体ですが、1960年代にエレールから1/72キットが発売され、発売元を変えながら何度も再販されています。手に取られた方もおられると存じますが、いかんせん60年近く昔のキットなので、あちこち組みにくいやら再現度に乏しいやらで、取り組むのがためらわれる代物でした。
 そこに今回フランスのメーカー、アズール・フロムより、新金型でMB.210が発売されました。今回製作したのは初期型とのことですが、マーキング違いの後期型も発売されました。
キットについて
 パーツの印象はさすがに最新キットらしいかっちりしたモールドで好感が持てます。しかし、手を動かし始めると、思った以上にパーツの合いが良くなく、各部のすり合わせに難儀します。胴体の組み立て時には内部隔壁部品は全周を削り、銃座の取り付け部分も広げておかないとあとで取り付けが困難になるので、事前のパーツのすり合わせと仮組みは慎重に行ってください。コクピット内のディテールアップはシートベルトを追加した程度にしました。
 主翼は両翼ともに桁で保持するように配慮されたパーツ分割なのですが、それだけでは主翼を維持できないので、桁の後ろにプラ板などで追加の補強をしました。エルロンにはヒケが目立つのでパテで埋めて紙ヤスリで修正し、消えたリブはプラ棒で再現しました。
 キットにはタブとエルロンなどの操作ロッドがエッチングパーツで用意されているので塗装後に接着してタッチアップで仕上げました。
 主脚柱はエンジンナセルにはさみ込むように指定されていますが、取り回しが面倒なので、主脚柱を後付けできる様に改造し、ナセルを貼り合わせてしまいます。排気管とカウルはパーツが合わないので、排気管の基部に切れ目を入れて矯正しました。ナセルとの接合もすり合わせが必要です。
塗装について
塗装はキット指定のGSIクレオス Mr.カラーC23のダークグリーンを全面に塗装し、カウリングとナセルはC8シルバーで塗装しました。、プロペラは質感を変えたかったのでガイアカラー スターブライトジュラルミンで仕上げました。
 マーキングはキット指定のGB II/23(第23航空大隊第II爆撃グループ)の14号機。赤丸に白うさぎが荷物を肩掛けにしている可愛らしいマークです。実機写真でも激しく使い込まれたものは見当たらないので、激しいウェザリングなどは控え、軽くウォッシングして半ツヤクリアーで押さえてみました。
 完成した機体を眺めると、牧歌的なデザインの機体と可愛いマーキングに不釣り合いな物騒な爆弾に戦争向けの飛行機じゃないなぁと思った次第です。

アズール・フロム 1/72 スケール プラスチックキット

ブロック MB.210 爆撃機 (初期型)

製作・文/加藤浩

ブロック MB.210 爆撃機 (初期型)
●発売元/アズール・フロム、販売元/ビーバーコーポレーション●9900円、発売中●1/72、約26cm●プラキット


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加藤浩(カトウヒロシ)

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