HOME記事キャラクターモデルプラノサウルス「トリケラトプス」を化石標本を参考に工作&塗装し徹底改修! トリケラトプスの骨格本来の魅力を再現する!!【プラノサウルス復元プロジェクト】

プラノサウルス「トリケラトプス」を化石標本を参考に工作&塗装し徹底改修! トリケラトプスの骨格本来の魅力を再現する!!【プラノサウルス復元プロジェクト】

2025.06.10

プラノサウルス復元プロジェクト/トリケラトプス【BANDAI SPIRITS】 月刊ホビージャパン2025年7月号(5月23日発売)

前ページに戻る

■改造

骨格図

トリケラトプス骨格図

骨格図に素組みしたキットの比較

骨格図を基に素組みしたプラノサウルス トリケラトプス

 ヘル・クリーク層をはじめ、北米中西部の白亜紀末の地層では膨大な数のトリケラトプスの化石が発見されているが、保存のよいものの大半は頭骨だけである。これらトリケラトプスの「顔つき」は標本によってかなり異なり、日本国内の博物館に限ってもさまざまな顔のトリケラトプスを見ることができる。
 こうした豊富な頭骨化石とは裏腹に、トリケラトプスの胴体や四肢がよく揃った化石はかなり珍しい。全身のかなりよく揃った化石であっても、関節が外れてバラバラになっていたり、地層の圧力で潰れていたりと、完全無欠に近い状態のトリケラトプスの化石はほとんど知られていないのが現状だ。
 それでも、近年の研究によって、トリケラトプスをはじめとする角竜の骨格の立体的な構造がかなり明らかになってきている。そうした最新研究の成果はプラノサウルスでも随所に盛り込まれているが、キットの仕様から来る制約によって、不十分な再現に留まってしまっている部分も少なくない。
 
 今回は、キットの頭骨を「推し」トリケラトプスのひとつ「Yoshi’s Trike」ことMOR 3027(レプリカが御船町恐竜博物館に展示)の顔つきに寄せつつ、胴体や四肢についてもより最新研究に沿った形・実際の化石標本に近しい形に改造していく。全体のプロポーションについては骨格図とすり合わせていくことになるが、肋骨をはじめとする各部の立体感は実際の化石や復元骨格、さらには論文を注意深く参考としていこう。

ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中
▲まずは頭骨から、キットパーツと骨格図を比較して改造ポイントを見極める。Yoshi’s Trikeはトリケラトプスの中でも屈指の上眼窩角(目の上の角)の長さが特徴だが、そもそもキットとは顔つきがかなり異なる。下アゴは「恐竜ビルド」の都合でひと周り小さいので、そこも手を加えていこう
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中2
▲上眼窩角を延長する前に、顔つきを改造していく。エッチングソーでキットの頭骨を要所要所で切断し、骨格図とすり合わせながら調整していこう。Yoshi’s Trikeの場合、「フリル」(後頭部の薄い骨の構造)を寝かせるようにオフセットするとかなり似るようだ
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中3
▲切断した頭骨のパーツを接着剤で固定し、パテを盛って推しの形状に寄せていく。パーツのサイズが小さいので、盛りながら整形するのは難しい。大まかに盛ってから、硬化後に彫刻刀やデザインナイフ、ヤスリで削り込んでいこう
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中4
▲胴体にも手を加える。肋骨を1本ずつカットするのは大変だが、左右に大きく膨らんだ肋骨は再現しがいがあるはず。成型の都合で肋骨のモールドと胴椎の個数がズレているので、そこも調整する
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中5
▲一連の棘突起は前回のティラノサウルスと同様、同縮尺でプリントした骨格図をガイドに、プラ板で新造することにした。肋骨のブロックは肩甲骨を削り落としたのち(肩関節は温存する)、1本ずつエッチングソーで切り離し整形する
web記事はコチラ
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中6
▲バラした肋骨を手で曲げて整形し(模型はパワーだぜ)、胴椎に再接着する。キットと比べてずっと幅広になったが、この状態に組み立てられた復元骨格はまだ少ない。さまざまな資料からあるべき姿を探る様子は古生物学者そのものだ
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中7
▲肋骨の加工の際に肩帯は削り落としてしまったため、プラ板で新造する。棘突起と同様、骨格図をガイドにして切り出そう。肩甲骨の中央部には筋肉の付着点となる発達したキールが走っているため、削り込んで再現する
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中8
▲鳥口骨と胸骨はキットパーツを使い、肩甲骨とともに肋骨に接着する。肩帯と肋骨の厳密な位置関係は不明だが、肋骨のやや上方、肩帯が筋肉や靭帯で肋骨を吊り下げるイメージで組み付けるのがよさそうだ
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中9
▲肩甲骨と肋骨だけでなく、烏口骨と胸骨(そしてほぼ化石化しない肋軟骨)の配置はよくわかっていない。角竜の場合、胸骨がハの字型に関節して化石化している例が多く、生前もそうした配置だったのかもしれない
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中10
▲キットのトリケラトプスは成体をイメージしたずんぐりした体型だが、今回イメージしたYoshi’s Trikeはまだ成長途上にある亜成体で、成体と比べると四肢(や上眼窩角)が長めのようだ。成体とは異なる、すらりとした四肢を目指そう
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中11
▲キットは成型上の都合から、手の角度が実際とはやや異なる。エッチングソーで切り離し、断面を整形して再接着しよう。後肢の指も一体成型で埋まっている部分を削り込むとよい。上腕骨と大腿骨はプラ板をはさんで延長する
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中12
▲接着剤がしっかり固まったところで整形する。トリケラトプスの手の指は、第I指(親指)から第III指(中指)が前方を向いた状態(手の甲全体は外側に向く)になっていることが近年の研究で明らかになった
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中13
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中14

▲角竜に限らず、恐竜の腸骨は上(背側)から見ると肋骨のカーブにぴったりと沿うようになっている。また、角竜の恥骨は下(腹側)から見ると肋骨のカーブに沿うよう、逆ハの字になっている。延長した肋骨に腸骨がよくフィットするように、実際の化石の様子を参考にしてパテを盛って整形する。表面処理と化石風のディテール追加を兼ねて、表面に溶きパテを塗っておくと雰囲気が出る。恥骨はキットのまま逆ハの字にしても肋骨に届かないので、途中で切断してからプラ板をはさんで延長する。これで、トリケラトプス本来の「太かっこいい」姿を復元することができた

ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」製作途中下地まで終了
▲全身を組み上げてサーフェイサーを吹く。これで本体の加工は終了だ

■塗装

ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」塗装途中
▲前回のティラノサウルスと同じヘル・クリーク層をイメージして、暗いブラウン系で全体を塗装する。Yoshi’s Trikeの実際の復元骨格をイメージして、やや赤身の強い色でまとめた
web記事はコチラ
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」塗装途中2
▲暗色でウォッシングをして影に色を乗せてから、サンディブラウンのドライブラシで細部の立体感を強調する。腸骨に塗った溶きパテがいい仕事をしてくれたようだ
ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」
▲これで完成!
頭骨に加えて肋骨や骨盤の徹底改修によって、博物館でもなかなか見られない、トリケラトプスの骨格本来の魅力を再現できた。読者のみなさんも、まずは「推し」トリケラトプスの顔からチャレンジしてみよう
Triceratops sp. MOR 3027 “Yoshi’s Trike”トリケラトプスの未定種(MOR 3027)
▲2010年から2011年にかけてモンタナ州立大学ロッキー博物館によって発掘されたトリケラトプスの骨格MOR 3027は、発見者の日本人にちなんで”Yoshi’s Trike”の愛称で呼ばれている。この標本は前肢と尾を欠いているが、依然としてトリケラトプスとしてはかなり完全な部類である。
 トリケラトプス属は今日、鼻角の短い模式種T. ホリドゥスと、より後の時代に栄えた鼻角の長いT. プロルススの2種が知られている。Yoshi’s Trikeにはこれらの中間的な特徴がみられ、産出した地層の時代もT. ホリドゥスとT. プロルススの栄えた時期の間にあたる。これらのことから、Yoshi’s TrikeはT. ホリドゥスからT. プロルススへの進化の途上にあったものだと考えられている。

Triceratops sp. MOR 3027 “Yoshi’s Trike”

トリケラトプスの未定種(MOR 3027)
●角竜類 ケラトプス科●全長約6.5m●白亜紀後期(マーストリヒチアン後期)約6650万年前●アメリカ モンタナ州北東部

ウラベヒロト(アーミック) 製作「トリケラトプス」

BANDAI SPIRITS プラスチックキット “プラノサウルス”

トリケラトプス

製作/ウラベヒロト(アーミック)
骨格図・解説/G. Masukawa(GET AWAY TRIKE!)

プラノサウルス トリケラトプス
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン●1595円、発売中●約16cm●プラキット


\この記事が気に入った方はこちらもチェック!!/

 まるで本物! 

【新連載】「プラノサウルス復元プロジェクト」!ティラノサウルスを化石標本や骨格図をもとに工作&塗装!まるで本物のような仕上がりに!

プラノサウルス復元プロジェクト 第一回 ティラノサウルス 実際の化石や骨格図を元に、BANDAI SPIRITS「プラノサウルス」の骨格ビルドをよりリアルに“復元”する連載企画[…]

 骨と肉両方楽しめる! 

ティラノサウルスの本格プラモ! 骨と肉、両方楽しめる「プラノサウルス」【OPEN THE BOX 気になるプラモを開けてみよう】

骨と肉、どっちも触れて楽しいプラモ! 新旧問わずプラモの箱を開けてみようという本連載。今回はBANDAI SPIRITSの本格恐竜プラモ「プラノサウルス」シリーズから、ティラノサウルスを[…]

\オススメブック!!/

ホビージャパンエクストラ30恐竜表紙

ホビージャパンエクストラ vol.30

●発行元/ホビージャパン●1540円、発売中

詳細はこちら

ホビージャパンエクストラ30恐竜表紙

粘土で作る! いきもの造形 恐竜編

●発行元/ホビージャパン●3080円、発売中

詳細はこちら

© BANDAI SPIRITS

1 2
この記事が気に入ったらシェアしてください!

G. Masukawa

オススメの書籍

月刊ホビージャパン2025年7月号

ご購入はこちら

ホビージャパンエクストラ vol.30

ご購入はこちら

粘土で作る! いきもの造形 恐竜編

ご購入はこちら
PAGE TOP
メニュー