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日本海軍軽巡洋艦 多摩 昭和19年
JAPANESE NAVY LIGHT CRUISER TAMA 1944

2021.04.24

日本海軍軽巡洋艦 多摩 昭和19年/捷一号作戦【フジミ模型 1/700】 月刊ホビージャパン2021年5月号(3月25日発売)

ルソン島沖に沈んだ「球磨」型2番艦

 2020年完全新金型でフジミ模型の艦NEXTシリーズに加わった「球磨」型軽巡2番艦の「多摩」。太平洋戦争時には艦齢20年を超えるベテランだったが、他の5,500トン級と同様にさまざまな任務に奔走した。キットは「球磨」と同様に多色成型のスナップフィット式、また最新の考証により昭和19(1944)年10月、捷一号作戦(レイテ沖海戦)で小沢艦隊として行動、米空母機の雷撃で損傷後、米潜水艦の雷撃により沈没した当時の姿を再現しているが、今回の作例では各種資料を参照してさらなる考証と推定を加え、「多摩」最終時の真の姿に肉薄する!

フジミ模型 1/700スケール プラスチックキット

日本海軍軽巡洋艦 多摩 昭和19年/
捷一号作戦

製作・文/春園燕雀

日本海軍軽巡洋艦 多摩 昭和19年/捷一号作戦
●発売元/フジミ模型●4620円、発売中●1/700、約23.2cm●プラキット


①平面形を九角形から八角形へ修正(公式図面)
②デリックアームを追加(公式図面)
③底面を削って0.7mmほど薄く(公式図面)
④2mm後ろへずらす(公式図面)
⑤前と外側へ各1mmずつ移動。側壁も含む
(公式図面)
⑥25mm単装機銃を追加(調査表)
⑦甲板後端の衝立?は不要(写真)
⑧横桁は三角形平面(写真)
⑨中発動艇×1。位置は推定(工事記録)

⑩小発動艇×1。位置は推定(工事記録)
⑪9mカッター×3。位置は推定(工事記録)
⑫前後間隔を4mm詰め、
縁の灰色部分から生やす(公式図面)

●凡例
(公式図面):昭和19年3月一般艤装図
(調査表):各艦機銃、電探、哨信儀等現状調査表
(写真):実艦写真
(工事記録):既成艦船工事記録



①高角砲周囲に操作台追加
(「木曽」最終時写真や「松」型駆逐艦図面など)
②増設機銃周りに側壁と弾薬箱追加
(「北上」最終時図面など)
③単装機銃と干渉するため、2.5m測距儀を後ろへ移動(機銃据付要領図の設置寸法などから)
④魚雷発射管上面へ防弾板追加
(他艦への訓令や「天龍」の写真から)

⑤後ろ1対を大型ダビットへ換装
(昭和19年3月図面のボート配置から)
⑥舷側沿いの単装機銃外側に側壁追加
(「陽炎」型・「秋月」型駆逐艦写真など)
⑦13mm単装機銃脇に小型弾薬箱追加
(特型駆逐艦機銃増備図などから)

●凡例
()内は参考資料


▲主砲周辺のリノリウムの目地パターンが実物と異なるため、0.1mm銅線で入れなおしている
▲ブリッジの窓のクリアーパーツは乱反射でくもって見えるのを防ぐため、上下面を黒く塗っている
▲甲板の縁は0.3mmプラ板に置き換えたが、右舷は実物も厚みがあるように見えるため0.75mm厚とした
▲ブリッジ(艦橋)周辺。前マストはプラ材や金属線でシャープに。レーダーはエッチングパーツに置き換え
▲艦中央部。魚雷発射管に防弾板取り付け、単装機銃に側壁追加、大型ダビットへの交換などを行っている
▲艦尾。中発動艇はピットロードの艦船装備セットより。後マスト下部機銃座の形状修正などを行った

■半世紀ぶりのニューキット
 接着剤不要・色分け済みという現代的フォーマットの艦船模型シリーズ“艦NEXT”から「多摩」が発売されました。シリーズ初の巡洋艦で、同時期に発売された姉妹の「球磨」が大戦前半の姿なのに対し、「多摩」は対空兵装を強化した最終時頃の姿となっています。また、このスケールの「多摩」のキットとしてはタミヤ以来実に半世紀ぶりであり、新時代らしい精細でメリハリの利いたモールドが目を惹きます。
 一方、リサーチの部分では多少の矛盾や混乱が見られ、本作例ではそのあたりを整理しつつ、市販パーツで簡単なディテールアップを施しました。

■最終時の「多摩」には決定的資料がない
 キットは最終時と銘打っていますが、基本的な姿はその約半年前、昭和19年3月の公式図面準拠と思われます。実物の「多摩」は図面の姿ののち、マリアナ沖海戦の戦訓で対空兵装が強化されていますが、その姿は機銃配置の略図が残るのみで詳細のわかる図面や写真は一般に流通していないと思われます。
 キットは昭和19年3月の姿に機銃配置略図の差分を加えたもののようですが、ボート類をはじめいくつかの要素が不自然に感じられます。また、昭和19年3月図面には増設機銃の周囲にあるべきはずの弾薬箱や側壁が描かれておらず、キットにもありません。作例では公式図面や略図に加え、工事記録や他艦の状況などから推定を交えてできる限りキットの矛盾の解消を試みました。具体的な変更点については図解1、図解2にて図示しましたのでそちらをご覧ください。本稿では図解で示していない部分を補足します。

■連装機銃は前よりに
 後部魚雷発射管の上に取り付け指示のある連装機銃S4ですが、ボートに干渉するギリギリまで前に寄せています。これは隣にある三連装機銃U23からの推定で、こちらは図示の通り後ろに寄せています。公式図面を見てみるとこの三連装は魚雷発射管室後面の壁直上にあり、恐らく機銃の重量をこの壁で支えていると思われます。であれば、連装機銃も同様に天井ベタ置きだったとは考えづらく、発射管室開口部の前にある内部の隔壁上に位置するよう調整してみました。

■リノリウム甲板の目地は広く
 リノリウム甲板R1の後半部分の目地は0.1mm銅線で作り直しています。キットでは主砲の取り付け部分の周囲が円形に区切られていますが、実際の写真では主砲の周囲だけ長方形に敷物が重ね張りされています。また、重ね張り部分は目地の向きが艦首尾と並行しています。本来なら主砲の周囲だけ修正すればいいのですが、キットの甲板目地は実際より狭く、主砲の軸位置との辻褄が合いません。
 日本海軍のリノリウム材の納入幅は1/700換算で約2.5mm、写真を見てもおおむねそれくらいの間隔で目地が走っているのですが、キットはなぜか2mm間隔でモールドされています。本来ならすべて2.5mm間隔に直すところですが大工事になってしまうため、後部主砲まわりのみの工作としています。また、旧カタパルト基部U15の前、もともと5番主砲のあった部分にも同じく重ね張りを再現しています。艦首の主砲については複数の同型艦が円形の目地で処理しており、「多摩」の写真は見つけられませんでしたのでキットのままとしました。

■ボートの配置について
 ボートの構成は図解の通りですが、位置は推定です。カッター×3はどのダビットからでも吊れそうですが、問題は2つの発動艇です。
 その名の通りエンジンを積んでいるぶん重く、カッター用のダビットでは支えきれないはずです。となると、もともと内火艇を吊っていた後列のダビットに置くのが妥当です。また説明書でも触れられていますが、前列のダビットの場所には機銃が追加されたため、ボートが置けません。従っていずれか1隻はダビットのない場所に置く必要があります。準同型艦の「五十鈴」がカタパルト跡地に発動艇を置き、もともと飛行機用だった後マストのデリックで揚収した例がありますので、それに倣いました。
 中発動艇はピットロードの艦船装備セット、小発動艇はWL共通パーツから持ってきました。またカッターはキットのものが幅広すぎて煙突横の通路が不自然に狭くなってしまうため、これもWL共通パーツです。

■リサーチ面以外の工作
 高角砲や各機銃、ボートダビットをファインモールドのナノ・ドレッドに、マスト上のレーダーを同社のエッチングパーツに置き換えています。単装機銃の基部には「松」型駆逐艦を参考に円盤状台座を追加しました。また、マスト上部はプラ材や金属線で細くシャープにし、各甲板の断面は薄く削っています。
 ブリッジの窓は、クリアーパーツそのままでは内部の乱反射で白くくもって見えるので、完成後に隠れるパーツの上下面を油性マジックで黒く塗り乱反射を抑えています。カーモデルやエアモデルで使われる手法ですが、手軽で効果的なので覚えておくと便利ですよ。

■20年の歴史が刻まれた「ごちゃ混ぜ」
 いままで1/700の「多摩」のキットは開戦時を再現したタミヤのものしかありませんでした。フジミ模型のキットは多少混乱があるものの要点は押さえてあり、最終時の「多摩」を再現するハードルが大きく下がりました。艦齢20年の老兵ながら大戦末期まで奮戦した武勲艦であり、新旧入り混じった兵装を満載する姿には独特の魅力があります。本稿で示した通り、最終時の「多摩」には不明な要素が多々ありますが、それらを自分なりに調べ、解釈しながら20年の生涯に思いをはせるのもまた一興ではないでしょうか。

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春園燕雀(ハルゾノエンジャク)

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