HOME記事スケールモデル陸上自衛隊の顔「74式戦車」とは?日本国産の第2世代主力戦車について詳しく解説! 【いまさら聞けないすごいヤツ】

陸上自衛隊の顔「74式戦車」とは?日本国産の第2世代主力戦車について詳しく解説! 【いまさら聞けないすごいヤツ】

2025.04.15

いまさら聞けないすごいヤツ!!/陸上自衛隊74式戦車●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2025年5月号(3月25日発売)

いまさら聞けないすごいヤツ!!

 陸上自衛隊 74式戦車 

イラスト/大森記詩

「名前は知ってるけどどんなものなんだろう?」「今さら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
 今回は、前回の記事でお届けした「陸上自衛隊 61式戦車」に続く陸上自衛隊の戦車「74式」をピックアップ! 登場後長らく陸上自衛隊の顔として愛されてきた74式がどんな戦車かさっそく見ていきましょう。


74式戦車

車体長/9.41m 
全幅/3.18m 
全高/2.25m 
重量/38t 
速度/53km/h 

行動距離/300km 
主砲/51口径105 mmライフル砲L7A1 
車体前面装甲/約80mm
乗員/4名


陸上自衛隊 74式戦車 G型 第1機甲教育隊 第4中隊車両

陸上自衛隊-74式戦車-G型-第1機甲教育隊-第4中隊車両左側面イラスト図
▲試作1両、4両が制式に改修された74式戦車の最終改修型。現在は駒門駐屯地で1両が展示されている
陸上自衛隊-74式戦車-第1戦車大隊-第2中隊車両正面イラスト図
陸上自衛隊-74式戦車-第1戦車大隊-第2中隊車両背面イラスト図

陸上自衛隊 74式戦車

解説/宮永忠将

陸上自衛隊 74式戦車 第1戦車大隊 第2中隊車両

陸上自衛隊-74式戦車-第1戦車大隊-第2中隊車両右側面イラスト図

 日本国産の第2世代MBT 

 戦後初の国産戦車、61式戦車は日本の防衛事情に良くマッチしていた。しかし戦後約10年間、兵器開発が停滞して他国に後れを取っていたので、部隊配備の頃にはM60パットンやレオパルト1、T-62などの戦後第2世代MBT(主力戦車)が登場していた。そこで、これらのライバルを超える国産第2世代MBT開発がすぐに始まった。これが74式戦車だ。日本に軍事侵攻する可能性が高いソ連のT-54/55戦車を確実に撃破できる性能獲得が、開発目標とされた。
 まず戦車砲にはイギリス、ロイヤル・オードナンス社の51口径105mm戦車砲L7A1が選ばれた。これは西側第2世代戦車における実質的な標準戦車砲で、日本製鋼所がライセンス生産を担当する。これで攻撃力は世界レベルだ。
 また、機動性は最高速度よりダッシュ力を重視した設定とされた。この時に、61式戦車の開発ではかなり苦労したエンジンやトランスミッションへの要求は、比較的トラブルなくクリアしている。これは、1960年代から70年代にかけて急速に日本が力を付けてきた自動車産業を反映している。武器三原則により海外市場への売り込みができないのが日本兵器の弱点であったが、74式戦車以降、日本戦車の開発が順調であったのは、自動車を中心とした各種重工業の発展の賜であった。

 敵弾に当たらない工夫 

 次に74式戦車の防御力であるが、第2世代戦車の開発時期である1960年代には、貫通力にすぐれた新型の対戦車砲弾や誘導式対戦車ミサイルが登場し、また74式戦車が最初から搭載していたレーザー測距儀や弾道計算コンピューターなど、射撃管制装置の電子化によって命中精度も向上していた。その結果、戦車は「頑丈な装甲」で物理的に堪えるのではなく、ダッシュ力により頻繁に居場所を変えて、敵に的を絞らせない戦い方を選択した。「当たらなければどうと言うことはない」のが第2世代MBTの戦いであった。
 74式戦車もこれを踏襲しているが、さらに弾に当たりにくい工夫として、シルエットを可能な限り低く抑え、なんとMBTとしてはスウェーデンのSタンクに次ぐ車高の低さを実現した。ただしこの場合、砲を水平より下方向に撃つための俯角が取れず、斜面に隠れて敵戦車を狙う能力が低下する。しかし74式戦車は、油気圧サスペンションという姿勢制御で標準姿勢から車高を上下左右に伸縮できる。これにより地形を活かして身を隠す、忍者のような待ち伏せを得意とする。
 基本性能に優れた74式戦車は、制式化後も小改修による性能強化が続けられ、1990年代には74式戦車G型という最終バージョンが試作された。ただし、すでに後継の90式戦車が完成しており、74式をG型にアップグレードする予算は認められず、試作を含め5両しか作られなかった。そして2024年3月、873両製造された74式戦車はすべて退役した。完成からほぼ半世紀、日本の国防の最前線にあり続けた傑作戦車であった。


イスラエル・タル


イスラエルの軍人で、第一次から第四次まですべての中東戦争を戦い抜いただけでなく、主力戦車メルカバの開発など、イスラエル機甲部隊の発展に尽力し、「イスラエル戦車の父」と称えられる。1988年に日本の雑誌取材で74式戦車について問われると「なかなか良い戦車」だと認めた上で、戦車砲弾が性能不足であると指摘し、同じ105mm戦車砲でT-72を撃破したイスラエル製砲弾を勧めたという逸話を持つ。全周を敵国に囲まれ砂漠や荒地を戦場とするイスラエルとは条件が異なるものの、戦車のプロフェッショナルも、74式戦車には一目置いたのだ。


74式を思いっきり楽しめる
ホビージャパンのプラモデル

 ホビージャパンが精力的にスケールモデルをキット化している「HJ MODEL KIT SERIES」。74式戦車は本シリーズの主力アイテムで、車両4種&アクセサリーキット1種と74式を選び放題な状況になっています。特にこの近代化改修タイプである「74式戦車 G型」は新規パーツも豊富でオススメ!

HJMミリタリーシリーズNo.5-1/35-陸上自衛隊-74式戦車-G型説明書
▲キットには説明書の他に、74式戦車 G型の特徴的な改修ポイントをわかりやすく解説した別紙が付属。これを読むだけで特徴的装備をすぐに確認できます
HJMミリタリーシリーズNo.5-1/35-陸上自衛隊-74式戦車-G型サイドスカートパーツアップ
▲74式戦車のキットをベースに、豊富な新規パーツをセット。特徴であるサイドスカートのシャープさも素晴らしいです
HJMミリタリーシリーズNo.5-1/35-陸上自衛隊-74式戦車-G型油気圧サスペンションパーツアップ
▲キットは74式の特徴である油気圧サスペンションの姿勢制御ギミックを楽しめるよう、足周りには可動機構が搭載(非可動も選択可能)。そのため履帯も車体の姿勢に合った弛みなどを表現できるようにプラ製の可動履帯になっています
HJMミリタリーシリーズNo.5-1/35-陸上自衛隊-74式戦車-G型履帯パーツ
▲履帯をきれいに組み立てられるように、プラ製の治具パーツをセット
HJMミリタリーシリーズNo.5-1/35-陸上自衛隊-74式戦車-G型ディテール部分アップ
▲ディテールもキレキレ。現代の成型技術で生み出された本キットは、まさに74式プラモの決定版です

HJMミリタリーシリーズNo.5 1/35 陸上自衛隊 74式戦車 G型

●発売元/ホビージャパン●9460円、発売中●1/35、約26.6cm●プラキット
※4月現在市場在庫のみ


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