戦後初の国産戦車「陸上自衛隊 61式戦車」とは? 日本防衛に化したその性能と歴史を知ろう!【いまさら聞けないすごいヤツ】
2025.03.11いまさら聞けないすごいヤツ!!
陸上自衛隊 61式戦車
イラスト/大森記詩
「名前は知っているけど、どんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
今回は、戦後初の国産戦車である「陸上自衛隊 61式戦車」にフォーカス。特撮映画でも活躍したことから、普段戦車模型を作らない人にも「あ! 見たことある」と言われる戦車です。戦後日本戦車の礎となる本車両はどのような戦車なのか、早速見ていきましょう。
61式戦車
車体長/6.30m
全幅/2.95m
全高/2.49m
重量/35t
速度/45km/h
行動距離/200km
主砲/61式52口径90mm戦車砲
車体装甲/55mm
乗員/4名
第3 戰車大隊 第4中隊 滋賀県高島郡(現 高島市)今津駐屯地
陸上自衛隊 61式戦車
解説/宮永忠将
アメリカ戦車ではダメなわけ
第二次世界大戦に敗れた日本は、1950年に勃発した朝鮮戦争による国際情勢の変化の中で再武装が求められた。そして独立後の1954年には自衛隊が発足するわけだが、それまで国産兵器開発は禁じられていたので、陸上自衛隊ではアメリカの中古戦車などを使わなければならなかった。
しかしこれが実に不都合だった。供与された戦車はM4A3M8シャーマンなど、第二次大戦の思想で作られた兵器だし、整備にはヤード・ポンド法で規定された部品や治具が必要だし、車内は日本人の体格に合わなくて、使いにくいことこの上ない。
そこで1955年から戦車の国産化に踏み切り、これが61式戦車の起点となる。「ST」と呼ばれた国産戦車への要求は重量35トン、戦車砲は口径90mm、強力な空冷ディーゼルエンジンを搭載というもの。当時、主要国の戦車は40トン以上が主流であり、重量=装甲の充実度なので、STは装甲が薄いことが明白。だけど、これはバズーカや無反動砲を歩兵が扱えるようになり、また命中率に優れた対戦車ミサイルも実用化される状況下では、装甲の厚さより、ダッシュ力の良さでかわすべき。つまり、当たらなければどうということはない、という設計思想を反映していたのである。
日本防衛に特化した国産戦車
開発では、まずST-A1とST-A2の二車種が試作された。ST-A1は車高2.2mで、ST-A2より30cmも低く、戦車戦では有利なのだけれど窮屈すぎる。そこで今度はST-A2をベースに、ST-A3とST-A4の二種類を試作して、最終的にST-A4がベース車両に選定された。
こうして1961年4月に61式戦車が完成した。西暦の下二桁に由来する命名だ。敗戦から10年のブランクを経ての戦車開発でありながら、エンジンから戦車砲まで、主要コンポーネントのほとんどで国産化を達成した、偉大な戦車の誕生である。特に61式52口径90mm戦車砲は、砲口制退器〈マズルブレーキ〉が世界でも珍しいT字型になっていて、70年代にかけての怪獣映画に頻繁に登場する61式戦車の姿を通じて、そのアイコンにもなっていた。ちなみに旧軍アレルギーに配慮して、1962年まで自衛隊は戦車のことを「特車」と呼んでいた。
実は、61式戦車の完成に先立ち、仮想敵のソ連はT-55という100mm砲搭載の強力な戦車を開発していて、61式戦車には出遅れ感があった。だけど、大切なのは時代背景だ。まず1960年代の日本は、国道だって砂利道ばかりだし、山がちな土地だし、川に架かる橋も貧弱なものばかり。だから長距離移動には鉄道輸送が必須で、貨車に収まる大きさでなければならない。また町の外には田んぼが広がり、これも重すぎる戦車には不利な地形。こんな日本にT-55が攻め込んでも、その実力をフルで発揮するのは難しい。それに対して61式戦車は専守防衛の自衛隊で使う戦車であり、他国の戦車のような外征用の性能や装備を考える必要がない。日本を守るという目的に特化し、その国土に最高にマッチした、日本限定の最強戦車、それが61式戦車なのだ。

富士学校
開発計画初期の1955年10月に、三菱日本重工東京製作所でSTのモックアップ検討会が開かれた際、陸上自衛隊富士学校から臨時で参加した機甲科の砲術、操縦、整備担当者は、この時点でSTが目指す方向性の間違いを見て取り、陸自の戦車教育を担う富士学校の「戦車乗りの良心にかけて、本案の戦車を装備化することは同意し難い」との意見を表明。装備研究委員長はこれを受け入れ、計画は一から練り直された。本来、富士学校のスタッフは、ST開発に口を出す権限がない部外者である。しかし戦車のプロとしての熱意が、61式戦車の方向性を決めたのだ。

61式戦車の新定番として送り出されたキット
1/35 タミヤミリタリーミニチュア(以下MM)でラインナップされている61式戦車よりも後発で、現状1/35スケールの61式戦車では最新定番キットとして発売されているのがファインモールドの61式戦車。細部もプラパーツで分割し、より解像度の高い61式戦車を楽しめます。
1/35 陸上自衛隊 61式戦車
●発売元/ファインモールド●5280円、発売中●1/35、約23.4cm●プラキット
\この記事が気に入った方はこちらもチェック!!/
ギミック満載の74式

「陸上自衛隊74式戦車」新作キットを製作!豊富なギミックと緻密なディテールを存分にご覧あれ
ホビージャパン発、ギミック満載の74式をキットレビュー!! ホビージャパンが完全新金型で贈る新作キット、陸上自衛隊74式戦車。長らくリニューアルが待たれていた車両だけに、発売を[…]
ネロンガ特撮ディオラマ

ウルトラQ空想特撮シリーズ「恐怖のネロンガ」――透明怪獣ネロンガ登場――
円谷プロとしっかりタッグを組んで 大人が真剣に作ったものはダイレクトに子供に伝わります。僕自身、ウルトラシリーズを観て大いに胸をときめかせ、作家となり、ついにはフィギュアメーカー[…]