試作品展示から9年ついに商品化!「ROBOT魂<SIDE MS>MA-08 ビグ・ザム Ver. A.N.I.M.E.」開発秘話を特別インタビュー!!
2024.12.04ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E. ビグ・ザム開発秘話【BANDAI SPIRITS】 月刊ホビージャパン2025年1月号(11月25日発売)
ビグ・ザム開発秘話
ついに商品化が決定となったROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.ビグ・ザム。2015年の試作品展示から9年。その長い道のりを企画に関わるスタッフにお尋ねした。
アーミック
柳沢 仁 氏
BANDAI SPIRITS コレクターズ事業部
元木健大郎 氏
T-REX
元木博行 氏
(取材/五十嵐浩司(TARKUS)、文/徳重耕一郎)
──ビグ・ザムの商品化は、どのようにして決まったのですか?
BANDAI SPIRITS元木(以下、B元木) 商品化までの道のりとしては、まずビグ・ザムのROBOT魂化構想自体は、私が担当になる前からあったんですよ。その頃からT-REX様やアーミック様と一緒に設計やデコマス(塗装試作)の製作などに取り組んでいて、今回「ガンダム45周年」というタイミングを機に、商品化しようという流れになったわけです。
──「ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.」シリーズも、すでにかなりのロングシリーズですね。
B元木 第1弾のガンダムが2016年発売なので、そこから数えるとそろそろ9年目に入ります。
──TAMASHII NATION 2015のver. A.N.I.M.E.シリーズお披露目の時にビグ・ザムの試作が展示されていましたね。その頃からずっと検討されていたということですか?
柳沢 TAMASHII NATION 2015の時に、当時企画担当をしていた野口さんが、シリーズの立ち上げ時にユーザーの求めるラインナップの奥行きを図る目的で「ビグ・ザムの試作品を置きたい」と激烈に推してたんですよ。2015年の試作展示以降も工場試算は継続的に行っており、「いくらのビグ・ザムを何人に買ってもらえるか」はバンダイさん側で常に考えられていました。
で、その後は順調にアイテム数も増えていき、ver. A.N.I.M.E.のファンも拡大していったものの、『機動戦士ガンダム』(以下ファースト)以外のシリーズも展開したり…があってビグ・ザムの開発はいったんお休みになったんです。
ところがOVA登場機体やMSV機体をある程度展開できてきた1~2年ほど前から「あえて今ビグ・ザムをやるべきなのではないか」という話が出て、バンダイさんと相談し、ガンダム45周年という節目に商品化することが決まった感じですね。
B元木 歴代担当者のなかでも、「ビグ・ザムを作るか、それともそのキャパを他に回して新アイテムや要望の多いバリエーションを作るか」をどう判断するかという部分で、これだけの大型アイテムを作る理由やユーザーの方からの需要を明確にできなかった部分はおおいにあると思います。コアな機体まで丁寧にラインナップすることがver. A.N.I.M.E.の良さであると思いますし。ただ今回は、昨今の『ガンダム』というIP自体の盛り上がりや、45周年という記念の意味もあるということで、いよいよ踏み切ったということですね。ファーストのモビルスーツもひと通り出て、現在のリリースは『機動戦士Zガンダム』中心に移行していますが、ファーストのユーザーの皆様に楽しんでいただきたく、このタイミングでやるべきだろうと。
──ファーストからの完全新規アイテムと考えると、かなり久々ですね。
T-REX元木(以下、T元木) MSVを除けばジオング(2018年12月発売)以来になります。で、いざ作業に入ると……設計ではいつも金型の数を気にしながら作業するんですけど、とにかく大き過ぎてそのままだと金型に収まらない(笑)。
柳沢 特に円盤状の胴体部分は、ちょっと無理かもしれませんね。何が大変って、これまでに前例のないビッグサイズだから、作業工程がどれだけ大変なことになるのか誰にも読めなかった。
それで、とりあえず大きさに関しては昔作った試作があるので、それを基にどんなバリューを付けられるか僕のほうで考えて、いろいろとアイデアを出しました。サイズが大きい以上価格も当然上がりますが、その価格に相応しい価値を用意しないと、ファンに納得してもらえない。だからいろいろなプレイバリューを考えたのですが、しかも案を出せば出すほど、現場メンバー内で「アレも良いね、コレも良いね」が続いて。
──そういうドリームプラン的なところからスタートしたと。
T元木 試作も、途中でオミットされた仕様もすべて含めたものを一度作りました。
柳沢 価格に関しては、最初に「たぶん5万円が限度じゃないですか?」という話をしたら、いつの間にかそれが基準になっていたんですよね。
B元木 でも柳沢さんの「5万円だろう」という感覚は、すごく大事だなと思っていて。『ガンダム』関連の著名な方々に「ビグ・ザムっていくらなら納得しますか?」とお聞きすると、やっぱり4~5万円という意見が一番多かったんですよね。だから、このラインは絶対に超えられないと思っていました。
柳沢 「ver. A.N.I.M.E.」の商品サイズは1/144スケール相当が大前提で、そこは変えられない。例えば、そんなに動かないシンプルなフィギュアであれば、そこまで高くはならないんです。ただそれでもサイズ的に数万円にはなってしまうし、「動かないものに数万円も出す人がそんなにいるか?」となると、商売としてはそれなりのプレイバリューが必要になる。なので5万円という枠のなかにどこまで詰め込めるかを、去年の年末頃からずっとやっていて。
T元木 みんな欲しいギミックが異なるので、どれを削るかでも意見が対立しました(笑)。
B元木 確か、「全身にマーキングを入れる」「発光ギミックを付ける」「大型台座を付ける」のどれかを選ばなければいけないタイミングがありましたね。
柳沢 僕は台座派でした(笑)。プレイバリューが上がるので良いかなと。
B元木 T元木さんと僕は発光ギミック派でしたが、これに関してはT-REXさん、アーミックさん、僕のなかでも意見が割れたし、社内ではもっと割れていました。
T元木 途中で、「発光の代わりにエフェクトパーツを付けよう」という案も出ましたし。
柳沢 でも、コストの問題でそれも無理なんですよね。お箸よりもデカいビームパーツを、ものすごい数を付けることになるから。
B元木 エフェクトを付けるのは現実的ではなかったですね。ただやはりメガ粒子砲やモノアイの仕様にはこだわりたかったので、発光ギミックを残すことになった。結果的に実際の工場品を見ると、発光仕様を選んで良かったと思えます。
T元木 この3人で煮詰めるだけ話は煮詰めたつもりですが、結果的にB元木さんの判断で、予算度外視で作っていた台座はなくなり、本体保持用の支柱をつけることになりましたね。
例えばこれが7~10万円の商品であれば、もっと豪華な仕様になったと思いますし、逆に「もっといろいろ削ってもいいから、4万円で出してほしい」という方もいる。そのなかでどんなユーザーに喜んでもらいたいかを考えると、ver. A.N.I.M.E.ユーザーおよびTAMASHII NATIONSユーザーだけでなくより広い『ガンダム』ファンへ向けたものにしたかった。今回は「分かる人には分かる」的な仕様より、『ガンダム』ファンの「誰もが驚く」仕様を追求しました。
柳沢 このサイズでビグ・ザムの大人向け玩具が出るのは『ガンダム』の長い歴史のなかでも初めてだし、今後僕らが生きてる間に次があるかどうかも分からない。だとしたら、仕様に関してはできる限りのものを詰め込みたかったということです。
ただ僕とT元木さんが無責任に「7万でも8万でもいいんじゃない?」と話していたとしても、それは僕と同世代のファンに向けた仕様と値段のビグ・ザムになるわけで、より多くのファンに向けた商品仕様をバンダイさんは考えられてるので、現実的なコストと値段を考えると、納得の仕様になっているなと思います。
──ボリューム感も含めたさまざまな観点から見ても、5万円という金額は適正かなという気がします。
柳沢 みんなそう思ってくれるといいんですけどね(笑)。単純に金額として考えたら、5万円はやっぱり高いじゃないですか? その感覚と、「このサイズだし仕方ないよね」という納得度とのバランスの問題だとも思いますし。
B元木 ビク・ザムの玩具だと、サイズ感としてはかつて出ていた「MOBILE SUIT IN ACTION!!」版(編注:約35cm)のイメージが強いと思うんですけど、今回のビグ・ザムはさらにふたまわりくらい大きいんです。だからぜひ展示品などで実物を見てもらって、まずは圧倒的な存在感やインパクトを確認してほしい。他のアイテムと絡めて飾るのもいいですが、個人的には一点モノみたいな印象が強いんですよね。これひとつ置いておけばそれで充分というか、存在感がものすごいので満足度も高いんですよ。
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