HOME記事ガンダムプロモデラー・NAOKIがシャープ化、スジ彫り、段落ちモールドの作り方をΞガンダムを教材に徹底解説! 圧倒的な美麗作例の舞台裏【ガンプラ技の45年史】

プロモデラー・NAOKIがシャープ化、スジ彫り、段落ちモールドの作り方をΞガンダムを教材に徹底解説! 圧倒的な美麗作例の舞台裏【ガンプラ技の45年史】

2024.11.20

RX-105 Ξガンダム【BANDAI SPIRITS 1/144】 月刊ホビージャパン2024年12月号(10月25日発売)

脱・ビギナー! ガンプラディテール高解像度化:プロの技と思考法に迫る

 モデラーはなぜ、ガンプラにモールドを彫り込むのだろうか。ある時は設定画に存在するモールドの補完として、またある時は自己表現として。はたまた、考証や考察を託して彫刻を施す方もいるかもしれない。人の数だけさまざまなディテール表現が存在するわけだが、月刊ホビージャパンで活躍するプロモデラーはどんなテクニックを駆使しているのだろうか。そこで今回は、キャラクターモデリングの最先端を疾走するエースモデラー・NAOKIが製作したハイディテール版Ξ(クスィー)ガンダムを教材に、ディテールワークに情熱を燃やす彼の技法と思考法を見ていこう。

▲2022年2月号特集「ガンプラ改造計画」ではMG ガンダム試作1号機 フルバーニアンを製作。設定画のイメージに近づけるためのプロポーション改修もさることながら、全身くまなく施されたエッジワークによって別物に変貌している
▲2024年2月号特集「いま推したい! 最新ガンプラウェザリングテクニック」で製作したRG νガンダム。ウェザリング技法を紹介するための特集企画ながら、こちらも妥協のないディテール工作を施しており読者の度肝を抜いた
▲塗装前、ディテール工作が8割程度終わった状態。アウトラインはキットとほぼ変わりないものの、モールドの追加、エッジのシャープ化、外装の開口といったあらゆるテクニックを総動員、全身くまなく手が加えられている

アンテナを尖らせるだけが「シャープ化」ではない

 今回は作例製作が佳境のNAOKIをキャッチ。製作時にどんなことを考えているのかを中心に話をうかがった。

▲ヒザ関節の円形パーツ、通称マルイチディテール。黒く塗った箇所を薄く加工した
▲頭部の比較。すべてのエッジが薄く、鋭く加工されている

──クスィー、いつもながら凄まじい工作量ですね。なんというか、20cmというサイズ感を感じさせないというか…。
NAOKI ありがとうございます。それはかなり意図していて…例えばヒジ、ヒザのマルイチモールドの外周や横棒部分(A)。ここはこういう造形にしたいという厚みではなく、成型都合の厚みだと思うんです。
──こんな分厚い面があっていいの? という。
NAOKI そう。こういう箇所の厚みが、いわゆるスケールばれに繋がる。たとえば1/60ガンダムのマルイチモールドの断面は、これと同等かもっと薄いはず。それより小さいスケールの方が厚みがあるっておかしいでしょ? でも小さいパーツ故に成型都合のため厚みを確保しなければならない。こういう箇所をちまちまと攻めていくわけです。スケールなりの表現という意味では、例えばガンダムの頭のV字アンテナをシャープ化するのと、全身のダクトやスラスターのフチを薄くするのもすべて同じ意味でやっているんです。ガンプラは安全対策や成型の都合もあって、あえてエッジが厚い部分が至るところにあるじゃないですか。それを加工するのが腕の見せどころなんですけれども、少しでもリアルに見せたい、見えざまをよくしたいのならば、目立つところだけ作業するのはちょっと居心地が悪いんですよね。なので、気になるところはぜんぶ手を入れちゃう(笑)。ただただ表面的な情報が欲しくてアンテナをシャープにしてスジ彫りを闇雲に入れても、なんというか“スケールモデル”ではなくて、単なる“情報量の多いプラモデル”になっちゃうよねというポリシーのもと、モールドを入れたりエッジを削ったりしてます。そういう感覚と地道な作業の積み重ねが、模型全体をシャープに見せる一番の近道だと思っています。
──ポリシーを持って作業していらっしゃるんですね。
NAOKI まあ、さっきから偉そうなことを言ってますけど、キットのモールドの具合とか、デザインを見てケースバイケースで判断してます。それこそ突き詰めちゃうと本物の兵器を1/144のサイズに落とし込んだ時に、アクセスハッチとかパネルラインって細すぎてスケール感としては入れない方が正解ってことになっちゃうんです。そこはデフォルメとして割り切ったうえで、見映えと説得力を天秤にかけつつ作業してます。
──(B)の、頬の逆エッジみたいなところはどうやってるんですか?
NAOKI 基本的にはデザインナイフです。薄くしたいところに刃を当ててカンナがけの後、耐水ペーパーでさらっと面を整える。断面を薄く見せたい意図でやっているので、アンテナの整形とか頬装甲の先端をシャープにするのと同義ですね。

▲胸部の比較。水平に入った細かいフィンを切り落とし、薄いプラ板を貼り付けた
▲赤い部分は内側からナイフで、黒く塗った部分は外側からヤスリがけして厚みを取る
▲黒い部分の厚み取り。外側からヤスリがけ
▲赤く塗った部分はナイフで内側からエッジを処理
▲ナイフでカンナがけして平滑にならす
▲加工後。各部のC面は当て板に貼った紙ヤスリで丁寧に復活させる
▲股間パーツは外側をヤスリがけするとパーツの幅が変わるため、内側からエッジの厚みを取る

■フチの厚み
NAOKI
 このスラスターパーツ(E)でいうと、マジックで塗った開口部の面を薄く処理したい場合、黒く塗った左右と下面は、外側からヤスリを当て続ければエッジを処理できるけど、赤いマジックで塗った上側のフチは外側に出っ張りがあるから均一にヤスリを当てにくい。そういう時は、エッジの内側からナイフで削り込んで処理します。一方向にこだわらず、整形しやすい方向を都度選んで整形すればアウトラインの形を変えずに処理できます。さっきの(A)、ヒザのマルイチディテールもやり方は同じで、全部外周から削ってます。マジックで塗った円形外周部は外からナイフで削り込み、横棒部分は左右側面から均等に削り込んで、最後に耐水ペーパーでならしています。図(D)でいうところのエですね。
 例外はあって、腹部パーツ(C)なんですけど、この小さなフィンを一枚一枚削るのはちょっと無理があるので、いったんフィンをすべて削り落として、スリットの壁のエッジを処理してからプラ板で作り直しています。どうやって加工するかはケースバイケース、結局は作業しやすさが前提ですね。

▲ガイアノーツから発売中のNAZCA スジ彫りノギス(4950円)は、パーツのフチと平行にモールドを入れる際の手間を格段に減らすことができる。まずは鉛筆でアタリを入れる
▲アタリに沿ってスジ彫りノギスをあてがい、始点から終点までスライドさせる
▲そのままタガネで底面を整えても良いが、線幅を変えたい場合、デザインナイフでガイドを正/逆方向から断面がVの字になるようになぞる
▲まっすぐV字の溝が彫れた証、カエリが出ている
▲溝に彫ってタガネでなぞり、線を整える
▲一直線のモールドが彫れた
▲フロントアーマーの横面②は構成面と成型都合の垂直断面を表側から削り込んで一面に繋げている(図Dのア)。正面下端部①は、②と同様の処理をすると形状の印象が変わってしまうのと、ディテールが消えてしまうので、先端にプラ板を貼り足して垂直断面を除去、面を整えた(図Dのイ)
▲モールドを彫る際は市販のガイドテープを使うことも。先端が鋭いキサゲで数度なぞれば瞬時にモールドが浮かび上がる

■スジ彫りノギスの使い方
NAOKI
 パーツの形状に影響を与えにくいため追加しやすくて頻度が高い、辺と並行なスジ彫りを彫る場合、スジ彫りノギスを使用しています(F)。通常のノギス同様スライダー側のジョウをパーツの縁にあてがい、先端を鋭利に加工してある固定側のジョウをスジ彫りを追加したい部位にスライドさせれば、スジ彫りのガイドが彫れます。何度か引けばそのままスジ彫りになりますが、線を整えたい場合、太さを変えたい場合はデザインナイフやタガネで追加加工します。
 フロントアーマー(G)の面処理も、構成面によって処理を変えています。まず、1番の面は本来の形状にはない成型都合の垂直断面とディテール面を表側から繋げて一面にしてしまうと、フロントアーマー自体が短く見えてしまうのと、表面のディテールを消してしまうので、先端にプラ板を貼り足して余分な垂直断面をなくしてシャープにしています。図(D)イのパターンですね。2番などのそれ以外の面は処理しやすいアのパターンで垂直断面を無くしています。

▲前腕、グレーパーツの下部に段落ちディテールを追加する過程
▲鉛筆でアタリ線を引く
▲端部と平行なラインは先述のスジ彫りノギスで。サイドのラインはナイフを押し当てて彫る

▲ナイフで段落ちディテールを彫ったら、タガネで底面をならせば完成

▲段落ちディテール、完了

ⓒ創通・サンライズ

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NAOKI(ナオキ)

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