過去と現在の特撮セットを比較!月刊ホビージャパンのレジェンドカメラマン・本松昭茂氏の協力でガンプラ特撮の“技の歴史”を見てみよう
2024.11.10ガンプラ特撮の今昔
本コラムでは“技の歴史”のひとつとして、ガンプラ特撮の今昔をご紹介する。今回はʼ80年代から月刊ホビージャパンで活躍しているレジェンドカメラマン・本松昭茂氏に協力いただき、当時の特撮を再現。同じモチーフを、過去と現在それぞれのセットで撮影し、両者を比較する。物理的にすべてを調節しなければならないアナログな特撮、素材を撮影してさまざまなエフェクトを追加できるデジタルの特撮。これらの撮影方法に合わせてさまざまな工夫が凝らされている、知られざるガンプラ特撮の技の歴史を感じてほしい。
昔の特撮セット
デジタル加工ができなかった頃は一発撮りが基本。中央に穴の開いたアクリル板に軸を通し、カメラアングルに軸が入らない位置でガンプラを固定する。スクリーンを張り、投影機を使って背景を投影することでようやくザクを宇宙で戦闘させるための準備が完成する。
「多重露光」でレイヤーのように光を重ねる!
──当時はどのようなことを念頭に特撮を撮っていたんですか?
本松(以下本) まず、当時映画『スター・ウォーズ』が流行って、これはどういうふうに撮影したら再現できるんだろう、って勉強してホビージャパンの撮影でいろいろ実践させてもらった結果、こういう撮影方法になっていったんですよ。
──今の特撮とは違って、映画のフィルムのような質感になっているのはルーツに『スター・ウォーズ』があったからなんですね。
本 そうそう。ただ、やっぱりこの方法だとピントはプラモ本体に合わせるから、背景はボケてしまうことが多かったんですよ。今の特撮だと合成ができるから、イラストみたいに全体にピントが合った仕上がりにも簡単にできるのがいいですね。
──ちなみに、当時この宇宙の特撮を撮るのって何時間くらいかかっていたんですか?
本 最低2時間はかかって撮影してましたね。しかも昔はフィルムだったから、シャッターを切ってもその時点でどんなふうに仕上がるかがわからなくてドキドキでしたよ。
今の特撮セット
デジタルに移行し、フォトショップなどの編集ソフトが導入されると、撮影した画像をリアルタイムで編集しながら仕上がりを調整できるようになり、さらに複雑な表現が可能になった。
レイヤーを重ねてビジュアルをコントロール!
──デジタルに移行して良かった部分はやっぱり準備が楽になったことでしょうか。
本 そうだね。昔はふたりくらいのカメラマンでホビージャパンの撮影を回してたんだけど、今はページ数も数倍に増えてるし、もし今フィルムを使えってなったら準備も撮影時間も大変だから、ホビージャパンを出せないかもしれないね(笑)。
──いやもう、デジタル化、本当に感謝です!!
本 写真の出来映えも撮った瞬間にわかるし、なんならカメラのアングルを決めるときから画面を見て細部を調整できるのもいいですよね。
──画面を見ながらリアルタイムで仕上がりを相談できるのは本当にありがたいです。
本 ほかにも、間違いがあったときは後からビームの色とかを変えられるのはいいことだけど、デジタルだと逆にできることが増えすぎて、昔だったらシャッターを切ったらそこで終わりだったのが、今では納得するまで手を加えてしまえるから逆に大変だったりするんですよね。そんな悩みも技術の進化のおかげだと思います。
本松昭茂(ホンマツアキシゲ)
スタジオR専務取締役。ʼ80年代から「月刊ホビージャパン」でメインカメラマンを務め、現在も現役で活躍しているレジェンドカメラマン。