【ノモ研】“バキュームフォーム”ってなに? 「バキューム成型の手順&応用」の解説!1/144「ジュアッグ」を製作【野本憲一モデリング研究所】
2024.11.12野本憲一モデリング研究所 バキューム成型/MSM-04G ジュアッグ【BANDAI SPIRITS 1/144】 月刊ホビージャパン2024年12月号(10月25日発売)
古き良き、黎明期のガンプラ製作術
今でこそ可動・造形・色分けなどあらゆる要素が円熟してきているガンプラだが、それはメーカーの長い技術錬磨があってこそ。かつてはユーザーが塗装や加工をするのが当たり前であり、作り手側に寄る割合も大きく、そこが難しくも面白い一面であった。NOMOKENで紹介している技術の数々も、模型をより魅力的に作るための創意工夫から生まれたものである。苦労して作ることがエラい、というわけではないが、苦労して手を動かした結果、自分の理想とするカタチが得られるという喜びは何物にも代えがたい。その喜びこそ、ガンプラが長く愛されるようになった要因のひとつであるのは間違いないだろう。
バキューム成型の解説がてらに野本憲一が製作した本作例は、頭部改修のほかにも後ハメを兼ねた各部の可動化、ディテールや各面の整形などを敢行。80年代のガンプラ黎明期に、多くのモデラーが「こうやって作っていたな」と思い起こさせる作風となっている。ガンプラ文化の根幹にある「手を動かす楽しさ」を感じ取ってもらえれば幸いだ。
ホビージャパン55周年おめでとうございます。
今回製作したジュアッグは初期のガンプラで年季が入ったキット。ユニークな形状を再現したものですが、特徴的な頭部が扁平なのがちょっと気になります。設定画に近いもっと丸みをもったカタチで作りたいなぁというのは、発売当時から思っていたところでした。そこで「バキューム成型」を使って、頭部のドーム形状を新規に製作することに。原型は頭部の下側パーツにポリパテを盛って削りだしたモノで、緩やかなお椀型。これを基にバキューム成型したパーツにスジ彫りやモノアイのくりぬきを行って、可愛らしい頭部を再現しました。頭部内にはモノアイや回転レール部を追加。透明部分は塩ビ板を裏から貼っています。頭部の上下を接着する前にそれらの組み込みや塗装を済ませて、周囲を整形しています。中空であること、整形や彫刻といった仕上げのしやすさなどバキューム成型での利点を活かしているわけです。
全体ではキットのフォルムを活かしつつ、関節をプラサポ+ポリキャップに置き替えて、後ハメ化と可動の確実化を行っています。胴体中央は切断して腰回転軸を追加、足の甲も別パーツ&可動化、と今時な要素も追加しています。ランドセルは下部のダクト(?)が上下に可動するので、腰回転した際の干渉を逃がすことができます。各部はモナカ割りのパーツが多く、合わせ目消しとともに裏側の補強もしておきます。旧キットはパーツのフチだけで接着なので力がかかるのに弱く、これを関節の抜き刺しに耐えるようするためです。各部のモールドでは凹みやスジ彫りを彫り直し、ノズル部は市販パーツを組み込んでシャープ化と塗り分けをしやすく。動力パイプのコマはRGのシャア専用ザクから流用しました。
塗装はリアルタイプイラストの配色やマーキングを参考にしつつ、鮮やかな色味とグラデーションを入れ各部を強調。「75」のナンバリングはMSVハンドブックに載っていたイラストのオマージュです。自分の理想のジュアッグ、念願の完成となりました!
BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット
MSM-04G ジュアッグ
製作・文/野本憲一
ノモケン新連載が11月16日(土)よりHJ Webでスタート!
今回ご紹介した月刊ホビージャパンでの「ノモ研」シリーズの連載や、大ヒット模型How toムック「NOMOKEN 野本憲一モデリング研究所」シリーズの著者、野本憲一による「Hobby JAPAN Web」オリジナル連載「いまさら聞けないプラモデルの基礎」がいよいよスタート! 記念すべき第1回目は、11月16日(土)18時より公開となります!
これまでの「NOMOKEN」シリーズよりもさらに初心者の方々に向けた内容で、令和最新版“プラモデル製作の基礎”を解説。いまさら聞けない疑問やテクニックを本連載で学んでいきましょう!
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ⓒ創通・サンライズ
野本憲一(ノモトケンイチ)
小社にて「NOMOKEN」シリーズを多数執筆。キャラクター、スケールモデルなどジャンルを問わず数多くの作例とHow toを発表している。