『コードギアス 新潔のアルマリア』特別エピソード『黒の閃光』(後編) 更新!『コードギアス 奪還のロゼ』へと続く物語を小説でお届け
2024.09.06 数時間後、マウリツィオ・イシャー捕縛作戦の準備を進めるゼロたちを乗せた浮遊航空艦ノウトリが、複雑に国境線が交差するある国の上空に姿を現す。マウリツィオが潜伏するとされる要塞まで間もなくの位置。ノウトリの格納庫では、発進カタパルトに繋がるエレベーターに、ゼロが持ってきたという“普通ではないナイトメア”が乗せられていた。
「これは……、Z-01Z0? コマユバチ事件の時にしか使われなかった幻の機体じゃないですか」
「幻の機体? これって枢木スザクが乗っていたランスロット・アルビオンじゃあ……」
驚くハクバに、サトリが小首を傾げる。
「いや。こいつは同型機ではあるが、同じ機体じゃない。チャウラー博士のパール・パーティでゼロから組み上げられた別の機体なんだ」
「統合打撃装甲騎計画の一環で作られたものだが、この見た目だ。ゼロの機体としては相応しくない。だから長らく封印していたんだ」
「そっか。ランスロット、特にアルビオンは枢木スザクの機体って印象ですもんね」
「だが、この機体は、紅蓮特式やランスロットsiNと同じ第九世代機。現存する最高クラスの性能を有するナイトメアだ」
「慎重なマウリツィオのことだ。自然の要害を利用するだけでなく、それ相応の対策を講じているだろう。それを越えるためには相応の性能のナイトメアが必要となる。そこで用意したのがこのアルビオンゼロというわけだ」
「では……」
と、ハクバが作戦を再確認しようとしたところで警報が鳴り響く。
「ゼロ! 正体不明機を確認! うわっ!」
ブリッジクルーが報告するや艦自体が揺れる。
「な、なに!?」
「奴さんだ!」
「エージェント新月、作戦の確認は後だ。今は!」
「ええ!」
ゼロとハクバがそれぞれの機体に向かう。
「あら、黒の騎士団の艦を追い越しちゃったのね。今日も独壇場かしら」
渓谷近くで双眼鏡を覗いていたレディ・レディが、ピュアエレメンツGがノウトリを追い越して渓谷に進入していくのを確認する。ピュアエレメンツGとそのパイロットならば、今回もたった一機で、敵を圧倒するだろうことをレディ・レディは知っている。しかし、そんなレディ・レディであっても、ピュアエレメンツGを追いかけるようにして浮遊航空艦から出撃した機体を目にすると驚きを隠せなかった。
「あれは……、黒いランスロット・アルビオン? もしかして、ゼロが?」
長く深い渓谷に単騎で突入したピュアエレメンツG。その侵入を察知して自動迎撃システムが起動し、無数の銃撃がピュアエレメンツGを襲う。しかし、その漆黒の機体は、動じる様子もなく、銃撃の軌道を読み、一発の弾丸を受けることもなく、渓谷を抜けようとする。しかし、何かを察知したピュアエレメンツGが急上昇する。すると、ピュアエレメンツGが数秒前にいた場所に、強力なエネルギー波が通り過ぎた。コマユバチ事件でも用いられた拡散構造相転移砲台だ。ピュアエレメンツGは、これを避けるために渓谷から出ようとするも、深い渓谷の至るところに備えられた迎撃システムが阻む。自動迎撃システムと拡散構造相転移砲台、そして何より長く深い渓谷が進入した者を逃さない完璧な防御システムとなっている。だが、それは通常兵器やピュアエレメンツGが単騎の場合だった。
「拡散構造相転移砲……。あれを坂東さんに売ったのもマウリツィオというわけか」
一瞬にして渓谷に飛び込んだ黒い影が、自動迎撃システムの銃撃から逃れるように飛行するピュアエレメンツGに追いつく。
「聞こえるか、正体不明機のパイロット。まずはマウリツィオを捕える。こちらに合わせられるな? ついて来い」
一方的にそれだけ言ったゼロは、ピュアエレメンツGのパイロットの返事も聞かず、自動迎撃システムの機銃がひしめく渓谷の中を飛ぶ。その超機動での飛行で自動迎撃システムの銃撃を躱しつつ、エナジー・ウイングから無数の光刃を放ち、機銃を破壊していく。アルビオンゼロが放つ光刃に当たらぬよう、ぴったりとついていくピュアエレメンツG。その不可能とも思える操縦技術に、遥か後方でその様子を見ていたハクバは舌を巻く。
「ふたりともバケモノだな、こりゃあ」
「あの大物は君に任せよう。そのためにエナジーを温存しておいたんだろう?」
粗方、自動迎撃システムを沈黙させたゼロが、ピュアエレメンツGに告げる。すると、返事をする代わりに、右腕の統合兵装であるトライアームズの基部を回転させ、甲壱型腕にも似たアームズ3へと換装させて見せた。
「やはりそれは輻射波動か」
ゼロが言うや、ピュアエレメンツGは一気に拡散構造相転移砲に向かって跳び、その砲撃に臆することなく、砲身へと輻射波動を放つ。
「あれを受けては、どんな強力な兵器であってもひとたまりもない」
ゼロの言うとおり、拡散構造相転移砲はあえなく爆散。鉄壁の守りを突破されたことで、にわかに要塞内が慌ただしくなるが、防空網を沈黙させたことによりノウトリが進入。その制圧部隊によって、マウリツィオ・イシャー率いる武器商人グループ“ファットリーノ”は一網打尽となった。
「さて、あとは……」
と、ゼロがアルビオンゼロの背面に装備されたMVSを引き抜く。それに対して、ピュアエレメンツGも、右手をMVSの内蔵されたアームズ2へと換装し、構える。
「やめておこう。どうやら、君は話の通じる相手のようだしね」
そう言うと、ゼロはMVSを再び鞘へと納める。その行動に対して、僅かではあるが、ピュアエレメンツGに動揺があることが見て取れる。
「この世界は、力ではなく話し合うことで歩みを進めている。君も言葉が通じる相手なのであれば、僕は剣よりも言葉を交えたい」
ゼロのその言葉に、ピュアエレメンツGは構えを解くことで応える。
「やはり君は……」
ゼロが言葉を続けようとするが、ピュアエレメンツGは、アルビオンゼロに背を向け、飛び去ってしまう。
「まだその時ではないということか……」
「いいんですか?」
マウリツィオを捕えたハクバがゼロに問う。
「いいも何も、このアルビオンゼロではあの機体には追いつけない。あのエナジー・ウイングは従来のものの汎用性を犠牲にして、速度に特化しているようだからね」
「そういう意味で言ったわけではありませんよ」
「ふっ。さっき言った言葉に嘘はない。私は話し合うことで解決するならそちらを望む。だから、今回はマウリツィオを捕えられただけでも良しとしよう」
「そう言われると思いましたよ。奴さんにはまだまだ謎がある。俺はそっちを追うことにします」
「ええ。対象の調査は引き続きあなたに頼む。エージェント新月」
「了解です」
少しだけ明るく聞こえるゼロの声に、ハクバも笑顔で返す。
「もう、ヒヤヒヤさせるんだから。でも、あの反応。早くこっちも奴の居場所を突き止めないといけないわね」
戦闘の成り行きを見守っていたレディ・レディは、ピュアエレメンツGとの合流場所に向かうべく、乗ってきたランドクルーザーに乗り込む。
「ウィリアム・ビッシュの居場所を……」
『コードギアス 新潔のアルマリア』本編へと続く。
【コードギアス 新潔のアルマリア】
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