外伝小説『勇気爆発バーンブレイバーン 未来戦士ルル』5話 【期間限定公開】
2024.09.24勇気爆発バーンブレイバーン 未来戦士ルル 月刊ホビージャパン2024年10月号(8月23日発売)
──日本:種子島:大崎海岸沖──
ベラトールは左腕を遠隔ユニットのように飛ばすと、そこから爪波導に似た赤い光線を放った。
それを避けたスペルビアにベラトールは赤い雷を纏う槍で斬りかかる。
『どうした! この星を護ろうとする貴様の力はその程度か、スペルビア!』
『くっ!』
ベラトールの斬撃を紫電を纏う飛燕雷牙で受け止めた瞬間、再び赤い光線がスペルビアの背中に直撃した。
『ぐおっ!?』
体勢を崩したスペルビアに、ベラトールは分割した手脚を用いて四方八方から猛攻撃を加える。
それを何度も受けるうちにスペルビアはこのオールレンジから行われる攻撃が一定のパターン化されていることに気づいていた。
「ここ!」
『応!』
右上方向から攻撃してきた脚部に対し、スペルビアは左足で回転蹴りを繰り出す。だが――
「なんで!?」
完璧に合わせたはずの攻撃は空を切っていた。
蹴りが当たる瞬間、クーヌスの時空を操る能力で脚部を転移させたのだ。
『どうした、その程度かスペルビア!』
そこに頭上から赤い光線が浴びせられ、スペルビアは大きく後退する。
「スペルビアの偽物、強い!」
『遊ばれておるな……しかし、攻撃自体が必殺の威力を持つものではない。こちらの全力をぶつければ、打ち破れるかもしれぬ』
「だったら、力比べする!」
『うむ。純粋な技と力で押し破るしかあるまい!』
スペルビアとルルの意見は一致している。だが、そこに持ち込むことが難しいのだ。
遠隔ユニットを駆使して小賢しく戦っていたヴァニタスと違い、ベラトールは本体の戦闘能力も高い。
戦いの中で決定的な瞬間は何度かあった。しかしその全てであえて見逃されていたのだ。
あのベラトールはスペルビアを宿敵だと言った。しかし、まだ本気を出しているようには見えない。
『まだ力を隠しておるな。ルルよ、彼奴の全て、吐き出させるぞ!』
「うん! あいつやっつけて、みんなを守る!」
スペルビアは飛燕雷牙を構え、力を集中させていく。すると飛燕雷牙とそれを持つスペルビア自らも紫電に纏われはじめた。
『なるほどな。私と力比べをしようということか……こちらも容赦はせんぞ!』
ベラトールもまた、応えるように槍と自身に赤い雷を纏わせていく。
「『うおおおおおおおお!!』」
『はああああああああ!!』
巨大な雷の矢となったスペルビアとベラトールは真っ向からぶつかりあう。
二色の雷が混じり合い、爆ぜていく。その中で、どちらの矢も押し負けず均衡を保ち続けていた。
「スペルビア、気合い!」
『応! 我等の益荒男道はこの先にこそある!!』
スペルビアは前へ前へと踏み込んでいく。あちらは一人、こちらはルルと二人なのだ。ならばスペルビアに負ける道理などなかった。
『なるほど……これが、最後に残った〈デスドライヴズ〉の力……戦いの中でより強大に育っていく力か……』
ぶつかり合う雷を紫電が押し込んでいく。
そして――決着がついた。
紫電が赤い雷を飲み込み、突き抜けていく。
そこにあったのは、傷つきつつも凛と立つスペルビアと胴体に巨大な穴を開けたベラトールの姿だった。
「スペルビア、早く母艦壊す!」
『うむ、往くぞ!』
『ハハ……フハハハハハハ……!!』
勝利を喜ぶ暇もなく、超大型母艦へ向かおうとしたスペルビアだったが、忽然と響き出した笑い声に振り返る。
その瞬間、超大型母艦から放たれた光がベラトールを包み込んだ。光が収まると、ベラトールの身体は修復されていた。スペルビアとの戦いなどなかったかのように、傷一つなく。
「偽スペルビア、なおっちゃった……」
『馬鹿な……母艦の復活機能はクーヌスが完全に破壊したはず』
今の〈デスドライヴズ〉は母艦による復活機能を失っているため、その生命は一度きり。しかし、目の前のベラトールは完全な再生を遂げている。
『ようやくだな、スペルビア』
復活に驚くスペルビアを見て、ベラトールは嘲笑う。
『見覚えがある光景だろう。ゼロからとはいかないが、ある程度形さえ残っていれば再生ができる。跡形も残らぬほど破壊されれば塵と消えるだろうが……貴様にそれができるか?』
『ならば、この魂を燃やし尽くすまで!』
「まだ、ルルたちの勇気、燃えまくってる!」
ベラトールの言葉通りならば、足りないのは力のみ。しかしそれをベラトールはつまらなそうに切り捨てた。
『飽くなき勝利への意思、そして呼応する力……なんと面白い。貴様もまた、より高みへ辿り着こうとしているのだな!』
『何を勝手な――ぬっ!?』
スペルビアの周囲を霧が包んでいく。
こうなれば、スペルビアが純粋な力比べに持ち込むことは難しい。
『彼奴もようやく全力を出してきたということか。ルルよ、覚悟はいいか。我が目指す益荒男道はあれを討ち倒した先にある!』
「ガピ! みんな、ルルたちを信じて待ってる! だから倒すまで戦う!」
ルルとスペルビアはそうやって戦う姿を見て、追いかけてきたのだ。二人から、戦う気力が失われることはない。
『ならば、これはどう超えてくる?』
ベラトールの声とともに、霧の中に赤い雷を纏った光線が次々と撃ち込まれる。霧の中でよりスペルビアを消耗させようというのだろう。
「スペルビア! これ、どこからくるかわからない!」
『厄介な! この霧から早く抜け出さねばならん!』
四方八方からの攻撃をスペルビアは的確に回避していく。
ベラトールはただでさえ強敵だ。さらに動きが制限されるとなれば、形勢は一気にあちらへと傾くだろう。
『私のためにより高みへと至れ、スペルビア!』
――だがそんなスペルビアの視界の先――霧の向こうに小さな明滅が三度起きた。直後、スペルビアの周囲にあった霧は突如霧散する。
『なに? 母艦とのリンクが切れただと?』
さすがのベラトールも突然の事態に困惑を見せていた。
「ガピ! 空見える!」
『うむ。彼奴の能力が消えたようだな』
そんな時、ホノカから通信が入った。
『マスラオ1! こちらトールハンマー! 応答せよ!』
「こちらマスラオ1! おーばー!」
『コンステレーションからの攻撃で母艦製造プラントの破壊に成功。残る〈デスドライヴズ〉を撃破してください!』
「りょーかい!」
『そうか……彼奴とて〈デスドライヴズ〉。母艦との繋がりは絶てなかったということだな』
超大型母艦の一部が破壊されたことにより、ベラトールの持つ能力にも影響がでている。〈デスドライヴズ〉が復活機能を母艦に委ねていたように、恐らくベラトールも数々の能力を使うエネルギーを母艦に委ねていたのだろう。
スペルビアは飛燕雷牙を構えると、その切っ先をベラトールへと向ける。
『面白い……実に面白い! これが宿願へ到達するための試練か! どこまでも愉しませてくれるな、スペルビア!』
それに応えるように、ベラトールが槍を構えた。
スペルビアはそれを見て、小さく笑う。
『まことの戦士と言ったか。それほどでもないようだな!』
『巫山戯たことをっ!』
2体の〈デスドライヴズ〉は再び刃を交える。己の誇りとその魂をかけて。
episode 6 へつづく
【勇気爆発バーンブレイバーン 未来戦士ルル】
episode 5 new
episode 6←明日 9月25日発売 「月刊ホビージャパン11月号」にて掲載!!
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