HOME記事キャラクターモデルラッカー塗料による特殊な筆塗り法「スタンプブレンディング」でクァドラン・ローを塗装!彫刻家・大森記詩のテクニックを見よ

ラッカー塗料による特殊な筆塗り法「スタンプブレンディング」でクァドラン・ローを塗装!彫刻家・大森記詩のテクニックを見よ

2024.08.15

ラッカー塗料だからこその「溶け合う」楽しさ/クァドラン・ロー“マックス”(劇場版)【ハセガワ 1/72】 月刊ホビージャパン2024年9月号(7月25日発売)

暗い色からメインカラーまでの立ち上げ

▲フタロシアニンブルーと少量のブラックを皿に移す。この時、うすめ液も2〜3滴入れて、塗料の流動性をよくしておく
▲2色を一気に混ぜるのではなく、皿の端のほうで適宜混ぜて筆塗りしていく。塗るたびに色は違ってしまうが、自然なグラデーションがかかり情報量が増える
▲好みの塩梅になったらプラモに塗ってみる……あれ? 青が見えない。実際に塗ってみるとしっかり発色しなかったりすることも。そうなったら再度塗料を調整
▲青が足りなかったので少量追加。このように色の調整なども即座に行えるのも筆塗りの利点
▲メインの青の1層目を塗り終えた。もっとも暗い青なのでほぼ黒のような青となっている
▲ある程度青が塗れたら、センサーにオレンジを塗装。周囲にも同時進行で色を塗っていくことで、メインカラーの色味のバランスもチェックできるのだ
▲マックス機の紫寄りの青を表現するのにマゼンタを追加。こちらも適宜、青と混ぜながら塗っていく
▲重たい紫寄りの青が発色してきた。この重たいブルーが後に重厚感を出してくれる
▲ここで胸部のグレーを塗装。青いボディパーツに色がはみ出しても気にしない。乾燥後に塗り潰すだけで修正可能
▲先ほどの紫寄りの青にブルーグレーを少量混ぜて、本格的に青を立ち上げていく。グレーが入ることで隠蔽力も強まり、先ほどよりも強く発色する
▲上面は上から下、下面のほうは下から上へと筆を動かしてパーツの丸みが強調されるような筆目を付けている
▲下地を隠蔽しすぎないように、薄めの塗料で少しずつ発色させていく

スタンプブレンディングで塗面の表情を豊かにする!

基本塗装を終えた状態

▲この状態から各色にタッチを加えていく

メインカラーとタッチカラーを混ぜる

▲タッチカラーとして使用するものと、その前に塗ったメインカラーの同系色を混ぜることで、急激な色変化を抑えながら、色の情報量を増やしていく

明るい色をスタンプ

▲さらに明るい塗料を塗る時は、面にベタ塗りせずに、このように筆でスタンプするようにして各所に色を乗せていく。明るめにしたい場所に、あなたの好みで色を置いてOKだ

スタンプした色を下の色と馴染ませる

▲点々と置いた塗料を、筆で下の色と馴染ませるように筆の中にある「ラッカー溶剤+塗料」で伸ばしていく。ラッカー塗料は乾いても溶剤と反応して溶ける。この性質を活かして、下にある色と上塗りした色をブレンディングしパーツ上で色の変化を作り出していく

完成!

▲このように下の色と上塗りした明るめの色が見事に融合。ラッカー塗料の筆塗りならではの表情とツヤが麗しい。筆圧を強くしすぎたり、筆に含む塗料や溶剤が多めだと、溶けすぎて制御不能になるので注意

より細かいタッチは面相筆で

▲曲面の頂点など、よりピンポイントで色の表情に変化を与えたい時は面相筆で塗装
▲ブレンディング。平筆を使って、上から下方向へ筆を動かして塗料を馴染ませた。ブレンディングする際に、パーツごとに筆を動かす方向を変えてみるとまた違った雰囲気になる。自分がかっこいいと思った筆目を試してみよう

ブレンディング完了

▲パーツの上でさまざまな青やグレーが見えて色の情報量がとても多くなる。ベタ塗りにはない重厚感が演出できる
▲デカールは完成前に貼り込み、色味がなじむようにデカールの上から白と若干の青をタッチアップした。アップで見るとさらに情報量が豊かに見え、ラッカー塗料ならではの輝きが美しい
▲メインノズル内はエナメル塗料を活用してウェザリング仕上げにチャレンジ
▲つや消しブラック、ブラウン、フラットベースを混ぜてかなりツヤを消したウェザリング塗料を調色。ノズル内全体に塗っていく
▲乾燥後、少量のエナメル溶剤を染み込ませた綿棒で塗料を拭き取る。スジがあえてはっきり残るようにした
▲完成! ツヤもしっかりと落ちていて、汚れた雰囲気が強く出ている
▲コックピット内は重厚感ある赤に塗装。マックスは顔を横に振った状態で接着して、動きを演出。飛行機模型のパイロットパーツなどで行われる工作を盛り込んだ
▲大型の推進器のノズル部分のみハードにウェザリングして、全体のアクセントとしている

量感溢れる機体を思う存分筆塗りしたい!

 そんな想いを叶えてくれるハセガワのクァドラン・ロー。『超時空要塞マクロス』に登場する機体の中でも傑出したデザインですよね。今回は『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の終盤に登場するマックス機ということで、劇中での時間軸を特に意識しながら塗り進めていきました。そうなると、経年的な汚れやキズ等は控えめがよさそうなところですが、最終決戦の激しい戦いで使用されたのなら…いやしかし、あの天才パイロットであるマックスなのだから……などと、筆を重ねつつ同時にモチーフ作品の背景を思い浮かべられるのも面白いですよね。
 筆塗りはその経過まで余すところなく楽しめます。進めていくと、塗り初めから各所に残しておいた下地や、途中段階の色がラッカー特有のツヤ感、青系とグレー系のコントラストも相まってだんだんと際立ってくるので、こういった箇所をキッカケにしながらさらに重ねていくことで、単色系ながらも単調にならない表情と密度感を作り出すことができます。自分の筆致で形が引き締まっていくフィジカルな感覚が味わえるのも筆塗りの醍醐味で大好きです。
 青のマックス機があったら、赤のミリア機も塗りたくなります。あとから登場したマックス機よりも、ミリア機は歴戦の機体になるので、対照的に使い込まれた感じになるようにしたいところです。紫がかったグレーの一般兵仕様も捨て難いですね。そんな選択肢も豊富なモチーフであるクァドラン・ロー、その決定版ともいえるハセガワのキットは組み上げてからの部位ごとの着脱もしやすくなっていますから、これから特にキャラクターモデルの筆塗りを始めてみようという方にも最適だと思います。皆さんもぜひ、魅力的なフォルムをラッカーに限らず思い思いの塗料と筆先で触れながら辿ってみてください。

ハセガワ 1/72スケール プラスチックキット

クァドラン・ロー “マックス” (劇場版)

製作・文/大森記詩

クァドラン・ロー “マックス” (劇場版)
●発売元/ハセガワ●6380円、発売中●1/72、約25.9cm●プラキット

©1984 BIGWEST

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大森記詩

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