HOME記事スケールモデルイギリス軍を代表する戦車「マチルダMk.II」戦場の女王と称された歩兵戦車とは?【いまさら聞けないすごいヤツ】

イギリス軍を代表する戦車「マチルダMk.II」戦場の女王と称された歩兵戦車とは?【いまさら聞けないすごいヤツ】

2024.05.21

いまさら聞けないすごいヤツ!!/イギリス マチルダMk.II●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2024年6月号(4月25日発売)

いまさら聞けないすごいヤツ!!

 イギリス 
 マチルダMk.II 歩兵戦車 

イラスト/大森記詩

 「名前は知っているけど、どんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
 今回は前回ご紹介した「イギリス チャーチル・クロコダイル戦車」とともに、第二次世界大戦時のイギリス軍を代表する戦車「マチルダMk.II歩兵戦車」をご紹介します。


イギリス マチルダMk.II 歩兵戦車
(マチルダMk.III/IV)

全長約/5.61m 
全幅/2.59m 
全高/2.52m 
重量/27.0t 
最高速度/24.1㎞/h

エンジン/液冷V型6気筒ディーゼルエンジン×2 
懸架方式/横置きコイルスプリング式 
武装/主砲・52口径2ポンド戦車砲、7.92mm ベサ機関銃 
乗員/4名


イギリス-マチルダMk.Ⅱ歩兵戦車イラスト左側面
▲第42英国戦車連隊第1機甲旅団 1941年 北アフリカ
イギリス-マチルダMkⅡ歩兵戦車イラスト正面
イギリス-マチルダMkⅡ歩兵戦車イラスト背面

▲北アフリカに送られた車両は、特徴的な迷彩が施されていました。これは直線的な迷彩にすることで、戦車のシルエットや進行方向を誤認させる効果を狙ったものです


「戦場の女王」マチルダMk. II歩兵戦車

解説/宮永忠将

イギリス-マチルダMkⅡ歩兵戦車イラスト上面

 複雑怪奇なマチルダ歩兵戦車 

 もう100年以上前に終わった第一次世界大戦で新兵器として登場した戦車なんだけど、実は真価がよくわからないまま戦争が終わってしまった。開発国イギリスでは、その後に試行錯誤があったのだけど、新型戦車の重要な柱として、鋼鉄の壁となって歩兵を守り、敵の火点を粉砕するための歩兵戦車開発に着手した。
 まず1935年に開発がはじまったのが歩兵戦車Mk.Ⅰで、これは当時としては重装甲ではあったけど、技術的には過渡期の戦車という感じ。乗員はふたりだけだし、武器も機関銃が 1丁だけ。そこですぐに歩兵戦車Mk.II系統の開発がはじまった。ちなみにどちらも「マチルダ」という愛称が付いたのだけど、
 歩兵戦車Mk.Iが「マチルダI」
 歩兵戦車Mk.IIが「マチルダII」
 歩兵戦車Mk.IIAが「マチルダII Mk.II」
として区別された。ややこしいのだけど、マチルダIがザクI(旧ザク)で、マチルダII以降がザクIIシリーズだと思ってもらえば収まりが良いかな。今回紹介するのは、このマチルダMk.II「系統」なのだ(以後最初のIIは省略)。
 マチルダMk.IIは重量が26.5t、乗員も4名に増えて、戦車砲は2ポンド砲(口径40mm)に強化された。ただし使ってみたらAEC社製ディーゼルエンジンが非力だったので、レイランド社製ディーゼルに交換、さらに無線機も新型になった。これが歩兵戦車Mk.II AマチルダMk.IIIというタイプ。既存のマチルダMk.IIも大半はオーバーホールの時にエンジンを交換して、Mk.III仕様に変更されている。ところが、エンジンを替えたらマウントとのかみ合わせが悪くて不具合が頻発。そこでマウントの設計を改めたのがMk.II A*マチルダMk.IVというわけ。はっきり言って外見ではMk.IIIと区別が付かない。だから紹介キットはマチルダMk.III/IVとなっているんだ。いや、スゴくややこしいけど、このへんがスラスラ分かっていると格好良いかも。

 北アフリカ戦に伝説を刻む 

 マチルダは第二次世界大戦における北アフリカの戦場で、イギリス軍の実質的な主力となった。イタリア軍相手には無敵の強さを発揮し、女性名のニックネームにあやかって「戦場の女王」とも呼ばれた。しかしロンメル将軍率いるドイツ=アフリカ軍団がやってくると、犠牲が激増。1943年初頭に生産停止になるまでに2890両製造されたのだけど、1942年6月のトブルク攻防戦が終わる頃には、イギリス軍の稼動マチルダは1両しか残っていなかったというのだから凄まじい損耗だ。歩兵戦車なのに、機動性がものを言う砂漠という不向きな戦場に投入されてしまった当然の結果なんだけど、このマチルダの犠牲がドイツ軍をすり潰して、ロンメル将軍を苦しめたのも事実。なにせドイツ軍の対戦車砲では歯が立たず、正面からは8.8cm高射砲の水平射撃という裏技でしか撃破できなかったのだから。北アフリカの戦いという伝説の戦場で見せた頑固な戦いは、マチルダ歩兵戦車の名を永遠に歴史に刻んだのである


ヒュー・エリス
(1880 ~ 1945)


 イギリスの軍人。第一次世界大戦では開戦時から従軍してヨーロッパの戦場で戦い、戦車が初めて大量投入された1917年のカンブレーの戦いでは、戦車350 両を擁する王立戦車軍団を陣頭指揮した。イギリス陸軍屈指の戦車指揮官、専門化であり、戦後の戦車開発に際しては、自身の経験から歩兵戦車の必要性を強く主張して、マチルダ歩兵戦車の開発に尽力している。第二次大戦勃発の直前に中将で退役したので、戦争では郷土防衛隊を指揮していただけであった。しかしエリス将軍が開発に深く関与していたマチルダ歩兵戦車は、その重装甲で枢軸軍を大いに苦しめ、祖国の勝利に貢献したのであった。


moji

永遠に輝き続けるタミヤMM 栄光の「300」

 タミヤミリタリーミニチュアシリーズの300番アイテムとして登場した「1/35 イギリス歩兵戦車 マチルダMk.III/IV」。その内容は超傑作で、多くの戦車模型ファンが歓喜しました。作りやすさを求めるか、精密さを求めるかという選択を「履帯」に与えてくれたキット内容も素晴らしいです。サイズは手頃だけど、足周りの構成などは組み応え抜群です。

タミヤ「イギリス歩兵戦車 マチルダ Mk.III/IV」ベルト式履帯
タミヤ「イギリス歩兵戦車 マチルダ Mk.III/IV」ランナー

▲本キットはベルト式履帯と、プラ製の部分連結履帯を選択できます。手早く作りたい! 精密感を優先してじっくり作りたい! という両方のニーズに応えた内容となっています。また足周りのサスペンション構成が細部まで体感できるパーツ構成は圧巻です

タミヤ「イギリス歩兵戦車 マチルダ Mk.III/IV」フィギュア
▲フィギュアは3体付属
タミヤ「イギリス歩兵戦車 マチルダ Mk.III/IV」スカートのリベット
▲スカートのリベットもメリハリがあり、足周りをしっかりと引き締めてくれます
タミヤ「イギリス歩兵戦車 マチルダ Mk.III/IV」パッケージ

イギリス歩兵戦車 マチルダ Mk.III/IV

●発売元/タミヤ●4180円、発売中●1/35、約17.4cm●プラキット


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