韮沢靖デザイン『GODZILLA Millennium Design version II』ゴジラを製作&『ゴジラ-1.0』とゴジラへの憧憬を語る【コモリプロジェクト】
2024.05.21 コモリプロジェクトHP
Youichi Komori Official Web(y-komori.net)
山脇隆×土井眞一
皆さん、こんにちは。コモリプロジェクト代表の小森です。いつの間にか春到来ですね。風の中には花粉と黄砂が舞い、街を行けば桜の花びらが舞い、庭先では羽虫が舞っています。季節は確実に巡っているんです。しかし、ゴジラは違います。まだまだその場にズンと立っています。そう、『ゴジラ-1.0』のことです。先ごろ、アメリカで行われた第96回アカデミー賞にて視覚効果賞を受賞しました。映画の公開初日が昨年の11月3日でから、すでに5ヵ月のロングランです。移り変わりの早い映画界においてこれは本当に驚異的なことです。
ここにゴジラに魅せられたふたりの男がいます。ひとりは原型師、T`sfactoの山脇隆氏です。僕は密かに「尖りの山脇」と呼んでいます。いえいえ、性格がではありません。性格はもういたって穏やかで天使のような人です。でも、そんな山脇さんが造形すると、ガツンとエッジが効いて、とてもじゃないけど素手で触れないものが生まれます。コモリプロジェクトの第1弾、透明怪獣ネロンガも山脇さん作でした。彫り込んだ溝が深く谷底みたいで、エアブラシでは到底色が入っていきません。筆塗りしないとどうにもならないくらい凄まじいものです。
もうひとりは商業デザイナー、フライトギアの土井眞一氏です。僕は心の中で「Mr.マジック」だと思っています。映画の小道具、CMの美術、プラモデルの作例にキットの撮影、本のデザインと八面六臂の活躍です。僕だけでなく横山先生も(土井さんに頼めばなんとかなる)と絶対の信頼を置いています。その土井さんが『ゴジラ-1.0』の宣伝の一環として、3mもの巨大なゴジラ頭部の立体物を作りました。本誌にもその模様が紹介されましたので記憶に残っている方は多いでしょう。その際に土井さんが行ったことは、ゴジラの迫力、内側から迸り出るような圧倒される魂を自分の身体の中に宿すことでした。映像や写真、データを眺めるだけでは到底そんなことはできません。ではどうすればいいか、考えた末に到達したのが山脇さんのゴジラを作ることだったのです。
選んだものは『GODZILLA Millenium Desgin version II』、あの韮沢靖さんがデザインを手がけた魔王のようなゴジラです。土井さんは語ります。「山脇さんが造られたゴジラには狂気が入っています。生きて、躍動して、激しく猛るエネルギーを感じるんです」山脇さんの造ったゴジラを作りながらその魂を宿し、立体物の中にぐいぐいと練り込んでいく。ゴジラが生まれて七十年、今もなお人々の心を捉えて離さないのは、こんな風に魂の受け渡しが行われているからなのだとあらためて感じた出来事でした。
文/小森陽一
キット制作・構成/土井眞一
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小森陽一(コモリヨウイチ)
●1967年生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業後、東映に入社。その後、コラムや小説、漫画原作や映画の原作脚本を手がける。大阪芸術大学映像学科客員教授。『海猿』『トッキュー!!』『S-最後の警官-』『BORDER66』『ジャイガンティス』など著作多数。