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デカール剥がしやチッピングのテクニックで宇宙汚れをまとった「MGリック・ドム」が完成!!【ウェザリング特集】

2024.02.12

宇宙空間における汚れやダメージの原因とは?/MS-09R リック・ドム 【BANDAI SPIRITS 1/100】 月刊ホビージャパン2024年3月号(1月25日発売)

デカール剥がしやチッピングのテクニックで宇宙汚れをまとった「MGリック・ドム」が完成!!【ウェザリング特集】

宇宙空間における汚れやダメージの原因とは?

宇宙空間で運用した場合に想定される影響を模型的に表現する

 ウェザリングと一口に言ってもシチュエーションによって表現方法が大きく変わります。今回は全3回に分けて宇宙空間におけるウェザリングがどのようなものになるかを、六笠勝弘がMGリック・ドムを題材として製作していきます。宇宙空間というとあまり身近なものではありませんが、現実世界においてはスペースシャトルや人工衛星などを例に挙げるとイメージがしやすいのではないでしょうか? 宇宙空間での汚れやダメージの原因となるスペースデブリの衝突や宇宙線による表面劣化、これらを模型で表現していきます。

製作・解説/六笠勝弘

六笠勝弘(ムカサカツヒロ)

ミキシングや3D造形技術を駆使して、模型オリジナル、スクラッチ、大型ディオラマなどハードな作品を作り上げる。

月刊ホビージャパン2023年2月号『機動戦士ガンダムSEED』特集で六笠が製作した1/100スケールの「ゲイツ(指揮官機)」。MGモビルジンなどで採用されているZ.A.F.T.フレームを活かして外装や武装を3D造形によるスクラッチで再現

❶スペースデブリ衝突痕はリューターを使用
❷シリコーンバリアーの塗装剥がしで表面劣化を再現
❸デカールはカリカリと削り取る

 前回はコチラ!

 第1回はコチラ!


⑫デカール剥がし

▲貼ったデカールをデザインナイフなどで剥がしていく。切るというより、先端でカリカリするイメージ
▲デカール剥がしが完了した状態。剥がしすぎに注意
▲一体になっているデカールなどは一気に剥がれやすいので慎重に行う
▲ジオン軍マークも慎重に作業する

⑬チッピング

▲チッピングで錆びた表現を入れたい箇所などは極細のガンダムマーカーを使用
▲ストレーキングしたい部分にマーカーで点を入れる
▲マーカーが乾く前に指で下方向に擦る。フィンガーペイントの要領だ
▲ガンダムマーカーを使用することでお手軽にストレーキングが行える

⑭トップコート

▲すべてのパーツにツヤ消しトップコートを吹く。特にデカールを剥がした部分を念入りに

⑮デカール掠れ

▲デカールを貼った部分と同色を軽く吹き付ける
▲ぶわーっと一気に吹き付けないように、エア圧低めで少しずつ進める
▲白く浮いていた感じだったものが多少緩和される

⑯スミ入れ

▲スミ入れは、Mr.ウェザリングカラー グランドブラウンを使用する
▲適量のウェザリングカラーを皿に出して、専用の溶剤で希釈する
▲ビンのまま使ってもよいが、希釈することでサラサラになり、浸透圧で素早くキレイにスミ入れができる
▲スミ入れ専用の筆を使用。塗料の含みがとてもよく、作業効率がアップした

「ダメージ工作」「塗装剥がし」「デカールの掠れ」の組み合わせで宇宙汚れを再現

 宇宙空間での運用を意識してウェザリングを施したMGリック・ドムが完成しました。宇宙空間では常に宇宙線にさらされることによる表面の劣化をシリコーンバリアーによる塗装剥がれで、スペースデブリの衝突痕をリューターを使用したダメージ加工で表現しています。さらにマーキングデカールにもダメージ表現を加えることで全体的に統一感を持たせてみました。下半身が中心となる地上でのウェザリングと違い、宇宙空間では全方向から何かしらの影響を受けるということを意識しておくとよいでしょう。

▲頭頂部には通信強化用のロッドアンテナを追加。胸部に増加装甲を施すなど、現地改修的なアレンジを加えている
▲コクピット周りなどバイタルエリアのダメージ軽減を優先するなら四肢にダメージが集中すると考えるのが当然の流れであろう。といったところから脚周りにスペースデブリ衝突痕を多めに配置。また、飛行中にスペースデブリが衝突したと思わせるように一定方向にダメージ痕を入れている
▲キットはMGドワッジやMGドワッジ改以降に外装・内装をアップグレードしてリニューアルされたものを使用。元より完成度の高いキットがアップグレードされたことでポージングの自由度がさらに高められている。形状的にはとてもシンプルな構成なので、ウェザリングはもちろんディテールアップ工作のベースキットとしても優秀な素材といえる

 今回はウェザリングメインでMGドムを製作しました。「宇宙汚し」がメインテーマということですが…、人類はまだ宇宙で戦闘していない(と思う)ので、参考になる資料がありません。宇宙汚れとはどんなもんなのか? 最初に思い付くのは某スペースファンタジー映画ですが、現用兵器風の汚しを加えて進めていこうと思います。

■宇宙汚れ
 常に絶対零度にさらされ、爆発の高温にあぶられ、宇宙線をふんだんに浴びて、さらに艦内で整備することしかできず、0気圧と与圧室を何度も出入りすることを想像すると、かなりの勢いで塗装面がボロボロに退色したものが想像できます。ウェザリング作業は、表面にリューターで傷を付けて、シリコーンバリアーで塗面を剥がしたあと、ストレーキング表現、スミ入れ、オイルと煤汚れ、という工程になります。

■キット製作
 大きめのパーツが多いキットですが、アップデート前のMGと比べて可動部分に無理がなく素晴らしい出来です。このまま進めてもよいと思いますが、兵器的な汚しが映えるように若干スジ彫りを加えます。さらにマイナス凹モールドをヒートペンでスタンプします。スタンプ跡を削る作業が面倒ですが、彫刻刀で彫るよりも素早く作業できます。一通りディテールアップが終わり、キレイにサーフェイサーを吹いたあと、キレイに整形した表面にリューターで傷をつけていきます。けっこう思い切りが必要ですね。

■塗装
 いつものようにサフ吹き後、シャドウ吹き→カーキ吹きの順番で進めます。パネルラインや縁、角にシリコーンバリアーを吹き付け、塗装剥がしの下地を作ります。乾燥後、基本色の塗装になります。ウェザリングをすると色のトーンが低くなりがちなので、指定色より若干明るめにするとよいです。

■ウェザリング
 詳しくは製作過程を見ていただければと思いますが、大まかな工程は以下になります。塗装剥がし→デカール剥がし→ガンダムマーカー→トップコート→ツヤ消しトップコート→デカール掠れ→スミ入れ、という順になります。デカール掠れはすこーしずつ軽ーく吹き付けるとうまくいきます。

■追加ウェザリング
 パネルラインの真ん中あたりにエナメル塗料の白でドットを描いてブレンディングすると退色表現ができます。さらに粒マスキングをしたあと、部分的にグレーでシャドウ入れすると雰囲気がでます。各メーカーから「煤」や「オイル汚れ」専用の塗料も出ているので、試してみるのもよいですね。

■塗装レシピ
下地サフ=プライマーサーフェイサー(缶サフ)
シャドウ=MSファントムグレー+オレンジ(少々)、カーキ
基本色=ジョイントグレー、ニュートラルグレーⅤ(50%)+ニュートラルグレーIV(50%)、シャインレッド、メカサフ ヘヴィ
バーニア等=メタリックカラー ダークアイアン
ヒート剣=蛍光イエロー、蛍光オレンジ
スミイレ、ウォッシング=Mr.ウェザリングカラー グランドブラウン
退色追加=エナメル塗料ホワイト
追加チッピング=ガンダムマーカースミいれ/極細タイプ(ブラック)
ストレーキング表現=ガンダムマーカースミいれ/極細(ブラウン)
オイル汚れ=エナメル塗料オイル

■おわりに
 MGリック・ドムはよいキットですね! 前MGのよいところを残して関節等がアップデートされている理想的なドムになっています。バズーカがしっかり保持できてかなり遊べます。パーツが大きく、ディテールアップやウェザリングができる余白があり、楽しく製作できました。

BANDAI SPIRITS 1/100スケール プラスチックキット“マスターグレード”

MS-09R リック・ドム

製作・解説/六笠勝弘

©創通・サンライズ

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六笠勝弘

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