日本の零戦とも戦いを繰り広げたアメリカ海軍の傑作機「ヴォート F4U-1A コルセア」とは?【いまさら聞けないすごいヤツ】
2023.11.22 ヴォート F4U-1A
コルセア
イラスト/大森記詩
「名前は知っているけどどんなものなんだろう?」「いまさら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
今回は、太平洋戦争において日本の零戦とも激しい戦いを繰り広げたアメリカ海軍の傑作機「ヴォート F4U-1A コルセア」をご紹介します。
ヴォート F4U-1A
コルセア
全幅/12m
全長/10m
全備重量/5634kg
エンジン/ P&W・R-2800-8 ダブルワスプ
馬力/2200 馬力
最高速度/636km/h
航続距離/3540km
武装/12.7mm 機銃×6
逆ガル翼を備えた歴史に残る傑作戦闘機
解説/宮永忠将
アメリカ海軍最強のパワフルファイター
第二次世界大戦を前にしたアメリカ海軍は、2000馬力級の空冷エンジン開発に目処が立つと、各社にこのR-2800ダブルワスプエンジンに対応する新型艦上戦闘機の開発を打診した。これに応じたチャンス・ヴォート社が開発したのがF4Uコルセアである。コルセアとは北アフリカを根城にしていた海賊の俗称だ。
1000馬力そこそこのエンジンで満足していた空母用の戦闘機が、突然出力倍増の強力なエンジンを手に入れた結果、新しい問題がたくさん生じた。せっかくのエンジンを活かすにはプロペラを大きくしたいのだけど、従来の設計だとプロペラ端が地面を叩いてしまう。かといって主脚を長くすると強度が足りないし、機首が上がりすぎて離着陸が危険になる。そこで主翼を谷折りにして地面に近い折り目の部分に主脚を据えた。こうすれば短い脚でも地面からのクリアランスを稼げるからだ。正面から見ると飛んでいるカモメの翼と逆向きの形に見えるため、この仕組みを逆ガル翼と言う。
ダブルワスプと大直径プロペラの組み合わせは期待通りで、コルセアは天性のスピードスターだった。ところが、開発初期はエンジンにトラブルが続いた上に、低速飛行時に失速しやすい特性が解決できなくて、空母用の戦闘機としては失格となり、海兵隊や基地航空隊にまわされた。さらに1943年2月14日の初陣では、パイロットの訓練不足もあり、零戦隊との遭遇戦で、零戦1機と引き換えに8機も落とされてしまう。でも、日本機とはドッグファイトをせず、速度と急降下性能を活かした一撃離脱に徹するようになると、零戦にとっては難敵に化けた。さらに細かいトラブルを解消したF4U-1Aが投入されると、アメリカ海軍最強の戦闘機として認知されるようになる。
最良の艦上戦闘機に成長
F4Uコルセアが基地航空隊にまわされた結果、本来バックアップで開発されていたはずのF6Fヘルキャットが空母搭載機に選ばれていた。しかし空母運用に向けた改良型のF4U-1Dが投入されると状況は一変する。大戦末期には日本軍の戦闘機が迎撃に出てくる頻度が減るので、米空母艦載機の任務には爆撃が増えてくる。この場合、F6Fヘルキャットは爆弾搭載力が小さいし、爆撃向きの構造になっていないから、手持ち無沙汰になってしまう。その点、スペックはF6Fに優る上に、2トンもの爆弾を搭載できるF4Uコルセアは、空戦と爆撃の両方で一流だったので、艦上戦闘爆撃機として重宝されたのだ。
こうしてコルセアは、戦争終盤になって評価を上げる珍しい戦闘機となった。F6Fが戦争末期から急速に前線配備数を減らし、終戦後は一気に退役が進んだのに対して、コルセアは1950年に始まる朝鮮戦争でも、戦闘爆撃機として息の長い活躍をしている。
世界最強の空冷エンジンにものを言わせて敵戦闘機を蹂躙し、鉄の塊をぶん回して爆弾の雨を降らせる。そんなイメージでコルセアを作ってみると、この異形の戦闘機の本質に迫れるに違いない。
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