外伝小説『SYNDUALITY Kaleido』 ep.02「ノワール」
2023.09.05SYNDUALITY Kaleido 月刊ホビージャパン2023年10月号(8月24日発売)
『SYNDUALITY Noir』のサイドストーリーが描かれる外伝小説『SYNDUALITY Kaleido』第2回はノワールを主軸としたストーリー。
ミュージアムでカメラを拾ったノワールは、それから写真を撮り続けていた。
しかしメモリーに残っているのはブレブレでボケボケの写真ばかり。
それでもノワールは“シャッターチャンス”を求めてネストを彷徨う。
STAFF
ストーリー/波多野 大
MODELS
ノワール製作/よしゅあん。
ep.02「ノワール」
ノワールは、ずっとそこで眠っていた。
朽ちた旧時代のミュージアムのその奥で、廃墟を彩るように咲いた鮮やかな草花の中に横たわり、穴の空いた屋根から降り注ぐ太陽や雨を浴び続けながら。
ある日、イストワールを夢見る少年がノワールの元を訪れた。
ノワールは目覚め、少年はマスターになった。
それから少しだけ時が過ぎた。
▽ ▽ ▽
ノワールはカメラを両手に抱え、雲ひとつ無い空を見ていた。
ピィーと鳴く渡り鳥が太陽光を遮ると、ノワールはおもむろにファインダーを覗き込み、シャッターを押した。
撮影された画像を見直すと、フォーカスが定まらずブレた鳥と、逆光となった太陽のレンズフレアが画像を埋め尽くしていた。
「………」
情報としての具体性を持たない画像にノワールは釘付けになった。
「準備整ったよ、中に入りな」
カメラを見ながら立ち尽くすノワールの背後から声をかけたのは、酒のボトルを片手に立つマリアだった。
マリアはロックタウンでも指折りの工学技師である。
カナタはノワールのメンテナンスを定期的に彼女に依頼していた。
今日もその一環として、ノワールはマリアの自宅兼ラボ兼ロケット射場に預けられていたのだ。
広いバルコニーとしても使われる射場は、その特性上当然空を遮るものはなく、心地よい風が通り抜けている。
「どうしたの?」
マリアは声を掛けられても反応しないノワールに近づき、背中ごしにノワールの手元を見た。
「ブレブレね、あ、そっちも?」
これまでにノワールが撮影した画像をスライドさせていくが、まともに撮れた写真は一枚も無かった。
「どうしたら写真は撮れますか?」
「動くものを撮るのはちょっとコツがいるから、最初はやっぱり風景とか人間を撮るのがいいと思うわ」
「わかりました」
カメラは数日前、ノワール自身が横たわっていた場所の付近で見つかったものだ。記憶を失ったノワールに関連が深いと思われていたが、残念ながら関連情報どころか、すべてのデータが削除されていた。特にカナタとノワールで取り決めたわけではないが、ことあるごとに記念写真を撮るようになっていた。
「カナタが好きに使って良いと言ってくれました」
「カナタは教えてくれなかったの、撮り方」
「撮りたいものがあったらどんどん撮って良いと教えてくれました」
「撮り方っていうより、心構えね。それは」
「心構えとはなんですか?」
「んーと、どうして空を撮ろうと思ったの?」
「今日見たものをカナタに教えようと思いました」
「うん、その事よ。けど、撮りたいと思うことと、実際に撮れるどうかは別の話になるから技術もしっかり身につけておかないとね。シャッターチャンスはいつ来るかわからないし」
ノワールは相変わらずぽやんとした雰囲気だ。
「しゃったーちゃんす……?」
「大切にしたい瞬間のことよ」
マリアからすれば伝わっているかどうか定かではなかったが、彼女は特に気にしなかった。
普通に考えれば説明不要な物事を、懇切丁寧に噛み砕いて説明せねばならないのがノワールであった。
ノワールはメイガスでありながら、本来備えているはずの能力をことどとく備えておらず、日常生活はおろか時には会話を成立させることすら難しいところがある。
「なんとなく」は通用しない。
「先に検査を終わらせるわ。撮り方のコツは、そのあとね」
▽ ▽ ▽
たくさんの機材や配線によって埋め尽くされたラボは元々の広さよりかなり狭く感じられる。
ノワールの全身をスキャンし、蓄積されたデータにゴミが生じていないかなどをくまなく確認したが問題は検出されず、正常な状態という診断結果が出た。マリアは額に手を当てる。
「やっぱりどこにも異常は無いのよね……」
ノワールは微動だにせず、声も出さず、ただ寝そべっている。
深く思案して黙り込んだままのマリアに、ようやくちいさな違和感を覚えたのか、ノワールが口を開く。
「あの。私はどうかしましたか?」
「あ、ううん。こっちの問題。着替えできる?」
「はい」
ノワールは脱いでいたジャケットを羽織った。するり、と肩からジャケットがずり落ちた。
「じゃ、写真の撮り方のレクチャーして、今日はおしまいね」
カメラにはオートフォーカスや色調調整、顔認識など付加価値的な機能が多くついてはいたが、とりあえずなにも考えずに撮影可能なオートモードの説明で充分であろうとマリアは判断した。
「ほらノワール、一回撮ってごらん?」
カメラ背面部のちいさなモニターには、レンズによって切り取られた世界が収められている。
マリアはノワールが撮影した画像をメモリーから探し出し、ノワールに見せてあげた。
切り取られた風景が、情報として記録されていた。
「うん、ちゃんと撮れてる」
ノワールは驚きとも笑顔ともつかない表情でそれを見た。
「どんな風に見える?」
「景色がそのままです」
「人間の肉眼で見たものとは違うのよ。というか、確かめようもないんだけどね、自分が見えているものと隣の誰かが見ているものが、本当に同じものかどうかなんて」
「これは、なんですか?」
ノワールは手にしているカメラを掲げる。
「カメラだけど」
「私もカメラに見えています。同じですね、安心しました」
マリアはぷっと噴き出して、肩を震わせた。
「たしかに。そうよね、それでいいのよね」
ひとり納得するマリアに対し、ノワールは話の論点が掴めず小首をかしげるばかりだった。
「わからなければ、確かめればいいんだもの。勝手に想像して決めつけるのは人間の悪いところよね」
マリアはじっと上を見上げた。
「天井になにかありましたか?」
「ううん、なんにも」
ノワールは不思議そうに、マリアが見つめる天井を見つめていた。
▽ ▽ ▽
ロックタウンに戻ってきたノワールは、カナタやトキオたちの行きつけのBARエドジョーを訪れた。しっぽりとは正反対のにぎやかかつオープンなパブスタイルの飲み屋である。
「おっ、カナ坊んとこの相棒じゃねえか」
ノワールは一歩下がって警戒のポーズをとる。
それには理由があった。
つい先日、電源が入らないカメラの原因を探るべく、ノワールは街で単独聞き込み調査を行った。その際にバカラネストのマフィア幹部であるランゲというドリフターに拐かされて連れ去られたのだ。
ノワールはカナタから「知らない人についていっちゃダメだよ」と教えられたことを、忠実に実行したのである。
「知らない人とお話ししてはいけないとカナタから教わりました」
「大丈夫、俺はカナ坊がこんくらいの頃から知ってんだ」
男は腰の高さくらいのあたりに手のひら向けて、ニカっと笑う。
立ち飲み用の小高い円卓に肩ひじを掛けた男は、オイルまみれの作業着という出で立ちだった。
作業着の背中には【ボーンヤード】という刺繍が施してある。
すでに酔っぱらった男は、ノワールの反応を待つことなく饒舌に語り続けた。
「たまにこっちに顔出して見たらカナ坊の奴捕まらねえときた。カナ坊のコフィンはどうだ? 乗り心地良いだろ。あいつは昔から良いセンスしてたからな。イストワールに行きたいとか言うから最初は冗談かと思ってたけどな、やたら真剣な顔でコフィンの仕組みやらなんやら聞いてくるもんだから、だんだん楽しくなってきてな。本気の目をしてる奴を見ると、技術屋ってのは血が疼くもんで」
ひと呼吸おいて、男は小さなボトルをあおった。
「自分でコフィンを組み上げちまうってのは、すげえんだよ。アヴァンチュールみたいに業者から買い付けるのとはワケが違う。コストに時間にアフターケアにって考えると買い付ける方がそりゃあ得なんだけどさ、そういう問題じゃねえのさ」
ノワールが相槌を打つ暇もなく、男は喋りつづけた。
それからも、男はカナタがベテランの技術屋たちに揉まれながらいかに努力を重ね、若くして優れたメカニックとしての知識と技量を身に付けたかを語った。
言葉の端々に乱暴さはあるものの、根底にあるものは間違いなくカナタへの愛情であった。
「カナ坊にゃあ、幸せになってもらいてえよ」
「カナタはいま不幸せですか?」
「んなバカな事はあるかい、お前さんみてえなメイガスが手に入って不幸だなんて言ったらバチが当たるよ」
「私がいると、カナタは幸せですか?」
「そらそうだ。変なこと訊くメイガスだなあ」
期せずしてカナタを構成する生い立ちのひとつを知り得たノワールは、表情を崩すことはなかったものの、その内部にカナタへの理解と思慕が積まれた。
「自分の相棒と同じくらい、載せるコフィンにもあいつはこだわってるだろ。ロマンだからな」
――できるだけ、長くそばに居てほしい。
ノワールとの契約の際にカナタが発した言葉を引用して、男の言葉の意味を探ったノワールは、コフィンもできるだけそばに居てほしいものなのだと理解した。
同時に、懸念を抱いた。
「私は、カナタのコフィンを壊してしまいました」
「壊したあ? どんな風に」
ノワールはカナタの操縦技術をものの見事に補い、初戦にして中型エンダーズをも破壊。さらに元アヴァンチュールの副隊長でもあるランゲとの一戦では終始圧倒するまでに導いてみせた。
その代償とでも言おうか、いずれの戦いでも過負荷によって各関節部の破断や融解を起こしたのだ。
その度にカナタは機体を調整し、改善されてはいるのだが……。
「そりゃ、カナタが悪い。とも言えねえか。お前さんの能力が高すぎてカナタの想定以上に動かしちまったんだろうな。あいつは自分を過小評価する悪いクセが抜けねえから。コフィンの要求スペックを低く見繕ってたんだろう。ん、やっぱ、カナタが悪いわ」
「カナタは悪くありません」
抑揚に乏しいノワールの声は静かなものだったが、それがかえって敵意や否定を含まない純粋な想いだと男に感じさせた。
「まっすぐてのは、いいな。年取るとつい旨くやろうとしちまう」
認めているがゆえの叱咤という手段よりも、カナタを自ずから成長させるものはなにか。男はその答えめいたものに気づいたのだ。
「あいつはほんと、いいメイガスにめぐり会ったんだな」
男は屈託なく、くしゃりと笑った。
他者の幸福を心から喜ぶ、温かい笑顔だった。
ノワールはその様子に、どことなくカナタを感じた。
カメラを取り出したノワールは、ボトルのおかわりを受け取って嬉しそうに開栓する男を撮影した。
「ああ? 今の撮ったのか? なんだってそのタイミングだ?」
ノワールは答えをもっていなかった。
ただ、今しがた聴いた話をどこかに残しておきたいという思いが彼女を突き動かしたのかもしれない。
普通のメイガスならその分析も出来ただろうが、ノワールにはできなかった。
「写真が好きなら良いところがあるぜ」
男はニヤっと笑った。
▽ ▽ ▽
ロックタウンにほど近い場所に、ごく小規模のネストがあった。
ダイヤモンドファームネスト。
そこは農業ビジネスに最適化するべく資金が投入され、旧時代の自然環境の再現が試みられている。ゆえに、荒野と廃墟ばかりが広がるこの時代においては、風光明媚なフォトスポットの宝庫でもあった。
「あの、私はいったいこれからなにをするのでしょうか?」
ノワールは農園帽にジャケット、つなぎ、手袋、長靴という出で立ちだった。
「ちょうど手が足りない所だったのだ、助かる」
マイケルは自身も長靴に履き替えながら言った。
この自然溢れるネストは、マイケルの一族のものだ。
彼はロックタウンが誇る最大派閥のドリフター集団「アヴァンチュール」のリーダーであり、「生鮮食品生産拠点」をいくつも抱えるオーナーの跡取り息子でもあった。
「今日は田んぼに苗を植えるからな、ノワールついてこい」
「はい」
言われるままにノワールはマイケルのあとをつけた。
薄く水が張られた田んぼに入ると、柔らかい泥にノワールの足がズブズブとめり込んでいった。
「ああ、こら! 接地圧の最適化をしろ! メイガスが何キロあると思ってる!」
ノワールは聞き慣れない言葉に首を傾ける。
なおもノワールはズブズブと田んぼに沈んでいく。
「お、おい!」
マイケルは焦り、ノワールの両手をとって引っ張りあげようとするが、なにせ100キロをゆうに超える金属の塊がメイガスだ。
マイケル自身もぬかるんだ足場では不安定なため、急いで田んぼを出てノワールのジャケットを掴むと、これ以上沈まぬように踏ん張った。
「緊急だ! 手が空いてる者、すぐに田んぼに集まれ!」
マイケルは音声認証で起動した通信機を使って各所で農作業に従事するアヴァンチュールのメンバーに声を掛けた。「なんすか?」「今箱詰めやってんすよ」「今日中に検品終わらせなきゃいけないんすけど」などなど反応が返ってくる。
「いいから急げ貴様らァ!」
マイケルは顔を真っ赤にしながら、ノワールのジャケットを懸命に引っ張りつづけた。
▽ ▽ ▽
マイケルのメイガスであるボブがまず現れ、疲れ果てたマイケルに代わってノワールの腕をとり、それ以上の沈下を防いだ。
遅れてやってきたアヴァンチュールのメンバーは、ぽけっとした表情で田んぼに半身が埋まったノワールのシュールさに笑いをこらえつつ、カナタの相棒を助けてやらねばと奮起した。
何度か列になって引っ張り上げようとしたが、うんともすんともいわない。そう簡単にノワールは抜けないようだった。
「ボブ、【リアリド】を回せ」
「はい、すぐに」
ボブは農耕作業用にカスタマイズされたリアリドを持ち出し、比較的地盤の安定した場所をスキャンで探り当て、脚部をロックした。
「ボブ、ノワールには当てるなよ」
精密に計算された軌道をなぞるように、ゆっくりとリアリドのアームパーツがノワールの頭上に向かう。
「掴めますか、ノワール様」
外部スピーカーから鳴るボブの声にノワールは反応した。
「んしょ」
と、ノワールが腕を伸ばそうとすると――ドボッ! と、反対にノワールの体が沈んだ。
「うわ、やばいっすよ!」
野次馬と化したアヴァンチュールのメンバーは、予断を許さぬ状況に固唾を呑んで見守っている。
「ノワール様、そのまま動かないでくださいね」
ボブはアームパーツをノワールの目の前に差し出し、捕まるように指示した。
ノワールが掴んだところで、マイケルが親指をグっと立てる。
アームパーツがゆっくりと引き揚げられると、ゴボゴボと音を立て、ノワールの足が泥の中から徐々も引き抜かれていった。
「よーし、そのまま! そのままだ!」
「いけ!」「そのまま!」「いけ!」と、見守るメンバーたちも拳を握って声を張り上げる。
そしてようやく、スポーンと音を立ててノワールが田んぼから引っこ抜かれた。
わー! と喝采が湧く。
「ノワール様、手のひらに乗れますか?」
コフィンの手のひらはそこまで大きなものではないが、人ひとりが座るくらいのスペースはある。ノワールは軽やかな身のこなしでリアリドの掌底部に腰掛けた。
ゆっくりと地面に降ろされるノワールは、巨人に救われた姫君のようだった。
アヴァンチュールの面々は拍手でそれを出迎える。
ジャケットのポケットからカメラを取り出したノワールは、喝采に沸くアヴァンチュールの面々をファインダーに収めてシャッターを切った。
▽ ▽ ▽
結局農作業はあまりにも危険だということで、ノワールは外されることになった。
マイケルたちが農作業に従事するさまを、ノワールはボブと一緒に眺めていた。
「ぽんこつでごめんなさい」
「気にされることはありませんよ。適材適所というものがあります。カナタ様はとても面倒見の良い方でしょう? きっとノワール様は、カナタ様の元に来るべくして生まれてきたのかもしれませんよ」
「私は、カナタの力になれませんか?」
「難しく考える必要はありません。マイケル様を見ていると考えさせられることが多々あります。世の中を楽しく前向きに生きるコツは、物事の捉え方なのではないかと」
「物事を捉えると、楽しくなりますか?」
「ははは。自分がどう思いたいか、という事かもしれません」
「私が?」
「ええ。あなたは他のメイガスの追従を許さない圧倒的な戦闘処理能力があります。それは、これまでの数回の戦闘で明らかに示されました。今のカナタ様にきっと必要なものです」
カナタに必要である。
その言葉が栄養となって、ノワールを支える地盤に染み込む。
「これは、マイケル様からのお土産です」
ボブはナイロン製の袋を差し出した。マイケルの実家で作られた加工食品と、ちょっとだけ生野菜が入っていた。
「カナタ様とぜひご賞味ください」
▽ ▽ ▽
ノワールは、ロックタウンに戻ったあとも時間が許す限り散策して回った。行く先々で出会う者から、カナタの話を聞かされた。
彼らからカナタに向けられる優しさは、同様にその相棒であるノワールにも注がれた。
ノワールの中に、カナタのそばにいることで、自分の居場所もあるのだという情報が蓄積されていった。
▽ ▽ ▽
「おかえり、ノワール」
帰ってきたノワールを、カナタは迎えた。
自室ではなくガレージの外で待っていたのは、ノワールの帰りが少し遅かったからだった。
「って、なんかすごい大荷物だけどどうしたの?」
ノワールはロックタウン中を巡るうちにたくさんの人から渡されたお土産袋で両腕がいっぱいだった。
「お土産です」
「こんなに!?」
「みなさんからもらいました」
「そうなの? いやあ、なんか悪いなあ」
「カナタ、今日あったことをお話しします」
「じゃあ、ここじゃなんだし中に入ろ。ごはんもできてるからさ」
「荷物、運びます」
「いいよいいよ。俺やっとくから。中、結構荒れてるからつまずいて転んだりしたら危ないし」
と言ったカナタは、袋を一気に受け取り持ち上げた。
ノワールは軽くなった手のひらをじっと見た。なにかが、わずかに反応していた。
カナタはその様子が少し気になって、「ノワール?」と顔を覗き込むようにしていった。
「私も、運びたいです」
カナタはハっとして、いくつかの袋を再度地面に下ろした。
「やっぱり一緒にやろうか」
「はい」
急に胸元が温かくなった気がしたノワールは、ジャケットからカメラを取り出して、カナタをフレームに収めた。
「俺なんて撮ってどうするんだよ」
「しゃったーちゃんすです」
カナタはやや照れながらもササっと前髪を整えて、小さくVサインで応じた。
共に食事をとり、眠りにつくまでの間、カメラに記録されたノワールの一日を、カナタはまるで自分のことかのようにくり返しくり返し何度も見直していた。
次回はデイジーオーガのエピソードを掲載!
【SYNDUALITY Kaleido】
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