『コードギアス R2』「HG 紅蓮聖天八極式」の完成度をさらに高めて劇中イメージに近づける!【サンライズ・メカニック列伝】
2023.08.20サンライズ・メカニック列伝 第55回 紅蓮聖天八極式【BANDAI SPIRITS 1/35】●田仲正樹 月刊ホビージャパン2023年9月号(7月25日発売)
紅蓮聖天八極式(『コードギアス 反逆のルルーシュ R2』より)
サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回は『コードギアス 反逆のルルーシュR2』から第九世代相当ナイトメアフレーム(KMF)「紅蓮聖天八極式」が登場。ファンを驚喜させた第2弾HGキットの徹底レビュー作例をお送りしよう!
紅蓮聖天八極式は「黒の騎士団」のエース、紅月カレンの専用KMF。中華連邦での戦闘時に鹵獲されブリタニア軍へと引き渡された「紅蓮可翔式」を、ロイド・アスプルンドとセシル・クルーミーが趣味で改造した機体である。多機能機動装置エナジー・ウイングや、出力強化された輻射波動機構を有し、第二次トウキョウ決戦では出力60%の状態で枢木スザクのランスロット・コンクエスターを圧倒。スペック上は超・超高性能機ランスロット・アルビオンを上回るとまで言われた、皇歴2018年における最強のKMFである。
作例はHGランスロット・アルビオンに続いて田仲正樹が製作。良好なフォルムと可動機構を活かしつつ、より劇中のイメージに近付けるため、徹底的にエッジを調整。また、隙をなくすための細かい工作を各部に施すことで、秀作キットの完成度をさらに引き上げている。
[製作途中状態]
キットは設定画や劇中の印象どおりのフォルムと広い可動範囲を持ち、HGランスロット・アルビオンの高い完成度を見て期待をしていたユーザーを一切裏切ることのない出来。作例はキットの良好なフォルムはそのままに、あえて「手が痛くなるほどに」全身のエッジを調整。さらに装甲裏等の隙を軽減させて、完成度をより高めることを目標としたもの。製作途中画像では各エッジに接着されたプラ板が確認でき、シャープ化へのこだわりが見えてくるだろう
[頭部~胴体]
頭部形状はキットのまま。耳は2段エッジを消してシャープ化し、頬当ての合わせ目を処理。上部装甲はフチを薄く加工している。胴体は胸部前面の合わせ目を消しつつ、胸部上面と腹部を後ハメ化するために、B4-28部品の分割位置を変更。が、田仲氏いわく「切り離すのが想像以上に難しいのでマスキングしたほうがいいです」とのこと。B4-28/29部品はエポパテで表面をなだらかに加工した。各装甲は2段エッジを消し、後部ユニットは各エッジにプラ板を接着後、削り込んでシャープ化。収納状態のエナジー・ウイングは工作と塗装をしやすくするために左右を分割し、裏面の空間をエポパテで埋めて隙を軽減。展開状態の各ユニットはエッジをシャープ化している。ミサイルポッドのハッチは着脱しやすいよう、取り付け用のピンを削りネオジム磁石で固定した
[コックピット]
キットはコックピット内部が省略されているため、メカニックコレクション紅蓮弐式の操縦席とカレンのフィギュアを流用して再現した。弐式のA3部品をコックピット内に収まるように小さく削り込み、ネオジム磁石で固定。カレンは『R2』版の搭乗服姿に見えるようにエポパテで各部の形状を変更している
[脚部]
太モモの分割位置を変更し、エッジをシャープ化しつつ球体の股関節ブロックを後ハメ化。各装甲は二段エッジを消してシャープ化。「ヒザ装甲はスネ(C1/C2-12部品)の下部を少し削り込めば、なんとか下から後ハメできます」とのこと。つま先ブロックは意外に隙間が目立つためエポパテで埋めている。ランドスピナーの収納部はエポパテとプラ板で空間を塞いでいるが、「ユニットがピッタリとはまるように作ってしまうとどうしても塗膜が剥げるので、充分なスペースができるように調整してください」とのこと
[腕部]
両肩の装甲はエッジをシャープ化。右肩装甲は先端部の形状を設定画に近づけ、装甲裏をエポパテで埋めて隙を軽減した。左前腕と輻射推進型自在可動有線式右腕は2段エッジを消してシャープ化。右腕は推進用ノズル裏をプラ板で塞ぎ、噴射口内部のスリットモールドを削って、ビルダーズパーツHD MSスラスター01の楕円型ノズルを埋めこんでいる。ツメは先端にプラ板を接着、削り込んでシャープ化。展開状態の輻射波動素子はいったん切り離し、肉抜き穴を埋めてから再接着。最終回のアルビオンとの戦いを見ると欲しくなる左の拳は、HGBCビルドハンズ角型のLサイズをエポパテで改造した
[武装]
スラッシュハーケン(飛燕爪牙)は位置決め用のツメを削り、代わりにネオジム磁石で上下を固定。肉抜きはエポパテで埋めた。MVSは刃の先端をシャープ化し、劇中の作画により近い角度で構えられるように、持ち手の形状と手首関節軸の角度を調整。キットオリジナルの鞘に収納するための2本目の柄は、固定用のダボ穴をプラ板で塞いでいる
■「気くばりのすすめ」という本がありましたね
15年間ぶっ続けで腕立て伏せをしているサンライズメカファンのみなさん、紅蓮聖天八極式のHGキットは製作されているでしょうか。ほぼ完璧に設定どおりの色分けがされているのはもちろん、赤と黄色はグロスインジェクション成型で、「これを塗装で再現するのは大変だぞ」と思わされる美しさ。KPS製の関節は高い保持力と広い可動範囲を備え(特に足首関節の工夫された構造には唸らされました)、いかにも最強のKMFらしい、どこか禍々しさも滲むフォルムも文句なし。指や顔など細かな部品のランナー配置やゲートの位置等に細かく気が配られているのも嬉しいところです。
エッジが2段になっているのはポーズを付ける際に指先が痛くならないようにというメーカーの気配りだと個人的に思っていますが、八極式は歴代の紅蓮よりもギザギザトゲトゲ感が増した形状が特徴で、加えてこれを改造したあの伯爵も周囲にしっかりと気配りができる人物だとは言い難いので、むしろ操縦者や整備員(疲れてる時にこれとかビアレスとかは整備したくないなあ)に対する気配りや思いやりといったものがまったく感じられないくらいにトゲトゲ感を強調したほうが八極式らしくなるのではないかと考えました。
作例のフォルムや可動機構はほぼキットのままですが、よりシャープで「危険な」雰囲気を醸し出すべく、各部の2段エッジにプラ板を接着しては削り込むむことを続けました。触っていると本当に手が痛くなるので、これは決して必須の工作ではありません。ただ、右手のツメだけはなるべくシャープに加工したほうが良いと思います。また、各所の肉抜きや装甲裏の空間などをひとつひとつ処理し、隙をなくしていくことで、機体とカレンの強さが表現できるはずです。
■クリアーは10日間乾燥させましょう
HJムック「コードギアス メカニカルコンプリーション」掲載のカラー設定とキットの組立説明書、メカニックコレクション紅蓮弐式を参考に塗装。
赤=ハーマンレッド+モンザレッドにブラウン、純色シアン、ピンクを各少量
暗い赤=本体赤に純色バイオレット、ミッドナイトブルー、ブラウン、クリアーレッドを各少量
黄=ビビッドオレンジ+モデナイエロー1に本体赤を少量、ブラックを極微量
腹部等=自作の青紫系ダークグレー
右前腕は焼鉄色+シルバーにクリアーオレンジ微量(輻射波動素子はシルバーやや多め)。右手ツメの金はエルドランゴールド+スターブライトゴールド。MVSの刃はGXメタルレッドに蛍光ピンクを軽く上吹き。赤と黄色の部分は光沢クリアー(2日半だけ乾かしたあとで塗面を磨いたら大変な目にあいました)、暗い赤とグレーの部分は半光沢にツヤ消しを混ぜたクリアーを吹いて塗膜をコートし、付属のホイルシールを貼って終了です。
次回は未だにプラキット化されていない、あの脇役メカが登場します。
BANDAI SPIRITS 1/35スケール プラスチックキット“ハイグレード”
紅蓮聖天八極式
製作・文/田仲正樹
HG 紅蓮聖天八極式
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●4730円、2次受注終了、8月~発送予定●1/35、約16cm●プラキット
©SUNRISE/PROJECT L-GEASS Character Design ©2006-2017 CLAMP・ST
田仲正樹(タナカマサキ)
一応、月刊ホビージャパンガンダム班に所属しているはずのモデラー。「宇宙船」誌の映像倶楽部にも所属している。