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まさに量産型「M4中戦車 シャーマン」の性能やその魅力とは?【いまさら聞けないすごいヤツ】

2023.07.18

M4中戦車 シャーマン●宮永忠将、大森記詩 月刊ホビージャパン2023年8月号(6月23日発売)

まさに量産型「M4中戦車 シャーマン」の性能やその魅力とは?【いまさら聞けないすごいヤツ】

 M4 中戦車 
 シャーマン 

イラスト/大森記詩

 「名前は知ってるけどどんなものなんだろう?」「今さら聞くのもはずかしいなぁ……」なんて思ってしまう有名な飛行機や戦車、車などのモチーフをサクッと読める解説とイラスト、オススメのプラモとともにご紹介する本連載。
 今回は、第二次世界大戦で登場したアメリカ戦車「M4中戦車 シャーマン」をご紹介。この戦車、さまざまなバリエーションがあって、その差異を見るのも楽しいのですが、まずは大きな視点で「シャーマンってどんな戦車なの?」ってことを見ていきましょう。連合軍を勝利に導いた立役者でもあるこの戦車の魅力に迫ってみます。


M4中戦車 シャーマン

車体長/5.84m 
全幅/2.62m全高/2.67m 
重量/30.3t 
速度/38.6km/h(整地)、19.3km/h(不整地) 
行動距離/193km(整地) 

主砲/37.5口径 75mm戦車砲M3/52口径76.2mm戦車砲M1/22.5口径105mm榴弾砲M4 
副武装/12.7mm重機関銃M2、7.62mm機関銃M1919 
車体装甲/38~51mm 
乗員/5名


M4イラスト側面
▲シャーマンの多くはこのようにオリーブドラブ1色で塗られていました。オリーブドラブという色が、模型に塗るだけでミリタリー色の強いイメージをもたらしてくれるのも、シャーマンによるところが大きいです
M4イラスト正面
M4イラスト背面

「量産型」という言葉こそがふさわしい戦車。M4シャーマン

解説/宮永忠将

M4イラストイタリア戦線
▲ここちらの車体に注目。上記のものと比べて丸いですね。鋳造車体と言います。このようにシャーマンは、各部の形状に差異があるバリエーションがたくさん生み出されました。こちらの塗装は、イタリア戦線にみられた迷彩パターン。オリーブドラブでないシャーマンもかっこいいですね

 戦いは数を証明した最多量産戦車 

 宇宙世紀、一年戦争のジムやザクⅡは「量産型」として説明される。これはガンダムのようなワンメイク機との比較なのだろう。だけど、そもそも兵器は量産が前提なので、不必要な呼び方だ。しかしながらアメリカのM4シャーマン戦車にはそんな「量産型」という言葉こそがふさわしい。なにせ生産数は5万輌で、単一車種として世界最多。ソ連のT-34中戦車でさえ、最多の76mm戦車砲バージョンで3万5000輌。ドイツ軍主力のⅣ号戦車なんかシリーズ総計で9000両、日本の九五式軽戦車は2400輌足らずなのだから圧倒的だ。
 それでは肝心の性能はというと、これは見方によって変わってくる。75mm戦車砲は榴弾の威力が抜群で、友軍歩兵には心強いが、戦車戦ではちょっと頼りない。でもそれはあくまで相対的な評価。相手がドイツ軍重戦車ではお手上げだけれど、日本の戦車相手だとM4シャーマンはほとんど重戦車のような存在となる。
 このようなM4シャーマンの性能を学校通知表に例えるなら、見事にオール3となる。しかしただ一点、「数」という項目だけは不動の「5」となるのだけど、これはどういう理屈なのか?
 M4戦車は、まず普通に戦ってもティーガーⅠのようなドイツ重戦車には歯が立たなかった。ティーガーはシャーマン5輌に匹敵する――そんな評価も納得の性能差だ。普通ならここでシャーマンより強力な戦車を開発しようと考えるところだけどアメリカは違う。敵の5倍の戦車を用意して問題を解決しようとした。スペック上、ジムでは重モビルスーツのゴッグにはかなわないだろう。だけど5機で囲めば1~2発は弱点に当てられるでしょ?
そういう発想で戦車を作っていたのだ。

 型式の多さが力の証 

 そんな量産戦車のM4シャーマンは開発方法からしてちょっと凄い。M4の試作車を完成させたアメリカ軍は、設計図と重量や必要装甲厚、速度、装備品など必要な仕様だけまとめて、アメリカ全土の重機、自動車メーカーに試作を打診し、要求を満たしたメーカーの戦車をすべて採用したのである。
 各社の違いは特にエンジンに現れた。M4とM4A1はエンジンこそコンチネンタル製航空機用エンジンで共通であるが、車体の製造方法により型番が違う。他にトラック用ディーゼルを積んだM4A2や、フォード社製戦車用エンジンを搭載したM4A3、あるいはバス用エンジンを5基も積んだM4A4もある。これらは見た目から違ったりするのだけど、書類上はすべてM4シャーマン戦車として扱われる。まさにアメリカの工業力を結集した戦車なのである。
 そんなM4戦車は、とにかく汎用性が高かった。どんな任務にも対応できるだけでなく、貫通力番長のイギリス製17ポンド砲や、爆発力抜群の105mm榴弾砲を搭載した派生型も作られた。シャーマンとその派生型の開発記録を追うだけで辞書ができるほどだ。
 同盟国に大量の兵器を供与しながら世界中で戦争をする。そのためにはちまちまと新型を作らず、どーんと数の暴力で解決してしまう。そんな発想を具体化したのがM4戦車だったというわけ。


アクセサリーも
豊富なM4プラモの大定番!

 タミヤミリタリーミニチュアにのシャーマンは、この戦車を初めて作る人にとってぜひともオススメしたいキット。タミヤもイージーエイトなど最新技術でシャーマンのバリエーションを生み出しているが、元の味を知るにはこのキットがもってこい。少ないパーツ数で戦車の形になり、さらに荷物や戦車兵のフィギュアも豊富にセットされているので、アメリカらしい豊かな雰囲気で仕上げられます。

M4シャーマン タミヤ ランナー パーツ
▲小さなパーツが少なくて、組み立ても単純な構成。まさに勝利の戦車だな~とプラモを作っていて思えます
M4シャーマン タミヤ 鋳造
▲鋳造肌の細かな凹凸が表現されています
M4シャーマン タミヤ 履帯
▲履帯はプラ用接着剤で接着可能なベルト式
M4シャーマン タミヤ 完成
▲足周りが完成すると、あっという間に戦車の形になるのがこのキットの良いところ。製作時のテンションが長続きします
M4シャーマン タミヤ アクセサリー
▲戦車兵、車外に装備できるさまざまなアクセサリーがどっさり。ひと箱にアメリカの豊かさが詰まっています
M4シャーマン タミヤ 箱パッケージ

1/35 アメリカ M4シャーマン戦車 (初期型)

●発売元/タミヤ●3740円、発売中●1/35、約17.5cm●プラキット


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