HOME記事工具・マテリアルこだわりや美しい塗装の秘密とは? 数々の完成見本を手掛けるボークス/造形村プロフィニッシャーに直撃!!【すべて見せます! エアブラシの教科書】

こだわりや美しい塗装の秘密とは? 数々の完成見本を手掛けるボークス/造形村プロフィニッシャーに直撃!!【すべて見せます! エアブラシの教科書】

2023.04.03

ボークス/造形村プロフィニッシャーのこだわりを教えてください! 月刊ホビージャパン2023年5月号(3月25日発売)

美しい塗装の秘密を聞いてみよう!

 ボークスや造形村ブランド商品の美しい完成見本。これらはもちろん人の手によって塗装されています。それらを手がけているプロフィニッシャーと呼ばれる人たちはいつもどのようなこだわりを持って塗装しているのでしょうか? そこで今回、ボークス/造形村プロフィニッシャーの3人に直撃取材!! 彼らの塗装環境なども見せてもらいましたので、合わせてご覧ください。

京都まで行ってきました!


SWSを一手に
引き受ける!

▲小林直樹(コバヤシナオキ)。64歳。主に造形村ブランドの飛行機模型・SWS(スーパーウイングシリーズ)やスケールモデルおよび関連フィギュア(パイロット等)を担当


GTM&MHの美しい
完成見本を手掛ける!

▲中森健人(ナカモリタケト)。32歳。主に『ファイブスター物語』のゴティックメード(以下GTM)やモーターヘッド(以下MH)の完成見本を担当

キャラクターフィギュア、
ミニチュアを
美しく塗り上げる!

▲小野田尚仁(オノダタカヒト)。33歳。キャラグミン、ブロッカーズ・フィオーレなどキャラクターフィギュア、ミニチュアを担当

これがボークス/造形村プロフィニッシャーの塗装環境

▲こちらは小林直樹氏の塗装スペース。中森氏、小野田氏も同様の環境が揃えられています
▲塗装や工作に必要なものは、各机に備えられたスチールラックを活用。上の写真はラックの形状をわかりやすくするために片付けてもらった状態。このラックにフックを引っ掛けて、塗装や工作用のマテリアルを収納しています
▲ハンドピースは造形村の「プロモデルA15」を使用。ボタンを押すと空気が出て、引くと塗料が出るダブルアクションタイプです。コンプレッサーは「エアフォース1」

Q1.ラッカー塗料でのエアブラシ塗装の際、塗料はどのくらい希釈しますか?

\ 小林 /

 私は基本的に薄めで、塗料1:シンナー3~4で塗ります。シチュエーションにより下塗りはシンナーを減らして(塗料1:シンナー3)で濃いめに、上塗りはシンナーを増やして(塗料1:シンナー4)薄めにして塗り重ねます。薄い塗料を塗り重ねることで、飛行機の迷彩塗装もきれいに仕上がります。
 特に最後の仕上げでは、ほぼシンナーと言える薄めた塗料を表面に塗って、塗料のざらつきをシンナーで馴染ませて平滑にしたりもします。

\ 中森 /

 基本的には塗料1:シンナー3をベースにしています。光沢のある広い面積を塗る場合はやや濃いめ、細吹きを行う時はより薄めに希釈するなど、シチュエーションによりある程度の調節はしています。

\ 小野田 /

 下地の傷消しなどを目的としているサフ類に関しては1:2、上塗りのカラーは、重ねる回数で発色感を調節したいので1:3と薄めにしています。仕上げに近づくほど、表層のレベリング性を高めたいため、シンナーの割合を上げるようにしています。最終的な表面の出来具合によっては小林が言ったような感じで、シンナーだけ吹くこともあります。

ファレホの時の希釈とエア圧

 ボークスが取り扱っているスペインの水性塗料「ファレホ」で塗る時は、以下の条件で塗ることが多いそうです。

▲モデルカラーなど要希釈のもの/塗料6:精製水など4 0.15Mpa(詰まりやすい場合0.17~0.22に引き上げる)
▲モデルエアー、メタルカラーなど最初からエアブラシ塗装に適した濃度になっているもの/塗料9:精製水など1  0.1Mpa
▲こちらはファレホのエアブラシ専用塗料「モデルエアー」で塗装したもの。前記の割合で精製水などで希釈することで、滑らかな塗面となります

3人共通の塗装準備「バブリング」

 3人が皆同じように行う塗装準備があります。彼らはそれを「バブリング」と呼んでいます。バブリングはカップに塗料を注ぎながら均一な攪拌もできるという方法。早速見ていきましょう。

▲まずはハンドピースのカップの中にうすめ液を入れます
▲うすめ液を入れたら、うがいの要領でうすめ液をカップ内でブクブクさせます
▲うすめ液をブクブクさせたまま、使用する塗料を投入。こうすることでカップに注ぎながら塗料が攪拌されます
▲ブクブクとした泡の形状や大きさが揃っているとベストコンディション。この泡が濃度やきれいな攪拌状態を見極める指針にもなるそうです
▲小林氏は、うすめ液のボトルの曲面に試し吹きすることが多いそうです。この曲面に塗料が垂れないで定着し、きれいに発色するのを確認してからパーツに塗装します

Q2.塗り重ねの回数はどれぐらいが目安ですか?

\ 小林 / 3~4回

▲厳密に言えば発色させようとする目標まで。私は薄めに何度も吹くので、回数はもっと多くなることもあります

\ 中森 / 3~4回

▲塗料の希釈率により本来の発色を得られるまでの吹き重ね回数は変わりますが、3~4回程度が多いと思います。クリアーカラーなど一部の塗料を除き、吹き重ねることによって色が暗く(濃く)なったりすることはないため、しっかり吹き重ねるのがポイントだと思っています

\ 小野田 /

▲顔料系のソリッドカラーは色によって隠蔽力や発色感が異なりますが、2〜3回程度。メタリックは塗装面にフレークを均等に乗せたいので、パーツからハンドピースを意識的に離し、薄く、回数を多く(4〜5回程度)吹き重ねるようにしています

キャンディ塗装

▲キャラクターメカを担当している中森氏にキャンディ塗装を実演してもらいました。一度塗りでは下塗りの銀がかなり透けています。このくらいの薄さからスタートします
▲4回ほどクリアーレッドを重ねると、このようにきれいなメタリックレッドに変化! 薄く希釈した塗料を重ねているので、塗膜の厚みもそれほど感じません

キャンディ塗装+
メッキ系塗料の塗装!

▲セットを組まないで撮影しても神々しい輝き……「帝騎マグナパレス ザ・ナイト・オブ・ゴールド」の完成見本。キャンディ塗装とメッキ系塗料の塗装でここまでの輝きを放っています

Q3.エア圧はどれぐらいが目安でしょうか? 通常カラーとメタリックで変えたりしますか?

\ 小林 /

 通常は0.1~0.13Mpaくらいで作業します。通常カラーもメタリックも同じエア圧で吹いています。細吹きでも基本下げませんが、特に極細の場合は0.09~0.1Mpaに下げる場合もあります。エア圧が低いと吹き付ける塗料量が減り、吹く回数が増えますが、丁寧に吹けるので私はこのやり方が好きです。

\ 中森 /

 通常で0.15Mpa程度と、少し高めで吹いています。ベタ塗りの場合は高いエア圧で塗装を行ったほうが効率良く、時間短縮にもなります。細吹きの時は0.09~0.1Mpaに下げます。メタリック塗料の時もエア圧を変えたりはしないで塗装しています。

\ 小野田 /

 通常は0.13~0.15Mpaぐらい。メタリック塗料の中でラメのようなフレークの大きいものが混入されている塗料は、気持ち高めで吹くようにしています。細吹きの時も、特にエア圧は変えずにハンドピースのボタンの押しと引きの具合で調整することが多いです。

Q4.メタリック塗料を塗る際、他の通常のカラーと異なるポイントはありますか?

\ 小林 /

 エア圧は変えません。メタリック塗装時は、より乾燥が早くなるGSIクレオスの「Mr.ラピッドうすめ液」を使用することが多いです。希釈は通常より薄めで作業。通常塗料同様、しっかり攪拌することで本来の輝きを発揮することができます。

\ 中森 /

 エア圧は変えず、普通のシンナーを使用して吹いています。メタリック塗料の場合、塗装面が荒れたりざらついたりすると金属感が損なわれてしまうので、通常よりは気持ち薄めで塗装するようにしています。

\ 小野田 /

 基本はエア圧も希釈率も変えませんが、ハンドピースを少し離し気味にして吹き付けています。特にメタリック系は、一度に吹き付けすぎるとレベリング中にフレークが泳いだり、カラーだけが染みあがったりすることで、同じ塗料でも発色やギラつきに大きな差が出るので、塗った直後の塗膜表面の具合を見ながら、何回かに分けて吹き付けるようにしています。

お好みのエア圧が決まったら、レバーの感覚を極める!!

 3人にとってエア圧よりも大切にしているのがダブルアクションのボタンの操作。繊細な塗装をするシーンでは優しくボタンを押して、空気が出る量を抑えます。その状態でさらにレバーも少しずつ引いて少量の塗料を飛ばすようにして塗っています。エア圧を細かくいじるよりも、ある程度決まったお気に入りのエア圧で固定し、指先の感覚で吹き加減をシチュエーションごとに調整しながら塗っています。

塗料の濃度は「音」にも変化が出ます

\ 中森 /

 塗料の希釈具合などは「だいたいこのくらい」という感覚的な部分もあるのですが、エアの吹き出し音は希釈具合を知るよいヒントになります。塗料が濃すぎる場合は「ザーッ」という音がします。このまま吹き付けると、塗装面が荒れてしまいますので、シンナーで薄めます。「サーッ」という音に変わるところが、ちょうどバランスの取れている希釈率になることが多いです。

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