面ごとに明暗をつけて立体感を強調!
昨今の戦車模型でよく見られる塗装方法「カラーモジュレーション」でガンダムを塗ってみませんか? キャラクター模型界隈ではあまり聞き馴染みがないかもしれないこの塗装方法は、各パーツの面ごとに極端な明暗をつけることで、通常のグラデーション塗装よりも立体感を強調できるという発想によるもの。完成した作例を見てもらえばわかる通り、ディテールに手を加えずとも、塗装だけでこれだけ個性的で存在感のある仕上がりになります。カラーモジュレーション塗装の工程を早速見ていきましょう!
製作・解説/斉藤仁孝
・基本色を決めよう!
・ハイライト、シャドウの色味を決めよう!
・マスキングテープを使ってくっきりと明暗を描こう!
・スミ入れで全体のグラデーションを馴染ませよう!
\ カラーモジュレーションって何? /
カラーモジュレーションとは、海外のAFVモデラーがゲームグラフィック(2次元の画像に立体感を持たせるためのテクスチャー)をヒントに発案した塗装テクニックです。面ごとに明暗を付けることで立体感を強調することができます。また単色で塗装する場合に比べて単調にならず、表情豊かな作品に仕上げることがしやすい塗装技法です。
\ 教えてくれる人 /
斉藤仁孝
▲月刊ホビージャパン2023年4月号ではちょい塗りでかっこいいアオシマ 1/43 イングラム リアクティブアーマーを仕上げた斉藤氏。今回は彼が得意とする戦車模型のメソッドをガンプラに応用したぞ!
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カラーモジュレーション塗装の準備
各色の塗る順番は、基本色のベタ塗り→明るい色→暗い色という順番で塗っていきます。塗料とマスキングテープを準備して、いざ出発!
白の選択
▲各塗装にはラッカー塗料を使用します。白はMSホワイトを基本色に、明るい白にはスーパーホワイトを、暗い白はニュートラルグレーを添加すれば、丁度よいコントラストになります
青の選択
▲青は基本色にMSブルーを使い、明るい青はスーパーホワイトを混色。暗い部分はつや消しブラックをほんの少し調色します
赤の選択
▲赤はMSレッドをベースに、スーパーホワイトを混色して明るい赤を、暗い赤はやはりつや消しブラックをほんの少し調色します
黄色の選択
▲黄は暗い色にするとくすんだ印象になります。MSイエローを基本色に、暗い部分はつや消しブラック極少量+MSレッドでオレンジ色にするとくすんだ印象になりません。明るい黄色はスーパーホワイトで調色
塗装前の準備
▲頭部アンテナは削り込みで先端を尖らせていますが、それ以外は無改造で組み立てています。無塗装でもアニメの色合いを再現したような成型色が素晴らしいですね!
サーフェイサーを吹きます
▲塗装前に下地材としてサーフェイサーを吹き付け。細かい整形時にできた傷をチェック、修正しておいて塗装に備えます。クリアーパーツには吹き付けません
まずは各色ベタ塗りしよう!
白の発色は慌てず丁寧に
▲まずは白を塗装します。基本色のMSホワイトを塗ります。白は発色しにくく、厚塗りすると塗料が垂れてくるので、焦らず数回に分けて少しずつ塗るのがポイント
黄色を吹く前に白下地を作る!
青はそのまま塗装してOK
赤も白下地ならきれいに発色!
▲引き続き黄色、青、赤を塗装しますが、サーフェイサーのグレーの上から黄や赤を吹くと、隠蔽力が低い色なので発色がくすんでしまうことがあります。黄色や赤を塗る際は前もって白を吹いておくときれいに発色します。青は濃い色なので、白を入れずに塗装しても問題ありません
青のカラーモジュレーション
明るい青を作ります
▲カラーモジュレーションに取り掛かります。まずは青。基本色のMSブルーにスーパーホワイトを加えてライトブルーを作ります
マスキングします
▲モジュレーション塗装は各面ごとにマスキングをしながら行います。マスキング塗装は面以外にもパネルラインに合わせても行います
明るい青の塗装
▲いよいよ塗料を吹き付けます。全体に塗っては意味がありません。マスキングで囲った面のうち、上か下、どちらか一方の「縁」に塗料が乗るように塗装します
ハイライト部分が完成!
▲各面ごとにマスキングと塗装を繰り返し、ハイライトの塗装が完了しました。ハイライトの塗装は、なるべく明るくした箇所が面ごとに接しないように行うのがベストです
シャドウ色を塗ろう!
暗い青を作ります
▲お次は暗い青。MSブルーにつや消しブラックをほんの少しだけ混ぜて濃い青を作ります。混ぜ過ぎ厳禁!
マスキングして塗装
▲先ほど吹いた明るい色とは反対側の縁を塗装。明るいハイライトで塗る部分を先に考えておけば、暗い青を吹くのは比較的やりやすいと思います
青の塗装が完成!
▲青い部分の塗装が終わりました。基本色の両端に明と暗を塗り分けていることがわかるでしょうか。赤、黄色、白でも同じことを繰り返し、全体に「カラーモジュレーション」を施していきます
各色のカラーモジュレーション
▲各色カラーモジュレーションが決まるとこの重厚感を味わえますよ!
明るい赤を作ろう
▲青い部分で作業に慣れたら、他の部分も塗っていきましょう! 赤い部分は基本色にMSレッドを使い、そこに白を加えて明るい部分の色を作りました
時にはノンマスキングでいきます
▲隣接する青い部分を参考に、色が変わっても「暗い色と隣接する部分に明るい色」のルールで、より立体感が高まるように考慮しながら塗装します
暗い赤を作ろう
▲暗い赤は、基本色のMSレッドにつや消しブラックを加えて調色します
シールドも表情豊かになります
▲盾の赤を塗り終えた状態。「暗い色と隣接する部分に明るい色」のルールで、正面と側面のエッジ部分のコントラストがはっきり出ているのがわかるでしょうか。「少しやり過ぎかな?」ぐらいがちょうどいいと思います
黄色のカラーモジュレーション
▲次は黄色を塗りましょう。基本色のMSイエローにスーパーホワイトを加えた色で明るい部分の塗装をします
ハイライトを塗ります
▲黄色い部分は襟以外は面積も少ない(小さい)ので、マスキングをしなくてもハンドピースを吹き付ける角度をコントロールすることでも吹き分けられました
黄色のシャドウ色
▲暗い部分の色を作ります。基本色のMSイエローにMSレッドと少量のつや消しブラックを加え、少し濃いめのオレンジ色を作りました
影になりそうなところを狙います
▲濃い黄色(オレンジ色)を吹き付けます。色の境目がボケるモジュレーション塗装は、エアブラシとの相性が良い塗装法のひとつですね
筆が登場だ!!
▲色の境目をボケさせたいのでマスキングしながらのエアブラシ塗装が基本なのですが、細かい部分は筆を使って塗ってもOK。タッチアップの要領です
白のカラーモジュレーション
▲白い部分もこれまでの考え方と一緒ですが、他の色に比べて効果がわかりにくいので大胆に行います。MSホワイトにスーパーホワイト混色で明るい白を作ります
マスキングをして塗り分け!
▲塗装はしっかりマスキングして行います。若干グレー寄りのMSホワイトを基本色に使っているので、明暗の差が分かりにくいので塗り残し、塗り忘れには注意して行います
ハイライトが塗り上がりました!
▲先にパネルラインに沿って明暗吹き分けると説明しましたが、ふくらはぎのような曲面は中央のモールドを無視して、曲面部全体を一体と考えて塗装しています。ルールがあるようでないことも面白さで、同時に難しさでもある塗装法です
白のシャドウ色を作ります
▲暗い白はMSホワイトにニュートラルグレーを加えて調色。ニュートラルグレーは関節やランドセル、武装の塗装でも基本色として使用しています
マスキング!
▲暗い白を塗ります。ひたすら面ごとにマスキングをしてエアブラシの繰り返し。手数をかけただけ、仕上がりの立体感に差が出ます
ランドセルのグレー
▲グレーの部分は先ほどのニュートラルグレーにスーパーホワイトとつや消しブラックを加えて明暗2色を作り、モジュレーション塗装。白い部分と差がわかるように注意しました
デカールを貼ります
▲モジュレーション塗装が完了したら仕上げに入ります。まずは手持ちのデカールを使いデコレーション。必要最小限かな? と思う範囲で貼り、情報量を増やしました
表面をコートしよう!
▲デカールが乾燥したらツヤを整えます。スーパークリアー つや消しをエアブラシで吹き付けました。エアブラシのほうが缶スプレーより塗膜を薄く仕上げられます
スミ入れはとっても大事!
▲Mr.ウェザリングカラー グランドブラウンを使いスミ入れをします。全体に塗るウォッシングではなく、モールド部分などにピンポイントで塗料を流しています
拭き取った時のボケ感でトーンが整う!
▲スミ入れでできた余分なにじみや付け過ぎた塗料は綿棒にMr.ウェザリングカラー専用薄め液を含ませた綿棒で拭き取ります
メタリック塗装は最後に!
▲金属の質感を出したい部分はクリアー塗装後、最後に塗装します。筆塗りもしやすいMr.メタルカラーのアイアンを使いました
センサーのシールを貼ろう!!
▲頭部の前後にあるカメラ部はキット付属のシールを使いました。クリアー塗装っぽく見えるので効果的ですね! クリアーパーツの目の奥には銀紙を貼っています
▲ベタ塗りの上に、各面ごとにハイライト色とシャドウ色が塗られて色の情報がとても多くなっています。それによってゲームCGのようなメリハリある仕上がりとなります
▲左の単色ベタ塗りのガンダムと比較すると、同じキットとは思えないほどの際立った仕上がりに見えることがわかります。重厚でメリハリある仕上がりを楽しみたい時は、カラーモジュレーション塗装にチャレンジしてみましょう!
▲単調な面でも、明るい色と暗い色の表情をつけることで、視覚的には立体感マシマシで見えるようになります
\ まとめ /
塗装の手数は多くなりますが、その分とても表情豊かな完成品が仕上がります。マスキングもひと塗りごとにきっちりしっかり貼り込むのではなく、塗り分け部分のみに施して、エアブラシの細吹きで攻めると案外テンポ良くいきます。明るい場所、暗い場所と厳密に決めていくと行き詰まることがあるので、まずは雰囲気で「ここは明るくしてみよう」「ここ、暗くしてみるか〜」という感じで塗ってみてください。慣れてきたら、さらに光と影の関係を突き詰めて良いと思います。カラーモジュレーション塗装をぜひ楽しんでください!
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RX-78-2 ガンダム
製作/斉藤仁孝
ⓒ 創通・サンライズ