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「古参のIV号」イメージで作るミニアート「IV号戦車 H型 ニーベルンゲン工場製 中期型〈1943年8月〉」

2023.02.13

IV号戦車 H型 ニーベルンゲン工場製中期型〈1943年8月〉【ミニアート 1/35】 月刊ホビージャパン2023年3月号(1月25日発売)

イメージに合わせて作れるWWIIドイツ軍馬

 第二次大戦の全期間を通じ、ドイツ戦車部隊とって必要不可欠の存在だったIV号戦車。H型が登場した1943年春にはすでに旧式化していたが、ティーガー、パンターといった強力な戦車の不足を補ってあまりある活躍を見せている。ミニアートの1/35スケールIV号戦車H型は、精密なパーツ構成、容易な組み立て、豊富なオプションパーツなどで好評を博している。ドイツ軍の“軍馬”にふさわしいイメージのディオラマを作り上げるには、まさに最適のキットだ!

▲IV号戦車H型は生産時期によって細部が異なるが、このキットは車体前面装甲板を80mm厚に、初期タイプのシュルツェンを装着した初期〜中期生産車を再現している
▲パーツ分割は細かいが、組み立ては比較的容易なキット。ミニアートの緻密・精密なモールドは、車体構成が複雑で情報量の多いIV号戦車にはベストマッチといえる
▲兵士はドラゴンの「WW.IIドイツ軍 衛生兵&負傷兵 傷ついた戦友たち アーヘン1944」に少し手を入れて使用。PPSh-41短機関銃はミニアートの武装セットから流用
▲使用したドラゴンのフィギュアセットはポーズに緊迫感があり、装備の再現度も素晴らしい。草地の表現は、違う素材を使うほど変化が付けられる
▲砲塔上面のキューポラには車長のフィギュアをセット。ヘッド以外はストックパーツからエポパテでスクラッチ。キューポラ後方にはデグチャレフ軽機関銃を配置
▲車体前部。防御力向上のため、車体各部に予備履帯を大量に装着。ソ連軍のT-34戦車のものを取り付けるなど、実車でもよく見られる様子に仕上げている
▲車体後面。上部左側の予備履帯3枚はニーベルンゲン製作所の車両に特有のもの。牽引ケーブルはシャックルと組み合わせ、左側のフェンダー後端は外れた状態とした
▲砲塔内部はフルインテリアキット用のパーツで構成され、各部のハッチを開状態にしてもOK。防弾ガラス部はパッドなど周辺部も含めてクリアー成型されている
▲足周り以外の車体がほぼ完成した状態。まずプラパーツをどんどん組んでいき、後で要所に取り付けるエッチングパーツを組み込むようにすると効率がいいだろう
▲牽引ケーブルはタグアイのみで、ワイヤー部は入っていない。組立説明書の指示通り、0.75mm径の金属ワイヤーを152mm長にカットしたものを用意する必要がある
▲車体下部に紙粘土をお湯で溶かしたものを塗布し、泥の表現を施す。乾燥後、水で余分な箇所を洗い落としてから、油彩で泥や錆の色を染みこませていく
▲増加装甲の履帯をどう載せるのか検討中の状態。資料写真を見ながらそれらしい配置を考えていく。完成後の印象を左右する大事なポイントなので、できるだけ熟考したい
▲ディオラマベースの土部分は、紙粘土の上に水溶き木工用ボンドを塗り、木の切り粉をふりかけて表現。石畳は平面を出した紙粘土を鉄筆で模様をけがいている
▲IV号戦車H型は1943年5月から生産を開始しているが、ミニアートの本キットは1943年8月にニーベルンゲン製作所で製造された車両をモデル化。同社のIV号戦車シリーズは生産工場や生産時期にこだわったさまざまなバリエーションが展開されている

■緻密・精密再現のIV号
 ドイツ軍の代表的な戦車のひとつ、IV号戦車は古今東西各メーカーがキット化しており、時代を超えて有名かつ人気があることがよくわかります。ミニアートもH・J型をフルインテリアやフィギュア付きなどバージョンを変えて多々リリースしており、今回はその中からH型中期生産タイプを再現したキットを製作・紹介します。
 キットはプラパーツを基本に、シュルツェンやOVM(車外装備品)の固定金具などをエッチングパーツで再現した内容。ミニアートらしくパーツ分割は細かいのですが、組み立てに関して難しいところは特にありません。インテリアパーツは砲塔内のみとなっており、ミニアートキットの戦車の中では比較的とっつきやすいほうだと思います。各パーツのモールドは同社ならではの緻密・精密なもので、車体構成が複雑で情報量の多いIV号にとてもマッチしています。
 OVMの固定用金具はプラパーツとエッチングパーツを選択できるようになっています。例えば消火器は金具付き(Ke2)となし(Jd16)のパーツがあり、なしのパーツにはエッチングで金具を付け足すという感じです。精密に仕上げたい場合はすべてエッチングを使いたいところですが、OVMは数があるのでそれはそれで大変です。この辺は作り手がどういう完成型をイメージするのかによって変わってくると思うので、あっさりエッチングなしにするのもアリでしょう。
 同様に、砲塔内のインテリアパーツもハッチを全部閉めてしまう場合なら作る必要はありません。私は作るだけは作りましたが、完成後見えるキューポラ周辺以外は塗装しませんでした。「自分のイメージする完成型」を元に取捨選択するのは、こういうパーツの多いキットをきちんと完成させるコツのひとつかと思います。

■製作イメージは「古参のIV号」
「長い間戦ってきたけれど、そろそろお迎えがくるかな……。でももうちょっと頑張るか……」というような感じです。イメージに合わせてフェンダーをなくしたり、シュルツェンも一部が残っているのみにしたりと、各所のダメージを表現しています。こういうダメージ表現を施す場合、パーツ構成が細かいこのキットは最適です。
 その「古参度」を演出するために欠かせないのが、履帯の増加装甲。キットには足周り用の履帯以外にも増加装甲用のランナーが多く入れられています。それを活用して、資料写真でよく見られる、砲塔と車体前部を履帯でびっしり覆われた姿をイメージしながら製作しました。キットの履帯はセンターガイドに穴のある中期型なので、穴のないタイプ(モデルカステンSK-23)やミニアートのT34系列キットの履帯も載せて変化を付けています。

■塗装とディオラマ
 基本塗装はGSIクレオスのダークイエロー(C39)とダークグリーン(C70)のラッカーを使用。色調を油彩で調整し、パステル粉で全体のトーンを整えています。
 ディオラマは車両のイメージに合わせて草を枯れた状態にしたり、負傷した兵士を配置したりするなどしました。兵士はドラゴンの「WW.IIドイツ軍 衛生兵&負傷兵 傷ついた戦友たち アーヘン1944」に少し手を入れて使用。枯草は市販のドライフラワーや採取した草など数種で表現しています。石畳は紙粘土で作りました。


■俺のIV号はこれだ!
 最初に書いたように、IV号はメジャーな戦車なので模型誌や展示会、ネット上など完成品を目にする機会がとても多いです。なのでせっかく作るなら「おっ」と目を惹くようなものを作りたいと思うのが人情ですよね。なので私は今回「俺のIV号はこれだ!」という一作を目指して頑張ってみました。このキットは、そういう私の思いにきちんと答えてくれるとても素晴らしいものでした。ほんとお勧めです。

ミニアート 1/35スケール プラスチックキット

IV号戦車 H型 ニーベルンゲン工場製 中期型〈1943年8月〉

製作・文/松本森男

IV号戦車 H型 ニーベルンゲン工場製 中期型〈1943年8月〉
●発売元/ミニアート、販売元/GSIクレオス●7700円、発売中●1/35、約20cm●プラキット

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松本森男(マツモトモリオ)

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