【ガイガン50プロジェクト】『フェス・ゴジラ3 ガイガン来襲』のメイキング写真を公開! 若狭新一氏&中川和博監督インタビューも!
2022.12.18『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(1972年)の公開50周年を記念して展開されてきた「ガイガン50」プロジェクト。その中でも大きな目玉となったのは2022年11月3日に開催された「ゴジラ・フェス2022」での短編特撮『フェス・ゴジラ3 ガイガン来襲』。撮影に使用されたガイガンスーツは新規に造形され、ゴジラと激闘を繰り広げた。そのガイガンスーツの魅力と『ガイガン来襲』のメイキングをお届けする。(取材・文/羽沢正人、協力/中村 哲)
50年の時を経て、令和に蘇った初代ガイガン!
これまでデザインを変化させて複数回ゴジラ作品などに登場してきたガイガンではあるが、今作ではクラウドファンディング「ガイガンスーツ起動プロジェクト」による多くのファンの支援を受けて、“初代”ガイガンのスーツをモチーフに復活させることとなった。
スーツの製作を担当したのは、ミレニアムシリーズ5作のゴジラをはじめとする、多くの怪獣の造型を手がけてきた若狭新一氏を中心としたモンスターズのスタッフ。水氣隆義氏がデザインし、安丸信行氏によって造形された初代ガイガンの資料を基に、当時のイメージをそのままに現代に甦らせた。
INTERVIEW◆造形 若狭新一
ガイガンスーツ制作にあたって
最初に考えたのは、プロポーションをちゃんと整えること、安丸信行さんが当時どうやって作られたのかを調べることです。友人の原口智生くんが子供の頃に安丸さんを手伝ったそうなので、どういう素材でどう作ったのかなどをいろいろ聞くことができました。
安丸さんが作られた初代ガイガンの再現ということですから、「東宝特撮 公式ヴィジュアル・ブック」を参考にしたり、眼の製作にあたってはM1号の西村祐次さんから資料をいただいたりしました。中川和博監督らと打ち合わせをする時などでは、立体資料としてエクスプラスさんのフィギュアを参考にしています。
スーツの制作については、パーツが多いので複数のスタッフが分担しての作業です。最初はスーツサイズでラフの状態で形を作ります。人が入る前提でバランスを取るためです。そのあとに各パーツの原型制作ですが、その過程でも各パーツを組み合わせてバランスを調整して修正し、それを繰り返しました。
旧作との作り方の大きな違いは材質です。旧作のものは鉤爪などがFRPで硬くて丈夫に作ってありますが、今回は実際にゴジラと直接戦うので安全面を考慮してそれはできません。今回FRPで作ったのは口の先端など、頭部の一部分だけです。各パーツは一度FRPで作って、それから型取りして柔らかい素材で抜きました。そうすることで硬く見えても実は柔らかいということになるんです。表皮のグリーンの部分はラテックスで、他にはビニールレザーなど複数の素材で作ったことになります。
ガイガンの制作期間としては、約4ヵ月です。ゴジラスーツの修復はその後の2週間ぐらいです。
ガイガンの再現が発表されてからは、ファンの反響は大きく、海外の友人たちも喜んでくれていたので、みんなCGではなく実際のミニチュアの街の中で暴れる怪獣を見たいんだなと強く感じました。ですからそういう企画を年に1〜2度でもいいので続けてほしいし、自分もそこにいたいと常に思っています。今回クラウドファンディングで参加してくださったファンのためにもいいものを作りたいと思っていたので、それを達成できたと思っています。
ガイガン造形メイキング
若狭新一 (わかさ しんいち)
1960年、東京都生まれ。モンスターズ代表。数多くの特撮作品の造形に携わり、ゴジラ映画では『ゴジラvsメカゴジラ』(1993年)から参加。『モスラ3 キングギドラ来襲』(1998年)では造形プロデューサーに就任。ミレニアムシリーズの5作でゴジラの造形を担当した。
ゴジラ・フェスでの短編特撮第3弾となる『フェス・ゴジラ3 ガイガン来襲』は、2022年9月下旬に東宝スタジオの第6ステージで撮影が行われた。
今作のストーリーは、前作『ゴジラVSヘドラ』の続きで、すべてビルが建ち並ぶ夜の都市部をイメージした舞台で繰り広げられた。
月刊ホビージャパンでは撮影現場を徹底取材。撮影メイキングの一部を紹介しよう。
『フェス・ゴジラ3 ガイガン来襲』
ゴジラ 松本直也
ガイガン よしだひかる
現場リポーター 笠井信輔
ニュースの声 かおる
製作 大田圭二
企画プロデュース 吉川哲矢
撮影 鈴木啓造
照明 小笠原篤志
特殊美術 杦山弘平
造形 若狭新一
特殊効果 岩田安司
操演 山下由晃
アクション監修 新堀和男
制作 大船龍二
視覚効果 田中貴志
監督/画コンテ/編集 中川和博
上映時間 9分25秒
INTERVIEW◆監督 画コンテ 編集 中川和博
ファンとの繋がりを感じられる幸せ
前作『ゴジラVSヘドラ』は、オープン撮影でしたので、次はセットを組んでの撮影ができればいいなと思っていました。セットを組んでの撮影ができるかどうかによって構想が変わりますので。結果的に東宝スタジオでの撮影が可能になりましたので、セットを組むことができました。新規造形のガイガンスーツを使っての作品ということで、2022年の春頃から準備を始めました。
どのゴジラがガイガンと戦うかということを最初に考えたのですが、前作の続きにすると冒頭で説明の必要が省けて、すぐに怪獣同士のバトルに注力できるんです。ですから今回もファイナルウォーズゴジラになりました。今回はゴジフェスがリアル開催ですから、続きにすることでファンの人たちと楽しみを共有できるようにしたいという思いもあって、続きのストーリーにしたかった面もあります。
旧作の『ゴジラ対ガイガン』を参考にした部分はキャラクター性ですね。ガイガンは宇宙チンピラみたいな感じで(笑)。コミカルな部分もあって可愛いし。
ガイガンの造形に関しては、若狭さんにはなるべくオリジナルに近い感じで作ってほしいことと、素材や作り方などでも当時できなかったことで今ならできることがあるのであればアップデートしてほしいとお伝えしました。
旧作のガイガンとの違いですが、ずっとガイガンの手の爪での攻撃は、スパッと切れるイメージを持っていたんです。でも旧作を観直してみると、殴るための鈍器のような使い方をしているんです。ですから今回は鈍器ではなく、刃物のイメージで切れるような演出をしました。それと旧作ではポスターでしか描かれておらず、劇中にはなかった額からのビームです。せっかくだからあったほうがいいと思いましたし、僕も観たかったんです(笑)。腹部のカッターでの攻撃は、今回の一番の必殺技にしようと思いました。
スタッフの編成については、前作からの方々もいらっしゃいますが、セット撮影でナイトシーンですから、そのために撮影の鈴木啓造さんや照明の小笠原篤志さん、VFXの田中貴志さんなど、経験値の高い方々に新たに参加していただきました。
ゴジフェスでは完成作品をファンの皆さんと会場で観ましたが、皆さんの反応に感動しました。各シーンでひとつひとつにワーッと歓声が上がってましたし、「頑張れゴジラ」とか「かっこいい」と声もたくさん上がっていましたから。メイキング映像も一緒に観て、ファンとの近さを感じられるのはゴジフェスならではだと思います。ゴジフェスの配信の中に組み込まれているからこそ、大勢で一緒に時間を共有して繋がりを感じながら観られる幸せがありました。
中川和博 (なかがわ かずひろ)
1986年、奈良県生まれ。監督助手として『シン・ゴジラ』(2016年)等に参加する傍ら、自主映画を製作。『怪獣の日』(2014)は国内外の映画祭で招待・上映された。2017年には文化庁委託事業・若手映画作家育成プロジェクトに選出され『さらば、ダイヤモンド』を監督。主な監督作に『ゴジラ対エヴァンゲリオンTHE REAL4D』(2019年)、『ゴジラ迎撃作戦』(2020年)、『ウルトラマンデッカー』『ダブル』(2022年)など。
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