• HOME
  • 記事
  • キャラクターモデル
  • 『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の監督 山賀博之が語る「本当に見せたかった『王立宇宙軍』の姿」スペシャルインタビュー『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の監督 山賀博之が語る「本当に見せたかった『王立宇宙...『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の監督 山賀博之が語る...

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の監督 山賀博之が語る「本当に見せたかった『王立宇宙軍』の姿」スペシャルインタビュー

2022.10.28

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』監督 山賀博之インタビュー 月刊ホビージャパン2022年12月号(10月25日発売)

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』

監督 山賀博之インタビュー

4Kリマスターが、本当に見せたかった『王立宇宙軍』の姿

ガイナックスによる第一弾作品として、1987年に公開された『王立宇宙軍 オネアミスの翼』。当時、すでに高い実力を発揮していた20代前半の若手スタッフを中心として世に送り出された本作は、緻密な世界観や細部に至る映像へのこだわりによって、現在においても圧倒的なクオリティである。本作の監督を手掛けた山賀博之氏は、当時弱冠24歳。初めて監督する商業作品でありながら、不変的な魅力を持つ本作を、どのように生み出したのか? 企画の発端から4Kリマスターの印象まで、作品の舞台裏をお聞きする。

(聞き手・構成/河合宏之)

山賀博之(やまがひろゆき)

1962年新潟生まれ。株式会社ガイナックスを設立し『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の他、監督や脚本・演出、製作など、さまざまなアニメ作品に携わる。


センスオブワンダーを求めてSFへの理解を深める

──もともとどのような経緯で、本作の監督に就かれたのでしょうか?
山賀 まず岡田斗司夫プロデューサーの存在はありますね。そもそも「SF大会のオープニングアニメを作ってほしい」と、依頼されたところから岡田さんとお付き合いが始まったのですが、その時に集めたメンバーがあまりにもすごい人たちでした。その後、岡田さんが、そのメンバーを中心にアニメ会社を立ち上げることになるわけですが、「岡田さんが社長をやるなら、僕が監督をやりますよ」という流れになったことがきっかけですね。

──実際に手掛ける企画については、どのような話し合いが行われましたか?
山賀 岡田さんはSFのプロですから、「恋愛物なんて何が面白いの? とにかくSFでやってくれ」と。ただ、僕はSFをまったく読んだことがなく、SF自体もよくわからない。しかも数年間SF大会に関わって、コアなSFファンや作家の方々とお付き合いする中で、「そんな簡単なものじゃないな」という認識を持っていました。たとえば、『機動戦士ガンダム』は、「SFか否か」と議論されたことがありましたが、スペースコロニーでロボットが戦っている戦争作品を、「『SFじゃない』と言い切れるのはすごいな」と思っていたんです。「じゃあSFってなんですか?」と岡田さんに聞くと、「SFはセンスオブワンダー」だと。たとえば舞台が江戸時代だろうが、現代だろうが、「センスオブワンダーがあればSFである」ということなんです。じゃあそのセンスオブワンダーを踏まえて、アイデアを出してみようと思ったんです。

──そこでどのような企画を検討されたのでしょうか?
山賀 まず当時は『ガンダム』が人気でしたし、ロボットものを検討しました。そこで考えた企画は、「巨大ロボット」の仕事に就く話です。ある惑星のある国には、身長が15mぐらいの巨人が住んでいて、その巨人の国の高校生が学校を卒業し、「どこに就職しようか?」と考えるわけです。そこで選んだ就職先が、普通サイズの人間の国で傭兵として就職すること。言ってしまえば、彼は巨大ロボットになるわけです。岡田さんに「この企画はSFですよね?」と確認して、きちんとSF認定を頂きました。

──結果的にその企画はお蔵入りになるわけですね。
山賀 ええ、自分たちが東京に出てきて、アニメスタジオまで作って、「その第一弾がロボットアニメでいいのか?」と思ったんです。それこそロボットアニメはいつでもできる、という気持ちがありましたから。それなら第一弾はもう少しかしこまった作品にしたほうがいい。そう思って「巨大ロボット」に就職する話は引っ込めました。「じゃあなにができるだろうか?」と考えて、一度原点に戻ることにしたんです。
 僕らが何のためにアニメ会社を作るのかといえば、優秀な人たちがいるからで、その人たちを使って映画を作りたいということが発端です。それこそ庵野秀明は、爆発や破片を描かせたら、世界一だと思っていましたからね。それであれば、庵野の作画を活かさないと意味がない。庵野の作画こそが主役であり、それでクライマックスで盛り上げるための作品を作らなければなりません。破片が主役の作品なんてあるだろうか……と考えたとき、サターンVの打ち上げの記録映像を思い出したんです。液体酸素の冷気で大気中の水分が凍り付いて氷になり、発射の振動で砕けて降ってくる……。「あの映像はカッコよかったな!」と盛り上がって、宇宙開発物につながっていきました。

設定にこだわることがかつてない体験を生み出す

──完全にオリジナルの世界観としたのは、どのような理由からでしょうか?
山賀 これは僕らが普通に生きている世界を「どうやったらセンスオブワンダーをもって見ることができるのだろうか?」という考えが発端です。たとえば剣と魔法の世界では、今生きている世界とはかけ離れていて、まったく別のものとして捉えてしまう。そうではなく、「今ある世界から、ちょっとだけずらした世界ってハッとするよね?」という考えに基づいています。なにげない服や食器や仕草など、普段、自分が当たり前に思っているものを、ちょっと違った視点で見る。それこそがセンスオブワンダーなのかなと。SFがわからない自分が、SFファンの人たちに寄り添おうと考えたら、結果的にあの世界観になったということですね。

──それこそ冒頭の10分までの間に、お葬式、お墓、酒場、ゲームなど「現実とは違うけど、そのものだとわかる」シーンが連続しますね。
山賀 結局、海外旅行に行くのって、そういうことですよね。普段見ているものが、外国では変わったものに見えることが面白いわけじゃないですか。わざわざ高いお金を払って言葉の通じない世界に行くのは、その体験がしたいわけです。作品を作っていた当時、海外旅行は憧れでしたから、この体験にはきっと需要があるだろうと。きっと映画としてのバリューになるはずだ、と思っていました。

──本当に細かい部分まで、世界に手を入れているという印象があります。
山賀 いや、それはみなさん騙されているんですよ(笑)。たとえば大河ドラマの『鎌倉殿の13人』では、鎌倉時代にどんな服を着ていたか、どんな食器でお酒を飲んでいたか、座る順番はどうなるかと、調べることがたくさんあるじゃないですか。そこでごまかしたら、視聴者の方に指摘されてしまう。それに比べると、異世界は楽ですよ。「こうです」と言い切ればいいわけですからね。調べる必要はありませんし、なければ作ってしまえばいい。ただ、スタッフ全員に徹底させるのは大変ですけどね。

──とはいえ、飛行機もそうですし、バイク、車なども「あの世界の機械」ということが確立されています。
山賀 まぁ確立までは行っていませんよ。飛行機だと、どんな会社が作っていて、どんな目的で作られたのか、というところまではたどり着いていませんから。1本の映画作るだけだったら、そこまでは必要ないかもしれませんし、雑なところもありますよ。たとえばデザイン指示で「思いつかなかったら、アール・ヌーヴォーに逃げてください」ってお願いしていましたからね。ちょっと新しい感じのものなら「じゃあそこはアール・デコにしましょう」って。

──当時、山賀監督をはじめ、20代前半の方が中心となって制作に関わられた。その若さであそこまで世界観にこだわり抜いたのは驚かされますね。
山賀 いや、逆にあの年齢じゃなければ、できなかったと思います。若いほうがよくわかっていないだけ、無駄なこともしますから。今ならもっと効率よくやろうと無理はしませんからね。デザイン関係にしても、かなり妥協することになるでしょう。

──あそこまで世界観をこだわって作った作品は、あまりなかったように思います。
山賀 僕がアニメを知らなかったのが大きいでしょうね。それこそ大学に入って、「アニメはこうなんだ」といろいろなことを吸収しましたからね。そのなかのひとつとして、「アニメは設定にこだわる」ということを一種の勘違いとして覚えたので、そこを頑張ってしまったんですね。

──それによって時代性に捉われない、不変性のある作品になったという印象を受けますね。
山賀 それこそアニメの流行について、正確にとらえていない部分がありましたからね。結果的に流行から外れた作品ではありますけど、変わった作品であれば変わっているほど、「面白いと思ってもらえるだろう」と客観的に考えていました。

──商業作品としては初監督作品になると思いますが、どのように監督としてのポジションを学んでいかれたのでしょうか?
山賀 それは高校時代からその気で勉強していましたからね。監督になったのが22歳ですから、7年も勉強しているなら、そろそろ一人前にならないと。プロとして名前を出した時点で、もう完成しているんです。職業って、そういうものじゃないですか?

35年前の記憶がよみがえる見せたかった本当の姿

──本作は緻密なメカ描写もファンを魅了しましたが、どのような方向性を目指したのでしょうか?
山賀 アニメのメカをよくわかっていないから、主流から外れているところがありますね。「アニメを作る以上、メカでファンを魅了しなきゃいけない」という気持ちはありましたが、当時のメカってバルキリーやガンダムなど、基本的にロボットじゃないですか? そういった未来的でシャープなものが、「かっこいいメカ」とされている理由がよくわからなかった。というのも、自分がイメージしていたのは、メカではなく機械だったんですね。

──そこから大戦機を思わせるデザインラインにつながっていったんですね。
山賀 もともと歴史もの……、たとえば第二次世界大戦中の飛行機の開発秘話などは嫌いじゃなかったんです。当時、模型誌さんとのお付き合いの中から、大戦機のいろいろな開発ストーリーをかじっていたことも影響していますね。そこで勘違いじゃないですけど「みんな大戦中の戦闘機って好きだよね」という認識から、違う方向性に行ってしまったんです。結局、自分なりに落ち着いたのは流行のシュっとしたメカではなく、大戦機的な機械のラインだったということですね。

──実際にメカニックデザインを担当されたスタッフは、どなたでしょうか?
山賀 いろいろな人の手が加わっています。みんなで一斉にスケッチを描いて、「これちょっと面白いな」というもがあれば、まとめて行く形でした。そのなかで、最終的にデザインをまとめたのは貞本(義行)先生です。彼はもともとバイクなどのメカ好きということもあって、メカを描く幅が広くて深い人です。彼にヒントとしてスケッチを渡せば、最終的に素晴らしいデザインを上げてくれますからね。

──流行を取り入れていなかったからこそ、現在の目で見ても古さを感じさせません。
山賀 当時でも約40年前の大戦機のラインですからね。その時点で古いわけですから、これ以上古いと感じないんですよ(笑)。

──「ロケットの打ち上げ」という物語の軸がある中で、時代設定やメカニックデザインは絶妙なバランスだと感じますね。
山賀 当時でもあまり狙っている人はいない方向性だとは思いました。「レトロフューチャー」という言葉で紹介されたこともありましたけど、「いや、フューチャーは入ってないでだろう」と思いましたが(笑)。

──ピーエムオフィスエーから第3スチラドゥのプラキットが再販されることになりましたが、こちらの印象についてもお聞かせください。
山賀 とても正確に再現されていますね。こうして実物を手に取ると、自分の好きなアングルを思い出します。設定はここまで細かく作ったわけではありませんから、劇中のカットから原型を作られたんですよね? どの角度から見ても、フィルムの印象と変わらないというのは驚きます。本編では結構いい加減に描かれていますからね(笑)。それが完成度の高いプラキットになるわけですから、原型を作られた方はとても立体の捉え方がうまいのではないかと感じます。

──あらためて4Kリマスターをご覧になった印象はいかがですか?
山賀 僕らが当時、作業をしていた生の状態が、非常によく再現されています。当時、上映されたフィルムよりも、4Kリマスターのほうがずっと僕らがイメージしていたリアルなフィルムに近いですね。当時の劇場で流れたフィルムはボケているし、音も満足な状態ではありませんでした。だから当時のフィルムを見ても「懐かしい」という感覚はないんですよ。イメージしたものと違ったわけですからね。
 実は35年の間、あまり完成した映像には関心をもっていなかったんです。無意識のうちに、あの質の低いプリントを見るのが嫌だったのかもしれません。ビデオにしても、LDにしても、当時のマスタリングですから、色も違うし、音もこもるわけです。それをもう1回見るのが嫌だったんでしょうね。ところが4Kリマスターを見ると、つい先日作業をしたかのように思えてくるんです。「このシーン、昨日スタジオでOK出したな」といった具合に、当時の記憶がよみがえりました。

──それはファンとしても、あらためて見たくなりますね。
山賀 映像もそうですが、僕としては音の印象が大きかったですね。当時、確かに音を入れたはずなのに、劇場ではなかなか再現されなかったんです。4Kリマスターでは、それらの音がしっかりと聞こえるんです。当時、アバコクリエイティブスタジオでダビングをやっていたんですけど、その日々がスッと思い出されるぐらいの再現度ですね。35年という時間が吹っ飛びました。

──それは監督にとっても、素晴らしい機会になったのではないでしょうか?
山賀「あの時の仕事を、昨日のことのように振り返ることができる」という不思議な体験でしたね。当時、みなさんがあの映像を見て、どのように感じたかはわかりませんが、「僕らが目指していたのはこれなんだ」と言えるものが、ようやく実現できたという気持ちでいます。35年も経過して、イメージどおりの映像が世に出るとは想像もできませんでした。ぜひいい環境で楽しんでいただきたいですね。

──ありがとうございました。


4Kリマスターでホンモノを体感せよ!

 公開35周年を記念し、山賀監督の監修のもと、35mmマスターポジフィルムからの4Kスキャン&4Kリマスター化! 2022年10月28日よりリバイバル上映、そして、4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc「王立宇宙軍 オネアミスの翼 4Kリマスターメモリアルボックス[特別限定版]」(15000円)が上映劇場にて最速先行発売される。

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』4Kリマスター版

 全国15館にて、2022年10月28日(金)より公開

特典満載の4Kリマスターメモリアルボックスもお見逃しなく!

▲[特別限定版]は上映劇場ほか、A-on STORE、A-on STORE プレミアムバンダイ支店、EVANGELION STOREで2022年11月4日より発売。通常版「王立宇宙軍 オネアミスの翼 4Kリマスターメモリアルボックス」(14080円)は22年11月25日より販売スタート!(どちらも発売・販売元/バンダイナムコフィルムワークス)
※写真は[特別限定版]

この記事が気に入ったらシェアしてください!

ⒸBANDAI VISUAL/GAINAX

河合宏之

関連書籍

月刊ホビージャパン2022年12月号

ご購入はこちら

ホビージャパンエクストラ vol.23

ご購入はこちら

HJメカニクス09

ご購入はこちら
PAGE TOP
メニュー