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ガンプラにスケールモデル的表現を盛り込んでみる【ENTRY GRADE ストライクガンダム製作指南】

2022.10.10

GAT-X105+AQM/E-M1 ストライクガンダム+I.W.S.P. 【BANDAI SPIRITS 1/144】 月刊ホビージャパン2022年11月号(9月24日発売)

 誰でも簡単に組み立てができるガンプラの新スタンダード“ENTRY GRADE”ストライクガンダムを使用して素組みからステップアップするための製作法を解説します。今回のテーマはスケールモデル的な表現方法。月刊ホビージャパンとしても馴染み深い「I.W.S.P.」を使用して航空機を意識したディテールアップを行います。(解説/木村直貴)

製作ポイント

●航空機を意識したディテールアップ
●HGストライクルージュ+I.W.S.P.からI.W.S.P.を移植


主に使用するツール・マテリアル

整形に使う工具

▲基本的にサンドペーパー(空研ぎ)がメインです。写真左上はアルミのアングル(L材)に両面テープ(はがしやすいフィルム式がおすすめ)で貼り付けたもので、60〜600番まで用意しています。特に60番は金ヤスリをはるかに越える最強の破壊力です(出番は少ないけど)。今回は180、240、400、600番と順に当てています。また、写真手前はペーパーを当て木の両端に画鋲で止めたタイプで、目詰まりしやすいですが、一番よく使う600番専用で、限界がきたらすぐ交換できるようにペーパーの短冊を多数ストックしています。写真右上は細部用で、3mmと5mmの角材(端は使いやすいように加工)に同サイズに切り出したサンドペーパーをぐるっと巻き付けて画鋲で止めたものです。こちらは400と600番の2種類を常にスタンバイしています。消耗品はとにかく安価で入手しやすい材料でやるに限ります〜(笑)

スジ彫り工具

▲スジ彫り(復旧)に使っている工具です。目立てヤスリとPカッターとエッチングソーの3種。写真一番上のものは折れた電動糸ノコ刃をニードルホルダーでつかんだオリジナル工具で、太い溝を切るのに重宝しています

「ー」モールド用工具

▲四角溝を彫るために長年使っている愛用工具です(切れ味が悪くなると研ぎ直すのよ)。これで幅0.5mm〜8mmあたりまでカバーできます。こうして並べてみると自作工具が多いですな。しかも廃品利用が…。これらはグラインダーで刃物を削って作っているので初心者はマネせずによく似た市販工具を集めるとよいでしょう(笑)

丸穴モールド用工具

▲大きな軽め穴から小さなボルト穴のディテールまで、丸穴加工によく使うのがこれらの工具です。ピンバイス3本は0.5、0.8、1.0mmでほぼ固定。箱入りはミニリューター用のドリルビットのセット。ちょい高価ですが、精密にやるときは中型ピンバイスで、多数開けるときは電動リューターで、どちらでも使えるので便利。手前は穴の縁を面取りするためのリューター用ハイスビットの球型と卵型です。基本は指でつまんで極軽く当てて回して使っています

❶翼のシャープ化

▲面の削り込みをするとキットのスジ彫りモールドが消えてしまうので、あらかじめPカッターでなぞって深くしておきます。なお、写真では指の上でやっていますが、机の上で固定してやるのがベストです
▲主翼の下面はほぼ平らなので、均一に削り込みます
▲主翼の上面は後縁部がエッジになるように曲線的に削り込みます。後縁のラインに平行に削っていけば、自然に翼端まで直線的なテーパーがつくはずです
▲整形が終わった状態です(左が加工前、右が加工後)。シャープ感が段違い! なお、どうしてもパネルラインのスジ彫りは部分的に消えたりかすれたりしてしまうので、600番で磨く直前にPカッターなどでなぞり直しておきましょう(消えた部分は定規を当てましょう)。また、翼端は薄くて強度が落ちるので、エッチングソーや目立てヤスリで浅めにやさしく彫り込みます
▲上から見てみます(左が加工前、右が加工後)。主翼付け根のエンジンの切り欠き箇所は特に厚みがあるので、段を付けて斜めに削り落とすのがベターかと思われます。なお、上面の補助インテークの整流フィンは作り替える予定で削り落として整形しています
▲主翼上面の補助インテークのフィンを0.25mmプラ材でシャープに作り替えておきます。チョイ大きめのサイズで三角板を切り出して接着し(左側)、完全乾燥後にペーパーを当てて翼上面ラインと合わせます(右側)
▲同様に下部安定翼も削り込んでシャープ化します。安定翼は基本的に対称断面なので、裏表同じように削ります
▲上部安定翼も同じく削り込んでシャープ化。こちらは小さいので、薄くしすぎると強度が落ちて破損する可能性があります。実際、主翼とのはめ合い調整の際、うっかり変な力がかかって上部のスジ彫り位置でポッキリいってしまいました(汗)。やむなく、つぎ直して整形し、スジ彫りは少し下へオフセットするハメに…

❷パネルラインのスジ彫り

▲主翼はそのままでは少し寂しいので、点検パネルなど追加します。エッチングのテンプレートを目的の位置にしっかり固定し、ニードルで5、6回なぞって溝を刻みます。ちなみに長年愛用しているのは、瞬間接着剤に付いていた開封用のピンを鉛筆のお尻にくっつけて作ったニードルです。笑われそうですがこれがプラ地には最適で、ちょうどよく針がしなって加える力が均等化されるため、非常に使いやすいのですぞ!
▲スジ彫りを入れた状態です。均一な溝が彫れています
▲600番ペーパーでケガいてできた溝周辺のめくれを磨きとって完了! と相成ります

❸ヒンジモールドを追加

▲航空機の主翼後縁には姿勢制御用の動翼(エルロン)や高揚力装置(フラップ)などが設置されています。キットもそれらしいパネルの分割線が引かれているので、さらにヒンジモールドを追加して「ここが動翼です!」と主張してやると見映えがよくなります。まず、バランスのよさそうなところに印を入れましょう。写真ではディバイダー(両針のコンパス)でマークしています
▲マークしたところを目安に動翼のスジ彫り線から少しだけ離して平行に、模型用平ノミ(モデリングチゼル幅1.5mm)を少し線側に向けて突き刺します
▲今度はパーツを逆方向にして、線側から先ほど入れた切り込み跡に向けて同じように突き刺し、少しえぐって浮かせるようにしてカスをとばします。これでヒンジの凹みに見立てた短い「-」の溝を刻むことができました。あとはえぐった跡のめくれやカエリを600番ペーパーでならして完了です。なお、最近作例でよくやる機体各所のラッチ溝や単スリットなどのメカディテールは、ほぼこの方法を使って彫っています

❹本体および武装のシャープ化&ディテールアップ

▲キットの状態ではエンジンのインテーク正面に垂直面が存在します。空力的観点からすると吸い込む気流が乱れるので、斜めに削ってエッジを立てておきます。なだらかにつないでもよいのですが、ステルス的デザインを尊重してC面的処理としました(左が加工後、右が加工前)
▲角度を付けて同じ幅で斜めに削るのは、言うのは簡単ですが、精度よくやるのは結構難しい作業です。大きめの当て木を付けたサンドペーパーで力をかけすぎないように注意しつつ、大きなストロークで安定させて削っていくのがコツです
▲エンジンノズル周辺もシャープ化します。上下のプレートはそのまま平行に削り込んで全体を薄くしますが、サイドのプレートは薄くするのが難しいため、エッジに向かって外側から斜めに削り込み、シャープに見せる作戦をとりました
▲105mm単装砲をシャープ化します。頭部センサーを発射炎から守る砲口のフラッシュハイダー(先端のラッパ)の強度は不要ですし、砲身を覆うカバーは頭部センサーを砲身の熱から守るための防熱板(薄板)の要素が高いと思われるので、ともに端面を薄く仕上げるとスケール感が増します(左が加工前、右が加工後)
▲リューター用の卵型ハイスビットを指で回して、砲口の内側の肉を削って、縁を薄くします
▲砲身カバーは円筒面の内側を削りますが、棒丸ヤスリで荒削りしてから、それにペーパーを巻き付けて磨いて仕上げます
▲115mmレールガンの砲座はついたてで囲まれていますが、外側の段付きパネルはパーティングライン整形時に邪魔になるのでいったん削り落としてから、プラ板で切り出したプレートを貼り直します。その際、プラ材の短冊を平行に貼って、放熱口を保護する装甲ルーバー風ディテールとしてみました
▲追加した装甲ルーバーの前にまだスペースがあるので、さらに放熱用の丸穴を開口します。電動ルーターにドリルビットを装着して開口します。ちなみに、単装砲カバーの上面にも放熱口をいくつか開口しています。なお、ドリルで開けた穴は縁が乱れているので、球型ハイスビットなどを手回しして面取りしておくのを忘れずに

❺エッチングパーツの利用

▲高精度なスリットモールドなどを手軽に追加できるのが、薄い金属板を型抜きしたエッチングパーツです。今回はコトブキヤM.S.Gの「エッチングユニット」を貼ってみます。切り出しは、硬めのプラ板(写真ではエンビ板)を下敷きにして、アートナイフでパーツすれすれをコチッと押し切りします。なお、これをやるとナイフの刃がすぐ傷むので、覚悟しましょう
▲きれいに貼るには少々コツがいります。まず、ピンセットでつかんで裏面にプラ用接着剤を少しつけ、目的のパーツ(ここでは9.1m対艦刀ホルダー)へ乗せて位置決めします。金属板なのでプラ用接着剤は全く効きませんが、とりあえずの仮固定のために接着剤の粘性を利用します
▲位置が決まったら、ナイフの刃先(お古で充分)など鋭いものに瞬間接着剤を極少量取って(写真では粘着テープの上に瞬間接着剤を落とし、それを刃先で少量すくい取っています)、エッチングパーツ外周と本体との接点(接線)に流し込んで固定します。うまくやればそのままでいけますが、もし目立つはみ出しがあればヤスって修正しましょう

❻武器のディテールアップ

▲コンバインドシールドをディテールアップしていきます。まず気になったのは、パッケージイラストと比べた際のビームブーメランの中央部(グレーのところ)の厚みです。合わせ面を削り込んで、ビームエフェクトパーツが挿せるギリギリまで厚みを落としました。シールド本体側の差し込み穴もプラ板にて幅調整を行います
▲30mm6銃身ガトリング機関砲の砲身が一体になっているのが気になるところです。スミ入れをうまくやれば見た目はあまり変わらなくなるとは思いますが、翼端を高精度にシャープ化した都合上、ここも6本独立させるのがスジのような気がしてきたため、実行です(汗)。まずは、ノコギリ(タミヤのクラフトノコ)で砲身の付け根から切り落とします
▲砲先端の穴が開いた筒は内部を削りとって棒ヤスリで肉薄に加工し、ドリルで放熱口を開口しておきます

▲砲身はプラ丸棒の組み合わせ。段付きになっているのがやりにくいところです。ちなみに、根本は2.2mm、本体は1.6mm径を使用したらちょうどよい具合でした
▲組み上がったものがこちらです。せっかくなので、砲身をキットより数ミリ長めにして、より破壊力がありそうに作っています。砲口も卵型ハイスビットでえぐってシャープにするのを忘れずに

完成! ENTRY GRADEストライクガンダム+I.W.S.P.!!

 スケールモデル的表現を盛り込んだENTRY GRADEストライクガンダム+I.W.S.P.が完成しました。翼やエンジンまわりのシャープ化で航空機的なイメージが高められています。反対に陸戦用兵器なら戦車的な表現を盛り込むなど、用途に合わせたディテールアップを行うことでメカとしての説得力を高めることができます。

▲I.W.S.P.製作途中状態。翼のシャープ化に加えて、放熱または軽量化のための丸穴の開口や装甲板の追加によって造形密度が高められています
▲ストライクガンダム本体もI.W.S.P.に合わせて丸穴を開口し、ボルト穴やラッチ溝を追加。頭部アンテナやフェイスをシャープ化し、ハンドパーツは指をいったん切り離してステンレス線でつなぎ直すことで軽く握れるようにしています
▲月刊ホビージャパン連載公式外伝『SEED MSV』第1回に登場した「I.W.S.P.(Intergarted Weapon Striker Pack)」。エール、ソード、ランチャーを組み合わせたイメージのデザインは連載開始を飾るに相応しいケレン味のあるもので、その後HGやMGでキット化されるなどシリーズの中でも屈指の人気メカになりました
▲翼やエンジンまわりのシャープ化に加え、点検用パネルラインや翼端灯の追加によってより航空機をイメージさせる仕上がりになりました。放熱または軽量化のための丸穴は追加ディテールがワンパターンにならないようなアクセントになっています
▲ストライクガンダム付属のビームライフルとシールドはボルト穴やラッチ溝を加え、ライフルのハンドガード下の抜けをプラ材で補完。コンバインドシールドはガトリング機関砲砲身の作り替えでより立体的になりました。ビームブーメランのビーム刃は削り込みで毛羽立たせています
▲キット素組み(左)との比較。頭部アンテナやハンドパーツを加工した以外はキットのままの形状ですが、全身各所にディテールを追加したことで造形密度が圧倒的に高められています。胸部下フレームや装甲各所の軽め穴はフラットな面にメリハリを加えつつ、高機動を重視した機体というイメージを強める効果があります
▲連載第1回目登場メカということもあり、数あるストライカーパックの中で一番月刊ホビージャパンに縁のある「I.W.S.P.」。1/144ストライクガンダムの中で最新のENTRY GRADEとは発売時期に大きな隔たりがありますが、パックのシャープ化による精度アップとストライクガンダム本体と同期させるようなディテールアップで両者を馴染ませています

■哀愁の『SEED MSV』
 EGストライクガンダムにHGストライクルージュ付属のI.W.S.P.を組み合わせて航空機テイストでまとめる、というお題をいただきました。ご存じの通り、EGストライクガンダムはアニメそのものなスタイリングとシャープな造形! それでいて工具も塗料もなにもいらない8歳の初心者でも確実に組めるという、まさに「次世代のガンプラ」であります! まあ、頭部は極小パーツなので老眼の進んだ中高年モデラーには拡大鏡など専用ツールが必要になるかと思いますが…(笑)、このデキで初心者向けなの!? と完全に恐れ入ってる次第であります。
 一方のI.W.S.P.は2004年発売の名作キットでして、アニメ本編と平行して月刊ホビージャパンで連載していた『SEED MSV』(←ボクもいくつか担当したぞ)の記念すべき第1弾を完全キット化したという個人的にも思い出深い一品であります! その2004年のキットの装備が無改造で新キットにドッキングできる! というBANDAI SPIRITSの設計はステキすぎて憎らしささえ感じます〜!
 今回はHow to仕立てということもあり、キットの素性のよさを尊重して、形状的には極力手を加えずにスケールに見合ったシャープ感&密度感を目指すという方向で進めたいと思います。ちなみに、10年以上前にRGキットベースでI.W.S.P.の作例を担当したことがありましたが、ボク本人はやった記憶以外はほぼ忘れてしまってます(汗)。なので新鮮な気持ちでチャレンジ! です〜。

■飛行メカ講座
<本体>こちらは最新アイテムなので全然問題なし。アンテナ類のシャープ化、靴裏肉抜きのパテ埋めとハンドパーツの親指を別パーツ化してディテールアップした程度であります。ただしEGは関節が緩めになる傾向があるので、重量級パックを背負わせる場合には腰のジョイントなど、関節部に少し瞬間接着剤を塗ってタイトに調整しておくのがよいでしょう。
<パック>バランスは抜群なので翼関係をいかにシャープに整形するかがカギです。うんちくを少し披露すると、揚力(空中に浮かぶための力)装置である主翼は、気流速度による圧力差を発生させるために上面が下面よりふくらんでいるのが基本です。一方で安定板などの補助翼には揚力が不要なため対称断面なんですな。また、翼の前縁が割と太めの曲面であるのに対して、後縁は上面と下面を回ってきた気流がスムーズに合流するように(これがハガれると失速してしまう)鋭いエッジになっております。…というような物理を少し知っていると、リアルな飛行メカが作れますぜ!
<武器>コンバインドシールドはかなりパーツが細分されているのですが、さすがに複雑な構成なのでHGではこの辺が限界でしょう。作り替えるなり、貼り足すなりして精度を上げてやるとよいです。
<ディテール>いつもの「・」「ー」「凹」のメカディテールに加え、軽量化による空戦性能向上と武器の廃熱効率向上のための丸穴もプラスしてみました。詳しくはHow toパートをどうぞ。

■時代差を感じるか
 EG本体はほぼ完璧に色分けされているので楽チンですが、I.W.S.P.はマスキング塗り分けのオンパレード! …焦らずに仕上げましょう。
 使用塗料は基本的にMr.カラー(サフはガイア)で、
白=白サフ+グレーサフ
青=キャラクターブルー+パープル
赤=キャラクターレッド
薄赤=RLM23レッド+白
グレー類=グレーサフ+黒サフ+α
 仕上げはいつも通り、エナメル塗料のグレーと黒でスミ入れしてから適当なデカールにてマーキング。濃度とツヤを調整したグレートーンにて軽くグラデーション吹きして完成であります。

BANDAI SPIRITS 1/144スケール プラスチックキット “エントリーグレード” ストライクガンダム+“ハイグレード” ストライクルージュ+I.W.S.P.

GAT-X105+AQM/E-M1 ストライクガンダム+I.W.S.P.

製作・文/木村直貴

ENTRY GRADE ストライクガンダム
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●770円、発売中●1/144、約13cm●プラキット

HG ストライクルージュ+I.W.S.P.
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●1650円、発売中●1/144、約13cm●プラキット

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©創通・サンライズ

木村直貴(キムラナオキ)

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