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プロモデラーがガンプラで教える「塗装が映える下準備」(G-3ガンダム工作編)【urahana3】

2022.08.01

5.パネルラインを利用して色分けにひと手間加える/RX-78-3 G-3ガンダム【BANDAI SPIRITS 1/100】 月刊ホビージャパン2022年9月号(7月25日発売)

工作解説/urahana3

 せっかくがんばって作ったのに塗装で失敗してしまった、なんて経験はありませんか? 模型の完成度は塗装の仕上がりによって左右されます。それは使用する塗料や塗装器具、塗料の希釈度合などの要因が挙げられますが、まず第一にパーツの下地処理が重要になってきます。下地処理とは、パーティングラインやヒケなどを処理する面出し、ふたつの面で構成される角部分をシャープにするエッジ出しなどを指します。どんなに丁寧に塗装してもこの下地処理が疎かになっていてはきれいに仕上がりません。本記事では塗装仕上げのきれいさではトップクラスのurahana3にパーツの表面処理方法を解説してもらいます。また、きれいに塗装するだけでなく、キットのパネルラインを活かして塗装でメリハリを持たせるというサブテーマを設けて、MG RX-78-2 ガンダム Ver.3.0をベースに「RX-78-3 G-3ガンダム」として仕上げもらいました。グレートーンのG-3ガンダムがどのように変化を遂げたのかご覧ください。

▲2021年を代表とするガンプラのひとつ、RG Hi-νガンダム。ハイディテールな色分けにプラスアルファの塗装を加えてメカ造形を際立たせています

●プロモデラーQ&A

 今回の作例製作に欠かせないツールorマテリアルを1点教えてください。
 この謎のケガキ針風のものです。常にどの作例でも使用しているのですが、これが何なのか全くわかりません。プラモデルを始めてすぐに買った記憶がありますが、マスキングの切り出しのアタリ付けにはこれがないともう作業ができないレベルなので、なくしたりしたら大変なことになってしまいます。

 作例製作時に意識していることは?
 清潔感と細部まで行き届いた仕上がり、全体で見たときの色のバランス感覚を特に意識しています。
 ついついやってしまうこだわりポイントを教えてください。
 やらなくてもいい塗り分け、見えない部分の塗り分けをわざわざやります。これによって納期が押していきます。

❶モールドの彫り直し

▲まず、タガネを使って彫り直しをしていきます。ヤスリをかけると消えてしまいそうなラインも多いので、ほぼ全部のラインを彫り直します
▲タガネは0.1〜0.3mmあたりを使い分けています。パーツの右半分が彫り直した状態で左半分がキットのままの状態です。彫り直しによる変化が分かりやすいかと思います
▲ラインとは別に丸凹モールドも浅い部分があるので、彫り直しを行います
▲同径のピンバイスで軽く彫っていきます
▲スピンブレードを使って、底を平らに仕上げます
▲面取りビットを使って、縁を面取りします。ごくわずかでいいのですが、これをするのとしないのとでは見た目がだいぶ変わってきます
▲これで、丸凹モールドの彫り直しが完了です。元々のモールドを彫り直したり、新たに丸凹モールドを追加したりしています

❷ヤスリがけ その1

▲続いてヤスリがけを行います。こういった関節を挟み込んだ部分の内側をしっかりとヤスリがけして、塗装後に可動させても剥がれないようにクリアランス調整を行っていくのが大切なポイントです。脚や腕を曲げたときに剥がれてしまわないように、内側も意識するとさらによいです
▲ヤスリがけに使っている道具類です。紙ヤスリでメインに使用しているのは600番で、通常のパーツはここからかけ始めます。その他、400番は合わせ目消しの接着剤を削る場合に使用し、320番はパテで工作した箇所を削るのに使用します。800番はツヤありで仕上げる場合に使います。スポンジヤスリで通常使っているのは1000番で、600番などの紙ヤスリで整えた面をさらに仕上げるため、ペンサンダーに装着して使います。3000番はツヤありで仕上げる場合や、メタリック塗装の際に使用しています
▲それでは実際に写真のパーツにヤスリがけを行っていきます。使用するのは600番の紙ヤスリです
▲どこからかけるかは特に決まっていないのですが、ひとまずここのパーティングラインを消していきます
▲突起のサイド部分を整面していきます。あまり強い力でガッとかけないのがポイントです。とはいえ撫でるようにするだけでは削れないので加減の説明は難しいのですが、その面全体が均一に削れている状態に仕上げるのが目安です
▲次にこちら側を整面していきます。最初にかけた側との面の境目、稜線をきちっと直線で出すのがポイントです
▲サイドの面も同じように整えていきます。私は基本的にこういったパーツでは当て板を使わずにフリーハンドでやっています。もっと面積が広くて平面なパーツの場合には板に紙ヤスリを貼ったりもしますが、このくらいのパーツの場合はフリーハンドです
▲紙ヤスリの扱い方ですが、私の場合中指の爪の端にヤスリ面を押し当てて、親指の爪を使って上から押さえ込む形でヤスリを当てていきます。そのため、中指の爪の半分はほぼ削れてしまっています。あまりヤスリがけの作業量が多いと、爪が減りすぎて作業ができないくらいの深爪になってしまうこともあります…
▲突起の側面も整えます。紙ヤスリのハリを利用して当てていく感じです
▲最後に面取り部をきれいに整えます。線幅が均等になるように意識して、角をしっかり立てるイメージです
▲このように仕上がりました
▲違う角度からもご確認ください
▲反対側です
▲これで紙ヤスリでのヤスリがけが終わりました。基本的にはフリーハンドで、いつもこんな具合でヤスリがけ作業をしています。曲面のパーツだとまた違ったりもしますが、大体はお伝えできたかなと思います

❸ヤスリがけ その2

▲次の作業はペンサンダーです。最近はアルティマ7が欲しいなと思っていますが、とりあえずまだ購入していません…。先端に1000番のスポンジヤスリを貼り付けてより細かく面を仕上げていきます。角の立った面に当てるには少しコツがいりますが、エッジを殺さないように慎重に作業します。この感覚は文面では説明が難しいのですが、流れとしては600番の紙ヤスリで面を整え、1000番のスポンジヤスリを電動で当てて仕上げ作業をする、というのが私の基本工程になります
▲写真のように大体1.5cm角に切ったスポンジヤスリを貼り付けます。ツヤありで仕上げる場合のために3000番も用意しています。それ以上の番手でかける場合は、「神ヤス!」の4000番以上を使用します。紙ヤスリもすべて最初に1.5cm角にハサミで切り出してから使用しています。おおよそのフリーハンドで切っているだけですが、大体1.5cm程度になっています。四つ角の硬さと適度なしなり、端の反りが重要な部分なので、これを目一杯活かせるサイズが多分このくらいなのかなと思います
▲すべてのパーツのヤスリがけが終わったので、水洗いしてヤスリカスを落とします。乾かしている間に、塗装のプランを考えていきます

❹塗り分けを考える

▲今回はG-3ガンダムを作るということで、一から色の構築が必要になります。私は一度ヤスリがけしてしまうとその後パーツを組むことはないので、説明書の中の完成見本ページや、パッケージ横にある写真を見ながら塗装パターンをどうするか考えていきます。素組みの時点である程度は考えるのですが、最終的には説明書の写真で考えることが多いです
▲考え方その1【パネルラインで考える】。最近のハイディテールなキットは最初から無数のパネルラインが入っていることが多いですが、例えば写真の箇所だけでも6つのスペースに分けて考えることができるので、このラインに沿って塗り分けていくのが分かりやすいです。これをそれぞれ別の色にしてしまったら仕上がりがうるさくなりますが、どこかのポイントでひとつ別の色を差すことで効果的なメリハリを生むことができるかもしれません
▲考え方その2【ディテールで考える】。ディテールの入り方次第で、例えば写真の突起の箇所は別パーツになっているものとして考えたほうが密度や立体感が増します。このように「多分別パーツなんだけど1パーツとしてまとめられたもの」を塗り分けによって個別化させることで、1色で塗装してしまうよりも独創的な仕上がりになります
▲考え方その3【凹みディテールを塗り分ける】。矢印で書き込んだように、一段落ちている部分を別の色で塗り分けるとかなり高い効果が得られます。これはどのパーツでも大概通用するのですが、例えばこのシールドを丸々1色で塗ってしまうよりも、凹み部分に別の色を使うと見映えが変わります。マスキングの手間がかかるのでかなり面倒ですが、それでも私がいつも意識している部分です
▲考え方その4【関節を塗り分ける】。写真のような中心部や可動軸の部分を金属色に置き換えることが多いです。関節は基本隠れる部分ですし、意外とディテールも複雑なので黒1色で塗ってしまったほうが楽なのですが、メカ感を出したいので金属色が映える部分を探して色を差します
▲考え方その5【可動することで見える部分を塗り分ける】。写真のように腕や脚を曲げたときにだけ露出する箇所がある場合、そこにワンポイントを入れるとかなり効果が高いです。ポージングによってはチラ見えするかもしれないアーマー裏などもそうですね。このように一見すると見えない箇所なんだからわざわざ塗らなくてもいいよね、という部分をいかにちゃんと塗るかが私の好きなポイントです
▲塗り分けする際のポイントをいくつか説明したところで、実際に塗装に入っていきます。すべてのパーツに持ち手を付け、キットの空き箱に入れています
▲どの塗料で塗ろうかな…と塗料ケースを眺めながら考えます。これは全部今まで混色などをして使った塗料を保管してあるものですが、私は基本的に瓶生で塗ることはあまりないので、過去に作った塗料にさらに色を足して作っていくこともあります。混色にセオリーはなく、目指す色を作り出すという目的が達成されればそれでよいので、例えばMr.カラーとフィニッシャーズを混ぜるとか、さらにそこにガイアカラーを足す等は特に気にせずやっています
▲G-3ガンダムはグレーがメインなので、普段から段階的に濃淡を作っているグレー系のストック塗料を並べてみました。メインのグレーを左端の2色のどちらにするかはまだ決めかねていますが、ひとまずグレーは4段階に分けて塗っていきます
▲G-3ガンダムは全体がグレー系で、多少紫が入っているようなイメージなのでいろいろと画像を探してみたのですが、どうも公式な色設定がよく分からなかったので、どうせなら自分の好きな方向で塗ってみようと考えてみた結果、ネイビー系で塗ってみることにしました。グレーと紫では色がぼんやりしそうだったのと、ロービジカラーでまとめつつパキッとした色を差したかったのでグレー×ネイビーで全体を構築してみます。まず靴とランドセルには黒に近い濃いネイビーを配置して、胸部の主役となる色にはキレのあるネイビー、そこにワンポイント的に藤色のような色を差し込みたいと考えました。手持ちのカラーの中から、この辺りの色を活かしつつ混色してみます
▲関節カラーは、全体がグレー系なこともあってより黒っぽい関節にします。FAガールカラーのインナーブラックに、MSファントムグレーを混ぜてみるとよい具合の黒になりそうです。その他、関節部分のワンポイントとして写真のメタリックカラーを差していきます。よく使う筆頭カラーは、ブレードシルバーとマスターシャンパンゴールドです
▲グレーを塗装しながらちょっとメインカラーの色味が違うなと思ったので、アッシュ系のグレーに振ってみます。左端のグレー2色目を使ってみたのですが、そこにメカトロウィーゴあっしゅを混ぜて少し色味のあるグレーに変更します。色は実際に塗ってみて少し違和感を感じたら作り直し、塗り直すという作業を結構やっています
▲塗装しつつ、途中途中でマスキング作業に入ります。いつもこのような道具を使ってマスキングしています
▲アイズプロジェクトのマスキングテープは線幅が豊富なので、写真のような細かい塗り分けに使います
▲塗り分けを考えていた関節の突起部分ですが、こういう形状のところには合わせ技でマスキングをしていきます。まずは細切りマスキングでトップの部分をきれいに隠します
▲次にマスキングゾルを筆塗りして側面を隠していきます。複雑で細かい形状のところはマスキングゾルをよく使います
▲ネイビー系3色の塗装は、色の合いを見つつ調整したかたので、グレー系の塗装を終わらせてから一番最後に行いました。対グレーを意識しつつ、ネイビー同士のまとまり具合も見ていきます。バランスを見ながら3色を調整します
▲色分けをどうするか考えるところで例に挙げた脚部ですが、最終的にこのような配色にしました。グレーの濃淡だけで構成されていた部分に、思い切ってメインカラーのネイビーを置いています。差し色の藤色も隣に配置します。胸部から離れたところに同カラーをピンポイントで置くことによって、効果的な見え方を演出できます
▲靴部の一部にも塗り分けで藤色を置いています。ここにこういう色を置いてみようというのは、セオリーも何もなく完全に感覚でしかありません。何となく、ここに差してみたらよい感じになりそうだなと想像できるので、その通りにしています。離れたところにポツンとメインカラーを置いてみると、全体的にまとまりが出そうというイメージはあるので、そういった意味での考え方というものは存在しています

完成した作例の詳細はこちら!

BANDAI SPIRITS 1/100スケール プラスチックキット “マスターグレード”RX-78-2 ガンダム Ver.3.0 使用

RX-78-3 G-3ガンダム

製作・文/urahana3

MG RX-78-2 ガンダム Ver.3.0
●発売元/BANDAI SPIRITS ホビーディビジョン クリエイション部●4950円、2013年8月発売●1/100、約18cm●プラキット

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ⓒ創通・サンライズ

urahana3(ウラハナサン)

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