37年前発売のキット「1/100 バルディ」を現代風のプロポーションに徹底改修!【蒼き流星SPTレイズナー】
2022.08.10サンライズ・メカニック列伝 第43回SPT-BD-03U バルディ【BANDAI SPIRITS 1/100】 月刊ホビージャパン2022年9月号(7月25日発売)
サンライズ作品に登場する数多のメカを模型作例で再現し、改めてその魅力を探る連載企画「サンライズ・メカニック列伝」。今回は『蒼き流星SPTレイズナー』から、スーパー・パワード・トレーサー(SPT)「バルディ」の1/100作例をお届けしよう!
バルディはレイズナー・バリエーションのひとつとして開発されたSPT。専用バックパックに高密度エネルギー砲を装備した後方支援型の機体で、運動性を強化するための軽量化が施されているのが特徴。劇中では第6話で主人公エイジがレイズナーから乗り換えて難敵ブルグレンを撃破したほか、第9話ではロアン・デミトリッヒが初搭乗し、デビッド搭乗のベイブルとともにエイジの危機を救うなど、ファンの記憶に残る活躍を見せている。
作例は田仲正樹が私物を3セット投入して製作。軽量タイプらしくフォルムをスマートに調整し、各関節はフル可動化。SMP(SHOKUGAN MODELING PROJECT)シリーズのSPTと違和感なく並べれられるものにすることを目標に、37年前のキットを徹底改修している。
製作途中状態
1/100『レイズナー』プラキットの中では良好な出来のバルディだが、SMPと比べてしまうと形状・可動ともに要改善点が多いのも事実。作例はSMPと違和感なく並べられることを目標に、劇中の印象的なポーズを再現可能とすべく可動範囲を拡大。また、軽量化されたスマートな機体であることを表現するために全身のバランスを調整している。製作途中画像からは、製作中に幾度となく繰り返された試行錯誤のプロセスと膨大な作業量を読み取ることができるだろう
頭部
フェイス部を切り取り、左右対称に整形してから再接着。キャノピー裏のピンはかなり目立つため削り取った。両側面の搭乗ハッチは市販のレンズパーツでクリアー化。頭頂部のカメラは流用パーツでひと回り大きく作り直した。後頭部アンテナは先端を丸めた縫い針に交換してシャープ化。首関節はHG(UC)陸戦型ジムのものでボールジョイント化し、顔を上へ向けられるようにしている
腕部
肩ブロックは削り込んだHGガンプラのものをゲージにプラ板で作り直し。肩装甲は面ごとに分割、側面をプラ板に交換した。上腕はCBGのものを加工し、前腕はプラ板を貼り足し大型化。ヒジ関節と手首関節にはCBGのものを移植した
胴体
胸部は中央で分割し横幅を詰め、腹部はHGBD:Rコアガンダムのものを加工し移植。肩関節は武器を両手持ちできるよう、形状の違いに目をつぶってHGクロスボーン・ガンダム(以下CBG)のものを移植した。側面ダクトはHGガンダムMk-II(No.030)の胸部ダクトを薄く加工し接着。腰部は4枚の装甲を分割。それぞれフチにプラ板を貼って大型化し、CBGの腰部フレームへ取り付けて脚部の可動範囲を拡大している。バックパックはブロックごとに切り離し、整形後に再接着。本体は前後に幅増しし、ノズル類は市販のバーニアパーツに交換した。バーニアアームはプラ板で作り直して延長し、可動部はボールジョイント化
脚部
各関節はCBGのものを移植。太モモ外装はRE/100ガンイージ・プロトタイプの余剰部品を加工したものに交換。本編の作画をイメージしたスリムな形状とした。スネは接着面で幅詰めし、裾にプラ板を貼り足して縦長の形状に。足首装甲の取り付け角度は吟味のうえ変更している。靴部はつま先とかかとを切り離し、接着面で幅詰めした後に再接着した。「ヒザ関節の蛇腹モールドはどうしてもきれいに彫れず、途中で諦めた」とのこと
武装
LDG-03M連射型レーザード・ガンは2丁を重ねて接着し、プラ板で前後に延長してボリュームアップ。銃口部は真鍮パイプと、グリップ周辺はHGガンダムF91のライフルのものとそれぞれ交換し、キャリングハンドルはプラ板で作り直した。フォアグリップは前方に畳めるようにアレンジし、劇中の印象的な射撃ポーズを再現しやすくしている。ショルダー・カノン(高密度エネルギー砲)も2セット分を重ねて厚みを出し、前後に延長して大型化。本体とはポリキャップで接続している。握り拳と平手はSMPレイズナーのものを加工し、銃の持ち手は小型のHGガンプラのものをさらに小さく加工。ナックルショットはプラ板とプラ棒で自作し、市販のリベットパーツを接着した
■作ってます(ロアン・デミトリッヒ風に)
「充分考えられますね!」と言った際のロアンのポーズを猛練習しているサンライズメカファンのみなさんは、すでに「SMP 蒼き流星SPTレイズナー」をVol.3まで製作し、全機を並べて大喜びしているはず。ドリルとハサミの腕を持つガッシュランが大好きな私も、柔道の技で投げ飛ばされた飛び込み台の上から地面にひらりと飛び降りるくらい喜んでいます(『レイズナー』と関係ないだろ)。そして次にモデラーがすべきは、37年前に発売されたキットたちを、SMPの隣に違和感なく並べられる姿へと近付けることでしょう。今回製作した1/100バルディはシリーズ内では出来のよい部類に入りますが、今の目で見るとバランスが今ひとつ。緩みやすい可動部、部品数を抑えるためのディテールやギミックの省略、豪快な肉抜きといったおなじみの仕様(300円なので仕方ないですが)に加え、全高10cm弱という絶妙に作りにくいサイズが加わるため、フォルム調整やフル可動化は想像以上に超大変…。まあ、とにかくやってみましょう。
まず、HGクロスボーン・ガンダムの各関節を中心とした小型のガンプラ可動部を用意して、全身に仕込みます。同時に肩幅を詰め、肩、上腕、腹部を流用パーツとプラ材で作り直し。前腕、太モモ、スネの形状を縦長に変更し、靴部の横幅を詰めて、重装甲のベイブルとは異なる軽快なイメージを出すべく全身のバランスを変更しました。エッジやディテールは全体的に甘いので、「ブロックごとに切り離し、整形して再接着」をひたすら繰り返します。…こうしてまとめると10行にもなりませんが、この作例と同じ工作をしているとまず完成しないので、部分的に参考にしていただければ幸いです。バルディにはより楽に作れる1/72キットもありますので、作りこみはそちらで行い、1/100は任意のポーズで固定する等して、お手軽に仕上げるのもよいと思います。
■塗ってます(ロアン・デミトリッヒ風に)
組立説明書に掲載のカラー画稿を参考に塗装。レイズナーの鮮やかな「蒼」を引き立てる意味もあるバルディの緑とベイブルの赤は、彩度がやや低めなのが格好いいですよね。調色の際は黒を入れると急速に濁るので、補色(緑なら赤)を少しずつ加えていきましょう。余談ですが昔、ある幼稚園児がこのやり方で水彩画を描いていたところ、周囲の園児達から「ザリガニは真っ赤なのになんで緑を混ぜてんだよバーカ!」と理不尽な罵声を浴びせられたことがありました(あいつら2億年許さん)。
頭部、胴体等=純色グリーン+純色シアンにコバルトブルー、純色バイオレット、パワーグリーン、クールホワイト、ハーマンレッドを各少量
腕部、腹部、脚部=自作の青系ライトグレー
関節等=自作の赤系グレー
バックパック側面等=自作の青紫系グレー
黄色はモデナイエロー1+ビビッドオレンジにクールホワイト少量。頭部キャノピーにはクリアーグリーン+クリアーブルーを上吹き。スミ入れ後に半光沢とツヤ消しを混ぜたクリアーで塗膜をコートし、センサーに赤のアルミ蒸着テープを貼って終了です。
次回は無人機の作例が登場します。
BANDAI SPIRITS 1/100スケール プラスチックキット
SPT-BD-03U バルディ
製作・文/田仲正樹
©サンライズ
田仲正樹(タナカマサキ)
ザリガニ(マッカチン)の絵は大手新聞社主催の子ども絵画コンクールで入賞したとのこと。