IMS 1/100「ヴァイ・オ・ラ」の使い込まれた風合いを筆塗り仕上げで表現【ファイブスター物語】
2022.08.08歴戦の証を筆塗装で刻みつける
名工ゼビア・コーター公が手掛けたクルマルス・シリーズの2番騎、ヴァイ・オ・ラ。星団暦2300年代に作られたいにしえの機体ながら、その性能は600年以上が経過した2992年時点でも一線級だ。IMS版のヴァイ・オ・ラが発売されたのは2017年。過去IMS製品のノウハウを基に、ポリキャップの組み付けやすさやパーツの嵌合強度も飛躍的に高まっており、作りやすい一体となっている。そんな名キットの作例を担当するのは、筆塗りを得意とする新進気鋭のペイントマスター・大森記詩。「稀代の名騎」の使い込まれた風合いを筆塗り仕上げで表現している。MHは光沢仕上げが主流でウェザリングは忌避されがちな題材ではあるが、本騎のようなヴィンテージかつ勇猛なMHを塗装する際は、筆特有のテクスチャーを生かす仕上げ方も充分にマッチするはずだ。
IMS 1/100 ヴァイ・オ・ラ(クルマルス2)
●発売元/ボークス●10670円、2017年12月発売●1/100、約24cm●プラキット●原型/大石凡(造形村F.S.S.プロジェクトチーム)
■筆のタッチと色調の変化でMHのテクスチャーを表現/大森記詩
モーターヘッド、空中戦車、装甲化突撃特殊歩兵etc.と、永野先生のさまざまなデザインやミリタリーへの造詣が隅々まで散りばめられていることから、幾度となく読み返してきたカステポー編。その劇中で大活躍したヴァイ・オ・ラです。特徴的なフェイスバイザー、ボリュームのある曲面かつ広いアーマーにシックなカラーリングも印象的な騎体ですよね。今回のテーマは「数百年間引き継がれてきた名騎を筆塗りで重厚感のある仕上がりに!」ということで、19m級の巨大兵器という点も踏まえつつ、初めてのモーターヘッド製作にチャレンジしてみました。
■騎体色の解釈と巨大感をどのように表現するか
まずはその騎体色です。印刷の差と言ってしまえばそれまでながら、これまで刊行されてきた印刷物ごとに異なる色調があります。どれも捨て難いのでキットを組みながらどのようにしようか悩んでいきます。ついついカステポー編もじっくり読み返してしまったところで、今回はリブート5の巻頭と、組立説明書に収録されているカラーイラストを合わせてみることにしました。彩度が低めの説明書版にリブート版を重ねていくような塗装イメージになります。さらに上半身と下半身で配色を変え、スカートアーマーはこの中間の階調としました。全体が単調にならないようにしつつ、色の明暗によってモーターヘッドの巨大感も表現してみようという試みです。この騎体色ですが、ガイアカラーのダークイエロー2にビビッドオレンジを調色したものと、Mr.カラーのIDFグレー3にRLM02グレーを調色したものを用意しました。これらをメインとして塗り進めながらそれぞれを混色しつつ、Mr.カラーのミドルストーンやグレーFS36622などを適宜加えていきます。
■仕上げでテクスチャーを描き込む
仕上げ段階では筆跡を活かしていくように意識しました。塗り初めからしばらくはMr.リターダーマイルドを添加して薄く透過させながら塗っていきますが、ここではエッジや形の稜線を中心に筆先を利用しながらハッチングのように筆跡を重ねます。さらにこれを所々クロスさせるようにしながら、全体感を整えつつ歴戦の騎体特有の擦れも表現していきます。リターダーによる塗り重ねでツヤのある塗装面に筆塗り特有のテクスチャーを描き込みながら、思い描く風合いができたところで完成としました。
ボークス 1/100スケール プラスチックキット
“INJECTION ASSEMBLY MORTAR HEADD SERIES”
ヴァイ・オ・ラ(クルマルス2)
製作・文/大森記詩
ⓒEDIT ,All rights reserved. 創作造形ⓒ造形村/ボークス
大森記詩(オオモリキシ)
注目の若手造形師として本誌連載「H.M.S」にも登場。10代の頃から「Ma.K」の凄腕モデラーとしても界隈で知られている。