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「スジ彫りカーバイト」”超硬合金”の切れ味をご覧あれ!【工具&マテリアルガイド】

2022.04.08

「斬技シリーズ」 模型作りが楽しくなる工具&マテリアルガイド(2月21日発売)

「スジ彫りカーバイト」”超硬合金”の切れ味をご覧あれ!【工具&マテリアルガイド】

虹色に輝く超硬合金の切れ味“斬技”シリーズ!!

 「斬技シリーズ」のスジ彫りカーバイトは、超硬合金のスジ彫り用工具です。超硬合金とはタングステンカーバイトを主成分とした合金で、非常に硬く耐摩耗性も高いので切削工具の材質として非常に優秀です。それに加え「スジ彫りカーバイト」は先端のサイズも豊富で、さまざまな太さのスジ彫りに対応しています。そんなスジ彫りカーバイトを使って、パーツ表面の情報量を増やし、模型の完成度を大きく高めていきましょう。


Impression

スジ彫りカーバイト0.15 商品画像

スジ彫りカーバイト 0.05mm~1.5mm

●発売元/ファンテック●2200円(0.05mm)、各1980円(0.1mm、0.15mm)、各1760円(0.2mm~1.5mm)

スジ彫りカーバイトの0.05~1.5を13種ならべた画像
▲ ラインナップは、先端の太さが0.05mmから1.5mmの全13種。サイズごとに寸法表示のシールと色の違うリングが装着されていて、一目でサイズを見分けられます。素材は超硬合金(タングステンカーバイト)が使用されており、切れ味と耐久性は折り紙付き。刃先は平刃型で、どのような深さに彫っても溝は均一な幅の凹の字となります
斬技ホルダーにスジ彫りカーバイト0.5を装着したものと斬技ホルダースリムにスジ彫りカーバイト0.6を装着した画像
▲ スジ彫りカーバイトは専用のホルダー(左が斬技ホルダー:2420円、右が斬技ホルダースリム:1760円)か、軸径3.2mmまで装着可能なピンバイスに装着して使用します。持ち手にする軸の選択肢も多いので、自分に合ったものを選びましょう (斬技ホルダー)(斬技ホルダースリム)
スジ彫りカーバイト0.15 スターターセットの画像
スジ彫りカーバイト0.15 スリムホルダーセットの画像

▲ 使用頻度の高い0.15mmの刃と斬技ホルダーに、保護ケース、磨き・ケバ立ち取りのブラシがセットになったスターターセットが2種ラインナップされているので、初めての人はここから入るのがオススメです

スジ彫りカーバイト0.15 スターターセット
スジ彫りカーバイト0.15 スリムホルダーセット

●発売元/ファンテック●4400円(スターター)、3850円(スリムホルダー)

How to use

スジ彫りカーバイト0.5でプラ板を彫っている画像
▲ まずはプラ板に直線を彫ってみます。寸法表示シールが上を向くように握り、なるべくグリップを立てて力を入れずに一定の速度で手前に引きます。平らな面を彫る際には、ガイドとして金属製の定規を用意しましょう
スジ彫り時の注意画像
▲ 彫る面に対して刃を垂直に当てて(左右に傾かないように)作業しましょう。また、スジ彫りカーバイトは硬度が高い代わりに粘りがないため、作業中にねじったり無理に彫る方向を変えると折れてしまう場合があります。細い刃は特に注意しましょう
スジ彫りカーバイトで溝を掘っている画像
▲ 何度も彫り重ねて徐々に溝を深くしていきます。カンナ掛けのように、削りカスがスッと1本につながるのがきれいに彫れているサイン!一定の力で適切に作業でき ている目安となります
ミリ数の違うスジ彫りカーバイトで彫った溝の比較画像
▲ 左から0.1mm、0.25mm、0.5mm、1.2mmで彫った結果です。刃の硬さを活かし“軽い力で引く”を繰り返すだけで、縁もシャープな凹字の溝を彫ることができます
1.2mmの溝を拡大した画像
▲ 1.2mmの溝を拡大して見てみると、底面も滑らかな仕上がりになっていることがわかります

スジ彫り実践編!

 ここからは、スジ彫りカーバイトを使ってPLUM「プラアクト01:伊達」(3850円)をディテールアップしてみます。

How to use

スジ彫りをする箇所を鉛筆で下描きしている画像
▲ まずは面が広い部分やパーツの縁を中心に、スジ彫りの構想を鉛筆で下描きします。全体のバランスをチェックしながら作業しましょう
スジ彫り用のガイドテープをあてたパーツを彫り始めている画像
▲ 下描きの線にスジ彫り用のガイドテープを当てて、彫っていきます。スジ彫りカーバイトの鋭角な刃先は、入り組んだパーツの奥に入り込んで彫り始めることができるのもポイント
ケガキ針で印をつけたパーツの画像
▲ 彫る溝を途中で曲げたい箇所がある場合は、事前に曲がり角にケガキ針で印を付けるとよいでしょう。斬技シリーズには「超硬けがきニードル」(30度:1320円、10度:1540円)もラインナップされています( 超硬けがきニードル 30度 )( 超硬けがきニードル 10度 )
磨き・ケバ立ち取りブラシで削りカスを取り除いている画像
▲ 力を入れずに何度も引いて彫りますが、刃先が削りカスを噛んで仕上がりが荒れることがあるので、適宜スターターセットにも含まれている「磨き・ケバ立ち取りブラシ」(単品は2本入りで880円)などを使って、キットに残った削りカスを取り除いておきましょう( 磨き・ケバ立ち取りブラシ )
スジ彫りを施したプラアクト01:伊達の右肩部分の画像
▲ シンプルな面構成だったパーツの情報量をぐっと上げることができました。彫る場所ごとに溝の太さを変えれば、さらに情報量を増やすことができるでしょう
スジ彫りを施したプラアクト01:伊達の頭の画像
▲ 曲面はガイドを当てるのが難しいため、下描きの線を超硬けがきニードルなどでなぞり、うっすらとガイドになる溝を作ってから彫り始めます。刃先がブレないよう、平面を彫る場合よりもさらに弱い力で何度もなぞるのがコツです
スジ彫りを施したプラアクト01:伊達のバストアップ画像

スクレーパーも超硬で捗る!

 超硬合金を素材にした工具としてもうひとつ紹介するのは、バリやパーティングラインを楽々削り取る切れ味とどんな隙間にも入れられる先端の細さが特徴の「超硬スクレーパー」と、一回り太くしてより剛性を増した「超硬スクレーパー タフ」です。

超硬スクレーパー 商品画像

超硬スクレーパー

●発売元/ファンテック●1540円

超硬スクレーパー タフ 商品画像

超硬スクレーパー タフ

●発売元/ファンテック●1760円

超硬スクレーパーと超硬スクレーパータフの画像
▲ 複雑なパーツや奥まった部分の処理に力を発揮する超硬スクレーパー(左)と、太くなった分強度が増し、広い面も力強く処 理できるようになった超硬スクレーパー タフ(右)。軸径も異なり、超硬スクレーパーは2.34mmでタフは3.175mm
超硬スクレーパータフ 先端の画像
▲ タフは軸の形状がスジ彫りカーバイトと共通の規格になって いるので、斬技ホルダーや保護ケースにも対応
刃の面をパーツに当てて削り落としている画像
▲ ゲートやバリは、刃の“面”をパーツに当てて削り落とします。ペタッと面を付けることで削る部分をえぐらないようにするのがポイント。広い面を処理したい場合も同様です。パーティングラインを処理する際は、刃の“頂点”を当て、軽くスライドさせます。一度で削り落とそうとせず、数度のスライドで徐々に平坦にしていきます
V字の溝を彫っている画像
▲ タフは先端の三角刃でV字の溝を彫ることもできます。写真のように一体化されているパーツの谷部分を削ることで、別パーツのように見せる加工ができます

驚異の0.05mm幅、上級者向けカーバイト

スジ彫りカーバイト0.05 商品画像

スジ彫りカーバイト 0.05

●発売元/ファンテック●2200円

Impression

スジ彫りカーバイト0.05と0.1と0.15の画像
▲ スジ彫りカーバイトのラインナップの中でも上級者向けなのが、新しく追加された0.05mm幅タイプ(パッケージにも「上級者向け」と記載されています)。0.1mm幅、0.15mm幅と比べるとこの通り
スジ彫りカーバイト0.05を手に持った画像
▲ 硬い超硬金属製とはいえ、0.05mmの刃はとても薄く繊細なので、彫る作業の時だけではなく保管する際も扱いには注意しましょう
スジ彫りカーバイト0.05と金属定規の画像
▲ 0.1mm以上のスジ彫りカーバイトであれば、ガイドは金属定規で問題ありませんが、0.05mmでは硬いもの同士が擦れ合って破損してしまうのが怖いためガイドテープを使用しましょう
スジ彫りカーバイト0.05で削っている画像
▲ 持ち手には決して力をかけず、刃先で撫でるように何回にも分けて削っていきます。切削力は抜群なのでガイドに沿って撫でているだけで溝ができます
スジ彫りカーバイト0.05と削った部分の画像
ミリ数の違うスジ彫りカーバイトで削ったものとボールペンの比較画像

▲ ただの線に見えるほど細いスジ彫りになります。航空機のパネルラインの彫り直しなどに最適なのではないでしょうか。

幅を使い分けて複雑なスジ彫りを実践!

スケールキットのモールドの画像

スケールキットのモールドは、実機で動く部分は太めに、しっかり固定されているパネルの境目は細めにといった具合に、大小さまざまな線で構成されています。スジ彫りでも同様に強弱をつけて、スジ彫りの太さそれぞれに意味のある表現をしてみます。

スジ彫りカーバイト0.2でパネルラインを彫っている画像
パネルラインを彫ったパーツの画像

▲ 0.2mm幅、0.15mm幅、0.05mm幅を使用してパネルラインを表現してみます。スジ彫り同士を交差させる場合に、細い線に太い線を重ねるより太い線に細い線を重ねる方がより精密な線を描けるので、太い線から順番に彫るとよいでしょう。切り出したプラ板にまずは基準となる0.2mmの線を彫ります

スジ彫りカーバイト0.15でスジ彫りしている画像
▲ 二重線になるようにその隣に0.15mm幅でスジ彫りし、線を複雑にします
スジ彫りカーバイト0.05でスジ彫りしている画像
▲ 最後に0.05mmで彫り込み、細かな模様になるようにスジ彫りを入れます。スジ彫り同士が交差する始点、終点は刃が溝に引っかかりやすいので慎重に
パーツの表面をヤスリがけしている画像
細い溝のカスを筆で取り除いている画像

▲ スジ彫りが終わったら表面をヤスリがけし、スジ彫りの際に盛り上がった表面を均します。その後、溝に入り込んでいる削りカスを筆で取り除きます。0.05mm幅で彫った細い溝のカスもしっかり取り除きましょう

スジ彫りが完成したパーツの画像
▲ スジ彫りの完成。スミ入れしない状態でも0.05mmの細い溝もしっかりと主張しているパネルラインになりました
スミ入れをしている画像
綿棒で塗料を拭き取っている画像

▲ 仕上がったスジ彫りの太さの違いをもっとはっきり見るためスミ入れします。しっかり溝が彫れているので塗料がよく流れ込みます。塗料が乾いたら拭き取ります

スミ入れをしたパーツの画像
▲ スミ入れすると線の太さがよりはっきりします。スケールキットなどではスケールが小さくなればなるほどモールドが繊細になるので、そこに対応できるスジ彫り専用の工具は非常に強い武器になります

頼れる性能だからこそ
取り扱いは慎重に!

スジ彫りカーバイト0.05とパーツの画像

 0.05mm幅のスジ彫りカーバイトの先端は上級者向けと書かれているとおり非常に細く、使い方を間違えてしまうと新品でも簡単に折れます(筆者は1本折っています)。力のかけすぎには要注意です!

まとめ

 「斬技シリーズ」はとにかく切れ味がよいので、スジ彫りやバリ取りといった作業を効率よく行うことができます。ただし、超硬金属の硬さだけに頼った使用方法ではその長所を活かしきれず、力の入り過ぎでスジ彫りの線が乱れたり、スクレーパーでキットを削り過ぎたり、工具自体を破損させてしまいます。使用する刃先に合わせて力の入れ方や刃の引き方をいろいろと試してからキットに使用するのがよいでしょう。一度その特性を掴んでノウハウを身に付けてしまえば、とても頼もしい相棒になるはずです。


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