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1/700「日本海軍 戦艦 武蔵 就役時」細部まで追求した力作キットをディティールアップ

2022.02.10

日本海軍 戦艦 武蔵 就役時【ピットロード 1/700】 月刊ホビージャパン2022年3月号(1月25日発売)

日本海軍 戦艦 武蔵 就役時 トップ画

1942年夏に顕現した大艦巨砲主義の到達点

 公試排水量約7万トン、全長263m、46cm砲三連装砲塔3基と15cm三連装砲塔4基を搭載し、昭和17(1942)年8月に竣工した日本海軍戦艦「武蔵」は、現在でも史上最大の戦艦として語り継がれているが、その波乱の生涯は吉村昭の小説「戦艦武蔵」に鮮やかに描かれている。2017年に最終時「大和」を1/700スケールでリリースしたピットロードから発売された就役時「武蔵」は、単なるバリエーションにとどまらず細部まで「武蔵」を追求した力作キット。大艦巨砲主義の極致として計画された「大和」型戦艦の、本来あるべき姿を再現できる。

日本海軍 戦艦 武蔵 就役時 横
▲戦艦「武蔵」は1番艦「大和」から約8ヵ月後の昭和17(1942)年8月5日に竣工。昭和19(1944)年10月24日のレイテ沖海戦に参加、フィリピンのシブヤン海で4時間半にわたる米機動部隊の航空攻撃を受け、魚雷20本、爆弾17発を被弾し沈没した
日本海軍 戦艦 武蔵 就役時 1
▲「大和」型戦艦は対空火器を増備した状態が一般的なイメージだが、副砲塔を計画通りに搭載した「武蔵」就役の姿は、本来あるべき「大和」型を体現しているといえる
日本海軍 戦艦 武蔵 就役時 2
▲ピットロードのキットは先発の「大和」最終時のキットのバリエーションだが、中央構造物や艦橋背面などを専用パーツで追加し、「武蔵」就役時をみごとに再現している
就役時の特徴である中央構造物左右に配置された副砲
▲就役時の特徴である中央構造物左右に配置された副砲。砲塔はヤマシタホビーのパーツに置き換え。両脇の三連装機銃には機銃座を追加してみた
中央構造物
▲艦橋などの中央構造物は純正エッチングパーツを使用してディテールアップ。マストは主要部を除き0.4mmのプラ棒、伸ばしランナーなどで作り変えた
「大和」型戦艦のキモ、46cm三連装主砲塔
▲「大和」型戦艦のキモ、46cm三連装主砲塔の出来は非常に良好。砲身は金属挽物製に置き換え、純正エッチングパーツでディテールアップした
「大和」と「武蔵」の識別点のひとつであるクレーンの空中線支柱
▲「大和」と「武蔵」の識別点のひとつであるクレーンの空中線支柱も純正エッチングパーツで再現。後部甲板の夜間通行帯は付属のデカールを使用している
日本海軍 戦艦 武蔵 就役時 横 2
▲塗装はGSIクレオスのMr.カラーC601呉海軍工廠標準色を使用。キットの指定は佐世保工廠色だが、海軍への引き渡しは呉でのみ行われているため、最終的な塗装も呉だったのではないかと推定した

■「大和」型戦艦のあるべき姿
 今回担当しましたピットロードの「日本海軍 戦艦 武蔵 就役時」は、2017年末に発売された同社の「日本海軍 戦艦 大和 最終時」(品番W200)のバリエーションキットとなります。「大和」最終時は海底探査の結果など最新の考証が反映されたすばらしいキットですが、「武蔵」就役時も同様に満足のいく内容となっております。
「大和」型の一般的なイメージはハリネズミのように対空火器を増備した最終時の状態であると思いますが、「武蔵」就役時は日本海軍の大艦主砲主義の最終的な到達点である、本来あるべき「大和」型を体現できていると思います。
 戦艦「武蔵」には、建造時からその最後までを題材とした吉村昭氏の「戦艦武蔵」という小説があります。製作の前にもう一度読み返してみると、モチベーションが上るのを感じました。

■船体について
 船体の製作はバスタブ状の船体に甲板などを組み上げていく方式で、少ない部品数で主要部分がストレスなく仕上がります。舷側部のモールド、各甲板類のモールドは精密に表現されており、手を加える必要はありませんでした。問題があるとすれば、短艇収容口付近の舷側部が部品の共用化のため舷窓が閉塞された最終時の状態となっている点ですが、ピンバイスで開口することで修正できます。
 各フェアリーダーはムクの状態となっているので、ピンバイスやカッターを使用し開口した状態としています。後部舷側搭載艇格納庫の支柱などはキットのままとしていますが、一番外側の支柱はムクのままでは不自然な印象でしたので、この部分のみプラ材で作り直しています。また船首部分の錨鎖の部分は削り取ってチェーンに置き換えています。

■艦橋など中央構造物について
 艦橋は巧みな分割によりすらすらと組み上げていくことができます。作例では純正エッチングパーツ「日本海軍 戦艦 武蔵 就役時用純正グレードアップパーツセット」(品番GB7022)を使用し、頂部電探、昼戦艦橋、各種の張り出しなどをディテールアップ。省略されている防空指揮所の双眼鏡などは資料などを参考に付加しています。煙突・後部艦橋等も同様に処理しています。
 個人的には手すりは「付けない派」なのですが、中央構造物などには手すりを適宜使用し、細密感を出すようにしています。マストはそのままで各部分の太さがほぼ同じなため若干違和感を感じてしまいますので、主要の3本のマスト以外は0.4mmのプラ棒、伸ばしランナーなどで作り変えています。

■武装などについて
 主砲の46cm砲塔はピットロードの「樫野」用のものがそのまま使われていますが、雰囲気はよく、船体との合いも良好です。砲身は金属挽物製に置き換え、純正のエッチングパーツでディテールアップしています。副砲は手元にあったヤマシタホビー「大和型戦艦 15.5センチ副砲セット(3基入)」(品番700EP02)を使用。こちらも主砲と同様にエッチングパーツを追加しています。
 高角砲は砲身が若干太目に感じたので、0.4mmのプラ棒に置き換え。シールド付き25mm三連装機銃は、シールドはキットのものをそのまま使用していますが、銃身部分はファインモールド「ナノ・ドレッド 九六式25mm三連装機銃(大和・武蔵用シールドタイプ)」(品番WA3)に置き換え。シールド部分のほうをカッターで削り込んで装着しています。13mm機銃は同じくナノ・ドレッドのものをそのまま使用。追加装備のシールドなし三連装機銃もナノ・ドレッドですが、機銃座がない状態は不自然に感じたので追加しています。

■航空艤装について
 クレーンは純正エッチングパーツに他キットのエッチングパーツを組み合わせて組み立てています。「大和」と「武蔵」の識別点のひとつである「武蔵」用の空中線支柱が用意されているのはありがたいです。カタパルトはファインモールドのエッチングパーツを使用しています。
 後部甲板にはデカールで夜間通行帯が用意されています。大変よい出来で、後部甲板のいいアクセントになると思います。ただしデカールを貼り付ける場合は、その部分のモールドを削り取る必要があります。作例ではデカールをコピーしたものをガイドにして、該当部分を削り取りました。実はこれが今回の作例で一番気を使った作業でした。

■塗装について
 軍艦色は、キットの指定では佐世保工廠色となっていますが、作例ではGSIクレオスのMr.カラーC601呉海軍工廠標準色を使用しています。海軍への引き渡しは呉でのみ行われているため、最終的な塗装は呉で行われていたのではないかと考えます。甲板色はMr.カラーC44タンをベースに、ホワイトなどを加えて調色したものを使用しています。

日本海軍 戦艦 武蔵 就役時

ピットロード 1/700スケール プラスチックキット

日本海軍 戦艦 武蔵 就役時

製作・文/田中伸治

日本海軍 戦艦 武蔵 就役時
●発売元/ピットロード●6820円、発売中●1/700、約37.6cm●プラキット

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田中伸治(タナカシンジ)

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